【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 業績の状況当第3四半期連結累計期間における世界経済は、中国ではゼロコロナ政策の緩和が進んだものの、感染の再拡大から経済活動の回復に足踏みがみられました。また、米国と欧州では経済活動の正常化が進み、緩やかな経済の持ち直しが続きましたが、深刻化するインフレ抑制のための金融引締めにより、個人消費を中心に景気減速が懸念される状況となりました。一方、わが国では欧米との金利差に起因する円安が物価上昇を招き、消費マインドが急速に悪化しました。さらに、ロシアのウクライナへの軍事侵攻の長期化からサプライチェーンの逼迫や資源価格の高騰が続き、景気は依然として不安定な状況で推移しました。このような状況下、当社グループは中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」に取り組み、収益性の向上と技術革新・次世代事業の確立および持続的な企業価値の向上を目指しました。当第3四半期連結累計期間の主な取組みとしては、インドで本格販売を開始した新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンの拡販に向けて技術普及活動を行いました。さらに、技術革新・次世代事業の確立の一環として、当社が2020年4月より配信しておりますスマートフォン用アプリケーション「レイミーのAI病害虫雑草診断」の海外向けサービス「NICHINO AI DIAGNOSIS」をインド、ベトナムおよび台湾において提供開始しました。このようなスマート農業への取組みを通じ、生産者の利便性のさらなる向上を図っております。当第3四半期連結累計期間の売上高は、中核事業である農薬事業が海外で好調に推移したことなどから660億6百万円(前年同期比151億85百万円増、同29.9%増)となりました。利益面では、営業利益は51億19百万円(前年同期比22億17百万円増、同76.4%増)、経常利益は46億26百万円(前年同期比13億84百万円増、同42.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は30億43百万円(前年同期比5億39百万円増、同21.6%増)となりました。なお、第1四半期連結会計期間より、在外連結子会社等の収益及び費用は、各社の決算日の直物為替相場により円貨に換算する方法から、期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更したため、遡及適用後の数値で前年同四半期比較を行っています。詳細は「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」をご参照ください。当第3四半期連結累計期間における報告セグメントの概況は以下のとおりです。
[農薬事業]国内農薬販売では、園芸用殺虫剤ピリフルキナゾン(商品名「コルト」)を始めとする主力自社開発品目の普及拡販に努めました。また、当社は、国内農薬市場におけるシェア拡大を図るため、2021年5月にコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社およびダウ・アグロサイエンス日本株式会社(現 コルテバ・ジャパン株式会社)(以下、両社あわせて「コルテバ社」といいます。)との間で販売契約を締結し、同年10月よりコルテバ社製品の販売を開始したこともあり、国内販売全体の売上高は前年同期を上回りました。海外農薬販売では、世界最大の農薬市場であるブラジルの農薬需要が拡大基調にあることに加え、サトウキビ向け除草剤需要の増加などからSipcam Nichino Brasil S.A.の売上高が伸長しました。北米では、棉でのコナジラミ多発生により殺虫剤ブプロフェジンの販売が好調に推移したことなどからNichino America Inc.の売上高が伸長しました。また、欧州では、ばれいしょ向けで除草剤ピラフルフェンエチルの販売が好調に推移したことからNichino Europe Co.,Ltd.の売上高が伸長したほか、バイエル社向けフルベンジアミド原体販売が好調に推移しました。さらに、アジアでは、インドで水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンの拡販に向けた技術普及活動を展開しました。これらにより、海外販売全体の売上高は前年同期を上回りました。以上の結果、農薬事業の売上高は618億20百万円(前年同期比148億92百万円増、同31.7%増)、営業利益は46億95百万円(前年同期比23億36百万円増、同99.0%増)となりました。
[農薬以外の化学品事業]化学品事業では、株式会社アグリマートの防疫薬剤分野の販売が堅調に推移しました。医薬品事業では、外用抗真菌剤の販売が堅調に推移しました。以上の結果、農薬以外の化学品事業の売上高は29億29百万円(前年同期比1億37百万円増、同4.9%増)、営業利益は8億17百万円(前年同期比94百万円減、同10.4%減)となりました。
(2) 財政状態の分析当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ124億30百万円増加し、1,306億77百万円となりました。これは、売上債権の減少を上回る現金及び預金並びに棚卸資産の増加が主な要因です。負債につきましては、前連結会計年度末に比べ91億23百万円増加し、604億13百万円となりました。これは、仕入債務及び長期借入金の増加が主な要因です。純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ33億7百万円増加し、702億63百万円となりました。これは、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額及び親会社株主に帰属する四半期純利益による利益剰余金の増加が主な要因です。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。なお、当社は、グループビジョン「Nichino Group-Growing Global」のもと、中期経営計画「Ensuring Growing Global 2(EGG2)」に取り組み、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に努めてまいる所存です。また、当社株券等の大規模買付行為を行おうとする者に対しては、大規模買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様が検討するための時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法その他関係法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間における当社グループ全体の研究開発費の総額は、33億45百万円であり、主に農薬事業です。なお、当第3四半期連結累計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。