【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)業績の状況
当第2四半期連結累計期間(2023年4月1日から2023年9月30日まで)における当社グループの事業環境は、ウクライナの地政学的問題、米中貿易摩擦、世界的な物価上昇、円安の進行、主要顧客のひとつである半導体産業の稼働状況などにより、引き続き、先行きを見通すことは困難な状況でした。また、主に鉄鋼、化学、石油精製向けにオンサイトで供給するセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は、前期比で減少しました。一方、特に欧米で、エネルギーコストは一時期の高値圏に比べ下落基調に入り、セパレートガスの製造原価に多く占める電力コストの負担は前期に比べ緩和されました。また、コスト増加分の販売価格への転嫁等のグループ全体での価格マネジメント、さまざまな生産性向上に取り組みました。
このような状況の下、当第2四半期連結累計期間における業績は、売上収益6,125億71百万円(前年同期比 6.8%増加)、コア営業利益816億48百万円(同 45.3%増加)、営業利益815億76百万円(同 51.4%増加)、親会社の所有者に帰属する四半期利益485億47百万円(同 38.1%増加)となりました。
為替の影響については、期中平均レートが前年同期に比べ、米ドルで135円30銭から142円61銭へと7円31銭(同 5.4%円安)、ユーロで139円14銭から154円81銭へと15円67銭(同 11.3%円安)となるなど、売上収益は全体で約257億円、コア営業利益は全体で約30億円多く表示されています。
なお、コア営業利益は営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
セグメント業績は、次のとおりです。
なお、セグメント利益はコア営業利益で表示しております。
① 日本
産業ガス関連の売上収益は、主力製品であるセパレートガス、炭酸ガス及びLPガスの出荷数量は減少しましたが、コスト上昇を背景とした販売価格の改定効果により、増収となりました。また、エレクトロニクス関連での電子材料ガスの出荷数量は軟調でした。機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に、中大型案件の進行基準による計上等により、増収となりました。一方、特定顧客向けにオンサイト供給を担う子会社のジョイント・オペレーション化による減収影響がありました。
以上の結果、日本セグメントの売上収益は、2,021億79百万円(前年同期比 4.0%増加)、セグメント利益は、213億31百万円(同 67.7%増加)となりました。
② 米国
産業ガス関連の売上収益は、主力製品であるセパレートガスの出荷数量は減少しましたが、コスト上昇等を背景とした販売価格の改定効果により、増収となりました。機器・工事では、産業ガス関連はガス関連機器を中心に好調であり、エレクトロニクス関連も順調に推移し、増収となりました。
以上の結果、米国セグメントの売上収益は、1,695億19百万円(前年同期比 16.1%増加)、セグメント利益は、234億37百万円(同 45.8%増加)となりました。なお、円安の影響で売上収益及びセグメント利益は多く表示されています。
③ 欧州
売上収益は、主力製品であるセパレートガスにおいては、出荷数量が減少したことに加え、エネルギー価格の落ち着きを背景とした販売価格の改定影響はあったものの、円安の影響もあり、増収となりました。機器・工事では、ガス関連機器及び医療関連機器の販売が好調で増収となりました。また、生産性向上の取組みによる寄与がありました。
以上の結果、欧州セグメントの売上収益は、1,473億81百万円(前年同期比 8.1%増加)、セグメント利益は、263億63百万円(同 65.7%増加)となりました。
④ アジア・オセアニア
産業ガス関連では、主力製品であるセパレートガスの出荷数量は減少しましたが、コスト上昇等を背景とした販売価格の改定効果により、売上収益は増加しました。なお、主に豪州地域での販売が多くを占めるLPガスでも、販売数量は減少しました。エレクトロニクス関連では、東アジアで、客先の稼働状況による在庫調整や設備投資の先送りに伴い、ガス・機器ともに軟調で大きく減収となりました。
以上の結果、アジア・オセアニアセグメントの売上収益は、781億14百万円(前年同期比 4.5%減少)、セグメント利益は、85億68百万円(同 4.2%減少)となりました。なお、円安の影響で売上収益及びセグメント利益は多く表示されています。
⑤ サーモス
日本では、スポーツボトル及びケータイマグの販売が好調で、売上収益は増加しました。また、海外での販売は軟調でした。セグメント利益は、物価上昇による原材料価格の上昇と円安による製造コストの増加で、大きく減益となりました。
以上の結果、サーモスセグメントの売上収益は、153億31百万円(前年同期比 1.1%増加)、セグメント利益は、28億68百万円(同 13.3%減少)となりました。
(2)財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末の資産合計は2兆4,259億94百万円で、前連結会計年度末比で2,670億44百万円の増加となっております。為替の影響については、前連結会計年度末に比べ期末日レートが米ドルで16円5銭の円安、ユーロで12円28銭の円安となるなど、約1,592億円多く表示されております。
〔資産〕
流動資産は、現金及び現金同等物や営業債権の増加等により、前連結会計年度末比で1,330億24百万円増加し、6,600億98百万円となっております。
非流動資産は、有形固定資産やのれんの増加等により、前連結会計年度末比で1,340億20百万円増加し、1兆7,658億96百万円となっております。
〔負債〕
流動負債は、その他の流動負債の増加や営業債務の減少等により、前連結会計年度末比で100億90百万円増加し、4,352億47百万円となっております。
非流動負債は、社債及び借入金や繰延税金負債の増加等により、前連結会計年度末比で1,270億56百万円増加し、1兆1,028億52百万円となっております。
〔資本〕
資本は、在外営業活動体の換算差額や親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上による増加等により、前連結会計年度末比で1,298億97百万円増加し、8,878億94百万円となっております。
なお、親会社所有者帰属持分比率は35.2%で前連結会計年度末に比べ1.7ポイント高くなっております。
(3)キャッシュ・フローの分析
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税引前四半期利益、営業債務の増減額、棚卸資産の増減額等により、営業活動によるキャッシュ・フローは879億76百万円の収入(前年同期比 22.0%増加)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
有形固定資産の取得による支出等により、投資活動によるキャッシュ・フローは556億68百万円の支出(前年同期比 31.8%増加)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
社債の発行による収入、長期借入れによる収入、コマーシャル・ペーパーの純増減額等により、財務活動によるキャッシュ・フローは447億45百万円の収入(前年同期は254億48百万円の支出)となりました。
これらの結果に、為替換算差額等を加えた当第2四半期連結累計期間の現金及び現金同等物の四半期末残高は、2,170億77百万円となりました。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループの対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、20億45百万円であります。また、当第2四半期連結累計期間における、当社グループの研究開発活動の状況の変更の内容は、次のとおりであります。
〔日本〕
カーボンニュートラルに向けた取組み
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」の「大規模外部加熱式アンモニア分解水素製造技術の研究開発」へ採択され、大陽日酸株式会社は、担当する水素精製装置の開発を進めています。
新規事業分野
重水素化アンモニアの製造プロセスを確立し、国内で初めて量産体制を構築しました。また、使用済み重水を再濃縮する装置を開発し、国内企業として初めて商業化しました。重水リサイクル体制の構築により、効率的でサステナブルな重水の利用を可能にすると共に、重水素化アンモニアをはじめとする重水素標識化合物のグローバルからの需要に対し、安定供給に貢献します。