【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、景気が持ち直していくことが期待されているものの、世界的な金融引締め等による景気の下振れリスクや、物価上昇等による影響に十分注意を要する状況にあります。このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。これらの結果、当第3四半期連結累計期間の連結売上高は367,868百万円(前年同期比16.2%増)となりました。また、利益面においては、営業利益は58,342百万円(前年同期比25.1%増)、経常利益は68,478百万円(前年同期比17.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は46,283百万円(前年同期比10.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、新型コロナウイルス感染症の感染防止策を講じたうえで、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開しました。宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」および「ヤクルト400」シリーズを中心に、エビデンスを活用し、お客さまに対する飲用促進を図りました。また、インターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」やウェブサイト等による情報発信を通じて、お客さまとの接点を強化しました。店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」シリーズのウィンターパッケージを導入することで、店頭での視認性向上を図るとともに、SNSを活用したキャンペーンを実施し、売り上げの増大に努めました。商品別では、乳製品乳酸菌飲料「Y1000」の品薄状態に対応するため、昨年11月から生産体制を増強しました。また、「ヤクルト400W」について、伊東四朗さん、大泉洋さんを起用したテレビCMを放映し、商品の認知度の向上を目指しました。さらに、ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、11月に期間限定アイテム「ソフール ぶどう」を発売し、ブランドの活性化を図りました。清涼飲料につきましては、昨年11月から、原材料費の上昇および物流費・燃料費等の急激な高騰を受け、価格改定を実施しました。そのほか、東京ヤクルトスワローズのセントラル・リーグ優勝を記念し、応援していただいた皆さまに感謝の意を表すため、記念施策を実施しました。これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は179,733百万円(前年同期比16.8%増)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在29の事業所および1つの研究所を中心に、39の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、昨年12月の一日当たり平均販売本数は約2,766万本となっています。 なお、海外事業所の決算期である2022年1月から12月までの一日当たり平均販売本数は約3,154万本となりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響は、国・地域の感染拡大状況、各国政府・地方政府の方針、各種行政指導等により異なりますが、それぞれ対策を講じ、行政機関の指示に従い、営業・生産活動を行っています。
ア.米州地域米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。米国においては、昨年10月から「ヤクルト」および「ヤクルトライト」のホリデイパッケージを導入するとともに、広告活動等による販売支援を強化した結果、販売実績は順調に推移しました。これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は47,768百万円(前年同期比36.1%増)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域アジア・オセアニア地域においては、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。なお、ミャンマーにおいては、政情等に鑑み、営業・生産活動を一時的に見合わせています。インドネシアにおいては、昨年10月から店頭チャネルで「ヤクルトライト」の販売を開始し、売り上げの増大に努めました。一方、中国においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うロックダウン等の影響を受け、多くの地区で活動が制限されました。これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は110,354百万円(前年同期比10.6%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。同地域では、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向けた各種の取り組みを行うほか、健康志向の高まりを契機とした各国での市場特性に合った販売活動の展開により、持続的成長を目指しました。一方、ロシア・ウクライナ問題の長期化に伴い、当社は、両国内で事業展開をしていないものの、引き続きヨーロッパ地域全体への影響について注視していきます。これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は7,388百万円(前年同期比4.5%増)となりました。
・医薬品製造販売事業部門医薬品につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、多くの施設で医療従事者に対して直接の面談ができない状況が継続しています。その対応として、ウェブの活用等により、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品等の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、行政方針に沿って後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力を活かした活動を展開しました。しかしながら、昨年4月に実施された薬価改定において大半の当社製品の薬価が引き下げられたことや、9月に日本セルヴィエ社と抗悪性腫瘍剤「オニバイド®」に関して締結していたプロモーション契約が終了したことにより、売り上げに影響を受けました。一方、研究開発においては、4SC社(ドイツ)から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」等の開発品目の臨床開発を推進しました。これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は10,247百万円(前年同期比22.4%減)となりました。
・その他事業部門その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。具体的には、乳酸菌生まれの保湿成分を配合したスキンケアシリーズ「ラクトデュウ」について、昨年11月に歌手の森高千里さんを起用したテレビCMを放映するとともに、「ラクトデュウ S.E.ローション2」を新発売、「ラクトデュウ S.E.ミルク」をリニューアル発売しました。また、高機能基礎化粧品「パラビオ」シリーズのブランド活性化策を展開しました。そのほか、東京ヤクルトスワローズのセントラル・リーグ優勝を記念し、応援していただいた皆さまに感謝の意を表すため、薬用歯みがき剤「ヤクルト 薬用アパコート S.E.<ナノテクノロジー>」等を対象商品とした記念施策を実施しました。一方、プロ野球興行につきましては、ファンの方々のご声援を受け、東京ヤクルトスワローズが2年連続でセントラル・リーグ優勝および日本シリーズ進出を果たすことができました。また、神宮球場において入場制限が解除されたことに加え、各種ファンサービスの充実やさまざまな情報発信を行った結果、入場者数が増加しました。これらの結果、その他事業部門の連結売上高は20,566百万円(前年同期比38.7%増)となりました。
当第3四半期連結会計期間末の総資産は770,194百万円(前連結会計年度末比97,339百万円の増加)となりました。純資産は562,061百万円(前連結会計年度末比77,125百万円の増加)となりました。主な要因は、自己株式を取得したものの、円安による為替換算調整勘定の増加および親会社株主に帰属する四半期純利益により利益剰余金が増加したためです。また、自己資本比率は66.2%(前連結会計年度末比0.1ポイントの減少)となりました。
(2) 経営方針・経営戦略等当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営方針・経営戦略等に重要な変更はありません。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上および財務上の課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は6,606百万円です。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 従業員数当第3四半期連結累計期間において、連結会社または提出会社の従業員数の著しい増減はありません。
(6) 生産、受注及び販売の実績当第3四半期連結累計期間において、生産、受注および販売実績の著しい変動はありません。
(7) 主要な設備当第3四半期連結累計期間において、新たに確定した重要な設備の新設は次のとおりです。
会社名(所在地)
セグメントの名称
設備の内容
投資予定額
資金調達方法
着手年月
完了予定年月
完成後の生産能力
総額(百万円)
既支払額(百万円)
㈱千葉ヤクルト工場(千葉県千葉市、佐倉市)
飲料および食品製造販売事業(日本)
新工場建設
35,000
自己資金借入金リース
2024年
2027年
1日あたり生産能力260万本