【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)当期の経営成績の概況
■業界動向と当社の業績
当社グループは、総合医療システム及び医療機器を自社開発し、大学病院をリードユーザーに、全国の大規模病院や中小規模医療機関へ提供すると同時に、省庁や自治体、公社などへ向けたオフィスシステムの提案・導入や、ヘルステック、医療クラウド領域における新規事業に取り組んでおります。当領域では新型コロナウイルス感染症の影響により、医療機関のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速され、オンライン診療の導入や医療用ロボットの活用など、これまで以上に情報通信技術やAIを駆使した非接触型の診療が広まりつつあります。また、日本政府が2022年を医療DX元年とし、医療ビッグデータの利活用を産官学一体となって推し進めていくことを掲げ、方々で取り組みが活発化していることから、医療機関における最新技術を活用したシステムの積極的な導入が、益々期待されています。
2022年もシステム更新の需要は安定した一方で、感染症の流行が長期間に及んだことから、医療機関の設備投資意欲は感染症対策に関するものへの比重が高くなっていました。しかしながら重症化リスクの減少、感染症分類の「2類」から「5類」への引き下げや脱マスクの議論活発化など、世の中はパンデミック以前の日常生活へ少しずつ戻りつつあることから、各施設の感染対策の影響を受けて限定的であった当社の営業活動は、感染症流行以前と同様の水準に大方戻っております。また、医療機関のみならず、自治体や公社など公共セクターにおいてもDXソリューションの導入事例は年々増加しているため、今後も当社オフィスシステムの更なる需要拡大が見込まれます。
2022年は安定的な売上高の維持と利益率の更なる向上を主たる目標とし、医療機関に対するパッケージ製品の販売や新しいサービスの開発、公共セクターにおける新規顧客の獲得などに優先的に注力いたしました。この結果、当連結会計年度の経営成績は期初予想に沿って推移し、売上高は4,541,242千円(対前年同期比8.6%減)、営業利益は1,028,522千円(対前年同期比11.7%増)、経常利益は1,055,708千円(対前年同期比11.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は722,779千円(対前年同期比13.6%増)となりました。
なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等)セグメント情報 2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、その他の項目の金額の算定方法」に記載しております。
■セグメント別の状況
≪システム開発事業≫
システム開発事業の経営成績は、以下のとおりです。
(単位:千円)
2021年12月期
2022年12月期
増減額
増減率
売上高
4,922,640
4,473,474
△449,166
△9.1%
営業利益
1,137,726
1,233,811
96,084
8.4%
〇 医療システム
画像ファイリングシステム「Claio」や診療記事記載システム「C-Note」、文書管理システム「DocuMaker」に代表される当社製品は、高度な医療を提供する大規模病院において高い評価と安定したシェアを維持し、病院の中核システムとして診療に欠かせない重要な役割を担っております。2022年は既存・新規を問わず国内の顧客へのパッケージ製品の販売に注力し、当連結会計年度は病院案件48件及び診療所案件85件の新規導入・追加導入及びシステム更新を実施し、4,352,187千円の売上を達成いたしました。
協業パートナーである豊田通商株式会社(本社:愛知県)と共同で取り組んでいるSakra World Hospital(所在地:インド、バンガロール)へのClaio導入プロジェクトは、当第4四半期中に現地での試験運用を開始し、実稼働に向け調整を行いました。引き続き、現地の実情に即したシステム運用ができるよう検討を重ねてまいります。またインドでのClaioやC-Noteの販売を見据え、プロモーション・販売ルート・保守体制等の協議も行いました。
クラウドソリューションの提供を主業とする、子会社のフィッティングクラウド株式会社は、2022年より総合病院における次世代患者案内アプリのクラウド基盤を構築・提供を開始し、2023年1月に京都大学医学部附属病院にて本アプリの本稼働を開始いたしました。また症例データ収集システムやクラウドベース仮想ブラウジング環境の開発を行う中で新製品を3つリリースし、関連学会において各種サービスの展示・販売促進を実施いたしました。
〇 オフィスシステム
当分野では文書管理システム「DocuMaker Office」を中心とし、当該製品の強みが生かせる省庁・自治体・公社及び医療機関をメインターゲットに、製品販売に取り組んでおります。DX推進の更なる加速により、これらメインターゲットが電子決裁や公文書管理システムの導入を進めていることから、省庁自治体向けパッケージ・医療機関向けパッケージともに問い合わせや商談件数は増加しております。
本製品の売上高は2022年度の目標に対し順調に推移し、当連結会計年度は27件の新規・追加導入等を実施し、121,286千円の売上を達成いたしました。なお、当第4四半期中には、東京都外郭団体にて1件が稼働するとともに、省庁外郭団体1件、自治体1件の導入が進行いたしました。「現場に寄り添い、顧客の抱える課題を見つけて解決策を提案する高いコンサル力」と「ユーザー目線に立った使いやすいシステム」が評価され、様々な公的機関で採用いただくに至りました。
2023年度の案件については、自治体等の予算が間も無く確定しプロポーザル等が順次行われる予定で、それ以降の商談も複数進行しております。今後も、自治体や独立行政法人、財団法人へ提案を行い、公文書管理や決裁業務の電子化を支援してまいります。
また、医療領域においても当社の既存ユーザーである大規模・中規模医療機関を中心に高い需要を見込んでおり、当第4四半期中には、大規模医療機関にて2件の導入が進行いたしました。今後も病院のバックオフィスを支援するクラウド型サービスとして、多くの引き合いに応えてまいります。
≪ヘルステック事業≫
ヘルステック事業の経営成績は、以下のとおりです。
(単位:千円)
2021年12月期
2022年12月期
増減額
増減率
売上高
49,215
69,253
20,037
40.7%
営業損失(△)
△217,006
△205,288
–
–
当セグメントにおいては、視線分析型視野計「GAP」(注1)及び「GAP-screener」(注2)の国内販売や海外展開計画の策定に注力いたしました。本製品は、元来の検査手法とは全く異なるアプローチを用いて視野を測定することで可用性を高め、初期の自覚症状に乏しい緑内障などの網膜疾患の早期発見率の向上にも寄与する、安価で画期的なウェアラブルデバイスです。これまで検査の際に必須であった暗所の確保を不要とし、検査時間の短縮や患者の負担軽減を実現いたしました。更に、人間ドックや健診施設での利用を進めることで網膜疾患初期の視野データを取得・分析し、国内外の研究開発機関と共有することで、製薬や生命保険領域など様々なフィールドでの技術・サービス革新への寄与が期待されます。
本製品の国内の出荷台数は、2022年12月末で、過年度販売分を含め累計35台となりました。大学病院やクリニックへ販売を進める一方、健診施設に対しては検査毎の従量課金制を採用することで、オプション項目としての視野検査を実施いたしました。しかしながら、国内では十分な営業体制が構築できなかったことと、海外においては欧州医療機器規則(EU-MDR)の届出の遅延が発生し、2022年は国内・海外ともに当社が目指していた販売台数には届かない結果となりました。このことから、本事業においては当初の販売計画より約1年から1年半程の遅れが発生しております。リソースの補充を行い精緻なスケジューリングを行った上で、引き続き国内・海外ともに拡販を進めてまいります。
加えて、本製品が視野異常のみならず早期認知症(MCI)の発見にも有用であることから、引き続き京都大学と共同研究を進めております。日本医療研究開発機構(AMED)の令和3年度医工連携・人工知能実装研究事業において「視点反応・眼球運動のデジタルフェノタイプを活用した軽度認知機能異常スクリーニングプログラムの研究開発」が採択され、今後数年をかけ新たな医療機器として上市される予定です。高齢化社会が抱える多くの問題を解決すべく、様々な角度から研究開発やコア技術の向上、製品開発に取り組んでまいります。
(注1)ゲイズ・アナライジング・ペリメーター GAP、医療機器製造販売届出番号 38B2X10003000002
(注2)ゲイズ・アナライジング・ペリメーター GAP-screener、医療機器製造販売届出番号 38B2X10003000003
(2)財政状態
(単位:千円)
2021年12月期
2022年12月期
増減額
資産合計
4,556,563
4,980,780
424,216
負債合計
1,044,029
937,842
△106,186
純資産合計
3,512,533
4,042,937
530,403
(資産)
当連結会計年度末における資産の残高は4,980,780千円となり、前連結会計年度末より424,216千円増加しました。
① 流動資産
流動資産は、現金及び預金の増加241,772千円及び契約資産の増加276,637千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高4,128,302千円(前連結会計年度末比422,700千円増)となりました。
② 固定資産
固定資産は、本社の移転に伴う建物の増加22,575千円による有形固定資産の増加32,031千円、ソフトウエアの増加12,404千円による無形固定資産の増加12,404千円と、敷金の減少79,493千円による投資その他の資産の減少42,920千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高852,477千円(前連結会計年度末比1,516千円増)となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は937,842千円となり、前連結会計年度末より106,186千円減少しました。
① 流動負債
流動負債は、買掛金の減少142,418千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高654,002千円(前連結会計年度末比171,723千円減)となりました。
② 固定負債
固定負債は、株式給付引当金の増加23,173千円を主たる要因とし、当連結会計年度末残高283,839千円(前連結会計年度末比65,536千円増)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、4,042,937千円となり、前連結会計年度末より530,403千円増加しました。これは主に利益剰余金の増加527,745千円によるものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
(単位:千円)
2021年12月期
2022年12月期
増減額
営業活動によるキャッシュ・フロー
750,353
693,848
△56,504
投資活動によるキャッシュ・フロー
△493,367
△230,160
263,207
財務活動によるキャッシュ・フロー
△183,341
△142,020
41,321
現金及び現金同等物の増減額
73,644
321,668
248,023
現金及び現金同等物の期首残高
1,972,330
2,045,974
73,644
連結除外に伴う現金及び
現金同等物の減少額
-
△79,895
△79,895
現金及び現金同等物の期末残高
2,045,974
2,287,747
241,772
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、2,287,747千円(前連結会計年度末比11.8%増)となり、前連結会計年度末に比べて241,772千円増加しました。各キャッシュ・フローの状況と増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ56,504千円減少し、693,848千円となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益が1,060,451千円に対し、法人税等の支払額369,723千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ263,207千円減少し、230,160千円となりました。これは主として、無形固定資産(主に市場販売目的のソフトウエア)の取得による支出240,633千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ41,321千円減少し、142,020千円となりました。これは主として、短期借入れによる収入100,000千円に対し、配当金の支払いによる支出232,020千円によるものであります。
(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
主な資金需要は、研究開発に係る人件費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。
運転資金は原則として営業活動によるキャッシュ・フローにより賄われておりますが、状況に応じて直接金融並びに間接金融を利用していく方針であります。
① 有利子負債
該当事項はありません。
② コミットメントライン
当社は、取引銀行との間でコミットメントラインの設定はしておりません。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(6)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、成長性・収益性については売上高経常利益率を、資本効率についてはROE(株主資本利益率)を経営の重点指標としており、これらの改善及び向上を行うことを目標としております。
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し、企業価値を最大限に高めるべく努めております。
今後も当社グループでは、「価値ある技術創造で社会を豊かにする」という企業理念のもと、経営の効率性、健全性及び透明性を確保し、事業資本の最大化及び株主の皆様や顧客をはじめ社会から高い信頼と評価を得る会社の実現を目指してまいります。
(7)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
システム開発事業
1,373,110
91.7
ヘルステック事業
162,998
91.7
合計
1,536,109
91.7
(注)金額は当期総製造費用によるものであります。
② 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
システム開発事業
3,409,475
95.3
1,090,061
135.2
ヘルステック事業
120,049
134.7
23,628
84.7
合計
3,529,524
96.3
1,113,690
133.5
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
システム開発事業
4,473,474
90.9
ヘルステック事業
69,253
140.7
調整額(注)1
△1,485
50.0
合計
4,541,242
91.4
(注)1.調整額は、セグメント間取引消去によるものであります。
2.最近2連結会計年度における主な販売先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
日本電気株式会社
591,114
11.9
-
-
3.当連結会計年度の日本電気株式会社については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
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