【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の概況
当社グループは、2030年に向けた中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」を掲げています。2022年4月より2025年3月までの3年間を対象とする中期経営計画においては、①経営基盤(ガバナンス)の強化、②アジア・北米での展開を加速、③国内の深掘りと新領域への挑戦、④サステナブル経営の推進を基本方針として、持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。
当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)においては、新型コロナウイルス感染症による社会影響が緩和される一方、原材料価格およびエネルギー価格の高騰や急激な為替変動など、事業環境が大きく変化する状況が続きました。
このような状況の中、当連結会計年度の売上高は、『国内食品事業』、『国内化成品その他事業』、『海外事業』のいずれの事業も前期を上回る実績を確保し、887億50百万円(前期比95億19百万円、12.0%増)となりました。
利益面では、油脂関係や輸入原料などの原材料価格およびエネルギー価格高騰の影響を受けましたが、海外事業において価格改定が進んだことや、国内食品事業において広告宣伝費を効率的に使用した結果、営業利益は71億58百万円(前期比13億18百万円、22.6%増)、経常利益は77億23百万円(前期比15億40百万円、24.9%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に当社の連結子会社であった青島福生食品有限公司の全持分の譲渡による関係会社出資金売却益の計上および繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額の計上があったことなどにより前期から減少し、64億14百万円(前期比151億68百万円、70.3%減)となりました。
セグメント毎の経営成績の概況
〔国内食品事業〕
『家庭用食品』の売上高は、前期を下回りました。海藻商品では2022年9月発売の新商品「ふりかけるザクザクわかめ 韓国風ごま油風味」が好調に推移した一方、乾燥わかめ「ふえるわかめちゃん®」およびわかめスープは価格改定による数量減少の影響があり、売上高は前期を下回りました。ドレッシングは春夏にTVCMや「リケンのノンオイル セレクティ®」リニューアルキャンペーンなどのプロモーション活動を展開しましたが、食品値上げによる節約志向の高まりを受け、売上高は前期を下回りました。化学調味料・食塩無添加のだしの素「素材力だし®」は価格改定後にTVCM放映による需要喚起と顧客層の拡大を図った結果、売上高は前期を上回りました。
『業務用食品』の売上高は、前期を上回りました。原材料価格などの高騰を受けた価格改定や商品の見直しに加え、中食市場および老健市場への提案を強化しました。行動制限の緩和による外食産業向けの需要回復も寄与し、調味料類を中心に販売が伸長しました。
『加工食品用原料等』の売上高は、前期を上回りました。価格改定を進める一方で、原料の供給不安や食品ロス問題への対応など多様化する顧客ニーズに対応し、食品用改良剤の提案を進めました。また、ビタミンや機能性食品用原料の販売が好調に推移しました。
利益面では、原材料価格やエネルギー価格の高騰の影響を価格改定でカバーするには至らず、営業利益は前期を下回りました。
この結果、当セグメントの売上高は、前期から40億56百万円(7.5%)増加した581億86百万円となり、営業利益は45億93百万円(前期比3億44百万円減)となりました。
〔国内化成品その他事業〕
『化成品(改良剤)』では、化学工業用分野(プラスチック・食品用包材・農業用フィルム・ゴム製品・化粧品など)において、顧客ニーズをとらえたソリューションビジネスを展開しています。原材料価格の高騰に伴う価格改定を推進したことから売上高は前期を上回りましたが、化成品業界における需要減少の影響により販売数量が減少し、営業利益は前期を大幅に下回りました。
『その他』の事業では、飼料用油脂の売上が前期を上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は、前期から4億13百万円(6.3%)増加した70億31百万円となり、営業利益は2億47百万円(前期比3億54百万円減)となりました。
〔海外事業〕
海外事業では、主に食品用改良剤、化成品用改良剤を世界各地に販売しています。原材料価格や物流コストが高水準で推移しましたが、価格改定や為替影響による増収効果により、売上高および営業利益ともに前期を大幅に上回りました。第3四半期以降は改良剤の原料となる油脂の相場下落や海外景気の下振れに合わせた対応が必要になるなど事業環境は変化しましたが、日本の「アプリケーション&イノベーションセンター」の技術スタッフによる海外顧客への直接提案の再開など、変化に対応した活動を行いました。地域別の売上高および営業利益はアジア、北米、ヨーロッパのいずれも前期を上回りましたが、アジアでは販売数量が前期を下回りました。
この結果、当セグメントの売上高は、前期から52億28百万円(26.2%)増加した251億55百万円となり、営業利益は26億88百万円(前期比19億82百万円増)となりました。
なお、前期実績には当社の連結子会社であった青島福生食品有限公司の実績(売上高3億99百万円、営業損失6億54百万円)が含まれています。
中期経営計画との比較分析
当社グループは2022年4月より2025年3月までの3年間を対象として「中期経営計画」を策定しており、当連結会計年度は初年度にあたります。
当連結会計年度は、売上高860億円、営業利益57億円、経常利益61億円、親会社株主に帰属する当期純利益47億円を目標としておりました。
売上高は国内食品事業では家庭用食品のドレッシング、乾燥わかめ等の販売が苦戦を強いられました。一方で、業務用食品では外食産業向け需要が回復傾向にあることや原材料価格などの高騰を受けた価格改定を推進し、加工食品用原料等では価格改定の推進に加えビタミンや機能性食品用原料の販売が好調に推移しました。その結果、国内食品事業は目標を上回る実績となりました。また、国内化成品その他事業では価格改定を推進しましたが関係先業界の需要の冷え込みもあり、目標を下回る実績となりました。一方、海外事業では価格改定の浸透および価格の維持に加え、為替影響による増収効果もあり、目標を大きく上回りました。その結果、連結全体では887億50百万円と目標を上回りました。
営業利益は国内および海外事業において引き続き原材料価格およびエネルギー価格上昇の影響を受け、価格改定の推進および経費の効率化を進めました。国内化成品その他事業では売上が振るわず目標を下回りましたが、国内食品事業、海外事業は目標を上回りました。その結果、連結全体では、71億58百万円と目標を上回りました。
また、経常利益は77億23百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は64億14百万円となり、ともに目標を上回りました。
目標とする経営指標との比較分析
当社グループは、持続的成長と資本効率向上の尺度として自己資本利益率(ROE)の向上を追求しております。第89期(中期経営計画最終年度)のROE8.0%以上を目指し取組みを推進いたします。
当連結会計年度のROEは、海外事業の営業利益が目標を大きく上回ったこと等が寄与し、親会社株主に帰属する当期純利益が目標を上回った結果、9.3%と中期経営計画の目標を上回りました。引き続き、当該指標の改善に取り組んでまいります。
(2)財政状態の概況
当連結会計年度末の総資産は1,052億23百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億62百万円増加しました。主な増加は、棚卸資産26億58百万円、現金及び預金18億53百万円、主な減少は、投資有価証券12億80百万円、機械装置及び運搬具10億13百万円であります。
負債は338億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億69百万円減少しました。主な増加は、未払法人税等9億37百万円、主な減少は、長期借入金26億6百万円、その他流動負債5億78百万円であります。
純資産は713億71百万円となり、前連結会計年度末に比べ48億32百万円増加しました。主な要因として、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上で64億14百万円増加し、剰余金の配当15億83百万円により減少したことによります。また、自己株式の消却により、資本剰余金が6億5百万円、利益剰余金が115億27百万円、自己株式が121億33百万円それぞれ減少しております。
(3)キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は166億56百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億92百万円増加しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは78億35百万円の収入となりました。主な増加は、税金等調整前当期純利益78億57百万円、減価償却費37億18百万円であり、主な減少は、棚卸資産の増加額24億59百万円、売上債権の増加額11億40百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは20億34百万円の支出となりました。主な増加は、投資有価証券の売却による収入3億4百万円であり、主な減少は、有形固定資産の取得による支出21億12百万円であります。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは58億円の純収入となっております。
財務活動によるキャッシュ・フローは45億78百万円の支出となりました。主な減少は、長期借入金の返済による支出26億6百万円、配当金の支払額15億82百万円であります。
当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる原材料費やエネルギー費、営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発などであります。資金調達は主としてフリー・キャッシュ・フロー及び銀行借入により十分な資金を確保しております。これらに加えて、取引銀行と借入枠60億円のコミットメントライン契約を締結することにより財務の安定性及び流動性を補完しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(5)生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
国内食品事業
56,864
107.6
国内化成品その他事業
6,465
104.3
海外事業
23,513
123.2
合計
86,842
111.1
(注)金額は生産者販売価格で算出しており、セグメント間取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当社グループは一部の製品について受注生産を行っておりますがウエイトも小さく、大部分の製品は販売計画に基づく生産計画に従った見込生産を主体としております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
国内食品事業
58,186
107.5
国内化成品その他事業
7,031
106.3
海外事業
23,532
127.3
合計
88,750
112.0
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
2.セグメントの各事業内容は次のとおりであります。
国内食品事業……………………一般家庭向け加工食品、業務用市場向け加工食品、食品業界向け加工食品用原料・食品用改良剤・ビタミンなどの製造、販売
国内化成品その他事業…………化成品用改良剤、飼料用添加物などの製造、販売
海外事業…………………………食品用改良剤、化成品用改良剤、エキス・調味料類などの製造、販売
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。