【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の状況
当連結会計年度の世界経済につきましては、地政学リスクの高まりに伴う資源・エネルギー価格の高騰及び諸物価の上昇、欧米諸国を中心とした政策金利の引き上げや急激な為替変動、加えてサプライチェーンなど、注視すべき状況にありました。
一方、当社グループが参画しておりますエレクトロニクス産業におきましては、情報通信技術の拡充に伴うデータ社会への移行や脱炭素社会への取り組みを背景に、電子機器を支える半導体の役割とその技術革新の重要性が高まり、半導体製造装置市場は過去最大規模になりました。
このような状況のもと、当連結会計年度の経営成績の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度の売上高は2兆2,090億2千5百万円(前連結会計年度比10.2%増)となりました。国内売上高が2,399億3千7百万円(前連結会計年度比4.2%増)、海外売上高が1兆9,690億8千8百万円(前連結会計年度比11.0%増)となり、連結売上高に占める海外売上高の比率につきましては89.1%となりました。
売上原価は1兆2,246億1千7百万円(前連結会計年度比12.1%増)、売上総利益は9,844億8百万円(前連結会計年度比8.0%増)となり、売上総利益率は44.6%(前連結会計年度比0.9ポイント減)となりました。
販売費及び一般管理費は3,666億8千4百万円(前連結会計年度比17.3%増)となり、連結売上高に対する比率は16.6%(前連結会計年度比1.0ポイント増)となりました。
これらの結果、営業利益は6,177億2千3百万円(前連結会計年度比3.1%増)となり、営業利益率は28.0%(前連結会計年度比1.9ポイント減)となりました。経常利益は、営業外収益100億6千6百万円、営業外費用26億4百万円を加減し6,251億8千5百万円(前連結会計年度比3.9%増)となりました。
税金等調整前当期純利益は6,248億5千6百万円(前連結会計年度比4.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,715億8千4百万円(前連結会計年度比7.9%増)となりました。
この結果、1株当たり当期純利益は1,007円82銭(前連結会計年度の1株当たり当期純利益は935円95銭)となりました。
当連結会計年度のセグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対応しております。
・半導体製造装置
ロジック/ファウンドリ向け半導体に対する設備投資は、社会のデジタル化を背景に、最先端から成熟世代まで広い範囲での投資がおこなわれました。メモリ向け設備投資は、年後半より在庫調整に伴う投資の見直しがおこなわれましたが、一年を通じてみると高い水準となりました。このような状況のもと、当セグメントの当連結会計年度の売上高は2兆1,552億6百万円(前連結会計年度比10.9%増)、セグメント利益は6,963億7千8百万円(前連結会計年度比4.3%増)となりました。
・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置
テレビ用大型液晶パネル向け設備投資が一巡したことにより、FPD TFTアレイ向け製造装置市場全体としては減速傾向となりました。一方、中小型有機ELパネル向け設備投資については、最終製品に搭載されるディスプレイが液晶から有機ELへと転換されることに伴う投資が継続しました。このような状況のもと、当セグメントの当連結会計年度の売上高は536億7千4百万円(前連結会計年度比10.3%減)、セグメント利益は10億6千1百万円(前連結会計年度比72.6%減)となりました。
・その他
当セグメントの当連結会計年度における売上高は342億1千4百万円(前連結会計年度比21.6%増)、セグメント利益は12億2千6百万円(前連結会計年度比75.7%増)となりました。
また、当連結会計年度末の財政状態の状況は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ3,322億5千6百万円増加し、1兆7,409億5千9百万円となりました。主な内容は、現金及び預金の増加1,988億2千5百万円、棚卸資産の増加1,783億6千3百万円によるものであります。
有形固定資産は、前連結会計年度末から360億1千万円増加し、2,590億8千8百万円となりました。
無形固定資産は、前連結会計年度末から60億1千9百万円増加し、285億5千9百万円となりました。
投資その他の資産は、前連結会計年度末から428億5千万円増加し、2,829億8千6百万円となりました。
これらの結果、総資産は、前連結会計年度末から4,171億3千6百万円増加し、2兆3,115億9千4百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ1,613億1千4百万円増加し、6,298億9千3百万円となりました。主として、前受金の増加1,866億1千4百万円、未払法人税等の減少360億1千5百万円によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ33億4千5百万円増加し、821億7千5百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ2,524億7千6百万円増加し、1兆5,995億2千4百万円となりました。主として、親会社株主に帰属する当期純利益4,715億8千4百万円を計上したことによる増加、前期の期末配当及び当期の中間配当2,529億8千8百万円の実施による減少、その他有価証券評価差額金の増加139億6千万円によるものであります。この結果、自己資本比率は68.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ1,368億2千3百万円増加し、4,724億7千1百万円となりました。なお、現金及び現金同等物に含まれていない満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資6億2千8百万円を加えた残高は、前連結会計年度末に比べ1,018億2千5百万円増加し、4,731億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、前連結会計年度に比べ1,428億8千2百万円増加の4,262億7千万円の収入となりました。主な要因につきましては、税金等調整前当期純利益6,248億5千6百万円、前受金の増加1,856億1千6百万円がそれぞれキャッシュ・フローの収入となり、法人税等の支払額2,091億1千1百万円、棚卸資産の増加1,734億8千7百万円がそれぞれキャッシュ・フローの支出となったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主として有形固定資産の取得による支出668億9千7百万円により、前連結会計年度の556億3千2百万円の支出に対し417億5千6百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、主に配当金の支払2,529億8千8百万円により、前連結会計年度の1,672億5千6百万円の支出に対し2,565億3千4百万円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、市場の変化に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産の実績は販売の実績と傾向が類似しているため、記載を省略しております。受注の実績については、短期の受注動向が顧客の投資動向により大きく変動する傾向にあり、中長期の会社業績を予測するための指標として必ずしも適切ではないため、記載しておりません。また、販売の実績については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」における各セグメントの業績に関連付けて説明しております。
なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)
相手先
販売高
(百万円)
割合
(%)
Samsung Electronics Co., Ltd.
312,279
15.6
Intel Corporation
303,982
15.2
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Ltd.
231,393
11.5
当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
相手先
販売高
(百万円)
割合
(%)
Intel Corporation
357,636
16.2
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Ltd.
320,427
14.5
Samsung Electronics Co., Ltd.
275,916
12.5
(注) 販売高には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績については、当年度前半から中頃にかけて電子機器の急激な需給の逼迫が一巡したものの、顧客による積極的な半導体製造装置向け設備投資が継続し、通期の連結売上高は2兆2,090億2千5百万円(前連結会計年度比10.2%増)、営業利益は6,177億2千3百万円(前連結会計年度比3.1%増)となり、3期連続で過去最高を更新しました。
営業利益率は、前連結会計年度比1.9ポイント減の28.0%となりましたが、主として、部材高騰、インフレ等、一過性の影響があったことと、過去最高の研究開発投資をおこなったことに起因します。一過性の要因については、付加価値の高い製品を投入することで、価格を適正化し、将来の成長に繋げていきます。なお、研究開発費の総額は、当年度に設定した新中期経営計画で目標としている財務モデルの達成に向けて、また将来の更なる成長を目指して、前連結会計年度から329億4千万円増加(前連結会計年度比20.8%増)し、過去最高の1,911億9千6百万円となりました。
営業利益に、営業外損益及び特別損益を反映し、税金費用を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は4,715億8千4百万円となり、売上高に対する比率は、前連結会計年度から0.5ポイント下降し、21.3%となりました。1株当たり当期純利益は、前述の通り、売上高の増加に伴う利益の増加によって、1,007円82銭となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、当社グループでは売上高、営業利益率、ROE(自己資本利益率)を中期経営計画上の財務モデルにおける指標として使用しております。
具体的には、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑦ 目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の税金等調整前当期純利益に対応しております。
・半導体製造装置
当セグメントの当連結会計年度における事業環境は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。当セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比10.9%増の2兆1,552億6百万円となりました。事業環境で記載の通り、半導体需要の高まりを背景に、特にロジック/ファウンドリ顧客における新規装置への設備投資が積極的に展開されるとともに、注力分野における販売戦略も順調に進捗した結果、当連結会計年度の新規装置売上高は、前連結会計年度比12.9%増加しました。加えて、中古装置や改造、パーツ・サービスの売上高も、累積出荷台数の増加と顧客の高い装置稼動に伴い、順調に成長しました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は32.3%と、前連結会計年度の34.3%から2.0ポイント下降しました。セグメント売上高は増加しましたが、世界的なインフレによる売上原価の上昇と中長期的な成長を見据えて研究開発費を増額したことによって、固定費比率が上昇したことが、主な要因であります。
・FPD製造装置
当セグメントの当連結会計年度における事業環境は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績及び財政状態の状況」に記載のとおりであります。当セグメントの当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度比10.3%減の536億7千4百万円となりました。当連結会計年度においては、液晶ディスプレイから有機ELディスプレイへの移行の端境期にあり、FPD製造装置向け設備投資が調整されました。結果として、当セグメントの売上高は減少しました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は2.0%と、前連結会計年度の6.5%から4.5ポイント低下しました。これは主に、顧客のFPD製造装置向け投資が調整される中、当連結会計年度において新規装置売上が減少したこと等が要因であります。
② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容、並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
財政状態については、当連結会計年度末における総資産が2兆3,115億9千4百万円となり、前連結会計年度末から4,171億3千6百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物、棚卸資産、有形固定資産と、投資その他の資産に含まれる投資有価証券の増加によるものです。現金及び現金同等物は、好調な半導体製造装置市場の市況を背景に、親会社株主に帰属する当期純利益が増加したことにより、前連結会計年度末から1,368億2千3百万円増加し4,724億7千1百万円となりました。棚卸資産は、翌連結会計年度以降も引き続き装置・スペアパーツの需要が旺盛な状況を反映して、また部材調達の安定化等の施策も織り込んだ結果、前連結会計年度末から1,783億6千3百万円増加し6,522億8百万円となりました。有形固定資産は、最先端技術の研究開発に必要となる装置や測定器の取得、国内、韓国及び台湾におけるオペレーションの強化を目的とした各事業所の新設・改修に加え、山梨県韮崎市に開発棟を建設中であること等を反映し、前連結会計年度末から360億1千万円増加し2,590億8千8百万円となりました。投資有価証券は、政策的に保有している上場株式の時価評価額が上昇したことにより、前連結会計年度末から205億3千4百万円増加し1,655億7百万円となりました。このような背景により、総資産回転日数(注)は前連結会計年度末の301日から347日へ増加しました。
キャッシュ・フローについては、現金及び現金同等物に、満期日又は償還日までの期間が3ヶ月を超える定期預金及び短期投資を加えた残高は、前連結会計年度末から1,018億2千5百万円増加し、4,731億円となりました。これは主に、前述の通り、当連結会計年度の業績が前連結会計年度に引き続き、好調であったことによります。
当連結会計年度においては、事業の拡大と部材調達の安定化等の施策の実行に伴い、棚卸資産の水準が継続して上昇するなど、必要な運転資本が増加するなか、高まる技術要求に対応し、競合との差別化を図ることができる革新的で付加価値の高い技術の創出のための研究開発、生産技術革新や環境負荷低減を考慮したサプライヤーとの協業等への成長投資を継続しました。一方で、当社グループの株主還元政策である配当性向50%に基づき、2,529億8千8百万円を株主に還元しました。これらは、事業運営を通じて獲得した手元資金によって賄っております。引き続き、高利益率によって作り上げた強固な財務基盤を維持しながら、将来への成長投資と積極的な株主還元に取り組んでまいります。
なお、経営指標の一つであるROE(自己資本利益率)については、32.3%となりました。
(注) 総資産回転日数=当連結会計年度期首・期末の総資産の平均÷当連結会計年度の売上高×365
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
なお、地政学リスクや感染症、自然災害等が会計上の見積りに与える影響は、世界全体の半導体需要は地政学リスクの影響が小さいこと、当社グループにおいては、急激な変化に対応できるよう前以て部品調達を実行し、かつ、変化に合わせて生産・供給を機動的に対応できるような体制を整えていること等により、現時点においては限定的と認識しています。