【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
(1) 経営成績の状況の概要
当連結会計年度(2020年4月~2021年3月)における当社グループを取りまく経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、大幅に悪化しました。経済活動は持ち直しの動きが継続しているものの、感染再拡大や半導体不足等の影響も懸念されており、先行き不透明な状況が続いています。建設機械業界では、米中貿易摩擦による昨年度からの国内メーカーの需要低迷に加え、新型コロナウイルスの影響により大幅に減少した需要は、年度後半にかけて急回復しております。自動車業界では、一時大幅減となった新車販売は、中国をはじめ北米や国内等で需要が回復しています。
このような状況下、当社グループの連結売上高は、前期比193億3千4百万円(16.5%)減収の978億4百万円となりました。連結営業利益は売上減の影響と、特殊鋼鋼材事業における高炉改修に伴う一過性費用増加の影響があり、固定費削減や海外拠点の改善効果等があったものの、前期比53億8千万円減益の49億4千3百万円の損失(前期は営業利益4億3千6百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は、55億2千8百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失140億7千万円)となりました。セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
特殊鋼鋼材事業につきましては、下期以降の需要は大幅に回復したものの、上期における昨年度からの建設機械及び産業機械・工作機械メーカーの需要低迷と、新型コロナウイルスの影響もあり、売上高は、前期比110億1千7百万円(19.7%)減収の448億7千9百万円となりました。営業利益は、国内事業では販売数量減に高炉改修費用及び高炉改修に伴う備蓄在庫取り崩しによる一過性費用増加の影響が加わり、損失となりました。一方、インドネシア海外事業では、第2四半期にあたる4~6月より新型コロナウイルスの影響を受けたものの、固定費を含めた製造コスト削減の効果や、前期の減損計上による償却負担の減少もあり、営業損益は、ほぼゼロまで回復しました。特殊鋼鋼材事業全体としては、前期比48億6千6百万円減益の36億1千9百万円の損失(前期は営業利益12億4千6百万円)となりました。
ばね事業につきましては、第1四半期での新型コロナウイルス感染拡大に伴う主要顧客の工場稼働停止や大幅な生産減の影響が大きく、第2四半期以降、主に北米・中国自動車向け及び建設機械向けの需要が大幅に回復したものの、売上高は、前期比67億7千4百万円(15.0%)減収の384億5千7百万円となりました。営業利益は、前期の北米子会社の新製品立ち上げトラブルの解消や、減損計上による償却負担の減少に加え、継続的なコスト削減及び第2四半期以降の需要回復により、下期大幅に損益を改善しました。しかしながら、通期では、新型コロナウイルスによる上期売上減の影響が大きく、前期比4億3千7百万円損失が拡大し、18億5千7百万円の損失(前期は営業損失14億2千万円)となりました。 なお、北米拠点の再編につきましては、巻ばねに続いてスタビライザの生産も、2022年3月期末完了を目指し、アメリカ工場からカナダ・メキシコ工場への移管を進めております。
素形材事業につきましては、新型コロナウイルスの影響による特殊合金粉末・精密機械加工部品の売上減に加え、磁気製品の事業撤退に伴う売上減少の影響もあり、売上高は、前期比12億2千3百万円(12.7%)減収の84億1千7百万円となりました。営業利益は、精密鋳造品等の品質・コスト改善による増益要因はあったものの、売上減の影響が大きく、前期比6千7百万円(75.9%)減益の2千1百万円となりました。
機器装置事業につきましては、鍛圧機械関連製品の売上増があったものの、新型コロナウイルスの影響に伴う商談遅延による短納期品の受注低迷により、売上高は、前期比13億1千万円(12.8%)減収の89億3千3百万円となりました。営業利益は、売上減の影響があったものの、高採算品の売上や各種コスト削減の積上げにより、前期比5千6百万円(14.3%)増益の4億5千2百万円となりました。
その他の事業につきましては、流通及びサービス業等でありますが、売上高は、前期比7億3千6百万円(20.6%)減収の28億3千4百万円、営業利益は、前期比4千9百万円(47.2%)減益の5千5百万円となりました。
(2) 財政状態
①資産当連結会計年度末の総資産は1,323億2千万円で、前連結会計年度末と比較し90億7千万円の減少となりました。その内訳は次のとおりであります。1 流動資産:125億2千万円減少借入金返済等による現金及び預金の減少63億1百万円、備蓄材取り崩し等によるたな卸資産の減少77億8千万円等によるものであります。
2 有形固定資産:4億7千9百万円減少設備投資による増加28億2千6百万円、減価償却による減少26億9千8百万円、処分等による減少6億1千7百万円等によるものであります。
3 無形固定資産:2千4百万円増加設備投資による増加1億6千2百万円、償却による減少4億3千9百万円等によるものであります。
4 投資その他の資産:39億4百万円増加投資有価証券の時価評価による増加14億2千4千万円、退職給付に係る資産の増加27億5千2百万円等によるものであります。
②負債当連結会計年度末の負債総額は874億2千6百万円で、前連結会計年度末と比較し53億4千8百万円の減少となりました。その内訳は次のとおりであります。1 流動負債:13億3千4百万円増加仕入債務の減少5億4千8百万円、短期借入金の増加13億8百万円、未払消費税等の増加9億8千8百万円等によるものであります。
2 固定負債:66億8千3百万円減少長期借入金の減少78億4千8百万円等によるものであります。なお、当連結会計年度末の借入金残高は、短期・長期を合計して485億9千3百万円となり、前連結会計年度末と比較して65億4千万円減少いたしました。
③純資産当連結会計年度末の純資産は、448億9千4百万円となり、前連結会計年度末と比較して37億2千1百万円の減少となりました。これは利益剰余金の減少55億2千8百万円、その他有価証券評価差額金の増加10億9千5百万円、退職給付に係る調整累計額の増加7億8千7百万円等によるものであります。この結果、自己資本比率は29.5%となり、前連結会計年度末と比較して0.9%減少いたしました。また、1株当たりの純資産額は、前連結会計年度末の2,789円01銭から2,536円19銭となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による37億7千7百万円の収入、投資活動で28億2千7百万円の支出、財務活動では70億5千3百万円の支出となりました。この結果、現金及び現金同等物は当連結会計年度に63億1百万円減少し、当連結会計年度末残高は229億7千9百万円となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕税金等調整前当期純損失63億4千5百万円、売上債権の増加13億1千2百万円、仕入債務の減少6億4千8百万円、法人税の納付による6億3千6百万円等の支出があった一方、減価償却費32億3千8百万円、備蓄材取り崩し等によるたな卸資産の減少78億2千7百万円がありましたので、営業活動全体として37億7千7百万円の収入となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕有形固定資産の取得による支出39億4千5百万円等により、投資活動全体として28億2千7百万円の支出となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕借入金による収入が6億7千8百万円あった一方で、長期借入金の返済69億6千万円、リース債務の返済7億3千1百万円等により、財務活動全体として70億5千3百万円の支出となりました。
(4) 生産、受注及び販売の状況
(1)生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼鋼材事業
43,113
△12.1
ばね事業
31,671
△14.5
素形材事業
8,417
△14.1
機器装置事業
8,905
△12.6
合計
92,108
△13.2
(注)金額は販売価格によっております。
(2)受注状況当社グループでは、主に国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。
(3)販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
特殊鋼鋼材事業
44,879
△19.7
ばね事業
38,457
△15.0
素形材事業
8,417
△12.7
機器装置事業
8,933
△12.8
その他の事業
2,834
△20.6
調整額
(△5,717)
(―)
合計
97,804
△16.5
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①
資本の財源及び資金の流動性
1 資金需要当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料や部品の購入及び設備投資によるものであります。
2 財務政策当社グループは、設備投資を厳選して実施することで財務の健全性を保ちながら、営業活動によるキャッシュ・フロー収入を基本に、将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積り及び前提条件は、以下の事項及び「第5
経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。
(a)繰延税金資産の回収可能性当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(b)退職給付債務及び退職給付費用の算定当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(c)減損会計における将来キャッシュ・フロー当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。 当社グループは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(185百万円)を計上しております。 これは当社社員寮の借地権を売却することを決定したことに伴い、建物及び構築物を処分することから帳簿価額を備忘価額まで減額し、減損損失として計上しております。