【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
① 当連結会計年度における経済環境及びオペレーティング・セグメント別の事業の状況
経済環境
当連結会計年度の経済環境を概観しますと、上半期においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、世界各国で外出制限等の感染拡大防止策が講じられました。その結果、早期に感染を抑止した中国を除き各国の経済活動は大幅に制限され、世界経済は急激に縮小しました。その後、各国は段階的に制限の緩和と経済活動の再開に着手し、多くの国で景気は一旦持ち直しました。
下半期に入ると、二大経済大国である米国と中国が比較的力強い景気回復をみせた一方、日本や欧州は制限の再強化により景気が悪化する等、方向感に違いがみられました。また、多くの国でワクチン接種が始まりましたが、供給の問題等から各国での接種ペースにばらつきがみられました。
戦後最悪とも言われる景気悪化を受け、各国政府・中銀は家計・企業・金融市場を支えるため、かつてない規模の財政出動を含むあらゆる政策手段を総動員しました。迅速かつ大規模な財政金融政策を受け、金融市場は混乱を回避し、株価は反発する等、大きく落ち込んだ実体経済との乖離がみられました。年明け以降は巨額の追加経済対策が可決された米国を中心に、経済見通しやインフレ期待の上方修正により長期金利の上昇が加速しました。
一次産品価格は、原油が昨年4月に一時大暴落したものの、その後は減産と経済活動再開への期待、世界的な金融緩和を受けて緩やかに持ち直しました。一方、中国経済の影響を強く受ける銅や鉄鉱石等の価格は総じて上昇が続きました。
オペレーティング・セグメント別の事業の状況
当連結会計年度におけるオペレーティング・セグメント別の事業の状況は、以下のとおりです。
・ライフスタイル
丸紅フットウェアでは、子ども靴ブランド「イフミー」の直営店を出店しました。ブランドコンセプトの発信、消費者との接点、ニーズの把握の場として活用し「イフミー」の販売拡大に繋げています。また、米国アウトドアブランド「メレル」では、自社ECサイトの開設、新アパレルライン「ジャパン カプセル」の展開等、消費者直販事業の強化、取扱商品の拡充に注力しました。
また、繊維リサイクル技術を有するサーク社(*)と共同で、当社のネットワークも活用し、衣料品等繊維製品のグローバルな循環型サプライチェーンの構築に取り組んでいます。
(*) サーク社は2020年11月にタイトンバイオサイエンス社から社名変更しました。
・情報・不動産
ICT、不動産、物流、保険といった人々の生活に関わる事業領域において、顧客のDX(*)化に資する高付加価値サービス・ソリューションの提供に注力しています。2020年12月には、顧客にビジネスとシステム両面の統合的なDX コンサルティングサービスを提供するドルビックスコンサルティング株式会社を設立しました。
また、既存事業では、「ミッドタワーグランド」(東京都中央区月島)が完売したほか、インドでの不動産開発第一号案件としてムンバイ市郊外の住宅開発・分譲事業に参画しました。更に、上場リートや私募リートを通じてオフィスビルや物流センター等への投資活動を行いました。
(*) デジタルトランスフォーメーション
・フォレストプロダクツ
インドネシアにおける植林・パルプ製造販売事業は、順調なオペレーションによって競争力を強化、国内の板紙製造販売事業は、通販及び加工食品向けパッケージ等巣ごもり需要を着実に取り込み堅調に推移しました。また、木質資源活用の一環として、ペレットの自社ソース開発等バイオマス燃料の取組みも進めています。ベトナム段ボール原紙製造工場は2020年11月に試運転を開始、2021年第1四半期に商業運転へ移行する予定です。衛生紙分野では、世界第4位の市場規模を有するブラジルにて衛生紙製造販売会社Santher – Fabrica de Papel Santa Therezinhaを買収して同国での事業を開始するとともに、今後は他地域への展開も推進していきます。
・食料
新型コロナウイルス感染症の発生により世界的に環境が激変する中、食料分野はエッセンシャルなビジネスとして業績を順調に伸長させました。
SDGsに対応した取組みも推進し、2020年4月にデンマークのDanish Salmonの株式の過半数を取得、サーモンの陸上養殖事業に参入しました。12月には植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するスタートアップ、ダイズ株式会社と出資契約を締結、米国植物肉市場への進出を図っていきます。
今後も社会課題の解決に貢献していくとともに、プレミアムビーフ等のスペシャリティ商品のマーケティングと生産製造機能の強化を戦略の柱として事業拡大と持続的成長を推進していきます。
・アグリ事業
アグリインプット事業では、ITを駆使した精密農業による顧客向けソリューション能力のさらなる向上と、北米を中心に蓄積してきたノウハウの他国での活用を通じ、世界における農業の近代化に貢献すべく一層の事業拡大を推進しました。その一環として、2019年度にブラジルの農業資材販売会社のADUBOS REALを買収、同国でも事業のさらなる展開を推進していきます。
北米穀物事業では、GavilonとColumbia Grain Internationalの既存事業(集荷・保管・配送)の拡充に注力するとともに、世界的な食の安心・安全、健康意識や環境意識の高まりに対応すべく、集荷能力の強みを生かした川下分野における新規事業開発に取り組んでいきます。
・化学品
長年にわたり業界でトップクラスの地位を維持している石油化学品トレードでの需給調整機能の高度化や、蓄電池・ディスプレイ・太陽光発電機器に代表されるエレクトロニクス等のスペシャリティ分野でのソリューション提供型ビジネスの深化を国内外で推し進めています。
また、飼料添加剤ディストリビューターのOrffa International Holdingを軸に、人口増加に伴い持続的な成長が期待できるライフサイエンス分野での事業拡大に注力するとともに、AIを活用した画像診断をはじめとするデジタルヘルス分野への進出、サステナブル社会に向けた市場の変化から生まれる新しい顧客ニーズへの対応等、これまでの化学品の枠を超えた新しい仕組み作りにも取り組んでいます。
・エネルギー
気候変動対策に中長期的に貢献するため、新エネルギー分野では、国内外において、CO2フリーに繋がる水素や燃料アンモニアの製造・輸送・供給事業、バイオ燃料事業の検討や実証事業に取り組んでいます。また、エネルギー転換期においてその重要性を増す相対的に低炭素の天然ガス・LNG事業分野において、既存案件の安定操業に加え、LNG調達から発電まで一貫して行うLNG to Power事業等の実現可能性調査を開始しました。伝統的な強みを持つ石油製品、天然ガス・LNG、ウラン等のトレード&マーケティング分野でも収益が伸長しており、様々な事業分野で社会や顧客の課題・ニーズを捉え、事業基盤の強化・発展に注力しています。
・金属
豪州・ロイヒル鉄鉱山、ジェリンバイースト等の原料炭炭鉱、チリ・センチネラ等の銅鉱山といった中核鉱山事業において、生産の最適化や厳格なコスト管理、AIやIoT等の先進技術の導入による操業の安定性や収益力の向上を図るとともに、既存事業の拡張や将来に向けた新規鉱区の開発も推進しています。また、カナダにおける100%水力発電由来の電力を利用したアルミニウム及びマグネシウム生産事業や、太陽光パネル及びリチウムイオン電池のリサイクルといった環境・循環型ビジネス、電池原材料の供給を通じて、グローバルな社会課題の解決に取り組んでいます。
・電力
発電事業分野では、台湾の子会社Chenya Energyを通じ世界最大規模の浮体式太陽光発電所の操業運転を開始、サウジアラビアではラービグ太陽光発電事業を受注、岐阜県にて国産木材のみのバイオマス発電事業の融資契約を締結、鳥取県では日本初の水力発電所PFI(*)事業を受注する等、事業基盤を拡大しました。英国SmartestEnergyの米国に次ぐ豪州展開、英国での太陽光発電・EVの車載蓄電池を用いた建物及び電力系統向けサービス実証実験の開始等、電力サービス事業分野でも再生可能エネルギーの取組みを推進しています。
(*) Private Finance Initiative(民間の資金・技術力等を活用し、公共施設等の建設・運営等を行う公共事業の手法)
・インフラプロジェクト
交通インフラ分野では、メキシコ南部2州を結ぶ135キロメートルの幹線道路の維持管理PPP(*)事業に参画しました。水分野では、フィリピンの浄水場プロジェクト及びサウジアラビアの造水プロジェクトそれぞれの最先端技術と資金調達能力が評価され、国際アワードで優秀賞を受賞しました。インフラファンド分野では、優良資産を順調に積み上げています。循環型エコノミー分野では、2019年度に出資した英国カーボンクリーンソリューションズ社のCO2分離・回収技術を利用した設備の販売を、丸紅プロテックスを通じて開始し、2021年中に日本初となる設備の稼働を予定しています。
(*) Public Private Partnership (官民連携による公共事業)
・航空・船舶
航空分野では、コロナ禍により厳しい事業環境となりましたが、空港内自動走行車両実証実験の継続実施やホンダジェット等のビジネスジェット事業の拡充、小型衛星打上サービスを提供する企業との業務提携といった宇宙事業の取組深化等、将来の事業領域拡大に向けた布石を着実に進めました。船舶分野では、世界経済の混迷により例年以上に不安定な市況であったものの、下半期にかけての市況回復に伴い、トレード・自営船事業は着実に回復基調にあり、また合弁で開始した船舶プール事業も堅調に推移しました。また、自律運航船の実証実験をはじめとした新機軸ビジネスの創出にも取り組む等、商社のオーガナイズ機能の極大化を推進しています。
・金融・リース事業
消費者向けデジタル金融サービスの世界的な需要拡大を見込み、モンゴルに本社及びフィンテック開発拠点を置くAND Globalに出資し、コロナ後を見据えた次世代金融事業へ参入しました。
米国の自動車販売金融事業では、組織再編によりIT機能及びDX推進の基盤を強化するとともに、大手金融機関やフィンテック企業との提携を推進し、さらなる事業領域の拡大を実現しました。
また、米国における冷凍・冷蔵トレーラーリース・レンタル事業では、太陽光発電パネル/充電器/冷凍・冷蔵ユニットを備え、稼働時に二酸化炭素や窒素酸化物等の排出ガスを出さない環境に配慮した冷凍・冷蔵トレーラーの取扱いを開始しました。
・建機・産機・モビリティ
建設機械分野では、代理店事業の収益基盤強化・拡大に加え、機械販売に留まらない新たなサービス提供を拡充すべく、デジタル技術を用いた情報化施工関連サービスを開始しました。
産業システム・モビリティ分野では、米国における自動車アフターマーケット事業の拡大を推進するとともに、EV(*)用充電器の販売、蓄電池再利用の事業化検討等多角的に取り組んでいます。タイヤ・ゴム資材分野では、タイ・インドネシアを中心にタイヤ小売店舗を拡大しました。産業機械分野では、従来の産業機械・工作機械の販売のみならず、新たな取扱商品・機能・顧客基盤の拡充に向け取り組んでいます。
(*) Electric Vehicle(電気自動車)
・次世代事業開発
次世代事業開発本部は、次世代へ大きく成長する領域を捉え、次世代の収益基盤となる新たな事業の開発に取り組んでいます。世界の革新的なビジネスモデルを、コーポレート・ベンチャー・キャピタルの運営等をとおして取り込んでいるほか、事業開発では、ヘルスケア分野において中国での日本製医薬品卸販売事業の取扱品の拡大や、インドネシアでのデジタル母子手帳サービスを開始しました。また、日本の優れた技術・素材・商品を世界に発信するブランド「Japan Mastery Collection」の立上げや北欧の次世代蓄電池等の新技術への出資、東南アジアでのスマートシティの開発についても積極的に推進しています。
② 当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況
「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討」に記載のとおりであります。
③ 仕入、成約及び販売の実績
(a)仕入の実績
仕入と販売との差異は僅少であるため、仕入高の記載は省略しております。
(b)成約の実績
成約と販売との差異は僅少であるため、成約高の記載は省略しております。
(c)販売の実績
「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討」及び「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記4 セグメント情報」に記載のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 当連結会計年度の経営成績の分析
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
6,827,641
6,332,414
△495,227
売上総利益
696,808
675,418
△21,390
販売費及び一般管理費
△558,487
△529,326
29,161
貸倒引当金繰入額
△4,446
△4,539
△93
営業利益
133,875
141,553
7,678
支払利息(受取利息控除後)
△31,355
△12,503
18,852
受取配当金
27,631
16,209
△11,422
その他の営業外損益
△240,936
△4,781
236,155
有価証券損益
25,123
7,727
△17,396
固定資産損益
△250,961
△8,825
242,136
その他の損益
△15,098
△3,683
11,415
持分法による投資損益
△55,150
141,285
196,435
税引前利益(損失)
△165,935
281,763
447,698
法人所得税
△24,256
△48,695
△24,439
当期利益(損失)
△190,191
233,068
423,259
親会社の所有者に帰属
△197,450
225,343
422,793
非支配持分に帰属
7,259
7,725
466
(注)1. 「営業利益」は、投資家の便宜を考慮し、日本の会計慣行に従った自主的な表示であり、IFRSで求められている表示ではありません。「営業利益」は、連結包括利益計算書における「売上総利益」、「販売費及び一般管理費」及び「貸倒引当金繰入額」の合計額として表示しております。
2. 「その他の営業外損益」は、連結包括利益計算書における「有価証券損益」、「固定資産損益」及び「その他の損益」の合計額として表示しております。
収益
収益は、主に食料の減収により、前連結会計年度比(以下「前年度比」という。)4,952億円(7.3%)減収の6兆3,324億円となりました。
売上総利益
売上総利益は前年度比214億円(3.1%)減益の6,754億円となりました。オペレーティング・セグメント別の主な増減は以下のとおりです。
電力
121億円減益
電力市場価格高騰の影響等に伴う国内電力小売事業の減益等
航空・船舶
116億円減益
航空機部品及びエンジンの販売低迷並びに船舶運航収入の減少
金属
94億円減益
原料炭価格の下落等に伴う豪州原料炭事業の減益
アグリ事業
295億円増益
穀物及び肥料価格の上昇を背景としたGavilonの増益
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、経費削減努力に加えて新型コロナウイルスの影響に伴う経費の減少もあり、前年度比292億円(5.2%)減少の5,293億円となりました。
貸倒引当金繰入額
貸倒引当金繰入額は前年度比横這いの45億円となりました。
以上の結果、営業利益は前年度比77億円(5.7%)増益の1,416億円となりました。
支払利息(受取利息控除後)
支払利息(受取利息控除後)は、米ドル金利の低下に伴う減少により、前年度比189億円(60.1%)減少の125億円となりました。
受取配当金
受取配当金は、主にエネルギーの減少により、前年度比114億円(41.3%)減少の162億円となりました。
有価証券損益
有価証券損益は、前年度に計上した米国冷凍・冷蔵トレーラーリース・レンタル事業の一部売却に伴う利益の反動により、前年度比174億円(69.2%)減益の77億円となりました。
固定資産損益
固定資産損益は、前年度に計上した石油・ガス開発事業及びGavilon穀物事業の減損損失の反動により、前年度比2,421億円(96.5%)改善の88億円の損失となりました。
その他の損益
その他の損益は、前年度に計上した海外インフラ案件及び再保険事業の損失並びにGavilonの過年度決算修正に伴う損失の反動により、前年度比114億円(75.6%)改善の37億円の損失となりました。
持分法による投資損益
持分法による投資損益は、前年度に計上した減損損失の反動により、前年度比1,964億円(-%)改善の1,413億円となりました。オペレーティング・セグメント別の主な改善は以下のとおりです。
金属
780億円改善
前年度に計上したチリ銅事業投資の減損損失の反動等
金融・リース事業
409億円改善
前年度に計上した米国航空機リース事業投資の減損損失の反動等
アグリ事業
280億円改善
前年度に計上した米国西海岸穀物輸出事業投資の減損損失の反動
インフラプロジェクト
279億円改善
前年度に計上したフィリピンインフラ事業投資及び米国石油・ガス開発関連事業投資の減損損失の反動
以上の結果、税引前利益(損失)は前年度比4,477億円(-%)改善の2,818億円の利益となりました。
法人所得税
法人所得税は前年度比244億円(100.8%)増加の487億円となりました。
以上の結果、当期利益(損失)は前年度比4,233億円(-%)改善の2,331億円の利益となり、親会社の所有者に帰属する当期利益(損失)は前年度比4,228億円(-%)改善の2,253億円の利益となりました。
当連結会計年度のオペレーティング・セグメント別の経営成績は以下のとおりです。
・ライフスタイル
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
164,040
123,058
△40,982
売上総利益
22,602
18,233
△4,369
営業利益
4,202
2,048
△2,154
持分法による投資損益
437
55
△382
親会社の所有者に帰属する
当期利益
4,127
2,057
△2,070
セグメントに対応する資産(参考)
102,770
94,159
△8,611
売上総利益は、新型コロナウイルスの影響に伴う衣料品等の販売減少により、前年度比44億円(19.3%)減益の182億円となり、営業利益は前年度比22億円(51.3%)減益の20億円となりました。持分法による投資損益は前年度比4億円(87.4%)減益の1億円となりました。以上により、親会社の所有者に帰属する当期利益(以下「当期利益」という。)は前年度比21億円(50.2%)減益の21億円となりました。
・情報・不動産
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
254,287
360,105
105,818
売上総利益
117,294
115,108
△2,186
営業利益
27,924
27,013
△911
持分法による投資損益
2,003
683
△1,320
親会社の所有者に帰属する
当期利益
11,944
18,556
6,612
セグメントに対応する資産(参考)
483,014
449,829
△33,185
売上総利益は、新型コロナウイルスの影響に伴う国内携帯電話販売事業の減益により、前年度比22億円(1.9%)減益の1,151億円となり、営業利益は前年度比9億円(3.3%)減益の270億円となりました。持分法による投資損益は、中国不動産販売事業の減益により、前年度比13億円(65.9%)減益の7億円となりました。しかしながら、当期利益は、前年度に計上した再保険事業の損失の反動により、前年度比66億円(55.4%)増益の186億円となりました。
・フォレストプロダクツ
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
266,461
231,800
△34,661
売上総利益
32,424
24,035
△8,389
営業利益
11,683
2,728
△8,955
持分法による投資損益
△1,227
△1,441
△214
親会社の所有者に帰属する
当期利益(損失)
3,298
△2,127
△5,425
セグメントに対応する資産(参考)
266,786
285,931
19,145
売上総利益は、パルプ市況の悪化等に伴うムシパルプ事業の減益及びチップ事業の減益により、前年度比84億円(25.9%)減益の240億円となりました。これに加えて、海外における貸倒費用が増加したことから、営業利益は前年度比90億円(76.6%)減益の27億円となりました。持分法による投資損益は前年度比2億円(17.4%)悪化の14億円の損失となりました。以上により、当期利益(損失)は前年度比54億円(-%)悪化の21億円の損失となりました。
・食料
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
1,675,498
1,276,052
△399,446
売上総利益
102,313
109,083
6,770
営業利益
31,557
43,290
11,733
持分法による投資損益
6,307
8,133
1,826
親会社の所有者に帰属する
当期利益
19,467
28,320
8,853
セグメントに対応する資産(参考)
679,664
693,118
13,454
売上総利益は、食肉処理加工・販売事業が好調に推移したこと及び穀物トレードの採算改善等により、前年度比68億円(6.6%)増益の1,091億円となりました。これに加えて、経費が減少したことから、営業利益は前年度比117億円(37.2%)増益の433億円となりました。持分法による投資損益は、国内小売事業の増益により、前年度比18億円(29.0%)増益の81億円となりました。以上により、当期利益は前年度比89億円(45.5%)増益の283億円となりました。
・アグリ事業
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
2,767,156
2,795,466
28,310
売上総利益
169,146
198,680
29,534
営業利益
27,235
51,233
23,998
持分法による投資損益
△24,966
3,014
27,980
親会社の所有者に帰属する
当期利益(損失)
△77,062
42,426
119,488
セグメントに対応する資産(参考)
1,164,784
1,402,869
238,085
売上総利益は、穀物及び肥料価格の上昇を背景としたGavilonの増益により、前年度比295億円(17.5%)増益の1,987億円となり、営業利益は前年度比240億円(88.1%)増益の512億円となりました。持分法による投資損益は、前年度に計上した米国西海岸穀物輸出事業投資の減損損失の反動により、前年度比280億円(-%)改善の30億円となりました。これらに加えて、前年度に計上したGavilon穀物事業の減損損失の反動もあり、当期利益(損失)は前年度比1,195億円(-%)改善の424億円の利益となりました。
・化学品
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
426,956
403,569
△23,387
売上総利益
29,913
38,955
9,042
営業利益
5,385
18,253
12,868
持分法による投資損益
1,468
1,375
△93
親会社の所有者に帰属する
当期利益
4,091
15,297
11,206
セグメントに対応する資産(参考)
267,098
283,728
16,630
売上総利益は、石油化学製品取引の採算改善により、前年度比90億円(30.2%)増益の390億円となりました。これに加えて、経費及び貸倒費用が減少したことから、営業利益は前年度比129億円(239.0%)増益の183億円となりました。持分法による投資損益は前年度比横這いの14億円となりました。以上により、当期利益は前年度比112億円(273.9%)増益の153億円となりました。
・エネルギー
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
469,722
447,838
△21,884
売上総利益
37,343
37,281
△62
営業利益
3,345
3,543
198
持分法による投資損益
△13,228
1,109
14,337
親会社の所有者に帰属する
当期利益(損失)
△149,335
11,944
161,279
セグメントに対応する資産(参考)
572,001
546,627
△25,374
売上総利益は前年度比横這いの373億円となり、営業利益は前年度比2億円(5.9%)増益の35億円となりました。持分法による投資損益は、前年度に計上したパプアニューギニアにおけるLNG事業投資の減損損失の反動により、前年度比143億円(-%)改善の11億円となりました。当期利益(損失)は、前年度に計上した石油・ガス開発事業の減損損失及び繰延税金資産の取り崩しの反動により、前年度比1,613億円(-%)改善の119億円の利益となりました。
・金属
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
337,664
295,380
△42,284
売上総利益
30,412
20,979
△9,433
営業利益
11,719
2,935
△8,784
持分法による投資損益
△16,547
61,436
77,983
親会社の所有者に帰属する
当期利益(損失)
△5,719
61,382
67,101
セグメントに対応する資産(参考)
758,594
871,764
113,170
売上総利益は、原料炭価格の下落等に伴う豪州原料炭事業の減益により、前年度比94億円(31.0%)減益の210億円となり、営業利益は前年度比88億円(75.0%)減益の29億円となりました。持分法による投資損益は、豪州原料炭事業の減益があったものの、チリ銅事業及び豪州鉄鉱石事業の増益に加えて、前年度に計上したチリ銅事業投資の減損損失の反動により、前年度比780億円(-%)改善の614億円となりました。以上により、当期利益(損失)は前年度比671億円(-%)改善の614億円の利益となりました。
・電力
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
162,812
169,336
6,524
売上総利益
23,628
11,515
△12,113
営業損失
△13,916
△24,993
△11,077
持分法による投資損益
17,781
28,396
10,615
親会社の所有者に帰属する
当期利益
8,976
9,969
993
セグメントに対応する資産(参考)
704,279
741,162
36,883
売上総利益は、電力市場価格高騰の影響等に伴う国内電力小売事業の減益等により、前年度比121億円(51.3%)減益の115億円となり、営業損失は前年度比111億円(79.6%)悪化の250億円となりました。持分法による投資損益は、前年度に計上した英国洋上風力据付事業投資の減損損失の反動により、前年度比106億円(59.7%)増益の284億円となりました。以上により、当期利益は前年度比10億円(11.1%)増益の100億円となりました。
・インフラプロジェクト
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
19,795
22,154
2,359
売上総利益
11,901
10,006
△1,895
営業損失
△5,875
△5,469
406
持分法による投資損益
△16,938
11,002
27,940
親会社の所有者に帰属する
当期利益(損失)
△28,614
7,297
35,911
セグメントに対応する資産(参考)
236,751
231,519
△5,232
売上総利益は、海外プラント案件等の減益により、前年度比19億円(15.9%)減益の100億円となったものの、経費が減少したことにより、営業損失は前年度比4億円(6.9%)改善の55億円となりました。持分法による投資損益は、前年度に計上したフィリピンインフラ事業投資及び米国石油・ガス開発関連事業投資の減損損失の反動により、前年度比279億円(-%)改善の110億円となりました。これらに加えて、前年度に計上した海外インフラ案件の損失の反動もあり、当期利益(損失)は前年度比359億円(-%)改善の73億円の利益となりました。
・航空・船舶
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
80,996
56,490
△24,506
売上総利益
26,220
14,615
△11,605
営業利益
14,058
4,190
△9,868
持分法による投資損益
2,832
3,059
227
親会社の所有者に帰属する
当期利益
11,641
3,190
△8,451
セグメントに対応する資産(参考)
274,961
265,669
△9,292
売上総利益は、新型コロナウイルスの影響に伴う航空機部品及びエンジンの販売低迷並びに船舶運航収入の減少により、前年度比116億円(44.3%)減益の146億円となり、営業利益は前年度比99億円(70.2%)減益の42億円となりました。持分法による投資損益は、船舶関連事業の減益及び新型コロナウイルスの影響に伴う空港グランドハンドリング関連事業の減益があったものの、前年度に計上した英国洋上風力据付事業投資の減損損失の反動により、前年度比2億円(8.0%)増益の31億円となりました。以上により、当期利益は前年度比85億円(72.6%)減益の32億円となりました。
・金融・リース事業
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
25,095
6,864
△18,231
売上総利益
11,025
3,903
△7,122
営業損失
△493
△4,264
△3,771
持分法による投資損益
△20,092
20,788
40,880
親会社の所有者に帰属する
当期利益(損失)
△7,421
8,908
16,329
セグメントに対応する資産(参考)
307,267
341,105
33,838
売上総利益は、米国冷凍・冷蔵トレーラーリース・レンタル事業における連結子会社を持分法適用会社化したことにより、前年度比71億円(64.6%)減益の39億円となり、営業損失は前年度比38億円(764.9%)悪化の43億円となりました。持分法による投資損益は、新型コロナウイルスの影響に伴う米国航空機リース事業の業績悪化があったものの、米国中古車販売金融事業の増益及び前年度に計上した米国航空機リース事業投資の減損損失の反動により、前年度比409億円(-%)改善の208億円となりました。当期利益(損失)は、前年度に計上した米国冷凍・冷蔵トレーラーリース・レンタル事業の一部売却に伴う利益の反動があったものの、持分法による投資損益の改善により、前年度比163億円(-%)改善の89億円の利益となりました。
・建機・産機・モビリティ
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
318,260
290,286
△27,974
売上総利益
89,559
80,826
△8,733
営業利益
20,017
16,081
△3,936
持分法による投資損益
6,027
3,572
△2,455
親会社の所有者に帰属する
当期利益
19,561
14,707
△4,854
セグメントに対応する資産(参考)
359,864
353,908
△5,956
売上総利益は、新型コロナウイルスの影響に伴う建設機械、産業設備及びタイヤ・ゴム資材関連事業の減益により、前年度比87億円(9.8%)減益の808億円となり、営業利益は前年度比39億円(19.7%)減益の161億円となりました。持分法による投資損益は前年度比25億円(40.7%)減益の36億円となりました。以上により、当期利益は前年度比49億円(24.8%)減益の147億円となりました。
・次世代事業開発
(単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減
収益
3,377
2,759
△618
売上総利益
2,328
1,762
△566
営業損失
△2,130
△2,501
△371
持分法による投資損益
321
110
△211
親会社の所有者に帰属する
当期損失
△1,904
△2,095
△191
セグメントに対応する資産(参考)
13,906
16,598
2,692
売上総利益は前年度比6億円(24.3%)減益の18億円となり、営業損失は前年度比4億円(17.4%)悪化の25億円となりました。以上により、当期損失は前年度比2億円(10.0%)悪化の21億円となりました。
(注)1. 当連結会計年度より、「プラント」を「インフラプロジェクト」に、「建機・自動車・産機」を「建機・産機・モビリティ」にそれぞれ名称変更するとともに、「プラント」の一部を「金融・リース事業」に、「プラント」と「その他」の一部を「次世代事業開発」に、「次世代事業開発」の一部を「その他」に編入しております。これらに伴い、前連結会計年度のオペレーティング・セグメント情報を組み替えて表示しております。
2. セグメント間取引は、通常の市場価格により行われております。
② 当連結会計年度のキャッシュ・フロー及び財政状態の状況の分析、並びに資本の財源及び資金の流動性
(a)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末比(以下「前年度末比」という。)2,233億円(42.7%)増加の7,459億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業収入及び配当収入並びに営業資金負担の改善等により、3,971億円の収入となりました。前年度比では701億円の収入の増加であります。
基礎営業キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローから、営業資金の増減等を控除した「基礎営業キャッシュ・フロー」は、3,696億円となりました。その内訳は以下のとおりです。
(収入:+、支出:△)
調整後営業利益
(売上総利益+販売費及び一般管理費)
+1,461億円
減価償却費等
+1,444億円
利息の受取額及び支払額
△153億円
配当金の受取額
+1,285億円
法人所得税の支払額
△342億円
基礎営業キャッシュ・フロー
3,696億円
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
株式の売却収入があったものの、持分法適用会社の株式取得及び海外事業における資本的支出等により、1,163億円の支出となりました。前年度比では935億円の支出の減少であります。
回収
当連結会計年度における投資の回収等(*1)による収入は、1,083億円となりました。
(*1) 投資活動によるキャッシュ・フローのうち、「有形固定資産の売却による収入」、「貸付金の回収による収入」、「子会社の売却による収入(処分した現金及び現金同等物控除後)」及び「持分法で会計処理される投資及びその他の投資等の売却による収入」の合計額
主な売却案件は以下のとおりです。
・海外発電事業
・再保険事業
・政策保有株式
新規投資・CAPEX(資本的支出)
当連結会計年度における新規投資・CAPEX(資本的支出)等(*2)による支出は、2,246億円となりました。
(*2) 投資活動によるキャッシュ・フローのうち、「有形固定資産の取得による支出」、「投資不動産の取得による支出」、「貸付による支出」、「子会社の取得による支出(取得した現金及び現金同等物控除後)」、「持分法で会計処理される投資及びその他の投資等の取得による支出」及び「定期預金の純増減額」の合計額
ビジネスモデル別の主な新規投資は以下のとおりです。
セールス&マーケティング事業
・衛生用品製造事業(ブラジル Santher – Fabrica de Papel Santa Therezinha)
・段ボール原紙製造・販売事業(ベトナム Kraft of Asia Paperboard & Packaging)
・インスタントコーヒー製造・販売事業(ベトナム Iguacu Vietnam)
・肉牛の処理加工・販売事業拡張(米国 Creekstone Farms Premium Beef)
安定収益型事業
・太陽光発電事業(台湾 Chenya Energy)
以上により、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、2,808億円の収入となりました。前年度比では1,636億円の収入の増加であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債及び借入金等の返済並びに配当金の支払を行った結果、685億円の支出となりました。前年度比では248億円の支出の減少であります。
(b)財政状態の状況
(単位:百万円)
前連結
会計年度末
当連結
会計年度末
増減
総資産
6,320,037
6,938,958
618,921
資本合計
1,604,600
1,911,769
307,169
ネット有利子負債
1,859,125
1,687,885
△171,240
ネットDEレシオ
1.16
倍
0.88
倍
△0.28
ポイント
(注) ネット有利子負債は、社債及び借入金(流動・非流動)の合計額から現金及び現金同等物、定期預金を差し引いて算出しております。
当連結会計年度末における総資産は、持分法適用会社の株式取得及び海外事業における資本的支出に加えて、円安の影響により、前年度末比6,189億円増加の6兆9,390億円となりました。ネット有利子負債は、フリーキャッシュ・フローでの収入等により、前年度末比1,712億円減少の1兆6,879億円となりました。資本合計は、純利益の積上げによる利益剰余金の増加及び円安による在外営業活動体の換算差額の増加等により、前年度末比3,072億円増加の1兆9,118億円となりました。この結果、ネットDEレシオは0.88倍となりました。
(c)資本政策及び資本コストに関する考え方
2019年度の赤字決算により財務基盤の早急な回復が必要になったことや、新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が不透明であったことから、経営基盤の強化・再構築に取り組むべく、2020年5月に中期経営戦略「GC2021」を修正しました。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)会社の経営の基本方針」に記載のとおりであります。
当連結会計年度においては、財務基盤の再生・強化に資する具体策として、2016年8月16日に実行した永久劣後特約付ローンによる2,500億円(トランシェA 1,000億円、トランシェB 1,500億円)の資金調達のうち、トランシェAに関し、足元の不透明な金融環境と将来の環境変化を見据えて、2021年3月4日に750億円のハイブリッド社債(劣後特約付)を発行、2021年3月31日に総借入限度額250億円のハイブリッドローン(コミット型劣後特約付)契約を締結し、任意弁済期限より前倒しでリファイナンスを実施しました。本調達は、負債であることから株式の希薄化は発生しない一方、利息の任意繰延、超長期の弁済・償還期限、清算手続及び倒産手続における劣後性等、資本に類似した性質及び特徴を有していることから資本と負債の中間的な性質を持ちます。このため、当社では格付機関から資金調達額の50%に対して資本性認定を予定しています。なお、永久劣後特約付ローンの内容については、「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記14 その他資本性金融商品」に、ハイブリッド社債(劣後特約付)及びハイブリッドローン(コミット型劣後特約付)の内容については、「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記22 金融商品及び関連する開示」に記載のとおりであります。
当社は、中長期的な企業価値向上を追求するため、ROEの維持・向上と、株主資本コストの低減を目指しております。「GC2021」における経営指標としてROE10%以上を設定していますが、事業戦略の強化を通じた実態純利益、基礎営業キャッシュ・フローの継続的な拡大と、戦略的な資本配分により、今後もROEの維持・向上に取り組んでいきます。
また、株主資本コストを十分に意識した経営を実施すべく、財務レバレッジ(ネットDEレシオ)の適正化、投資規律の徹底や投資の精度向上による業績ボラティリティの低減、サステナビリティ向上に向けた取り組み(ガバナンス、人財の強化、気候変動対策等)の強化による非財務価値の向上を通じ、株主資本コストの低減を目指します。
当連結会計年度における資本配分の状況は以下のとおりです。
当連結会計年度における基礎営業キャッシュ・フローは3,696億円の収入となり、営業資金の増減等による275億円の収入や、子会社や持分法で会計処理される投資の売却等の投資活動による1,083億円の収入と合わせた収入合計額は5,054億円となりました。一方で、新規投資・CAPEX等の投資活動による支出は2,246億円となり、フリーキャッシュ・フローは2,808億円の収入となりました。
フリーキャッシュ・フローから親会社の株主に対する配当金495億円を控除した株主還元後フリーキャッシュ・フローは2,313億円の収入となり、社債及び借入金やリース負債等の返済に充当しております。当社は、「修正GC2021基本方針」に従い、GC2021期間中は財務基盤の再生・強化を優先し、株主還元後フリーキャッシュ・フローを債務の返済に優先的に充当する方針です。なお、当社の配当に関する基本方針等については、「第4 提出会社の状況」における「3 配当政策」に記載のとおりであります。
(d)資金調達の方針及び手段
当社及び連結子会社の資金調達に関しては、資産構成に合わせた最適資金調達を基本方針としております。
銀行、生保等の国内金融機関を中心とした間接調達、及び社債(国内社債発行登録枠2,000億円を設定)、コマーシャル・ペーパーの発行を通じた直接調達をバランスよく組み合わせることにより、必要資金を確保するとともに、長年に亘り金融機関・市場関係者と培った関係性を活かしながら、安定的な資金調達と金融費用の削減を目指しております。
当連結会計年度では、新型コロナウイルス感染症の発生・拡大に端を発する実体経済の悪化に伴う不測の事態に備え、必要資金の確保に機動的に対応しました。具体的には、コマーシャル・ペーパーの発行等を含む機動的な資金調達により、平時に比べて厚い手元流動性を確保しました。加えて、2020年9月には外貨資金調達多様化を目的として、無担保米ドル建社債(総額500百万米ドル)を発行しております。また、財務基盤の更なる強化を図るため、2016年8月16日に永久劣後特約付ローンによる2,500億円(トランシェA 1,000億円、トランシェB 1,500億円)の資金調達を実行しておりますが、前述のとおり、トランシェAの任意弁済の充当資金として、2021年3月4日に750億円のハイブリッド社債(劣後特約付)を発行し、2021年3月31日に総借入限度額250億円のハイブリッドローン(コミット型劣後特約付)契約を締結し、任意弁済期限より前倒しでリファイナンスを実施しました。
翌連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症を背景とした不透明な経済環境を注視するとともに、各国中央銀行による金融政策の方針転換等が金融環境に与える影響等に適切に対応をしていくことが主要な資金調達の実施方針となります。具体的には、引き続き平時に比べて厚い手元流動性を保有し、機動的な資金調達を実施します。
連結子会社を含む当社グループの資金管理については、原則として、当社及び国内外の金融子会社、海外現地法人等の調達拠点を通じて、資金余剰のあるグループ会社の余資を、他のグループ会社の資金需要に機動的に活用することで、グループ全体における効率的な調達体制を維持しております。
格付について、当社はムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody’s)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)、株式会社格付投資情報センター(R&I)、株式会社日本格付研究所(JCR)の4社から格付を取得しております。
当連結会計年度末現在の長期格付は、Moody’sがBaa2、S&PがBBB、R&IがA、JCRがA+となっております。
(e)流動性の状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物並びに定期預金の残高は7,460億円となりました。また、金融機関にフィーを支払い、コミットメントラインを以下のとおり設定しております。
・大手邦銀を主としたシンジケート団による3,000億円(長期)
・欧米主要銀行を主としたシンジケート団による555百万米ドル(短期)
当連結会計年度末において、1年以内に返済予定の長期債務を含む短期債務は6,235億円であり、連結ベースの流動比率は、前連結会計年度末の122.0%に対し、当連結会計年度末は125.6%となりました。現金及び現金同等物並びに定期預金の保有、コミットメントラインの設定により十分な流動性を確保しております。
前述したとおり、翌連結会計年度も当連結会計年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症を背景とした不透明な経済環境を注視するとともに、各国中央銀行による金融政策の方針転換等が金融機関に与える影響に対応し、直接・間接調達を併せた機動的な資金調達を実施することで、現預金等の手元流動性を十分に確保します。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに準拠して作成しており、連結財務諸表の作成にあたっては、報告期間の期末日における資産・負債の計上、偶発資産・偶発負債の開示及び期中の収益・費用の計上を行うため、必要に応じて会計上の見積り及び仮定を用いております。この会計上の見積り及び仮定は、その性質上不確実であり、実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表に特に重要な影響を与える会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。
有形固定資産及び無形資産の減損
当社及び連結子会社は、各報告期間の期末日に資産が減損している可能性を示す兆候の有無を判定しております。資産が減損している可能性を示す兆候の内容は、主に、事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容の見直し等によるものです。
有形固定資産及び耐用年数を確定できる無形資産については、資産が減損している可能性を示す兆候が存在する場合には、当該資産の回収可能価額の見積りを行っております。耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候があるか否かを問わず、最低限年1回定期的に資産の帳簿価額が回収可能価額を超過しているか否かを確認しております。
資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産が他の資産又は資産グループから概ね独立したキャッシュ・インフローを生成しない場合を除き、個別の資産ごとに決定しております。公正価値は独立の第三者による評価結果を使用する等市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積り算定しております。資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合は、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しております。使用価値の算定に当たって使用される将来キャッシュ・フローは、経営者により承認された事業計画や、それが入手できない場合は、直近の資産状況を反映した事業計画によって見積っております。石油・原油等の資源事業に係る開発設備及び鉱業権においては、将来油価・ガス価、鉱区ごとの開発コスト及び埋蔵量等を主要な仮定としております。使用価値の評価にあたり、見積られた将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクに関する現在の市場評価を反映した割引率を用いて現在価値まで割り引いております。これらの主要な仮定について、事業戦略の変更や市場環境の変化等により見直しが必要となった場合並びに割引率の見直しが必要となった場合に減損損失が発生する可能性があります。
減損損失認識後は、各報告期間の期末日において、過去に認識した減損損失がもはや存在しないか、又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを判定しております。このような兆候が存在する場合は、資産の回収可能価額の見積りを行っております。見積られた回収可能価額が資産の帳簿価額を超える場合は、減損損失を戻入れております。戻入れ後の帳簿価額は、過去において当該資産について認識した減損損失がなかったとした場合の帳簿価額(減価償却累計額控除後又は償却累計額控除後)を超えない範囲で認識しております。減損の戻入額は純損益として認識しております。
なお、のれんについて認識した減損損失を戻入れることはしておりません。
関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資の減損
当社及び連結子会社が保有している関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資に関して、総合的に判断を行い、減損の客観的証拠がある場合には、関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減額は減損損失として純損益で認識しております。減損の客観的証拠の内容は、主に、市場性のある投資の市場価格の下落、事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容の見直し等によるものです。また、回収可能価額は売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としております。公正価値は主に、売却予定価格等に基づき算定しており、使用価値は主に、経営者により承認された事業計画等に基づき算定しております。これらの主要な仮定について、事業戦略の変更や市場環境の変化等により見直しが必要となった場合並びに割引率の見直しが必要となった場合に減損損失が発生する可能性があります。
減損損失認識後は、認識した減損損失がもはや存在しない、又は減少している可能性を示す兆候の有無に関して、各報告期間の期末日に判定しております。このような兆候が存在する場合は、関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資の回収可能価額の見積りを行っております。見積られた回収可能価額がその投資の帳簿価額を超える場合は、減損損失を戻入れております。減損損失の戻入額は、その投資の回収可能価額が減損損失認識後に増加した範囲で認識しており、過去に認識した減損損失の金額を上限として純損益として認識しております。
偶発負債及び引当金
引当金は、当社及び連結子会社が過去の事象の結果として、現在の法的又は推定的債務を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性をもって見積ることができる場合に認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
訴訟案件に関する重要な引当金や偶発負債の見積りにあたっては、見積時点における訴訟プロセスの状況、訴訟戦略上の様々な選択肢や想定される将来の訴訟の趨勢も考慮のうえ、関連する事実関係や法律関係について、社外専門家を起用のうえ、当社の主張する法的立場の客観的な分析及び評価を実施しております。訴訟において当社が最終的に損失を蒙る可能性が高い状況であると考えられる場合に、信頼性をもって見積ることができる金額の引当金を計上しております。
当社の経営陣は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、想定を超えた変化等が生じた場合、当社の連結財務諸表に大きな影響を及ぼすことがあります。
その他、重要な会計方針についての詳細は、「第5 経理の状況」における「1 連結財務諸表等 連結財務諸表に対する注記3 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
④ 経営戦略の現状と今後の見通し
当社は、丸紅グループの在り姿「Global crossvalue platform」を定めるとともに、3ヵ年の中期経営戦略「GC2021」を策定し、2019年度よりスタートしております。また、2019年度の赤字決算により財務基盤の早急な回復が必要になったことに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により経営環境が大幅に悪化したことから、2020年5月7日に「修正GC2021」を公表しております。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)会社の経営の基本方針」に記載のとおりであります。
「修正GC2021」の進捗は以下のとおりです。
「財務基盤の再生・強化」
(単位:億円)
2019年度
実績
2020年度
実績
2021年度
見通し
3ヵ年累計
基礎営業キャッシュ・フロー
+3,638
+3,696
+3,500
約+10,800
株主還元後フリーキャッシュ・フロー
+573
+2,313
+600
約+3,500
ネットDEレシオ
1.16倍
0.88倍
0.9倍程度
-
● 財務基盤の再生・強化を最優先課題としてキャッシュ・フロー重視の経営を継続
● 資本配分の源泉となる基礎営業キャッシュ・フローは、2020年度も2019年度と同水準を維持
● 2020年度末のネットDEレシオは0.88倍まで低下し、2021年度末目標である1.0倍程度を前倒しで達成
「事業戦略の強化」
事業環境の変化を見据えた資産の入替え・優良化
● 事業環境の変化を見据えた戦略的な投資・回収を推進
● コスト削減を含む既存事業の強化・底上げ(ホライゾン1・2)に加え、成長が期待できる新分野への種まき(ホライゾン3)が順調に進捗
(単位:億円)
2019-2020年度
(*1)
2021年度
2019-2021年度
2ヵ年合計
ホライゾン1
ホライゾン2
ホライゾン3
見通し
3ヵ年合計見通し
新規投資
△3,167
△2,692
△475
△1,500
約△4,700
CAPEX等
△2,185
△1,943
△241
△1,200
約△3,400
回収
+2,091
+1,000
約+3,100
(*1)ホライゾン1:既存事業の充実、ホライゾン2:既存事業領域の戦略追求、ホライゾン3:現状では取り込めていない成長領域、新たなビジネスモデル
リスクマネジメントの更なる充実・強化
● 過去の事業・投資パフォーマンスを総括・社内共有、投資規律の徹底に向けた投資制度を整備
● リスクエクスポージャー管理の強化、ROIC/RORA(*2)を用いた事業の収益性強化の推進
(*2)ROIC:投下資本利益率(Return On Invested Capital)、RORA:リスクアセット利益率(Return On Risk Assets)
「ROEの維持・向上と株主資本コストの低減により中長期的な企業価値向上を追求」
ROEの維持・向上
● 実態純利益、基礎営業キャッシュ・フローの継続的な拡大と戦略的な資本配分
● 資本効率を意識した事業戦略の強化により、強固な収益基盤を構築
株主資本コストの低減
● 財務レバレッジ(ネットDEレシオ)の適正化
● 業績ボラティリティの低減
● ガバナンス、人財の強化、気候変動対策等のサステナビリティ取り組み強化による非財務価値の向上