【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の概要
①財政状態
(資産)
当事業年度末の流動資産は、前事業年度末に比べて224,400千円増加し、1,231,937千円となりました。これは、未収消費税等が17,657千円減少した一方で、現金及び預金が225,536千円増加したことなどによります。
当事業年度末の固定資産は、前事業年度末に比べて88,688千円減少し、311,983千円となりました。これは、関係会社出資金が81,536千円、有形固定資産が7,237千円減少したことなどによります。
この結果、当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べて135,711千円増加し、1,543,920千円となりました。
(負債)
当事業年度末の流動負債は、前事業年度末に比べて9,410千円増加し、180,695千円となりました。これは、未払金が51,247千円減少した一方で、前受金が86,982千円増加したことなどによります。
当事業年度末の固定負債は、前事業年度末に比べて7,409千円減少し、184,887千円となりました。これは、長期借入金が7,500千円減少したことなどによります。
この結果、当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べて2,001千円増加し、365,582千円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べて133,710千円増加し、1,178,338千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ446,957千円増加した一方で、当期純損失を759,680千円計上したことなどによります。
②経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の第7波・第8波到来による社会・経済活動の落ち込みから緩やかな回復傾向が見られ、政府が2023年5月に感染症法上の分類を季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を正式決定したことから、今後の経済回復に明るい兆しが見え始めております。
一方で世界的なインフレや金融引き締め政策の影響、また、ウクライナにおける地政学リスクの長期化に伴う資源価格高騰やサプライチェーンに与える悪影響などにより、経済の下振れリスクの懸念が依然として継続しております。
当社はこのような環境の下、コスト削減による財務体質の改善と安定的な財務基盤の確立を図りつつ、再生医療支援事業及び細胞シート再生医療事業における活動を推進いたしました。
この結果、当事業年度における売上高は126,427千円(前事業年度比21.8%の減少)、営業損失は743,215千円(前事業年度比120,891千円の減少)、経常損失は754,274千円(前事業年度比111,532千円の減少)、当期純損失は759,680千円(前事業年度比153,191千円の減少)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、当事業年度より非連結決算に移行したことから、前事業年度のセグメント情報については記載しておりません。
(再生医療支援事業)細胞培養器材事業、製造受託など
細胞培養器材事業では、海外を中心とした継続的に拡大する細胞の大量回収に特化した新製品の需要に対応するため、フラスコ製品の研究開発をして参りましたが、2022年10月にUpCell®フラスコ製品を新発売いたしました。当該製品は、様々な感染症やがん疾患などの予防法や治療法を開発するための研究用細胞の大量培養を目的とした新たな市場への販売が可能であります。
これらの取り組みが、本格的に収益面に貢献するのは来期以降となりますが、中長期的に事業の成長と企業価値向上に資するものと認識しております。
販売面におきましては、器材製品の拡販に向けた既存代理店との更なる協業強化及び積極的な販売促進活動を行って参りましたが、特に海外売上が当初計画に対して未達となりました。
海外代理店を通じて海外市場へ販売している従来製品の販売実績は、新型コロナウイルス感染症の発生以前と比較し減少をしており、同感染症の拡大・継続の影響が想定以上に長期化した結果、海外代理店の在庫が増加することとなりました。現在は海外代理店の在庫調整が一段落し、当社の受注が回復していることから、2023年度12月期の売上は、当事業年度を上回る想定をしております。
再生医療製造受託事業では、再生医療等安全性確保法に基づき特定細胞加工物製造許可を取得した細胞培養センター(CPC)において、主に細胞シートの製造を受託しております。当事業年度においても、先進医療Bの治療が行われている共同研究先の東海大学から自己軟骨細胞シートの製造を受託しましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の第7波・第8波の影響などから、当初計画された手術の延期、中止等があり、年間3症例の売上に留まりました。
2023年も引き続き東海大学からの製造を受託する予定でありますが、他の医療機関からの新規受託案件の獲得にも注力して参ります。
以上のような結果、当事業年度における売上高は116,013千円、営業損失は90,308千円となりました。
(細胞シート再生医療事業)
細胞シート再生医療事業では、食道再生上皮シート及び同種軟骨細胞シートの細胞シート2品目の再生医療等製品の自社開発を中心とした研究開発を継続して推進しております。
食道再生上皮シートは医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の下、2020年10月に治験届を提出後、引き続き追加治験を実施しております。PMDAからの新たな指摘への検討に対しても取り組んでおり、2025年の製造販売承認申請に向けて活動を行っております。
同種軟骨細胞シートについては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)採択事業として「同種軟骨細胞シート(CLS2901C)の製品化に向けたセルバンク構築を含む企業治験開始のための研究開発」を引き続きその支援を受けながら開発を進めております。本採択は、東海大学の佐藤正人教授らが開発した同種軟骨細胞シートを用いた変形性膝関節症の治療法の技術を当社に移転し、商用セルバンクを構築し、早期の企業治験を開始するための研究開発を加速するものであります。
また、東海大学の佐藤正人教授らの研究グループによる、変形性膝関節症の臨床研究において、膝関節の軟骨欠損部へ同種軟骨細胞シートを移植した患者10名の全例で、術後一年の安全性及び有効性が確認され、その研究成果がネイチャー姉妹誌の『npj Regenerative Medicine』(オンラインジャーナル)に掲載されました。
当社ではこの研究成果をもとに、2023年春の治験届の提出、その後の製造販売承認取得に向けて、さらに開発を加速して参ります。
事業提携活動につきましては、複数の会社との事業提携及び共同研究開発契約の締結に向けた活動を積極的に行っております。今後も、引き続き新規の提携契約を獲得できるように努めてまいります。
以上のような活動の結果、売上高は10,414千円、営業損失は462,979千円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度より非連結決算へ移行したことから、キャッシュ・フローの状況について、前事業年度との比較は行っておりません。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、1,072,210千円となりました。当事業年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動に使用した資金は718,006千円となりました。これは、税引前当期純損失を758,730千円計上したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果獲得した資金は61,728千円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出15,590千円、関係会社の整理による収入77,318千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は881,814千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入880,765千円などによるものです。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。
この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
⑤生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
セグメント
当事業年度
(自
2022年1月1日
至
2022年12月31日)
前年同期比(%)
再生医療支援事業(千円)
45,363
-
細胞シート再生医療事業(千円)
1,033
-
合計(千円)
46,396
-
(注)当事業年度より非連結決算に移行したことから、前年同期比については記載しておりません。
(b)受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
(c)販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメント
当事業年度
(自
2022年1月1日
至
2022年12月31日)
前年同期比(%)
再生医療支援事業(千円)
116,013
-
細胞シート再生医療事業(千円)
10,414
-
合計(千円)
126,427
-
(注)1 当事業年度より非連結決算に移行したことから、前年同期比については記載しておりません。
2 当事業年度の主要な輸出先及び輸出販売高並びに割合は、次のとおりであります。
なお、( )内は販売実績に対する輸出高の割合であります。
輸出先
当事業年度
金額(千円)
割合(%)
欧州
43,146
86.4
アジア
6,813
13.6
合計
49,960
(39.5%)
100.0
3 当事業年度の主要な販売先及び販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
当事業年度
金額(千円)
割合(%)
フナコシ(株)
49,823
39.4
Thermo Fisher Scientific Inc.
43,146
34.1
学校法人東海大学
10,954
8.7
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、将来に関する事項は当事業年度年度末日現在において判断したものであり、リスクや不確実性を含んでいます。将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性もありますのでご留意ください。
①財政状態の分析
(資産)
当事業年度末の流動資産は、前事業年度末に比べて224,400千円増加し、1,231,937千円となりました。これは、未収消費税等が17,657千円減少した一方で、現金及び預金が225,536千円増加したことなどによります。
当事業年度末の固定資産は、前事業年度末に比べて88,688千円減少し、311,983千円となりました。これは、関係会社出資金が81,536千円、有形固定資産が7,237千円減少したことなどによります。
この結果、当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べて135,711千円増加し、1,543,920千円となりました。
(負債)
当事業年度末の流動負債は、前事業年度末に比べて9,410千円増加し、180,695千円となりました。これは、未払金が51,247千円減少した一方で、前受金が86,982千円増加したことなどによります。
当事業年度末の固定負債は、前事業年度末に比べて7,409千円減少し、184,887千円となりました。これは、長期借入金が7,500千円減少したことなどによります。
この結果、当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べて2,001千円増加し、365,582千円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べて133,710千円増加し、1,178,338千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ446,957千円増加した一方で、当期純損失を759,680千円計上したことなどによります。
②経営成績の分析
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、当事業年度より非連結決算に移行したことから、前事業年度のセグメント情報については記載しておりません。
細胞培養器材事業では、海外を中心とした継続的に拡大する細胞の大量回収に特化した新製品の需要に対応するため、フラスコ製品の研究開発をして参りましたが、2022年10月にUpCell®フラスコ製品を新発売いたしました。当該製品は、様々な感染症やがん疾患などの予防法や治療法を開発するための研究用細胞の大量培養を目的とした新たな市場への販売が可能であります。
これらの取り組みが、本格的に収益面に貢献するのは来期以降となりますが、中長期的に事業の成長と企業価値向上に資するものと認識しております。
販売面におきましては、器材製品の拡販に向けた既存代理店との更なる協業強化及び積極的な販売促進活動を行って参りましたが、特に海外売上が当初計画に対して未達となりました。
海外代理店を通じて海外市場へ販売している従来製品の販売実績は、新型コロナウイルス感染症の発生以前と比較し減少をしており、同感染症の拡大・継続の影響が想定以上に長期化した結果、海外代理店の在庫が増加することとなりました。現在は海外代理店の在庫調整が一段落し、当社の受注が回復していることから、2023年度12月期の売上は、当事業年度を上回る想定をしております。
再生医療製造受託事業では、再生医療等安全性確保法に基づき特定細胞加工物製造許可を取得した細胞培養センター(CPC)において、主に細胞シートの製造を受託しております。当事業年度においても、先進医療Bの治療が行われている共同研究先の東海大学から自己軟骨細胞シートの製造を受託しましたが、新型コロナ感染症拡大の第7波・第8波の影響などから、当初計画された手術の延期、中止等があり、年間3症例の売上に留まりました。
2023年も引き続き東海大学からの製造を受託する予定でありますが、他の医療機関からの新規受託案件の獲得にも注力して参ります。
以上のような結果、当事業年度における売上高は116,013千円、営業損失は90,308千円となりました。
細胞シート再生医療事業では、食道再生上皮シート及び同種軟骨細胞シートの細胞シート2品目の再生医療等製品の自社開発を中心とした研究開発を継続して推進しております。
食道再生上皮シートは医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の下、2020年10月に治験届を提出後、引き続き追加治験を実施しております。PMDAからの新たな指摘への検討に対しても取り組んでおり、2025年の製造販売承認申請に向けて活動を行っております。
同種軟骨細胞シートについては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)採択事業として「同種軟骨細胞シート(CLS2901C)の製品化に向けたセルバンク構築を含む企業治験開始のための研究開発」を引き続きその支援を受けながら開発を進めております。本採択は、東海大学の佐藤正人教授らが開発した同種軟骨細胞シートを用いた変形性膝関節症の治療法の技術を当社に移転し、商用セルバンクを構築し、早期の企業治験を開始するための研究開発を加速するものであります。
また、東海大学の佐藤正人教授らの研究グループによる、変形性膝関節症の臨床研究において、膝関節の軟骨欠損部へ同種軟骨細胞シートを移植した患者10名の全例で、術後一年の安全性及び有効性が確認され、その研究成果がネイチャー姉妹誌の『npj Regenerative Medicine』(オンラインジャーナル)に掲載されました。
当社ではこの研究成果をもとに、2023年春の治験届の提出、その後の製造販売承認取得に向けて、さらに開発を加速して参ります。
事業提携活動につきましては、複数の会社との事業提携及び共同研究開発契約の締結に向けた活動を積極的に行っております。今後も、引き続き新規の提携契約を獲得できるように努めてまいります。
以上のような活動の結果、売上高は10,414千円、営業損失は462,979千円となりました。
③キャッシュ・フローの分析
当事業年度より非連結決算へ移行したことから、キャッシュ・フローの状況について、前事業年度との比較は行っておりません。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、1,072,210千円となりました。当事業年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動に使用した資金は718,006千円となりました。これは、税引前当期純損失を758,730千円計上したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果獲得した資金は61,728千円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出15,590千円、関係会社の整理による収入77,318千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は881,814千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入880,765千円などによるものです。
④資本の財源及び資金の流動性
当社は引き続き細胞シート再生医療の実現に向けた研究開発投資を推進する予定であります。そのために必要となる今後の資金については、現有手許資金を充当する他、公的助成・補助の活用、エクイティ・ファイナンスを含めた金融的手法など様々な手段を活用して機動的に手当てを行う方針です。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は、細胞シート工学という日本発の革新的再生医療技術を基盤として様々な細胞シート再生医療等製品を開発し、その世界普及を目指しております。
当社の基盤技術である細胞シート工学は、バラバラの細胞から生体組織・臓器の基本単位となる「細胞シート」を生体外で人工的に作製することができる再生医療基盤技術です。
細胞シート再生医療については既に様々な組織の再生に関する臨床研究が実施されており、実際にヒト患者治療における基本的な安全性・有効性を示唆する科学的エビデンスが示され始めています。
また2014年11月に「医薬品医療機器法」並びに「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行され、日本における再生医療を取り巻く環境が大きく変化し、再生医療等製品の産業化が進みつつあります。この日本における大きな外部環境の変化を活かしつつ、上記概要の通り計画を推進して参ります。
⑥経営戦略の現状・問題認識と今後の方針について
上述⑤のような状況の中、この日本における大きな外部環境の変化を活かすべく、下記概要の通り計画を推進して参ります。
●日本で早期の食道再生上皮シートの製造販売承認申請を目指す
●自己軟骨再生シートは東海大学より先進医療に係る製造を受託。先進医療を見据えて治験実施
●日本発の細胞シート工学の世界展開のために事業提携を積極的に推進し収益の拡大を目指す。
●台湾・三顧股份有限公司(MetaTech(AP) Inc.)及び台湾合弁会社(日生細胞生技股份有限公司(Up Cell Biomedical Co.))との協業を継続し、収益機会獲得を目指す。
●再生医療支援製品の新製品開発及び研究用細胞の大量培養を目的とした新たな市場への製品供給並びに海外売上の拡大による需要増加に対応した生産体制・能力を充実、拡大し、更なる収益機会の拡大を目指す。
●受託製造、コンサルティング事業を推進し、更なる収益機会獲得を目指す。