【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、原材料・エネルギー価格をはじめとした物価上昇やウクライナ情勢の長期化、金融市場・為替動向の大幅な変動などによる景気下押しの圧力が強まりました。
このような環境の下、情報電子事業では主力のプロテクトフィルムにおいて、業界の生産調整の影響を大きく受けて前年同期比で減収となったものの、ウェルネス事業、環境ソリューション事業、建築・土木資材事業では増収を確保し、当社グループの売上は前年同期比で増収となりました。
損益面では、情報電子事業の減収影響や、原材料、エネルギーコスト増加の影響を大きく受けました。コスト増加に対しては生産効率の向上や価格転嫁を推進しておりますが、収益改善のタイムラグ並びに研究開発費や戦略費をはじめとする固定費が増加したことなどから、前年同期比で大幅な減益となりました。
この結果、当連結会計年度における業績は、売上高1,293億64百万円(前年同期比1.2%増)、営業利益58億82百万円(前年同期比43.1%減)、経常利益68億28百万円(前年同期比38.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益48億54百万円(前年同期比36.9%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
(ウェルネス事業)
医薬医療用包装材において海外子会社が売上を大きく伸ばし、バイオ医薬品等製造用シングルユースバッグ及び関連製品でも増収となりました。また、医療機器及び体外診断薬関連製品において、開発先行費用投入を進めております。
この結果、売上高は270億58百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益は13億12百万円(前年同期比37.7%減)となりました。
(環境ソリューション事業)
液体容器では海外子会社を中心に売上を着実に伸ばし、食品用包装材、生活用品向包装材でも前年同期を上回る売上を確保しました。一方、原材料やエネルギーコスト高騰の影響を大きく受けました。
この結果、売上高は387億61百万円(前年同期比10.1%増)、営業利益7億98百万円(前年同期比55.3%減)となりました。
(情報電子事業)
電子部材関連他については、第3四半期連結累計期間までは堅調に推移したものの、第4四半期連結会計期間に半導体市場の急激な冷え込みに見舞われた影響を大きく受け、減収となりました。ディスプレイ関連については、足許の需要は持ち直しつつあるものの、第2四半期連結会計期間から第3四半期連結会計期間に掛けて、パネル業界の生産調整の影響を受けたために主力のプロテクトフィルムは大幅に減収となりました。加えて、原材料やエネルギーコスト高騰の影響を大きく受けました。
この結果、売上高は424億89百万円(前年同期比12.5%減)、営業利益12億38百万円(前年同期比73.0%減)となりました。
(建築・土木資材事業)
土木資材関連については、トンネル用資材の売上が減少しました。建築資材関連においては、集合住宅向けボイドスラブ(床構造部材)の売上は前年を下回りましたが、煙突工事並びに空調用配管の売上は好調に推移したことから増収増益となりました。
この結果、売上高は210億54百万円(前年同期比5.0%増)、営業利益25億32百万円(前年同期比35.9%増)となりました。
前連結会計年度
当連結会計年度
前年同期比
金額
(百万円)
売上高比率
(%)
金額
(百万円)
売上高比率
(%)
増減額
(百万円)
増減率
(%)
売上高
127,819
100.0
129,364
100.0
1,545
1.2
ウェルネス
23,992
18.8
27,058
20.9
3,065
12.8
環境ソリューション
35,197
27.5
38,761
30.0
3,564
10.1
情報電子
48,570
38.0
42,489
32.8
△6,081
△12.5
建築・土木資材
20,058
15.7
21,054
16.3
996
5.0
営業利益
10,341
8.1
5,882
4.5
△4,459
△43.1
ウェルネス
2,107
8.8
1,312
4.9
△794
△37.7
環境ソリューション
1,785
5.1
798
2.1
△986
△55.3
情報電子
4,584
9.4
1,238
2.9
△3,346
△73.0
建築・土木資材
1,863
9.3
2,532
12.0
668
35.9
財政状態については、次のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は、売上債権が減少しましたが、有価証券や有形固定資産、棚卸資産が増加したことにより、前年度末に対して10億70百万円増加の1,284億40百万円となりました。
負債は、仕入債務が減少したことなどにより、前年度末に対して29億89百万円減少の、391億59百万円となりました。
純資産は、利益剰余金が増加したことに加え、円安の進行に伴い為替換算調整勘定が増加したことなどにより、前年度末に対して40億59百万円増加の892億81百万円となり、自己資本比率は63.9%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)の期末残高は、前連結会計年度末より24億72百万円増加して306億21百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とその主な増減理由は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により得られた資金は、83億65百万円(前年同期は113億96百万円の収入)となりました。
これは、仕入債務の減少、法人税等の支払などの資金減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益76億43百万円、減価償却費52億47百万円、売上債権の減少などの資金増加要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は、39億66百万円(前年同期は51億80百万円の支出)となりました。
これは、投資有価証券の売却などの資金増加要因があったものの、有形固定資産の取得49億98百万円などの資金減少要因があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は、24億45百万円(前年同期は27億65百万円の支出)となりました。
これは、配当金の支払や自己株式の取得などの資金減少要因があったことによるものです。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移は以下のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
57.7
61.4
61.8
61.9
63.9
時価ベースの自己資本比率(%)
53.5
51.4
73.0
55.9
46.6
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
0.4
0.4
0.3
0.2
0.4
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
228.8
149.8
512.0
617.0
178.4
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。
自己資本比率 自己資本÷総資産
時価ベースの自己資本比率 株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 有利子負債÷営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ 営業キャッシュ・フロー÷利払い
2.株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。
3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。
4.営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
ウェルネス(百万円)
26,003
13.8
環境ソリューション(百万円)
28,385
7.3
情報電子(百万円)
40,811
△14.4
建築・土木資材(百万円)
9,160
5.2
合計(百万円)
104,361
△1.3
(注)金額は販売価格によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
ウェルネス(百万円)
1,348
14.1
環境ソリューション(百万円)
10,446
14.4
情報電子(百万円)
1,201
△5.4
建築・土木資材(百万円)
12,057
4.7
合計(百万円)
25,054
8.4
(注)金額は仕入価格によっております。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
ウェルネス
29,014
10.8
8,019
△3.0
環境ソリューション
40,759
15.7
7,619
35.1
情報電子
41,501
△14.5
1,883
△34.2
建築・土木資材
20,967
0.6
9,940
△8.1
合計
132,243
1.1
27,462
△0.4
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
ウェルネス(百万円)
27,058
12.8
環境ソリューション(百万円)
38,761
10.1
情報電子(百万円)
42,489
△12.5
建築・土木資材(百万円)
21,054
5.0
合計(百万円)
129,364
1.2
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
財政状態及び経営成績の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況、②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、当社グループでは、以下を重要な経営指標と位置づけ、これらの向上を目指しております。
・営業利益
・営業利益率
・ROA(総資産営業利益率)
・ROIC(投下資本利益率)
・ROE(自己資本当期純利益率)
企業としての本来の事業活動の成果を示す営業利益及び営業利益率、投下資本の運用効率・収益性を測る指標
としてROA(総資産営業利益率)及びROIC(投下資本利益率)、株主重視の観点からROE(自己資本当
期純利益率)を選定しております。
2023年3月期を含む、過去5ヶ年の上記指標の推移は以下のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
営業利益(百万円)
8,126
8,856
10,286
10,341
5,882
営業利益率(%)
7.2
7.7
8.8
8.1
4.5
ROA(総資産営業利益率)(%)
7.7
8.2
9.1
8.5
4.6
ROIC(投下資本利益率)(%)
8.2
8.5
9.2
8.5
4.5
ROE(自己資本当期純利益率)(%
9.1
8.3
10.5
10.2
6.0
(注)各指標は以下の計算式によって計算しています。
・ROA(総資産営業利益率):営業利益/総資産(期首期末平均)
・ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益/(純資産+有利子負債)(期首期末平均)
有利子負債は、短期借入金、リース債務、長期借入金等の金額を使用しています。
・ROE(自己資本当期純利益率):親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)
情報電子事業の減収影響や、原材料、エネルギーコスト増加の影響、人材補強に伴う固定費の増加、研究開発費や戦略費の投入があったことなどにより、営業利益は58億82百万円となり、前連結会計年度比で44億59百万円減少し、営業利益率は前年より3.6%減の4.5%となりました。
事業拡大に伴い総資産は増加傾向にあり、営業利益は前年同期比で大幅に減益となったことから、ROA(総資産営業利益率)は前年より3.9%減少し4.6%となり、ROIC(投下資本利益率)についても前年より4.0%減少し4.5%となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を多額に計上したものの、営業利益減益の影響が大きかったため前連結会計年度比で28億39百万円減少して48億54百万円となり、ROE(自己資本当期純利益率)については前年より4.2%減少し6.0%となりました。
当社グループは2030年度売上2,000億円を目標とし、営業利益率10%以上を目指しております。持続的な発展に向けて、環境ニーズへの対応、変化の著しい情報通信産業への対応を推進すると同時に、医療・エネルギーなど新たな領域の事業化推進、新ビジネスの種の探索・創出に取り組み、将来の成長・発展に向け一層の戦略的投資・研究開発力の拡充を継続していきます。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検証内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
主な資金需要は、原材料の購入費用、製造・販売費・一般管理費等の運転資金、設備投資や研究開発費・戦略費・M&A等も見据えた広義での成長投資、ならびに株主還元となります。
設備投資については、前年同期の54億36百万円から3億52百万円減少し、50億83百万円となりました。その主な内容は当社における機械装置を中心とした投資です。
研究開発費は37億59百万円(前年同期比6.0%増)となり、売上高研究開発費比率は2.9%となりました。
運転資金及び成長投資資金については、内部留保資金又は借入により資金調達しております。
株主還元については、安定的かつ継続的な配当を行うことを基本とし、業績の伸展状況に応じて、配当性向・株主資本配当率等を勘案して実行し、また機動的な自己株式取得を推進してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。