【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナ下での行動制限の緩和などにより、景気の持ち直しが期待されましたが、ロシア・ウクライナ情勢の長期化などの地政学的リスクを契機とした資源価格の高騰や円安の進行によるコストアップ、一部の半導体や電子部品などの供給不足などの影響により、本格的な景気回復には至りませんでした。
このような環境下にあって当社グループは、2022年4月よりスタートした中期経営計画「Progress’24」の基本方針である「高収益事業の拡大と持続可能な成長に向けた基盤事業の強化」のもと、半導体製造関連分野に向けて、高機能樹脂加工品などの成長・注力事業の拡大を図るとともに、基盤事業である繊維事業では、カジュアル需要の取り込みや独自技術による高機能・高付加価値素材の拡販などにより、業績回復に努めました。また、原燃料などの価格高騰に対しては、販売価格への転嫁とコストダウンに取り組み、収益改善を図りました。
この結果、売上高は1,535億円(前年同期比16.1%増)、営業利益は86億7千万円(同15.2%増)、経常利益は100億2千万円(同14.1%増)となりましたが、特別損失に減損損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は55億1千万円(同1.5%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(繊維事業)
糸は、高付加価値製品が順調に推移し、国内及び海外子会社ともに、増収となりました。
テキスタイルは、カジュアル向け素材の受注が海外子会社を中心に回復し、また、ユニフォーム向け素材も順調に推移し、増収となりました。
繊維製品は、国内カジュアル衣料の受注が増加したことにより、増収となりました。
また、これまで進めてきた収益改善策も着実に進捗しました。
この結果、売上高は565億円(前年同期比26.5%増)、営業利益は3億円(前年同期は営業損失1億7千万円)となり、5期ぶりに黒字化しました。
(化成品事業)
軟質ウレタンは、自動車内装材向けでは、国内及び中国子会社で半導体不足や中国のゼロコロナ政策によるサプライチェーンの混乱の影響はあったものの回復傾向で推移し、また、ブラジル子会社の受注が順調で、全体では増収となりました。
機能樹脂製品は、半導体製造装置向け高機能樹脂加工品が好調に推移し、また、自動車向け機能フィルムの受注が回復し、増収となりました。
住宅用建材は、景観材及び断熱材が順調で、増収となりました。
機能資材は、補強用繊維資材の受注が回復し、増収となりました。
この結果、売上高は597億円(前年同期比15.5%増)、営業利益は37億1千万円(同24.6%増)となりました。
(環境メカトロニクス事業)
エレクトロニクスは、飲料容器の検査装置や基板検査装置の販売は低調でしたが、半導体業界向け液体成分濃度計の販売が順調に推移し、子会社でも半導体洗浄装置の大型案件があり、増収となりました。
エンジニアリングは、排ガス処理設備及びプラント関係の大型案件が少なく、減収となりました。
バイオメディカルは、撹拌脱泡装置の海外向け販売などが順調で増収となりました。また、工作機械は、中国向けの販売は低調に推移しましたが、国内及び米国向けの販売が順調でした。
この結果、売上高は242億円(前年同期比2.9%増)、営業利益は28億3千万円(同2.1%増)となりました。
(食品・サービス事業)
食品は、内食需要の定着により、成型スープの販売が好調で、増収となりました。
ホテル関連は、行動制限緩和や観光事業支援策の効果により、増収となりました。
この結果、売上高は92億円(前年同期比9.8%増)、営業利益は4億6千万円(同71.0%増)となりました。
(不動産事業)
不動産賃貸は、一部賃貸条件の変更などにより、売上高は37億円(前年同期比1.9%減)となり、修繕費の増加などにより営業利益は24億3千万円(同11.4%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ37億1千万円減少し、当連結会計年度末には103億6千万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、25億1千万円(前連結会計年度は92億4千万円の資金の増加)となりました。これは、棚卸資産の増加による資金減69億3千万円があったものの、税金等調整前当期純利益76億1千万円や減価償却費の内部留保51億8千万円があったことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、29億6千万円(前連結会計年度は33億4千万円の資金の減少)となりました。これは、投資有価証券の売却による収入16億円があったものの、有形及び無形固定資産の取得による支出45億3千万円があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、35億8千万円(前連結会計年度は140億6千万円の資金の減少)となりました。これは、配当金の支払額20億6千万円や自己株式の取得による支出20億円があったことなどによるものです。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
52.5
53.7
54.8
57.4
58.2
時価ベースの自己資本比率(%)
24.8
32.2
23.2
20.8
27.2
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
2.4
2.9
3.0
1.5
6.2
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
33.9
29.4
40.9
51.8
7.7
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」を使用しております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しております。
③生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
繊維事業(百万円)
43,661
136.5
化成品事業(百万円)
50,743
118.8
環境メカトロニクス事業(百万円)
17,981
104.9
食品・サービス事業(百万円)
5,708
105.1
合計(百万円)
118,095
121.4
(注)1.セグメント間の取引については、仕入先の属するセグメントにおいて相殺消去しております。
2.繊維事業には、上記生産実績のほかに、販売を主たる事業とする会社の商品仕入実績が、8,891百万円あります。
3.不動産事業は、生産活動を行っておりません。
4.金額は製造原価で記載しております。
イ.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
環境メカトロニクス事業
17,199
143.3
11,402
190.5
(注)上記以外は、主として見込生産を行っております。
ウ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
繊維事業(百万円)
56,507
126.5
化成品事業(百万円)
59,726
115.5
環境メカトロニクス事業(百万円)
24,271
102.9
食品・サービス事業(百万円)
9,292
109.8
不動産事業(百万円)
3,724
98.1
合計(百万円)
153,522
116.1
(注)1.セグメント間の取引については、販売会社の属するセグメントにおいて相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、相手先別販売実績が総販売実績の10%未満のため、省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
ア.当連結会計年度の経営成績の分析
(ア)売上高
当連結会計年度の売上高は1,535億円と前連結会計年度に比べ16.1%、213億円の増収となりました。これは「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、繊維事業のカジュアル衣料品や化成品事業の半導体製造装置向け高機能樹脂加工品の販売が順調に推移したことなどによります。
(イ)営業利益
当連結会計年度の営業利益は86億7千万円と前連結会計年度に比べ15.2%、11億4千万円の増益となりました。これは、繊維事業や化成品事業の売上が増加したことなどによります。
(ウ)経常利益
当連結会計年度の経常利益は100億2千万円と前連結会計年度に比べ14.1%、12億4千万円の増益となりました。これは、営業利益の増益に加え、営業外損益が受取配当金や為替差益の増加などで前連結会計年度に比べ9千万円改善したことによります。
(エ)特別損益
当連結会計年度の特別利益は6億2千万円でその主なものは、投資有価証券売却益4億6千万円であります。一方、特別損失は30億3千万円でその主なものは、減損損失24億3千万円、火災損害等損失2億9千万円、固定資産処分損2億9千万円であります。
(オ)親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は55億1千万円と前連結会計年度に比べ1.5%、8千万円の減益となりました。これは、経常利益の増益や税金費用の減少があったものの、特別損益が前連結会計年度に比べて20億4千万円悪化したことなどによります。
また、1株当たり当期純利益は287.08円と前連結会計年度に比べ6.73円増加しました。
イ.当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金や有形固定資産は減少しましたが、棚卸資産や投資有価証券が増加したことなどにより、1,740億円と前連結会計年度末に比べ68億円増加しました。
負債は、長期借入金や支払手形及び買掛金は減少しましたが、短期借入金が増加したことなどにより、711億円と前連結会計年度末に比べ13億円増加しました。
純資産は、その他有価証券評価差額金や利益剰余金が増加したことなどにより、1,029億円と前連結会計年度末に比べ54億円増加しました。
以上の結果、自己資本比率は0.8ポイント上昇して58.2%となりました。
ウ.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画「Progress’24」の初年度である2022年度では、半導体製造関連分野に向けて、高機能樹脂加工品などの成長・注力事業の拡大を図るとともに、基盤事業である繊維事業では、カジュアル需要の取り込みや独自技術による高機能・高付加価値素材の拡販などにより、業績回復に努めました。また、原燃料などの価格高騰に対しては、販売価格への転嫁とコストダウンに取り組み、収益改善を図りました。結果、売上高、営業利益とも「Progress’24」1年目の業績目標を達成し、順調に進捗しております。
指標
Progress’24(a)2022年度計画
2022年度(b)(実績)
計画比(b)-(a)
売上高
1,450億円
1,535億円
+85億円
営業利益
70億円
86億円
+16億円
R O E
5.5%
5.6%
+0.1ポイント
R O A
4.1%
5.1%
+1.0ポイント
R O I C
4.3%
5.3%
+1.0ポイント
(注)ROE:自己資本当期純利益率、ROA:総資産営業利益率、ROIC:投下資本利益率
エ.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ア.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
イ.契約債務
2023年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
年度別要支払額(百万円)
契約債務
合計
1年以内
1年超2年
以内
2年超3年
以内
3年超4年
以内
4年超5年
以内
5年超
短期借入金
10,974
10,974
-
-
-
-
-
長期借入金
3,582
2,027
148
203
600
506
96
リース債務
856
148
140
120
119
95
231
その他有利子負債
128
-
-
-
-
-
128
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
当社グループの第三者に対する保証は、社会福祉法人の借入金に対する債務保証であります。保証した借入金等の債務不履行が保証期間に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2023年3月31日現在の債務保証額は、230百万円であります。
ウ.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備などの長期資金は、固定金利の長期借入金での調達を基本としております。また、当社及び国内子会社は、CMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社の余剰資金を当社へ集約し、一元管理を行うことで、資金の効率化を図っております。
なお、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計9,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入未実行残高9,000百万円)。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。