【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社3社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の概要当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売収入につきまして製品売上高に計上しております。アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下ACRLといいます。)において希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査を実施しており、手数料収入に計上しております。この結果、当連結会計年度における事業収益は67百万円(前期比2百万円(+4.5%)の増収)、経常損失は146億10百万円(前年同期の経常損失は135億88百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は147億14百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は136億75百万円)となっております。財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は388億20百万円(前連結会計年度末比66億35百万円の減少)となりました。現金及び預金は事業費用への充当等により110億35百万円(前連結会計年度末比68億64百万円の減少)となりました。負債は83億95百万円(前連結会計年度末比15億74百万円の増加)となりました。純資産は304億25百万円(前連結会計年度末比82億9百万円の減少)となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ68億66百万円減少し、109億69百万円となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、112億14百万円(前年同期は113億80百万円の減少)となりました。のれん償却費を28億83百万円、減損損失を1億4百万円計上し、前渡金が14億13百万円減少、棚卸資産が2億15百万円減少、前受金が6億44百万円増加しましたが、税金等調整前当期純損失147億16百万円に加え、為替差益を13億31百万円計上し、仕入債務が1億85百万円減少、未払金が1億30百万円減少しております。その結果、前年同期と比べ、1億66百万円の支出減少となっております。(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、97百万円(前年同期は1億54百万円の減少)となりました。ACRLの改修工事等により、有形固定資産の取得による支出が19百万円発生しております。MyBiotics社の転換社債への支出により、投資有価証券の取得による支出が74百万円発生しております。(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結累計会計年度における財務活動による資金の増加は、35億72百万円(前年同期は173億78百万円の増加)となりました。2022年10月12日にCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第42回新株予約権(第三者割当て)を発行し、新株予約権の発行による収入が50百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入が35億21百万円発生しております。
③ 生産、受注及び販売の実績a. 生産実績当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
医薬品
―
―
合計
―
―
b. 受注実績当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
医薬品
67,061
+4.5
―
―
合計
67,061
+4.5
―
―
c. 販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
医薬品
67,061
+4.5
合計
67,061
+4.5
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会
29,478
46.0
55,446
82.7
田辺三菱製薬株式会社
34,669
54.0
11,614
17.3
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表及び注記事項等の作成上、必要な会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループは、2019年度に国内の慢性動脈閉塞症における潰瘍に対する条件及び期限付き製造販売承認を取得し、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」として販売を行っております。また、ACRLにおいて開始した希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査は順調に受注を得ております。「コラテジェン®」につきましては、国内において本承認取得を目指し製造販売後承認条件評価を進めるとともに、米国においては下肢潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験を実施し目標60例の投与を完了しております。2022年5月にEiger BioPharmaceuticals Inc. (以下「Eiger社」といいます)と、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(以下「HGPS」といいます)とプロジェロイド・ラミノパチー(以下「PL」といいます)を適応症とする治療薬であるZokinvy(一般名:ロナファルニブ)について締結した日本における独占販売契約に基づき、承認取得の準備を進めております。新型コロナウイルス感染症(武漢型)予防DNAワクチン(以下「新型コロナワクチン」といいます)は、第Ⅰ/Ⅱ相試験において、安全性は確認されたものの、有効性は期待する水準に至らなかったことから、開発を中止することといたしました。一方、変異株に対する経鼻投与製剤のワクチンについて、スタンフォード大学との共同開発を開始いたしました。Vasomune Therapeutics, Inc.(以下「Vasomune社」といいます)と共同開発を進めているTie2受容体アゴニストは、新型コロナウイルス感染症による肺炎を対象として前期第Ⅱ相臨床試験を行っておりましたが、重症化しにくいオミクロン株への置き換わりが急速に進んだことにより、対象をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に広げ、臨床試験を米国及び南米で継続的に進めております。これらの既存プロジェクトに加え、当社グループはゲノム編集における先進技術を持つ子会社のEmendoBio Inc.(以下「Emendo社」といいます)において、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集で米国における臨床試験に向けて準備を進めております。今後も、自社プロジェクトに加え、外部からの導入、戦略的提携先との共同開発や他社への資本参加等により開発品パイプライン拡充を積極的に進め、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指してまいります。当社グループは、創薬系ベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。 当連結会計年度の事業収益は前年同期に比べ2百万円増加し67百万円(前年同期比4.5%増)となりました。当社グループでは、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の条件及び期限付製造販売の承認を取得し、2019年9月から田辺三菱製薬より販売しておりますが、当面の治療に必要な数量を前年度中に概ね出荷完了しているため、当連結会計年度においての製品売上高は11百万円(前年同期比23百万円の減少)となりました。一方、ACRLにおいて前2021年度第3四半期連結会計期間より実施している希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査は安定的に推移し、手数料収入として55百万円(同25百万円の増加)を計上いたしました。 当連結会計年度における事業費用は、前年同期に比べ6億87百万円増加し、163億83百万円(同4.4%増)となりました。 売上原価は、前年同期に比べ37百万円増加し、93百万円(同65.5%増)となりました。当連結会計年度における「コラテジェン®」の出荷本数は前年同期より減少しましたが、使用期限切れによる廃棄が見込まれる製品の評価損を計上したことにより製品売上原価が前年同期に比べ4百万円増加し、25百万円(同23.9%増)となりました。ACRLにおける希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査にかかる原価は、受託数の増加により前年同期に比べ32百万円増加し、68百万円(同89.5%増)となっております。 研究開発費は、前年同期に比べ2億15百万円増加し、109億99百万円(同2.0%増)となりました。Emendo社における円安基調に伴う為替換算による費用増加に加え、ゲノム編集治療の開発費用の増加及びVasomune社との共同開発品であるTie2受容体アゴニストについて共同開発費当社負担分を計上したこと等により、外注費が3億54百万円増加しております。また、主にEmendo社の人員の増加により、給料手当が2億86百万円増加しております。一方、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの目標症例の投与が完了したことにより、研究用材料費が2億67百万円減少しております。また、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの研究にかかる研究用消耗品等の減少により、消耗品費が3億14百万円減少しております。当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業は先行投資が続きますが、提携戦略などにより財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「5 研究開発活動」をご参照ください。 販売費及び一般管理費は前年同期に比べ4億34百万円増加し、52億90百万円(同9.0%増)となりました。為替の円安に伴い、Emendo社買収に伴うのれん償却額が前年同期より4億76百万円増加しております。また、Emendo社における事務所家賃の増加により、地代家賃が1億1百万円増加しております。一方、Emendo社に関連する弁護士等専門家及びコンサルタントへの報酬が減少したため、支払手数料が前年同期より1億3百万円減少しております。
この結果、当連結会計年度の営業損失は前年同期に比べ6億84百万円拡大し、163億16百万円(前年同期の営業損失は156億32百万円)となりました。 当連結会計年度の経常損失は前年同期に比べ10億21百万円拡大し、146億10百万円(前年同期の経常損失は135億88百万円)となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」の助成金に関して、すでに入金が行われ前受金に計上しておりましたが、当連結会計年度において2021年度分の確定検査結果通知を受領したことから、1億18百万円を前受金から補助金収入に振替えております。また、Vasomune社が米国及びカナダにおいて獲得した助成金について、当社開発費負担分に応じて2億75百万円を受領し、補助金収入に計上しております。この結果、補助金収入は3億93百万円となりました。さらに、為替の円安に伴い、外貨預金及びEmendo社への貸付金の評価替を行った結果、為替差益が13億22百万円発生しております(前年同期は5億99百万円の為替差益)。当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は、10億39百万円拡大し、147億14百万円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は136億75百万円)となりました。前年同期においては、ストックオプションの権利行使期間終了による権利失効に伴い新株予約権戻入益を32百万円計上しておりましたが、当期においては3百万円の発生となりました。当社が保有する固定資産につきまして、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、投資額と投資期間全体を通じた回収可能額について比較検討した結果、「医薬品開発ビジネス事業」の固定資産につき1億4百万円を減損損失として計上しております。当社が保有する投資有価証券について、簿価に比べて時価が著しく下落したため、減損処理による投資有価証券評価損6百万円を計上しております(前年同期は1億79百万円の計上)。当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ66億35百万円減少し、388億20百万円となりました。流動資産は85億29百万円減少し、128億96百万円となっております。2022年10月12日に発行したCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第42回新株予約権(第三者割当て)について2022年12月末日までにその一部が行使され、35億89百万円を調達いたしました。また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より助成金7億74百万円の入金がありましたが、当期事業費用への充当により、現金及び預金は68億64百万円減少し、110億35百万円となりました。余剰在庫の評価損を計上したことに伴い、原材料及び貯蔵品が1億89百万円減少して10億4百万円となりました。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造が終了したことに伴い、前渡金が14億10百万円減少して3億3百万円となりました。 当連結会計年度末の固定資産は18億94百万円増加し、259億24百万円となっております。Emendo社において米国会計基準ASU第2016-02号「リース」を適用したことにより、使用権資産を13億18百万円計上しております。のれんが前連結会計年度末に比べ5億78百万円増加して232億54百万円となりました。のれんの償却による28億83百万円の減少はありましたが、円安による為替変動の影響により米ドル建のれんの換算額が34億62百万円増加したことによります。 当連結会計年度末の負債は前連結会計年度末に比べ15億74百万円増加し、83億95百万円となりました。Emendo社において米国会計基準ASU第2016-02号「リース」を適用したことにより、リース債務を流動負債に1億60百万円、固定負債に9億94百万円計上しております。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に関する助成金が入金され、前受金が6億44百万円増加しております。前年度の費用の支払により、買掛金が1億67百万円減少しております。 当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末に比べ82億9百万円減少し、304億25百万円となりました。Cantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第42回新株予約権(第三者割当て)の行使により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ17億86百万円増加しております。親会社株主に帰属する当期純損失147億14百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。主にのれんに係る為替変動の影響により、為替換算調整勘定が29億37百万円増加しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性当社グループの事業活動における資金需要は、プロジェクト推進のための研究開発費需要と会社運営のための運転資金需要があります。これらの資金需要に対して、主に新株予約権によるエクイティファイナンスによって資金調達を行っております。