【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態の状況(単位:億円)
科目
前連結会計年度末
当連結会計年度末
増減
資産の部
流動資産
現金及び預金
1,615
1,202
△414
売上債権及び契約資産
2,596
2,921
324
棚卸資産
1,917
2,571
655
その他流動資産
295
383
88
固定資産
有形・無形固定資産
3,337
3,684
348
投資有価証券
593
577
△16
その他投資等
524
605
81
資産合計
10,877
11,943
1,066
負債の部
支払手形及び買掛金
1,134
1,229
95
有利子負債
919
1,767
848
その他負債
1,226
1,004
△222
負債合計
3,279
4,001
721
純資産の部
株主資本
6,918
7,126
208
非支配株主持分
506
553
47
その他
173
263
90
純資産合計
7,597
7,942
345
負債純資産合計
10,877
11,943
1,066
総資産は、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,066億円増加し1兆1,943億円となりました。棚卸資産の増加は、原燃料価格の上昇等によるものです。 負債は、有利子負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ721億円増加し4,001億円となりました。有利子負債の増加は、原料価格高騰に伴う運転資金の増加への対応として、銀行から短期借入を行ったこと等によるものです。 純資産は、その他有価証券評価差額金の減少や配当金の支払い等がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ345億円増加し7,942億円となりました。
(2)経営成績の状況
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
売上高
9,186
10,644
1,458
営業利益
1,440
746
△694
経常利益
1,605
900
△705
親会社株主に帰属する当期純利益
1,079
503
△576
〈参考〉為替、海外製品市況
単位
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
為替レート
円/$
112.4
135.5
23.1
円/EUR
130.6
141.0
10.4
国産ナフサ
円/KL
56,625
76,600
19,975
ベンゼン
$/t
994
994
0
PVC
$/t
1,373
965
△408
VCM
$/t
1,208
835
△373
液体苛性
$/t
515
636
121
MDI(Monomeric)
$/t
2,585
2,260
△325
MDI(Polymeric)
$/t
2,466
2,074
△392
当連結会計年度の世界経済は、各国で新型コロナウイルス感染症対策と経済活動の両立が進みましたが、中国ゼロコロナ政策が12月まで続きウクライナ問題も長期化した中、供給面の制約や資源価格の高騰、急激なインフレ、金融引き締めなどが景気下押し要因となり、先行き不透明な状況で推移しました。このような情勢下、当社グループの連結業績については、売上高は、ナフサ等の原燃料価格の上昇による販売価格の上昇や価格是正、円安進行により、1兆644億円と前連結会計年度に比べ1,458億円(15.9%)の増収となりました。営業利益は、ナフサや石炭等の原燃料高の影響が販売価格上昇の影響を上回ったことでの交易条件の悪化により、746億円と前連結会計年度に比べ694億円(48.2%)の減益となりました。経常利益は、円安進行に伴う為替差益を計上しましたが、900億円と前連結会計年度に比べ705億円(43.9%)の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社である東北東ソー化学株式会社の製造設備等について減損損失を計上したこともあり、503億円と前連結会計年度に比べ576億円(53.4%)の減益となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
<売上高分析>
(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
増減要因
数量差
価格差
石油化学事業
1,772
2,061
289
△157
446
クロル・アルカリ事業
3,616
4,064
448
△88
536
機能商品事業
2,262
2,708
446
△48
494
エンジニアリング事業
1,163
1,381
218
163
55
その他事業
373
430
57
4
54
合計
9,186
10,644
1,458
△127
1,585
<営業利益分析>
(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
増減要因
数量差
交易条件
固定費差他
石油化学事業
157
121
△35
△23
19
△31
クロル・アルカリ事業
695
△107
△802
20
△679
△143
機能商品事業
435
523
88
26
91
△29
エンジニアリング事業
123
180
57
57
0
0
その他事業
31
29
△2
△2
0
0
合計
1,440
746
△694
78
△569
△203
石
油 化 学 事 業 エチレン、プロピレン及びキュメンは、生産量の減少に伴い出荷が減少しました。また、ナフサ価格の上昇を反映して、エチレン及びプロピレンの販売価格は上昇しました。円安進行により、キュメンの販売価格は上昇しました。 ポリエチレン樹脂は、国内で出荷が減少しましたが、ナフサ価格及び海外市況の上昇を反映して販売価格は上昇しました。クロロプレンゴムは、国内輸出ともに出荷が減少しましたが、原材料価格高騰を背景に販売価格は上昇しました。 この結果、売上高は、前連結会計年度に比べ289億円(16.3%)増加し2,061億円となりましたが、営業利益は、エチレン、プロピレン等のオレフィン製品やポリエチレン樹脂の出荷減少と修繕費等の固定費増加により、前連結会計年度に比べ35億円(22.6%)減少し121億円となりました。
ク ロ ル ・ ア ル カ リ 事 業
苛性ソーダは、生産量の増加に伴い出荷が増加しました。また、国内価格の是正及び海外市況の上昇により販売価格は上昇しました。塩化ビニルモノマーは、出荷が増加しましたが、海外市況下落を受けて輸出価格は下落しました。塩化ビニル樹脂は、国内外で出荷が減少しました。海外市況は下落しましたが、国内価格の是正や円安進行により販売価格は上昇しました。セメントは、需要低調により国内輸出ともに出荷が減少しましたが、販売価格は国内輸出ともに上昇しました。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は、生産量の増加に伴い出荷が増加しました。また、海外市況は下落しましたが、円安進行や国内価格の是正により販売価格は上昇しました。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系硬化剤は、需要の減少に伴い出荷が減少しましたが、海外市況の高止まりや円安進行により販売価格が上昇しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ448億円(12.4%)増加し4,064億円となりましたが、営業損益は、ナフサや石炭等の原燃料価格上昇に伴う交易条件の悪化により、前連結会計年度に比べ802億円減少し107億円の損失となりました。
機 能 商 品 事 業
エチレンアミンは、景況感悪化に伴う需要減少により出荷が減少しましたが、海外市況の上昇により販売価格は上昇しました。計測関連商品は、液体クロマトグラフィー用充填剤の出荷が堅調に推移しました。診断関連商品は、欧米及び中国向けで体外診断用医薬品の出荷が減少しました。ハイシリカゼオライトは、自動車用途を中心に年度後半からの需要回復により出荷は前年並みとなり、円安進行により販売価格は上昇しました。ジルコニアは、出荷は総じて前年並みとなりましたが、円安進行及び価格是正により販売価格は上昇しました。石英ガラスは、半導体需要や設備能増により出荷が増加し、円安進行及び価格是正により販売価格は上昇しました。電解二酸化マンガンは、米国における需給緩和の影響で出荷が減少しましたが、円安進行及び価格是正により販売価格は上昇しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ446億円(19.7%)増加し2,708億円となり、営業利益は、石英ガラス等の出荷増加や為替の影響等による交易条件の改善により、前連結会計年度に比べ88億円(20.2%)増加し523億円となりました。
エ ン ジ ニ ア リ ン グ 事 業
水処理エンジニアリング事業は、電子産業分野において受注案件の工事が順調に進捗し、メンテナンスなどのソリューションサービスも好調であったことなどから、売上高が増加しました。建設子会社の売上高は減少しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ218億円(18.8%)増加し1,381億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ57億円(46.3%)増加し180億円となりました。
そ の 他 事 業
運送・倉庫、検査・分析、情報処理等その他事業会社の売上高は増加しました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ57億円(15.4%)増加し430億円となりましたが、営業利益は前連結会計年度に比べ2億円(5.8%)減少し29億円となりました。
② 目標とする経営指標の達成状況等
目標とする経営指標の達成状況等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
③ 生産、受注及び販売の状況
(1) 生産実績(単位:百万円)
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
石油化学事業
208,176
100.4
クロル・アルカリ事業
382,220
100.2
機能商品事業
214,082
109.8
エンジニアリング事業
138,005
136.1
その他事業
―
―
合計
942,484
106.5
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。2 原則として、生産金額は、生産総量から自家使用量を差引いた販売向け生産量に、当連結会計年度中の平均販売単価を乗じて算出しております。
(2) 受注実績主として見込み生産であります。
(3) 販売実績(単位:百万円)
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
石油化学事業
206,101
116.3
クロル・アルカリ事業
406,388
112.4
機能商品事業
270,795
119.7
エンジニアリング事業
138,113
118.8
その他事業
42,977
115.4
合計
1,064,376
115.9
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(3)キャッシュ・フローの状況
①当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況(単位:億円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
営業キャッシュ・フロー
税引前当期純利益
1,597
816
△ 781
減価償却費
407
431
24
法人税等
△ 368
△ 474
△ 107
その他
△ 550
△ 935
△ 385
計
1,086
△ 162
△ 1,249
投資キャッシュ・フロー
△ 435
△ 787
△ 352
フリー・キャッシュ・フロー
651
△ 950
△ 1,601
財務キャッシュ・フロー
有利子負債
△ 360
829
1,190
配当金
△ 197
△ 286
△ 89
その他
△ 22
△ 42
△ 20
計
△ 579
502
1,080
現金及び現金同等物に係る換算差額
49
34
△15
現金及び現金同等物(期首)
1,484
1,608
124
増減
124
△414
△538
現金及び現金同等物(期末)
1,608
1,194
△414
現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ414億円減少し、1,194億円となりました。 営業活動によるキャッシュ・フローは、162億円の支出となりました。税金等調整前当期純利益の減益、棚卸資産の増加、法人税等の支払額の増加等により、前連結会計年度に比べ1,249億円収入が減少いたしました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、787億円の支出となりました。設備投資による支出の増加等により、前連結会計年度に比べ352億円支出が増加いたしました。 この結果、フリー・キャッシュ・フローは前連結会計年度に比べ、1,601億円収入が減少し、950億円の支出となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、502億円の収入となりました。配当金の支払額の増加等がありましたが、短期借入の増加等により、前連結会計年度に比べ1,080億円収入が増加いたしました。 なお、当連結会計年度の設備投資の資金調達は主に自己資金及び借入金により賄っております。
②資金の主要な使途を含む資金需要の動向事業から創出される営業キャッシュ・フローを主な財源とし、設備投資、M&A等の戦略投資、更には株主への還元等に資金を配分してまいります。2024年度を最終年度とする中期経営計画においては、スペシャリティ事業を中心とした収益拡大やCO2排出削減・有効利用による脱炭素対応を推進するため3ヶ年累計で2,000億円の設備投資を計画しております。また、株主還元は安定配当を基本として、フリー・キャッシュ・フローの水準等を勘案して自己株式の取得を機動的に実施してまいります。なお、当連結会計年度末現在における今後1年間の資本的支出の予定及びその資金の調達源等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
③フリー・キャッシュ・フロー当社は、フリー・キャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動に支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しております。当社はこの指標を戦略的投資又は負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは、資金調達にあたって外部借入への依存度合を測る目的から、投資家に有用な指標と考えており、次の図のとおりフリー・キャッシュ・フローを算出しております。
④財務の方針及び資金調達の状況当社は、事業の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金と金融機関からの外部借入を活用しております。今後大型の設備投資やM&Aが発生する場合には、資金調達の多様化や資本効率の向上を踏まえ負債の活用を進めてまいりますが、タイムリーな資金調達が実行できるよう強固な財務基盤の維持に努めてまいります。また当社は、資金需要に対する機動的な対応と金融情勢変化やコモディティ事業における原料や製品の市況変動の影響による財務の悪化に備え、一定程度の現預金の保有は必要と考えております。なお、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰により運転資金が増加したため、銀行借入を実行し手元流動性を確保しております。2022年度末時点で当社の自己資本比率は61.9%、有利子負債は1,767億円、現金及び預金は1,202億円、ネットDEレシオは0.08、信用格付けは「A+」となっております。
※「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を2018年度の期首から適用しており、2014年度~2017年度に係る自己資本比率については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値となっております。
⑤株主還元の方針株主還元の方針については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
※配当性向は連結財務諸表を元に算出しているため、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移 (2)提出会社の経営指標等」に記載されている配当性向とは異なります。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 4 会計方針に関する事項」に記載しております。 「第2 事業の状況
3 事業等のリスク」に記載している在庫評価の影響、固定資産の減損、有価証券の評価、繰延税金資産の取崩し、退職給付関係、工事契約に係る一定期間にわたり収益を認識する取引の収益計上に関して、過去の実績や状況に応じて合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。