【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
①当期の経営成績
売上高は155億81百万円(前年同期比45.1%減)となりました。
遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」は、2022年4月の薬価改定の影響を受けました。同じく薬価改定があった腎性貧血治療薬は減収幅が大きかったものの、2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」が大きく寄与したことなどにより、主力製品の売上合計は前年同期と同水準となりました。主力製品以外では、契約金収入の減少およびアストラゼネカ株式会社の新型コロナウイルスに対するワクチン原液の国内製造の受託を予定どおり終了したことなどにより、売上高合計は前年同期に比べて減収となりました。
営業利益は7億44百万円(前年同期比94.5%減)、経常利益は15億69百万円(前年同期比88.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は9億62百万円(前年同期比89.6%減)となり、いずれも減益となりました。
積極的な研究開発活動の結果、研究開発費は19.8%増加し42億16百万円(前年同期比6億96百万円増)となりました。
なお、当第2四半期連結累計期間における減収減益は、期初予想通りの傾向です。
前第2四半期連結累計期間
(自 2021年4月1日
至 2021年9月30日)
当第2四半期連結累計期間
(自 2022年4月1日
至 2022年9月30日)
増減
金額(百万円)
金額(百万円)
%
売上高
28,383
15,581
△45.1
営業利益
13,640
744
△94.5
経常利益
13,731
1,569
△88.6
親会社株主に帰属する四半期純利益
9,234
962
△89.6
②主な売上
前第2四半期連結累計期間
(自 2021年4月1日
至 2021年9月30日)
当第2四半期連結累計期間
(自 2022年4月1日
至 2022年9月30日)
増減
金額(百万円)
金額(百万円)
%
ヒト成長ホルモン製剤
グロウジェクト®
6,689
6,083
△9.1
ムコ多糖症Ⅱ型治療剤
イズカーゴ®点滴静注用
985
2,118
114.8
腎性貧血治療薬
エポエチンアルファBS注「JCR」
ダルベポエチンアルファBS注「JCR」
3,011
1,512
1,498
2,157
1,392
765
△28.4
△8.0
△48.9
再生医療等製品
テムセル®HS注
1,717
1,701
△0.9
ファブリー病治療薬
アガルシダーゼベータBS点滴静注「JCR」
323
521
61.0
契約金収入
7,557
1,010
△86.6
AZD1222原液
8,046
1,931
△76.0
③研究開発の状況
[ライソゾーム病治療薬]
・当社では現在、17種類を超えるライソゾーム病治療薬について、独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した新薬の研究開発に重点的に取り組んでおります。また、J-Brain Cargo®技術の様々なモダリティへの応用可能性を広げる研究にも注力しております。
・血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤パビナフスプ アルファ(開発番号:JR-141)については、2021年5月に日本での販売を開始しております(製品名「イズカーゴ®点滴静注用10mg」)。また、米国では2021年2月に米国食品医薬品局(FDA)よりFast Track(※1)の指定を、欧州(EU)では2021年10月に欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(※2)の指定をそれぞれ受けております。2022年2月にはグローバル臨床第3相試験において最初の被験者への投薬が開始されております。なお、2020年12月にブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)に製造販売承認申請を行っておりましたが、2022年8月に非承認となりました。現在実施中のグローバル臨床第3相試験の結果を用いて再度申請を行うことを予定しております。
・血液脳関門通過型ムコ多糖症Ⅰ型治療酵素製剤lepunafusp alfa(開発番号:JR-171)については、現在、日本・ブラジル・米国での臨床第1/2相試験において、2022年3月に計画した全例の登録を完了し、最終解析を実施しております。なお、2021年2月にFDAより、2021年3月に欧州委員会(EC)よりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けております。また、2021年9月にFDAよりFast Trackの指定を受けており、米国における臨床開発の迅速化、優先審査や早期承認が期待されます。
・血液脳関門通過型ムコ多糖症ⅢA型治療酵素製剤(開発番号:JR-441)については、2022年1月にECよりオーファンドラッグの指定を受けており、欧州(EU)領域における開発促進のための様々なインセンティブを受けることができます。現在、2023年上半期のグローバル臨床試験開始に向けた取り組みを進めております。
・その他のJ-Brain Cargo®を適用したライソゾーム病治療薬(ポンペ病治療薬(開発番号:JR-162)、スライ症候群治療薬(開発番号:JR-443)、サンフィリッポ症候群B型治療薬(開発番号:JR-446)、GM2ガングリオシドーシス治療薬(開発番号:JR-479))についても、研究開発を順次行うとともにグローバル展開を推進してまいります。
[再生医療等製品]
・「テムセル®HS注」の新たな適応拡大として新生児低酸素性虚血性脳症(開発番号:JR-031HIE)に対する臨床第1/2相試験を実施しております。
・帝人株式会社との共同開発であった他家(同種)歯髄由来幹細胞(DPC)を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品(開発番号:JTR-161/JR-161)については、2022年4月に共同開発を終結することで合意いたしました。
[ヒト成長ホルモン製剤]
・「グロウジェクト®」へのSHOX異常症(開発番号:JR-401X)の効能追加については、2022年7月に製造販売承認申請を行いました。
・遺伝子組換え持続型成長ホルモン製剤(開発番号:JR-142)の臨床第2相試験を実施しており、予定していた被験者の組み入れを完了しております。
※1 FDA Fast Track制度
重篤な疾患を治療するために、アンメットメディカルニーズを満たす治療薬の開発を促進し、審査を迅速化することを目的とした制度。ファストトラック制度に指定された医薬品は、開発計画についてFDAと頻繁にミーティングを行うほか、関連する基準を満たす場合に優先審査および早期承認の対象となる。
※2 EMA PRIME (PRIority MEdicines)
アンメットメディカルニーズを対象とした医薬品の開発支援を強化するために開始したスキーム。PRIMEによって早期かつ積極的な支援を受けることで医薬品の申請を迅速に行うことが可能となり、また迅速審査の対象になる可能性がある。
(2)財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末における資産合計は893億87百万円(前連結会計年度末比77億46百万円減)、負債合計は385億9百万円(前連結会計年度末比75億35百万円減)、純資産合計は508億78百万円(前連結会計年度末比2億10百万円減)となりました。
流動資産は、棚卸資産が増加した一方で、売掛金及び契約資産および現金及び預金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ78億70百万円減少して543億17百万円となりました。固定資産につきましては、繰延税金資産が減少した一方で、無形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1億24百万円増加して350億70百万円となりました。
流動負債は、未払法人税等、未払金および短期借入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ90億63百万円減少して329億91百万円となりました。固定負債は、長期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ15億27百万円増加して55億18百万円となりました。
純資産につきましては、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上があった一方で、配当金の支払などにより、前連結会計年度末に比べ2億10百万円減少して508億78百万円となりました。
これらの結果、当第2四半期連結会計期間末における自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ4.0ポイント上昇して55.8%となりました。
現時点では当社グループにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は受けておりませんが、今後の世界情勢の見通しが立たない中、当社グループがグローバルで持続的な成長を行うために、機動的かつ安定的に資金調達手段を確保する必要があり、各金融機関との間で、バックアップラインとして運転資金を確保する事を目的として、総額155億円のコミットメントライン契約を締結しております。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ26億25百万円減少して281億7百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況および主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、10億27百万円(前年同期比37億20百万円の支出減)となりました。これは主に、売上債権の減少額69億96百万円、税金等調整前四半期純利益の計上額15億60百万円があった一方で、法人税等の支払額55億16百万円、未払金の減少額22億12百万円、為替差益の計上額15億17百万円、棚卸資産の増加額11億75百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、17億79百万円(前年同期比15億43百万円の支出増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出13億33百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、14億79百万円(前年同期比5億48百万円の支出増)となりました。これは主に、配当金の支払額14億89百万円があったことによるものであります。
(4)経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(6)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間の研究開発費の総額は42億16百万円(前年同期実績35億20百万円)であります。
なお、当第2四半期連結累計期間における当社グループの研究開発活動の状況は、(1)経営成績の状況に記載のとおりであります。
遺伝子組換医薬品
開発番号
(一般名)
開発段階
適応症等
備考
JR-141
(血液脳関門通過型遺伝子組換え
イズロン酸-2-スルファターゼ)
グローバル:
臨床
第3相試験
ムコ多糖症Ⅱ型
(ハンター症候群)
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
JR-171
(血液脳関門通過型遺伝子組換え
α-L-イズロニターゼ)
グローバル:
臨床
第1/2
相試験
ムコ多糖症Ⅰ型
(ハーラー症候群等)
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
「J-MIG System®」採用
JR-162
(J-Brain Cargo®適用遺伝子組換え酸性α-グルコシダーゼ)
前臨床
ポンぺ病
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
JR-441
(血液脳関門通過型遺伝子組換え
へパランN-スルファターゼ)
前臨床
ムコ多糖症ⅢA型
(サンフィリッポ症候群A型)
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
JR-443
(血液脳関門通過型遺伝子組換え
β-グルクロニダーゼ)
前臨床
ムコ多糖症Ⅶ型
(スライ症候群)
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
JR-446
(血液脳関門通過型遺伝子組換え
α-N-アセチルグルコサミニダーゼ)
前臨床
ムコ多糖症ⅢB型
(サンフィリッポ症候群B型)
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
JR-479
(血液脳関門通過型遺伝子組換え
β‐ヘキソサミニダーゼA)
前臨床
GM2ガングリオシドーシス
(テイ・サックス病、サンドホフ病)
酵素補充療法
「J-Brain Cargo®」採用
JR-401X
(遺伝子組換えソマトロピン)
承認申請
SHOX異常症における低身長症
「グロウジェクト®」効能追加
JR-142
(遺伝子組換え持続型成長ホルモン)
臨床
第2相試験
小児成長ホルモン分泌不全性低身長症
「J-MIG System®」採用
再生医療等製品
開発番号
(一般名)
開発段階
適応症等
備考
JR-031HIE
(ヒト間葉系幹細胞)
臨床
第1/2
相試験
新生児低酸素性虚血性脳症
「テムセル®HS注」適応拡大
(7)従業員の状況
当第2四半期連結累計期間において、連結会社または提出会社の従業員数の著しい増減はありません。
(8)生産、受注及び販売の実績
当第2四半期連結累計期間において、生産および販売実績が著しく減少しました。
これは、アストラゼネカ株式会社の新型コロナウイルスに対するワクチン原液の国内製造の受託を予定どおり終了したことなどによるものであります。
(9)主要な設備
当第2四半期連結累計期間において、主要な設備の著しい変動および新たに確定した重要な設備の新設、除却等はありません。