【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間における経済環境の概観は以下のとおりであります。
世界経済は、多くの国でインフレが依然高水準で推移するなか、昨年からの欧米を中心とした金融引締めが継続し、景気が緩やかに減速しました。先進国では、米国、欧州で金利上昇や銀行経営不安の影響により企業投資が縮小しました。一方、日本は新型コロナの5類移行や水際対策の撤廃を背景に内需やインバウンド需要の回復が進みました。新興国では中国の景気回復が力強さを欠くなか、外需依存度の高い国を中心に景気が減速しました。
一次産品価格は、世界経済の減速懸念拡大に伴う需要後退を受けて多くの商品が軟調に推移しました。原油価格はOPECプラスの減産等が下支えしましたが、概ね下落基調が続きました。中国が世界最大の輸入国である銅や鉄鉱石の価格は、同国の景気回復ペース鈍化を受けて下落しました。
欧米の債券市場では中央銀行による金融引締め長期化の見通しが強まるなか、短期債を中心に金利上昇が続き、円相場は円安・ドル高が進行しました。株式市場は景気回復期待の強まる日本が大きく上昇し、米国も堅調に推移した一方、欧州はやや軟調でした。
このような経済環境のなか、当第1四半期連結累計期間の経営成績は以下のとおりとなりました。
(単位:百万円)
前第1四半期
連結累計期間
当第1四半期
連結累計期間
増減
収益
2,910,368
2,019,739
△890,629
売上総利益
315,571
276,867
△38,704
営業利益
147,320
95,105
△52,215
持分法による投資損益
87,599
73,035
△14,564
親会社の所有者に帰属する
四半期利益
201,629
141,277
△60,352
(注)「営業利益」は、投資家の便宜を考慮し、日本の会計慣行に従った自主的な表示であり、IFRSで求められている表示ではありません。「営業利益」は、要約四半期連結包括利益計算書における「売上総利益」、「販売費及び一般管理費」及び「貸倒引当金繰入額」の合計額として表示しております。
収益は前第1四半期連結累計期間比(以下「前年同期比」という。)8,906億円(30.6%)減収の2兆197億円となりました。オペレーティング・セグメント別には、主に食料第二でGavilon穀物事業の売却に伴い減収となりました。
売上総利益は前年同期比387億円(12.3%)減益の2,769億円となりました。オペレーティング・セグメント別の主な増減は以下のとおりであります。
金属
191億円減益
商品価格の下落に伴う豪州原料炭事業の減益
アグリ事業
178億円減益
農薬及び肥料の価格下落を背景とするHelena社及びMacroSource社の減益
電力
74億円増益
海外電力卸売・小売事業等の増益
営業利益は前年同期比522億円(35.4%)減益の951億円となりました。
持分法による投資損益は前年同期比146億円(16.6%)減益の730億円となりました。オペレーティング・セグメント別の主な増減は以下のとおりであります。
金属
227億円減益
商品価格の下落に伴う豪州原料炭事業及びチリ銅事業の減益
エネルギー
38億円減益
原油・ガス価格の下落等に伴うLNG事業の減益等
電力
58億円増益
海外発電事業の増益等
以上の結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比604億円(29.9%)減益の1,413億円となりました。
当第1四半期連結累計期間のオペレーティング・セグメント別の業績(親会社の所有者に帰属する四半期利益)は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
前第1四半期
連結累計期間
当第1四半期
連結累計期間
増減
ライフスタイル
557
2,051
1,494
情報ソリューション
1,595
△188
△1,783
食料第一
3,062
5,067
2,005
食料第二
7,095
6,536
△559
アグリ事業
42,204
24,120
△18,084
フォレストプロダクツ
2,806
2,228
△578
化学品
7,265
2,003
△5,262
金属
80,593
43,544
△37,049
エネルギー
18,561
12,041
△6,520
電力
8,840
16,057
7,217
インフラプロジェクト
1,398
2,461
1,063
航空・船舶
9,440
5,544
△3,896
金融・リース・不動産
11,966
9,007
△2,959
建機・産機・モビリティ
6,102
7,354
1,252
次世代事業開発
△399
391
790
次世代コーポレートディベロップメント
△58
△568
△510
その他
602
3,629
3,027
全社合計
201,629
141,277
△60,352
(注)1. 当連結会計年度より、「情報・物流」を「情報ソリューション」に名称変更するとともに、「ライフスタイル」の一部を「金融・リース・不動産」及び「次世代事業開発」に、「情報・物流」の一部を「次世代事業開発」に、「エネルギー」の一部を「電力」に、「次世代事業開発」の一部を「化学品」に、「その他」の一部を「情報ソリューション」に、それぞれ編入しております。これらの変更に伴い、前第1四半期連結累計期間のオペレーティング・セグメント情報を組み替えて表示しております。なお、当連結会計年度より新設された「新エネルギー開発推進部」(「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」の一部を編入)の損益等については、「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」にそれぞれ配賦しており、これに伴い、前第1四半期連結累計期間のオペレーティング・セグメント情報を組み替えて表示しております。
2. セグメント間取引は、通常の市場価格により行われております。
3. 「その他」には、特定のオペレーティング・セグメントに配賦されない本部経費等の損益、セグメント間の内部取引消去等が含まれております。
ライフスタイル
親会社の所有者に帰属する四半期利益(以下「四半期利益」という。)は、衣料品等の取引における増益及び前年同期に計上した衣料品等の企画・製造・販売事業に関連する一過性損失の反動により、前年同期比15億円増益の21億円となりました。
情報ソリューション
四半期利益(損失)は、国内携帯電話販売事業の減益により、前年同期比18億円悪化の2億円の損失となりました。
食料第一
四半期利益は、インスタントコーヒーの製造・販売事業及び国内菓子卸事業の増益により、前年同期比20億円増益の51億円となりました。
食料第二
四半期利益は、肉牛処理加工・販売事業の減益等により、前年同期比6億円減益の65億円となりました。
アグリ事業
四半期利益は、農薬及び肥料の価格下落を背景とするHelena社及びMacroSource社の減益により、前年同期比181億円減益の241億円となりました。
フォレストプロダクツ
四半期利益は、パルプ市況悪化に伴うムシパルプ事業の減益等により、前年同期比6億円減益の22億円となりました。
化学品
四半期利益は、石油化学品及び無機化学品取引の減益により、前年同期比53億円減益の20億円となりました。
金属
四半期利益は、商品価格の下落に伴う豪州原料炭事業及びチリ銅事業の減益により、前年同期比370億円減益の435億円となりました。
エネルギー
四半期利益は、石油・LNGトレーディングにおける増益があったものの、原油・ガス価格の下落等に伴う石油・ガス開発事業の減益等により、前年同期比65億円減益の120億円となりました。
電力
四半期利益は、海外発電事業の増益等により、前年同期比72億円増益の161億円となりました。
インフラプロジェクト
四半期利益は、海外水事業等の増益により、前年同期比11億円増益の25億円となりました。
航空・船舶
四半期利益は、航空関連事業における需要回復に伴う増益があったものの、船舶市況の下落に伴う船舶保有運航事業の減益により、前年同期比39億円減益の55億円となりました。
金融・リース・不動産
四半期利益は、米国航空機リース事業における金利収支の悪化等により、前年同期比30億円減益の90億円となりました。
建機・産機・モビリティ
四半期利益は、建設機械事業及び産業設備事業の増益により、前年同期比13億円増益の74億円となりました。
次世代事業開発
四半期利益(損失)は、中東における医薬品・医療機器販売事業の増益等により、前年同期比8億円改善の4億円の利益となりました。
次世代コーポレートディベロップメント
四半期損失は前年同期比5億円悪化の6億円となりました。
(2)キャッシュ・フロー及び財政状態の状況の分析、並びに資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結会計期間末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末比(以下「前年度末比」という。)170億円(2.8%)減少の5,920億円となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業資金負担等の増加があったものの、営業収入及び配当収入により、904億円の収入となりました。前年同期比では979億円の収入の減少であります。
基礎営業キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローから、営業資金の増減等を控除した「基礎営業キャッシュ・フロー」は、1,418億円となりました。その内訳は以下のとおりであります。
(収入:+、支出:△)
調整後営業利益
(売上総利益+販売費及び一般管理費)
+985億円
減価償却費等
+414億円
利息の受取額及び支払額
△109億円
配当金の受取額
+607億円
法人所得税の支払額
△479億円
基礎営業キャッシュ・フロー
+1,418億円
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
海外事業における資本的支出や持分法適用会社の株式取得等により、1,206億円の支出となりました。前年同期比では275億円の支出の増加であります。
回収
当第1四半期連結累計期間における投資の回収等(*1)による収入は、151億円となりました。
(*1)投資活動によるキャッシュ・フローのうち、「有形固定資産の売却による収入」、「貸付金の回収による収入」、「子会社の売却による収入(処分した現金及び現金同等物控除後)」及び「持分法で会計処理される投資及びその他の投資等の売却による収入」の合計額
新規投資・CAPEX(資本的支出)
当第1四半期連結累計期間における新規投資・CAPEX(資本的支出)等(*2)による支出は、1,357億円となりました。
(*2)投資活動によるキャッシュ・フローのうち、「有形固定資産の取得による支出」、「貸付による支出」、「子会社の取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)」、「持分法で会計処理される投資及びその他の投資等の取得による支出」及び「定期預金の純増減額」の合計額
ビジネスモデル別の主な新規投資は以下のとおりであります。
セールス&マーケティング事業
・航空機用部品の販売事業(米国 Diversified Aero Services)
・自動車アフターマーケット事業(米国 MAIHO Ⅲ関連)
・菓子製造業(日本 アトリオン製菓)
・農業資材関連事業(ブラジル Adubos Real関連)
・医薬品・医療機器販売事業(UAE Lunatus Marketing & Consulting)
・次世代蓄電池の開発・製造事業(エストニア Skeleton)
安定収益型事業
・再生可能エネルギー等発電事業
以上により、当第1四半期連結累計期間のフリーキャッシュ・フローは、301億円の支出となりました。前年同期比では1,254億円の支出の増加であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債及び借入金等の返済、配当金の支払及び自己株式の取得を行った結果、153億円の支出となりました。前年同期比では313億円の支出の増加であります。
当第1四半期連結累計期間における資本配分の状況は以下のとおりであります。
当第1四半期連結累計期間における基礎営業キャッシュ・フローは1,418億円の収入となり、子会社や持分法で会計処理される投資の売却等の投資活動による収入と合わせた収入合計額は1,569億円となりました。一方で、新規投資・CAPEX等の投資活動による支出は1,357億円となり、更に親会社の株主に対する配当金及び自己株式の取得資金887億円を控除した株主還元後フリーキャッシュ・フロー(営業資金増減等を除く)(*3)は、675億円の支出となっております。
(*3)基礎営業キャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額から、親会社の株主に対する配当金及び自己株式の取得資金を控除したもの。
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
前連結
会計年度末
当第1四半期
連結会計期間末
増減
総資産
7,953,604
8,243,923
290,319
ネット有利子負債
1,483,085
1,649,748
166,663
親会社の所有者に帰属する持分合計
2,877,747
3,198,716
320,969
ネットDEレシオ
0.52
倍
0.52
倍
0.00
ポイント
(注)ネット有利子負債は、社債及び借入金(流動・非流動)の合計額から現金及び現金同等物、定期預金を差し引いて算出しております。
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、円安の影響等により、前年度末比2,903億円増加の8兆2,439億円となりました。ネット有利子負債は、フリーキャッシュ・フローでの支出に加え、支払配当や円安の影響による増加があったこと等により、前年度末比1,667億円増加の1兆6,497億円となりました。親会社の所有者に帰属する持分合計は、純利益の積上げによる利益剰余金の増加及び円安による在外営業活動体の換算差額の増加により、前年度末比3,210億円増加の3兆1,987億円となりました。この結果、ネットDEレシオは0.52倍となりました。
③ 資金調達の方針及び手段
当社及び連結子会社の資金調達に関しては、資産構成に合わせた最適資金調達を基本方針としております。
銀行、生保等の国内金融機関を中心とした間接調達、及び社債(国内社債発行登録枠2,000億円を設定)、コマーシャル・ペーパーの発行を通じた直接調達をバランスよく組み合わせることにより、必要資金を確保するとともに、長年にわたり金融機関・市場関係者と培った関係性を活かしながら、安定的な資金調達と金融費用の削減を目指しております。
また、財務基盤の強化に資する調達として、当第1四半期連結会計期間末において永久劣後特約付ローン1,500億円、ハイブリッド社債(劣後特約付)750億円、ハイブリッドローン250億円(コミット型劣後特約付)を有しております。当社は、永久劣後特約付ローン1,500億円について、任意弁済通知書(弁済希望日 2023年8月16日)を貸付人に2023年8月8日付で提出しております。
連結子会社を含む当社グループの資金管理については、原則として、当社及び国内外の金融子会社、海外現地法人等の調達拠点を通じて、資金余剰のあるグループ会社の余資を、他のグループ会社の資金需要に機動的に活用することで、グループ全体における効率的な調達体制を維持しております。
格付について、当社はムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody’s)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)、株式会社格付投資情報センター(R&I)、株式会社日本格付研究所(JCR)の4社から格付を取得しております。
当第1四半期連結会計期間末現在の長期格付は、Moody’sがBaa2(見通し「ポジティブ」)、S&PがBBB+(見通し「安定的」)、R&IがA+(見通し「安定的」)、JCRがAA-(見通し「安定的」)となっております。なお、R&Iは2023年7月12日に長期格付をAA-(見通し「安定的」)に、Moody’sは2023年7月24日に長期格付をBaa1(見通し「安定的」)にそれぞれ引き上げております。
④ 流動性の状況
当社及び連結子会社では、基礎営業キャッシュ・フロー等の収入や手元流動性(現金及び現金同等物並びに定期預金の保有)の確保に加え、コミットメントラインの設定により、営業資金や新規投資・CAPEX(資本的支出)といった資金需要、並びに1年以内に返済予定の長期債務を含む短期債務に対する流動性を準備しております。
当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物並びに定期預金の残高は5,937億円となっております。
設定しているコミットメントラインは以下のとおりであります。
・大手邦銀を主としたシンジケート団による3,000億円(長期)
・欧米主要銀行を主としたシンジケート団による555百万米ドル(長期)
(3)重要性がある会計方針及び見積り
要約四半期連結財務諸表において適用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第4 経理の状況」における「1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表に対する注記2 作成の基礎 (3)見積り及び判断の利用」及び「同 注記3 重要性がある会計方針」に記載のとおりであります。
(4)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」について、当第1四半期連結累計期間において重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
特に記載すべき事項はありません。
(将来に関する記述等についてのご注意)
本報告書に記載されている将来に関する記述は、当社が当四半期報告書提出日現在において入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。