【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度において世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中、ウクライナ情勢の長期化に伴う資源・エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱による部品・原材料の供給不足並びに価格上昇、欧米経済のインフレ懸念の高まり等、依然として予断を許さない状況が継続しております。
わが国でも、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中、原材料価格の上昇や半導体・電装部品の供給不足、円安の進行による物価の上昇等、景気の先行きには不透明感が広がっております。
そのような状況下において、当連結会計年度の売上高は59,643百万円(前年同期比10.8%減)、営業利益978百万円(前年同期比85.8%減)、経常利益2,120百万円(前年同期比72.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益168百万円(前年同期比97.2%減)となりました。
なお、セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
a. 電気・電子部品事業
電気・電子部品事業は、世界的な景気後退懸念の高まりを背景に、情報端末等の需要が減少したことを受けて低迷しました。製品別では、パソコンメーカーの生産が落ち込んだ影響により、ノートパソコンのパネル接続等に使用される細線同軸コネクタが減少しました。基板対基板コネクタは、シールド特性に優れた高性能ノートパソコン向けが堅調に推移したものの、5Gスマートフォンの通信モジュール向けは減少しました。HDD関連部品は、データセンター向け大容量HDDに使用される関連部品は堅調に推移しましたが、第4四半期に入り、景気後退懸念からデータセンターへの投資が一時的に縮小したことを受けて伸び悩みました。利益につきましては、特に第4四半期において、パソコンやHDD向け部品を中心とした売上高の減少とそれに起因する工場稼働率の低下により低迷いたしました。
その結果、当事業の当連結会計年度の売上高は36,611百万円(前年同期比11.7%減)となり、営業利益は4,777百万円(前年同期比39.0%減)となりました。
b. 自動車部品事業
自動車部品事業は、半導体不足やサプライチェーンの混乱に起因する自動車メーカーの生産停滞が続いたことで、センサやコネクタ等の部品需要が減少しました。足元では緩やかながら自動車市場に回復の兆しが見られたものの、自動車部品の需給関係に大幅な改善が見られず、本格回復には至りませんでした。利益につきましては、自動車市場の先行き不透明感を背景に自動車部品の需要が低迷し売上高が減少する中、減価償却費や労務費等の固定費が高止まりしたことにより、利益水準を押し下げる結果となりました。
その結果、当事業の当連結会計年度の売上高は17,802百万円(前年同期比17.3%減)となり、営業損失は1,388百万円(前年同期は営業利益1,683百万円)となりました。
c. 設備事業
設備事業は、半導体需要が拡大する中、半導体樹脂封止装置や金型が年間を通じて好調を維持しました。また、薄型半導体の製造に使用する樹脂漏れ防止用の自動テープ貼付機の需要も堅調に推移しました。年央以降、メモリ等の汎用半導体を中心に半導体市場に減速傾向が見られましたが、当社の得意とする車載半導体やパワー半導体向けの製造装置需要が高止まりしていることを受けて、当初の予定を上回るペースで売上高が伸長しました。利益につきましては、半導体製造装置の受注増に伴い工場稼働益が増加したことに加え、収益性の高い保守メンテナンス部品の売上高が伸長したことにより、増加いたしました。
その結果、当事業の当連結会計年度の売上高は5,229百万円(前年同期比34.9%増)となり、営業利益は925百万円(前年同期比87.2%増)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して546百万円増加し、92,237百万円となりました。主な増加要因は、のれん2,038百万円、機械装置及び運搬具1,803百万円等であり、主な減少要因は、建設仮勘定2,867百万円等であります。
負債につきましては、1,023百万円減少の33,891百万円となり、主な減少要因は、支払手形及び買掛金980百万円、未払金710百万円等であり、主な増加要因は、短期借入金571百万円等であります。
純資産につきましては、剰余金の配当等による利益剰余金の減少921百万円等がありましたが、為替レート変動の影響による為替換算調整勘定の増加2,897百万円等により1,570百万円増加し、58,346百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,133百万円、減価償却費7,329百万円及び投資有価証券売却損469百万円の計上、売上債権の減少2,359百万円、未払金の増加432百万円、消費税等の還付額1,079百万円等に対し、棚卸資産の増加1,144百万円、未収入金の増加1,220百万円、法人税等の支払額1,351百万円等により9,669百万円の増加(前連結会計年度は12,809百万円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入738百万円等に対し、有形固定資産の取得による支出4,763百万円、無形固定資産の取得による支出504百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,241百万円等により6,165百万円の減少(前連結会計年度は7,946百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増額1,060百万円、長期借入れによる収入4,800百万円に対し、長期借入金の返済による支出6,510百万円、リース債務の返済による支出528百万円、長期未払金の返済による支出1,493百万円、配当金の支払額1,019百万円等により3,690百万円の減少(前連結会計年度は3,236百万円の減少)となりました。
この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ471百万円増加の14,269百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
生産金額(百万円)
前年同期比(%)
電気・電子部品事業
38,042
88.6
自動車部品事業
19,259
76.7
設備事業
5,197
105.6
合計
62,499
85.6
(注)電気・電子部品事業及び自動車部品事業には、自社生産設備となるものが含まれております。
b. 受注実績
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
電気・電子部品事業
35,431
85.7
4,251
78.3
自動車部品事業
17,657
81.4
1,379
90.5
設備事業
4,759
69.6
3,216
87.2
合計
57,847
82.8
8,847
83.1
c. 販売実績
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
販売金額(百万円)
前年同期比(%)
電気・電子部品事業
36,611
88.3
自動車部品事業
17,802
82.7
設備事業
5,229
134.9
合計
59,643
89.2
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
株式会社デンソー
14,199
21.2
10,639
17.8
2.株式会社デンソー及び同一の企業集団に対する売上高を含めております。
3.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、経営陣による会計方針の選択・適用と資産・負債の評価などの会計上の判断・見積りが含まれております。当該見積りについては不確実性が存在するため、将来生じる実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する見積りの情報は、第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(追加情報)に記載しております。
a. 固定資産の減損
当社グループの保有する固定資産については「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損処理の要否を検討しております。会計上の見積りのうち、固定資産の減損については特に、当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えるものと考えております。
b. 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は毎期、過去の課税所得の推移や将来の見込額を勘案し、回収可能性を慎重に検討した上で法定実効税率を用いて計上しております。繰延税金資産の回収可能性の前提となる見積課税所得が、将来の不確実な経済状況の変動による影響を受け、翌連結会計年度以降に繰延税金資産を認識する金額が影響を受ける可能性があります。
② 経営成績の分析
a. 売上高
当連結会計年度は、売上高が59,643百万円と前連結会計年度に比べて10.8%の減収となりました。半導体需要が拡大する中、設備事業は半導体樹脂封止装置や金型が年間を通じて好調を維持したものの、世界的な景気後退懸念の高まりを背景に情報端末等の需要が減少したことを受け低迷した電気・電子部品事業と、半導体不足やサプライチェーンの混乱に起因する自動車メーカーの生産停滞が続いたことで、センサやコネクタ等の部品需要が減少した自動車部品事業の売上高を補うまでには至らず、全体の売上高は前年から大きく減少しました。
b. 売上総利益
売上総利益は18,095百万円と前連結会計年度に比べて19.8%の減益となりました。上記の要因による売上高減少に加え、それに起因する工場稼働損が増加し、全体の売上総利益は前年から大きく減少しました。
c. 営業利益
営業利益は978百万円と前連結会計年度に比べて85.8%の減益となりました。上記の要因による売上総利益の減少に加え、売上高の減少に伴い販売手数料等の費用は減少している一方で、当社が今後の重点事業と位置付けるデータセンターや、基地局等のデジタルインフラ向けに必要とされる高性能のコネクタに関する研究開発、営業活動の強化、またそれらに関する人材育成の強化、拠点の集約・整備等、将来に向けたそれらの販売費及び一般管理費が増加したことも要因です。また、子会社の取得により発生した当該法人における販管費やのれんの償却費等も含まれており、期初計画には含まれていなかった増加要因です。
d. 経常利益
経常利益は2,120百万円と前連結会計年度に比べて72.5%の減益となりました。債権債務の期末評価替えによる為替差益が発生したものの、上記の要因による売上総利益の減少が主な要因です。
e. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円と前連結会計年度に比べて97.2%の減益となりました。上記の要因による売上総利益の減少に加え、固定資産の減損損失計上や売却、投資有価証券の売却を実施しており、特別損失が増加したことも減益の要因です。
③ 財政状態の分析
当社グループは、適切な流動性の維持、事業活動のための資金確保及び健全なバランスシートの維持を考慮し、体質を強化すべく財務の運営にあたっております。
当連結会計年度末の財政状態の分析については、上記「(1) 経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しております。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、市場の求める新製品開発を進めるとともにそれらの新製品開発を支えるための生産設備の開発並びに増強・更新投資を継続して行っております。また、研究開発や教育の総合拠点の新設にも注力しております。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
運転資金及び設備投資資金については、自己資金及び借入によって安定的に確保することを基本方針としております。なお、当連結会計年度末の借入金残高は17,656百万円(前年同期比920百万円増)となっております。
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