【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況当連結会計年度における世界経済は、ウィズコロナの流れの中、経済活動の回復が期待されたものの、中国における「ゼロコロナ政策」による景況悪化や、ウクライナ情勢に端を発したエネルギー価格の上昇、また欧米各国における金融引き締めによる景気後退懸念等から、厳しい状況が続きました。わが国におきましては、新型コロナウイルス感染症の規制の緩和に合わせて国内消費については回復傾向となったものの、秋以降の急激な円安ドル高や継続的なエネルギー価格の高騰が原材料価格等の上昇をもたらし、本格的な景気回復には至りませんでした。こうした中、当連結会計年度の経営成績は、売上高は円安の影響と、リード端子事業における原材料価格の販売価格への転嫁により15,673百万円(前年同期比7.2%増)となりました。営業利益については、主要向け先分野の一つである情報通信機器・民生機器市場の低迷により売上数量が減少したこと、また原材料価格の高騰によるコストアップを回収しきれなかったこと等により3,884百万円(前年同期比5.9%減)、経常利益は4,443百万円(前年同期比1.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,066百万円(前年同期比3.6%増)となりました。当連結会計年度における期中平均レートは、1米ドルあたり131.64円となりました。トピックスとして、光部品・デバイス事業では海底ケーブルの多芯化に対応した小型光アイソレータを業界に先駆けて販売したことに加えて、光ファイバ通信の大容量化に関連するマルチコアファイバ光デバイスの開発成果の国際会議での発表など、情報通信量の増大を見据えた製品開発を進めました。また、次世代事業として注力している高純度石英ガラス事業において近畿大学との共同研究を開始する等、将来に向けた研究開発を進めました。リード端子事業では、自動車市場向け耐振動性と絶縁特性向上に資する新製品(※1)を開発し、サンプル出荷を始めるとともに、EV向け等への採用ニーズの高まりによる使用数の飛躍的な増加に備えて量産体制の整備を進めました。また、リード端子事業での収益構造の改善に向けて、販売価格の是正及び生産効率改善に向けた生産技術の開発に努めました。加えてESG活動の一環として、滋賀県北部に位置する県内最大級の湿原である「山門水源の森」の環境保全活動の推進や、本社社屋へのソーラーパネルの設置等、2050年のカーボンニュートラルを目指したCO2削減等の活動に取組みました。
※1 新製品の特長アルミ電解コンデンサの大容量化、高品質化のニーズに合わせて、コンデンサ内のアルミ箔の箔切れ防止効果の高いリード端子。耐振動性、絶縁特性が向上する。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(リード端子事業)当連結会計年度におけるリード端子事業の売上高は8,384百万円(前年同期比10.3%増)、セグメント利益(営業利益)は原材料費の増加等により232百万円(前年同期比59.2%減)となりました。自動車市場向けでは、EVの生産台数は大きく伸びましたが、自動車生産全体としては、半導体不足による減産や中国におけるロックダウンの影響により低迷が続き、リード端子の販売数量は微増にとどまりました。情報通信機器・民生機器市場については、新型コロナ感染に伴う関連需要の一巡等により、夏以降パソコン・家電製品向けの受注が急減し、その結果売上が前年に比べ売上数量ベースで大きく減少しました。販売数量面では2019年の大幅落ち込み以来の厳しい環境であったものの、原材料価格高騰の販売価格への転嫁や円安の影響もあり、売上高は増加となりました。コスト面では、原材料であるアルミニウム・銅・錫といった非鉄金属価格相場(LME相場)が上半期において高騰、顧客への価格転嫁の時期ずれ等の影響で収益の圧迫を受けました。下半期に入り販売単価へ価格転嫁が進んだものの、夏以降の売上数量の大幅な減少により収益の改善は限定的なものとなりました。当社においては、EVの普及などに伴い中長期的に大きな成長が期待できる自動車市場向けに、アルミ電解コンデンサの耐振強度向上・漏れ電流低減特性・絶縁特性等の信頼性向上や、アルミ電解コンデンサ製造工程での歩留まり改善等に寄与する各種新製品のラインアップ拡充に努めました。
(光部品・デバイス事業)当連結会計年度における光部品・デバイス事業の売上高は7,289百万円(前年同期比3.9%増)、セグメント利益(営業利益)は3,652百万円(前年同期比2.7%増)となりました。海底ケーブル用途の光デバイスでは、従来の通信事業者に加えてGAFAM等の大手グローバルテック企業が牽引する海底ケーブルの敷設により、光アイソレータの需要が堅調に推移し、新製品として海底ケーブルの多芯化に対応した小型光アイソレータを2022年5月に発売して順調に売上を伸ばしました。一方、大手顧客における部品不足による生産数量下方修正の影響を受け、売上数量が前年に比べ減少しました。また、光ファイバアレイ製品では、従来からの米中摩擦に伴う納入制限に加え、夏以降の情報通信機器市場の影響を受け、高速光トランシーバ用途が調整局面となりました。このような中にありましたが、為替レートが円安に推移したことが加わり、前年比増収増益を確保しました。生産面においては、スリランカに立地する当社子会社のKOHOKU LANKA (PVT).LTD.におきまして、スリランカにおける政治・経済混乱の生産への影響が懸念されたものの、自家発電設備による停電対策や従業員への生活支援等の事業継続対策を講じることにより通常生産を継続、安定供給体制を維持しました。研究開発等におきましては、情報通信量の飛躍的な拡大を背景とした海底ケーブルのさらなる多芯化を先取りした新製品の開発、光デバイスの生産効率改善のための生産システムの開発や、外部の研究機関と連携した取組み等を進めました。また、次世代事業として位置づけている高純度石英ガラス製品の研究開発及びサンプル展開に取組みました。
② 財政状態の状況(資産)流動資産は前連結会計年度末に比べ138百万円減少し、17,227百万円となりました。これは主に製品が354百万円増加、電子記録債権が237百万円増加、原材料及び貯蔵品が97百万円増加した一方で、現金及び預金が587百万円減少、受取手形及び売掛金が216百万円減少したこと等によるものであります。固定資産は前連結会計年度末に比べ1,883百万円増加し、7,057百万円となりました。これは主にリース資産(純額)が1,236百万円増加、機械装置及び運搬具(純額)が442百万円増加したこと等によるものであります。この結果、総資産は前連結会計年度末に比べ1,745百万円増加し、24,285百万円となりました。
(負債)流動負債は前連結会計年度末に比べ1,938百万円減少し、3,375百万円となりました。これは主に短期借入金が1,132百万円減少、未払法人税等が444百万円減少、買掛金が213百万円減少、1年内返済予定の長期借入金が124百万円減少したこと等によるものであります。固定負債は前連結会計年度末に比べ536百万円増加し、2,613百万円となりました。これは主に長期借入金が676百万円減少した一方で、リース債務が1,189百万円増加したこと等によるものであります。この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ1,401百万円減少し、5,988百万円となりました。
(純資産)純資産は前連結会計年度末に比べ3,146百万円増加し、18,296百万円となりました。これは主に利益剰余金が2,581百万円増加、為替換算調整勘定が508百万円増加したこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は9,362百万円となりました。当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、2,755百万円の収入となりました。主な資金増加要因は税金等調整前当期純利益4,441百万円、減価償却費692百万円、主な資金減少要因は法人税等の支払額1,766百万円、棚卸資産の増加349百万円、仕入債務の減少266百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、1,949百万円の支出となりました。主な資金減少要因は定期預金の預入による支出1,000百万円、有形固定資産の取得による支出866百万円、投資有価証券の取得による支出104百万円、主な資金増加要因は投資有価証券の売却による収入18百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、2,585百万円の支出となりました。主な資金減少要因は配当金の支払額485百万円、長期借入金の返済による支出800百万円、短期借入金の減少1,210百万円、リース債務の返済による支出142百万円であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(千円)
前期比(%)
リード端子事業
7,241,408
+18.9
光部品・デバイス事業
2,434,971
△0.7
合計
9,676,379
+13.3
(注) 金額は、製造原価によっております。
b. 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高 (千円)
前期比 (%)
受注残高 (千円)
前期比 (%)
リード端子事業
8,384,213
+10.3
-
-
光部品・デバイス事業
7,592,703
+6.3
3,238,770
+10.3
合計
15,976,917
+8.3
3,238,770
+10.3
(注) リード端子事業については、受注から出荷(売上計上)までの期間が数日と非常に短いことから受注残高の集計には含めず、販売実績をもって受注高としております。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前期比(%)
リード端子事業
8,384,213
+10.3
光部品・デバイス事業
7,289,012
+3.9
合計
15,673,226
+7.2
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
Alcatel Submarine Networks UK Ltd.
3,606,324
24.7
3,712,737
23.7
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度における経営成績の状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しております。また、当連結会計年度における財政状態の状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a. キャッシュ・フロー当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入れ費用や生産子会社の製造費用並びに、販売費及び一般管理費の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は生産施設における機械装置等の充実のための事業投資であります。当社グループは、事業運営上必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金にて賄うことを基本方針としつつ、不足が生じる場合は金融機関からの短期・長期借入金により調達しております。また、一部はグループ会社間で融資を行っております。
③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を事業別営業利益と設定しております。前連結会計年度及び当連結会計年度の数値については、次のとおりとなっております。
指標
前連結会計年度(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
事業別営業利益(リード端子事業) (千円)
569,698
232,553
事業別営業利益(光部品・デバイス事業) (千円)
3,556,405
3,652,067
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。当社グループの連結財務諸表で採用する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載しております。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。