【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(経営成績等の状況の概要)
(1) 経営成績の状況当連結会計年度の世界経済は、長期化するロシア・ウクライナ戦争やそれに伴う燃料・資源価格の高騰に加え、世界的なインフレの加速や各国の金融引き締め政策などにより、景気の先行き不透明な状況が継続しました。当社グループの主力事業を取り巻く環境は、無機化学事業においては、酸化チタンの自動車向け販売が低調であった他、海外向け販売がアジアでの市況軟化の影響を受けました。機能性材料では電子部品用材料が期の前半は堅調に推移したものの、期末にかけて需要が落ち込みました。有機化学事業においては、主力の農薬について、引き続き南米を中心に穀物生産が活況で、大豆やトウモロコシの作付面積のさらなる増加などで市場が拡大し、当社グループも殺菌剤や除草剤を中心に、米州や欧州などで販売が大きく増加しました。 このような状況下、当社グループは、2030年に向けた長期ビジョン「Vision 2030」として「独創・加速・グローバル。化学の力で暮らしを変える。」を掲げ、2021年度から2023年度の3か年の中期経営計画「Vision 2030 StageⅠ」に取り組む中で、ESG、SDGs視点での経営強化や目標の具体化などを推進することにより、サステナブルな企業価値創造を目指しております。 この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高1,312億円(前期比202億円増)、営業利益86億円(前期比29億円減)、営業外では為替差益を計上するなどで経常利益103億円(前期比29億円減)、親会社株主に帰属する当期純利益69億円(前期比47億円減)となりました。
事業の種類別セグメントの状況は次のとおりであります。 (無機化学事業)酸化チタンは、半導体などの部材不足による自動車生産調整に加え、輸出では中国での景気悪化による需要減退などがありましたが、価格改定の浸透や為替相場が円安で推移したことにより、売上高は494億円(前期比34億円増)となりました。機能性材料は、電子部品用材料の車載用の販売などが期の前半に順調に推移したことにより、売上高は150億円(前期比11億円増)となりました。 損益面では原燃料価格の高騰を受け、販売価格への転嫁に取り組んだものの、それを大幅に上回るコスト上昇や国内外での需要低迷による販売数量の減少などで、減益となりました。 この結果、無機化学事業の売上高は644億円(前期比46億円増)、営業利益は10億円(前期比50億円減)となりました。
(有機化学事業)農薬は、米州については、ブラジルで旺盛な穀物生産を背景に殺菌剤の販売が大きく増加した他、北米では除草剤の販売が好調に推移しました。欧州では、流通在庫の調整などにより殺虫剤の販売が低迷したものの、殺菌剤や除草剤の需要が拡大し、増収となりました。アジア地域では、殺虫剤の販売が減少したものの、拡販活動が順調に進んだことで殺菌剤の販売が好調に推移し、増収となりました。国内販売も殺菌剤の販売が堅調だったことなどにより、増収となりました。 農薬以外では、動物用医薬品などのヘルスケア事業の売上高が前期を上回りました。 この結果、有機化学事業の売上高は、637億円(前期比154億円増)、営業利益は106億円(前期比28億円増)となりました。 (その他の事業)売上高は29億円(前期比2億円増)、営業利益は2億円(前期比2億円減)となりました。
(2) 財政状態の状況当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比161億円増加の2,019億円となりました。これは、売掛金が63億円、棚卸資産が172億円、投資有価証券が6億円、その他流動資産が21億円それぞれ増加しましたが、現金及び預金が94億円減少したことなどによるものです。 負債は、前連結会計年度末比105億円増加の1,044億円となりました。これは、支払手形及び買掛金が60億円、長短借入金・社債が60億円それぞれ増加しましたが、未払法人税等が8億円、退職給付に係る負債が8億円それぞれ減少したことなどによるものです。 純資産は、利益剰余金が55億円、為替換算調整勘定が16億円それぞれ増加しましたが、自己株式の取得20億円があったことなどにより、前連結会計年度末比55億円増加の974億円となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ94億円減少し、176億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは60億円の支出(前期比225億円の減少)となりました。これは、税金等調整前当期純利益94億円、減価償却費及びその他の償却費53億円、仕入債務の増加50億円などの資金増加要因がありましたが、売上債権の増加54億円、棚卸資産の増加159億円、法人税等の支払20億円などの資金減少要因があったことなどによるものです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、50億円の支出(前期比7億円の減少)となりました。これは、固定資産の取得などによるものです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、10億円の収入(前期比126億円の増加)となりました。これは、長短借入金・社債の純増60億円、リース債務及び割賦債務の返済15億円、配当金の支払14億円、自己株式の取得による支出20億円などがあったことによるものです。
当社グループは、事業の収益力を高めることで経営環境の変化に耐え得る強固な財務基盤の構築を目指しております。具体的には、安定した期間利益を計上し、着実に自己資本比率を高めるとともに、高いキャッシュ・フローの創出力を通じた有利子負債の削減を進めております。当社グループの資金需要の主なものは、原料費、労務費、委託費など製品の製造にかかわる製造費用の他、販売費や農薬を中心とした研究開発費を含む一般管理費など事業活動に必要な運転資金に加えて、装置産業である酸化チタンを製造するための設備の新設や維持更新を中心とした設備資金であります。原料鉱石価格の高止まりや設備投資、研究開発による高い資金需要が引き続き想定されることから、今後の資金調達については、手元資金や営業活動によるキャッシュ・フローから創出するとともに、金融機関からより安定的で低コストの借入を実施していきます。さらに突発的な資金需要に備え、主要金融機関との間で100億円のコミットメントライン契約を締結し、手元流動性を確保しております。
当社の企業集団のキャッシュ・フロー指標を示すと、次のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
44.7
44.5
44.2
49.5
48.3
時価ベースの自己資本比率(%)
26.7
12.8
20.2
23.2
21.1
債務償還年数(年)
10.1
15.8
12.7
3.1
-
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
6.6
5.5
8.3
30.8
-
(注)1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値より算出しております。2 有利子負債にはリース債務等を含んでおります。3 各指標は以下の算式により計算しております。※自己資本比率:自己資本/総資産※時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
(株式時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。)※債務償還年数:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー※インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い4
2023年3月期は、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオを記載しておりません。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。なお、連結決算日における資産及び負債の連結貸借対照表上の金額及び連結会計年度における収益及び費用の連結損益計算書の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績や状況等を勘案し、合理的に判断しておりますが、今後の環境、条件等の変動により、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。当社グループとしては、以下に記載する会計上の見積りは当社グループにとって重要であると判断しております。① 投資の減損当社グループは、取引関係維持のために販売先や金融機関の株式を保有しております。これらの株式には、価格変動性の高い公開会社の株式と株価の決定が困難な非公開会社の株式が含まれております。公開会社の株式への投資の場合、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回収可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。また、非公開会社の株式への投資の場合、それらの会社の純資産額が取得原価に比べ50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回収可能性を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。
② 繰延税金資産当社グループは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しております。評価性引当額の算定においては、将来の課税所得と実現性の高いタックスプランニングに基づいて検討を行っております。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年比(%)
無機化学事業
71,302
19.0
有機化学事業
34,954
29.3
合計
106,256
22.2
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。2 金額は、販売価格によっております。
(2) 受注状況当社グループは、主として見込み生産を行っております。
(3) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年比(%)
無機化学事業
64,479
7.7
有機化学事業
63,764
32.0
その他の事業
2,995
7.6
合計
131,238
18.3
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度において、長瀬産業株式会社に対する販売割合は、10%未満であるため、記載を省略しております。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
三井物産株式会社
12,633
11.4
16,165
12.3
長瀬産業株式会社
11,177
10.1
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