【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
前連結会計年度(自 2021年1月1日至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
対前年同期比(増減額)
対前年同期比(増減率)
連結売上高
18,489百万円
22,067百万円
3,578百万円
19.4%
営業利益
1,441百万円
611百万円
△829百万円
△57.5%
経常利益
1,468百万円
987百万円
△481百万円
△32.8%
親会社株主に帰属する当期純利益
551百万円
66百万円
△485百万円
△88.0%
2011年11月に提供を開始したクラウドサービスは、ご利用いただいている契約社数が54,000社、契約ユーザーライセンス数が250万人を突破し堅調に推移しております。当社グループでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、社内外への感染防止と全従業員の安全確保を最優先とすべく、引き続き在宅勤務を中心に業務を行っております。従来からテレワークをはじめ柔軟な働き方に対応した業務環境の整備等を推進していたこともあり、営業活動や採用活動、自社製品の開発計画、クラウドサービス基盤の運用・保守体制等についても大きな変更はなく、現時点において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による事業活動、業績及び会計上の見積り等への重大な影響はないと考えております。このような状況下において、当連結会計年度の連結業績につきましては、クラウド上で提供するサービスの売上が引き続き積み上がり、連結売上高は22,067百万円(前期比19.4%増)となりました。このうち、クラウド関連事業の売上高は18,649百万円(前期比23.8%増)となっております。利益項目につきましては、前連結会計年度に比べ従業員数増加等による人件費の増加や、主に主力製品である「kintone」の認知度向上のため、TVコマーシャル等の積極的な広告宣伝投資を継続したことによる広告宣伝費の増加等があったことから、営業利益は611百万円(前期比57.5%減)となりました。経常利益については、為替予約を実施したこと及び円安の影響により為替差益が増加したこと等から987百万円(前期比32.8%減)となりました。また、法人税等計上後の親会社株主に帰属する当期純利益は66百万円(前期比88.0%減)となりました。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりであります。なお、当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、セグメントごとの記載を省略しております。
①主な製品・サービスの経過及び成果前期から引き続きクラウドサービス成長や認知拡大のための投資やエコシステムの拡大・強化に努めてまいりました。特にエコシステムについては、2022年12月末時点でパートナー社数は約400社、パートナー企業が提供する連携サービスは約370サービス以上とエコシステムによるビジネスが堅調に拡大しており、クラウド関連事業の国内売上高の61.6%にあたる11,003百万円がパートナー経由の売上となり、パートナー販売割合が年々増加しております。クラウドサービスの需要が拡大する中で、特に「kintone」に関しては、用途の多様化や高度化、そして内製化のニーズが高まっています。そのようなクラウド時代のニーズの変化に対応できるパートナー戦略を実施すべく、2021年にはパートナープログラムを大幅にリニューアルし、「Cybozu Parnter Network」を開始しました。 新プログラムの提供開始から2年目を迎え、当期はさらなるパートナー施策やプロダクト強化を推進し、パートナーとの強固なエコシステムを構築、そして顧客価値の最大化に取り組みました。
○業務アプリ構築クラウドサービス「kintone」
主力製品である「kintone」は、前期に引き続き認知度向上のためTVコマーシャル等積極的に広告展開を行い、業務改善に役立つクラウドサービスとして認知度を向上してまいりました。2022年度末時点の国内契約社数が27,500社となり順調に推移しております。売上高については連結ベースで10,414百万円(前期比32.4%増)となりました。エンタープライズ領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)手段としてノーコード・ローコードツールの採用が進む中、「kintone」はプログラミングの専門知識がなくても容易にシステムを構築できるという特性から「現場の人が主体の業務改善」を支援するツールとして利用が拡大しています。このように「kintone」の利用が拡大する中、当期は前期に引き続き自治体への導入が拡大し、2022年度末時点の自治体導入数は約190となりました。「kintone」による自治体DXをさらに推進すべく、2022年4月には自治体向けの「kintone1年間無料キャンペーン」を発表しました。当キャンペーン参加自治体の「kintone」を活用した業務改善を伴走型支援でフォローするほか、自治体で全職員へ導入する場合に適用される「kintone全職員導入ライセンス」も新たに用意し、次年度以降の本格導入や全庁展開を促進しております。さらに、販売パートナーチャネルの拡大として、引き続き地方銀行との連携を強化しています。銀行内にICTコンサルティング専門部隊を設置していただき、当社は当該ICTコンサルティング部門へ向けて「kintone」研修等を実施し、顧客へのコンサル提案をサポートしています。現在全国17行の地方銀行と協業しており、実働約5年間で地方銀行によるコンサルティングにより約400社に「kintone」を中心としたサイボウズ製品を導入いただいております。引き続き、IT活用提案を通じて、地方中小企業の生産性向上や働きやすい企業創生実現に向け活動してまいります。
○その他の製品・サービス各製品ともにクラウドサービスの販売が順調に増加しました。中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」では2022年度末時点の国内累計導入社数が75,000社、売上高については連結ベースで5,088百万円(前期比5.3%増)となり、売上高の83.1%がクラウドサービスとなりました。中堅・大規模組織向けグループウェア「Garoon」では2022年度末時点の国内累計導入社数が6,800社、売上高については連結ベースで4,562百万円(前期比13.1%増)、売上高の60.9%がクラウドサービスとなり中堅・大規模な組織でもクラウドサービスの需要が増加していることが伺えます。また、メール共有サービス「Mailwise」では2022年度末時点の国内累計導入社数が13,000社、売上高については連結ベースで678百万円(前期比16.2%増)、売上高の91.6%がクラウドサービスとなりました。
○信頼性強化への取り組み多くのユーザーの皆様により長く安心してご利用いただくため、製品・サービス及び当社グループ自体への信頼を高める取り組みに注力しております。特にクラウドサービスの信頼性強化に重点を置いて取り組みを進め、セキュリティ向上に対して継続的な投資を行っております。2021年9月には当社が提供しているクラウドサービスが「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(以下:ISMAP、読み:イスマップ)」において、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているサービスであると認定され、2022年度も継続してISMAPクラウドサービスリストに登録されています。ISMAPは政府が情報システムを調達するための指針ですが、一定のセキュリティ基準が満たされている証明となるため、様々な公共機関や民間企業にとっても、安心できるサービスを選択するための負担が軽減される一助となることが期待できます。またISMAPを取得することで対外的な信頼を得やすくなり、当社のパートナー企業の活動をより円滑に進められるのではないかと期待しております。今後も政府情報システムの要件への対応をはじめ、セキュリティ脅威への対応に継続して取り組み、信頼できる安心で安全なクラウドサービスを提供することで、チームワークあふれる社会づくりに貢献してまいります。
○市場からの評価当社は、『日経コンピュータ』誌(発行:株式会社日経BP)が2022年9月1日号で発表した「顧客満足度2022-2023 クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門」において第1位を獲得し、当部門において4年連続1位獲得となりました。また、当社のカスタマーセンターは、『HDI-Japan』が主催する、2022年「HDI格付けベンチマーク」対応記録毎/モニタリング評価(電話)において、2018年、2019年に続き通算3回目となる最高ランクである三つ星を獲得いたしました。
②グローバル展開における体制強化グローバル市場での2022年度末時点における導入社数は、米国市場では850サブドメイン(前期比25.0%増)、中華圏市場では1,300社(前期比9.2%増)、その他アジア市場では1,090社(前期比16.0%増)となり堅調に推移しております。中国ではゼロコロナ政策による行動制限の影響もありましたが、売上が伸長したほか、台湾では新規契約数が約2倍となり、そのうちの8割がローカル企業での受注となりました。その他アジア市場でも、タイを中心にローカル企業の受注件数が拡大しております。また、2022年に始動した株式会社リコーとの協業に伴い、同社が強みとするチャネルやサポート網を通じて、米国を中心に「kintone」の拡販体制を強化するなど、引き続きグローバル展開を加速してまいります。
③チームワークあふれる社会を創るための取り組み社会の様々なチームのチームワーク向上のため、製品・サービスの普及だけでなく、チームワークに関する当社グループのノウハウを活かした取り組みとして2017年に設立した「チームワーク総研」では、2022年度には講演125件、研修・コンサルティング159件を実施しました。特に、研修・コンサルティング・アドバイザリー等の伴走支援型のメニューが大きく成長し、「チームワーク総研」による案件動向としては、講演から研修・コンサルティングへシフトしています。「チームワーク総研」のほか、チームワークをサポートする活動として、非営利団体向け支援や地方創生支援、学校における働き方改革を実現するための学校BPR(Business Process Re-engineering)支援、「kintone」で災害対策のIT化を支援する「災害支援プログラム」など多岐にわたり取り組んでおります。今後もサイボウズ流のチームワークやメソッドを活かし、社会のチームワーク向上や災害支援や防災のために活動してまいります。
④生産、受注及び販売実績
a.生産実績当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
ソフトウェア事業
37
80.7
(注) 金額は、製造原価とソフトウェアのうち自社開発分(資産計上分)の合計により算出しております。
b. 受注状況当社グループ(当社及び連結子会社)は受注開発を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
c. 販売実績当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、ソフトウェア事業に含めて記載しております。
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
ソフトウェア事業
22,067
119.4
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
株式会社大塚商会
1,901
10.3
-
-
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績の10%以上を占める相手先がないため、記載はありません。
(2) 財政状態
前連結会計年度(自 2021年1月1日至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
対前年同期比(増減額)
資産合計
14,037百万円
15,907百万円
1,870百万円
負債合計
7,665百万円
11,277百万円
3,611百万円
純資産合計
6,371百万円
4,630百万円
△1,741百万円
資産合計につきましては、上場株式の株価下落により投資有価証券が減少したものの、東京オフィス改装工事やクラウドサービス用のサーバー増設等により固定資産が増加したことに加え、当連結会計年度から売上債権の一部においてファクタリングを開始したことにより売掛金が減少した一方で、未収入金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,870百万円増加し、15,907百万円となりました。負債合計につきましては、主に金融機関からの新規借入により借入金が増加したことや、契約負債(前連結会計年度末は前受金)が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ3,611百万円増加し、11,277百万円となりました。また、純資産合計につきましては、当連結会計年度に66百万円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したものの、550百万円の剰余金配当を実施したことや、投資有価証券評価によりその他有価証券評価差額金が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,741百万円減少し4,630百万円となりました。また、当連結会計年度の自己資本比率は29.1%となりました。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりであります。なお、当社グループ(当社及び連結子会社)の報告セグメントは「ソフトウェアの開発・販売」のみであり、その他の事業セグメントは開示の重要性が乏しいため、記載を省略しております。
(3) キャッシュ・フロー 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より319百万円増加し、5,124百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
前連結会計年度(自 2021年1月1日至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
対前年同期比(増減額)
営業活動によるキャッシュ・フロー
472百万円
1,328百万円
855百万円
投資活動によるキャッシュ・フロー
△1,492百万円
△3,121百万円
△1,628百万円
財務活動によるキャッシュ・フロー
1,695百万円
1,929百万円
234百万円
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動による資金収支は、1,328百万円の収入となりました。これは当連結会計年度から売上債権の一部においてファクタリングを開始したことにより未収入金が増加したことや、売上債権の増加等による影響や法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動による資金収支は、3,121百万円の支出となりました。これは主に東京オフィス改装工事やクラウドサービス用のサーバー増設等の固定資産取得による支出があったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動による資金収支は、1,929百万円の収入となりました。これは剰余金の配当を実施したものの、借入金による収入があったこと等によるものです。
(資本の財源及び資金の流動性)当社グループの運転資金及び設備投資等資金は、主として営業活動キャッシュ・フローである自己資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入を実施することを基本方針としております。今後の資金需要のうち、主なものは、運転資金の他、国内外でのクラウドサービス認知度を向上させるための広告宣伝及び国内のクラウドサービス用サーバー機材増設等の設備投資であります。これらの資金についても、基本方針に基づき、自己資金により充当しつつ、必要に応じて金融機関からの借入を実施する等、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要な資金を調達してまいります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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