【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進み、景気の回復が期待されるものの、ウクライナ情勢の長期化に起因する原燃料供給の制約や世界的な物価上昇、また急激な為替の変動による混乱など景気の下振れリスクを内包した不透明な経営環境が継続しております。このような状況の中、特殊鋼の主要需要先である自動車関連の受注は、半導体などを中心とした部品の供給不足に加え、中国におけるロックダウンの影響により、前年同期比で減少しました。同様に産業機械の受注も、供給制約の影響を受け減少基調となりました。また、半導体関連の受注は、5Gの普及やデータセンターの建設・更新需要により堅調に推移しておりましたが、足元ではシリコンサイクルの弱含みによる在庫調整の影響が出始めております。この結果、鋼材売上数量は前年同期比で減少しました。一方で、エネルギー関連、環境対応で需要が増加している自由鍛造品については、2016年以降、将来の需要増加を見越した戦略設備の投資効果により、その需要を捕捉することができており、高付加価値製品の受注が増加しました。主要原材料である鉄屑価格は、国際価格の影響により高値で推移し、ニッケルなどの各種合金類については供給制約などにより前年を上回る価格で推移しております。また原油・LNG価格高騰により電力などエネルギーコストも増大しました。一方、適正マージン確保のため、徹底したコスト削減および販売価格の是正に継続して取り組んでまいりました。この結果、当第3四半期連結累計期間の連結経営成績は、売上高は前年同期比442億26百万円増収の4,347億26百万円、経常利益は前年同期比79億20百万円増益の390億94百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比59億83百万円増益の281億86百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
①特殊鋼鋼材構造用鋼は、主要需要先である自動車関連や産業機械向けの受注減少を受け、前年同期比で数量が減少しました。工具鋼も、自動車減産の影響により、前年同期比で数量が減少しました。主要原材料である鉄屑価格は、国際価格の影響により高い水準で推移し、また、エネルギーコストは原油価格の高騰により増大しました。この結果、当第3四半期連結累計期間における特殊鋼鋼材の売上高は、売上数量は減少したものの、原燃料価格の上昇を販売価格に反映させたことにより前年同期比11.9%増加の1,622億3百万円、営業利益は、前年同期比63億48百万円増益の85億11百万円となりました。
②機能材料・磁性材料ステンレス鋼および高合金は、自動車関連向け需要の減少に加え、半導体関連や電気電子関係では足元で一部在庫調整の動きがあり、前年同期比で数量は減少しました。磁石製品は、自動車減産の影響を受け、売上高は前年同期比で減少しました。粉末製品は、自動車減産により数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことで、売上高は前年同期比で増加しました。この結果、当第3四半期連結累計期間における機能材料・磁性材料の売上高は、ステンレス鋼の売上数量は減少したものの、ニッケルなどの各種合金の価格上昇により前年同期比14.5%増加の1,672億53百万円、営業利益は前年同期比10億54百万円減益の200億34百万円となりました。
③自動車部品・産業機械部品エンジンバルブ部品・型鍛造品および精密鋳造品は、自動車減産の影響を受け、それぞれ売上高は前年同期比で減少しました。一方、自由鍛造品は、重電需要、船舶用バルブが堅調に推移し、航空機需要も回復基調となっていることから、売上高は前年同期比で増加しました。この結果、当第3四半期連結累計期間における自動車部品・産業機械部品の売上高は、自由鍛造品の売上高増加により前年同期比8.3%増加の752億30百万円、営業利益は前年同期比15億89百万円増益の59億13百万円となりました。
④エンジニアリング自動車部品向け熱処理炉の受注などが増加したことから、当第3四半期連結累計期間におけるエンジニアリングの売上高は、前年同期比3.8%増加の135億44百万円となりました。営業利益は、前年同期比16億40百万円増益の6億78百万円となりました。
⑤流通・サービス当第3四半期連結累計期間における流通・サービスの売上高は、前年同期比3.5%減少の164億93百万円、営業利益は前年同期比1億81百万円増益の25億2百万円となりました。
当社グループの当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前期末に比べ599億80百万円増加し7,881億67百万円となりました。総資産の増加の主な内訳は、「棚卸資産」の増加294億20百万円、「受取手形、売掛金及び契約資産」の増加85億73百万円、「電子記録債権」の増加73億10百万円であります。総資産の増加の主な内訳と要因は、下記のとおりであります。・「棚卸資産」は、主として原燃料市況の高騰により増加しております。・「受取手形、売掛金及び契約資産」および「電子記録債権」は、原燃料市況の高騰に対して、販売価格の是正に取り組んだことにより増加しております。また、当社グループの当第3四半期連結会計期間末の非支配株主持分を含めた純資産は、前期末に比べ220億32百万円増加し3,870億37百万円となりました。純資産の増加の主な内訳と要因は、親会社株主に帰属する四半期純利益281億86百万円の計上等による「利益剰余金」の増加196億59百万円であります。この結果、当第3四半期連結会計期間末の自己資本比率は44.5%となりました。
(2) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費は46億51百万円であります。