【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境や企業収益の改善を背景に緩やかな回復基調で推移いたしましたが、海外では、米中貿易摩擦の長期化により、米中はもとより近隣諸国の経済も減速するなど、景気は製造業を中心に不透明感が拡大し、市場環境の悪化が顕著となりました。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響が世界経済に及ぼす懸念も日に日に高まりを見せており、不透明感がより一層深まる状況となりました。
当社の事業に関連する業界におきましても、国内外の設備投資は自動車関連を中心に需要が減速し、厳しい事業環境となりました。
このような経営環境のもとではありますが、当社グループは、中長期的な事業計画・方針のもと、2021年3月期までの3ヵ年の中期経営計画(TOYO-G-Plan2020)の基本方針である”グローバル成長市場戦略に向けた事業の拡大、成長及び構造改革”に沿って、収益向上への事業活動を推進してまいりました。
その結果、当社グループの当連結会計年度の業績につきましては、受注高は、自動車および中国でのIT電子機器関連からの需要が低調であったことから、24,794百万円(前年同期比20.2%減)、売上高は、30,453百万円(同4.2%減)となりました。このうち、国内売上高は10,821百万円(同0.9%減)、海外売上高は19,632百万円(同5.9%減)となり、海外比率は64.5%(同1.1ポイント低下)となりました。
利益につきましては、第3四半期連結累計期間以降の売上高が減少したことから生産操業度低下による固定費回収不足が生じ、営業利益は1,427百万円(前年同期比30.6%減)、経常利益は1,439百万円(同32.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は870百万円(同35.2%減)となりました。
また、当社グループにおける当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産は、28,130百万円(前年同期比950百万円減)、負債は9,760百万円(同2,284百万円減)、純資産は18,370百万円(同1,333百万円増)となりました。
製品別の売上の状況は、次のとおりであります。
[射出成形機]
射出成形機につきましては、国内は、雑貨や容器類などの生活用品や医療機器関連向けの売上が増加しました。また、海外では、中国でのIT電子機器や自動車関連は減少しましたが、欧州や米州での生活用品関連向けの売上が増加しました。その結果、売上高は23,824百万円(前年同期比4.8%増)となりました。
[ダイカストマシン]
自動車関連向けを中心とするダイカストマシンにつきましては、国内の売上は減少しました。また、海外では中国や東南アジアの売上が減少しました。その結果、売上高は6,629百万円(前年同期比26.7%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,054百万円となり前連結会計年度末と比べ558百万円の減少となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少及び法人税等の支払の支出要因があったものの、税金等調整前当期純利益の計上、たな卸資産の減少及び減価償却費の計上等により904百万円の収入(前連結会計年度2,438百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得及び生産能力充実のための投資を行ったこと等により1,894百万円の支出(前連結会計年度601百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関へ長期借入金の返済を行ったこと及び配当を行ったこと等による689百万円の支出があったものの、自己株式の処分及び短期借入金の増額により434百万円の収入(前連結会計年度623百万円の支出)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
区分
生産高(百万円)
前年同期比(%)
成形機
29,717
△7.4
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
区分
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
成形機
24,794
△20.2
5,567
△50.4
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
区分
販売高(百万円)
前年同期比(%)
成形機
30,453
△4.2
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
株式会社マルカ
3,346
10.5
3,675
12.1
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積もりについて、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なる可能性があります。当社グループが採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表の作成における重要な見積もりの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。
a.貸倒引当金
債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b.投資有価証券の減損
取引関係の維持・強化のために、特定の顧客・仕入先の株式を保有しております。時価のある有価証券については、期末における時価が取得価額に比べ50%以上下落した場合に時価まで減損処理を行い、30%以上50%未満下落した株式等の減損は、個別銘柄毎に回復可能性を検討し、回復する見込みがないものについて減損処理を行っております。また、時価のない有価証券については、期末における実質価額が著しく低下した場合に減損処理を行っております。将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.繰延税金資産
繰延税金資産については、将来の課税所得の見込み及び事業計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。なお、すでに計上した繰延税金資産については、その実現可能性について毎期検討し、内容の見直しを行っておりますが、将来の課税所得の見込みの変化やその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性の評価が変更された場合、繰延税金資産の取崩又は追加計上により親会社株主に帰属する当期純利益が変動する可能性があります。
d.製品保証引当金
成形機のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、過去の実績を基礎にして、当連結会計年度における必要見込額を計上しております。予期せぬ不良の発生等により追加引当が必要になる可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におきましては、米中貿易摩擦が起因と推測される経済減少に伴い、自動車関連の需要は減少しました。また、ローカルスマートフォンを中心としたIT電子機器関連の需要は投資が一巡した影響を受けて減少しました。今後の需要におきましては、生活水準向上等を背景とした日用雑貨や容器類などの生活用品や医療機器、また、第5世代通信(5G)関連での需要が増加すると予想されますが、自動車関連の需要につきましては、引き続き停滞することが予想されます。なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、「2事業等のリスク(1)新型コロナウイルス感染症等の異常事態リスクについて」に記載のとおりであります。
(売上高)
売上高は、国内では、容器類や雑貨などの生活用品や医療関連での売上が増加しましたが、自動車関連の売上が減少しました。また海外では、欧米や米国での生活用品関連の売上は増加しましたが、中国や東南アジアを中心にIT電子機器や自動車関連の売上が減少したことから、30,453百万円(前年同期比同4.2%減)となりました。
(営業利益)
営業利益は、販売費及び一般管理費が5,194百万円(前年同期比1.3%減)となりましたが、売上原価においては、売上高が減少したことから生産操業度低下による固定費回収不足が生じ、原価率が1.3ポイント上昇し1,427百万円(前年同期比30.6%減)となりました。
(経常利益)
経常利益は、1,439百万円(前年同期比32.7%減)となりました。
(税金等調整前当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
税金等調整前当期純利益は、工場解体費用等を含む固定資産除却損96百万円を計上したことから、1,340百万円(前年同期比37.2%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等合計額453百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益16百万円を計上した結果、870百万円(前年同期比35.2%減)となりました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、19,061百万円となり前連結会計年度末に比べ1,969百万円減少しました。これは、主に売上債権の増加204百万円があったものの、現金及び預金の減少558百万円、たな卸資産の減少1,002百万円及びその他流動資産の減少612百万円があったことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、9,069百万円となり前連結会計年度末に比べ1,019百万円増加しました。これは、主に関連会社となったGM-Injection AG株式の取得等による投資有価証券の増加748百万円及び有形固定資産の増加280百万円があったことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、7,180百万円となり前連結会計年度末に比べ2,050百万円減少しました。これは、主に短期借入金の増加100百万円があったものの、仕入債務の減少1,536百万円、設備関係未払金を含むその他流動負債の減少260百万円及び未払法人税等の減少227百万円があったことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、2,580百万円となり前連結会計年度末と比べ234百万円減少しました。これは、主に長期借入金から1年内返済予定の長期借入金への振替による減少200百万円があったことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、18,370百万円となり前連結会計年度末に比べ1,333百万円増加しました。これは、主に第三者割当等による自己株式の処分を行ったことによる自己株式の減少709百万円、当該自己株式の処分による資本剰余金の増加329百万円及び利益剰余金の増加380百万円があったことによるものであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの事業活動における主な資金需要は、運転資金及び設備資金等であります。運転資金需要は、生産活動のための原材料費や労務費及び製造経費をはじめ、受注獲得に向けた販売手数料等の販売費、新製品開発のための研究開発費等であります。設備資金等の需要は、事業規模拡大及び生産性向上を目的とした生産設備等の取得であります。これらの資金需要については、営業キャッシュ・フローを源泉としつつ、必要に応じて、運転資金等の短期的な資金については金融機関からの短期借入、設備資金等の長期的な資金については、金融機関からの長期借入及び自己資本での資金調達にて対応していくこととしております。
資金の流動性については、事業活動に必要な資金の効率的な管理により流動性の確保を行っておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響による資金繰り悪化に備え、有価証券報告書提出日現在において、金融機関とのコミットメントライン契約を1,000百万円から2,000百万円に拡大し、機動的かつ安定的な調達手段の確保を行っております。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期計画「TOYO-G-Plan 2020」において、売上高、売上高営業利益率及び自己資本利益率(ROE)を重点指標として位置付けております。当連結会計年度における売上高は30,453百万円(前年同期比4.2%減)、売上高営業利益率は4.7%(前年同期比1.8ポイント減少)、自己資本利益率(ROE)は5.0%(前年同期比3.2ポイント減少)となりました。これは、米中貿易摩擦の影響を受けたことによるものであります。今後は、さらに新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言や世界各国のロックダウンによる各種経済活動の自粛要請は、徐々に解除されつつありますが、当社におきましては、移動制限や展示会開催の中止等で営業活動に影響しております。このような状況の中ではありますが、将来の来る市場回復時への対応に備え、中期計画の方針に基づく諸施策に取り組み、重点指標の継続的な改善に取り組んでまいります。