【経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は,当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)業績の状況
当第2四半期連結累計期間の世界経済は,世界的なインフレや金融引き締め,不安定な資源価格などにより,停滞感が強まっています。また,中国経済は,不動産部門の低迷が景気を下押しし,力強さを欠いています。わが国経済については,雇用・所得環境が改善する中で,インフレの影響は受けつつも,景気は緩やかに回復しています。
当社グループの主力事業である民間向け航空エンジンでは,旅客需要の回復は堅調に推移しています。アフターマーケット関連の費用が増加の傾向にありますが,本体販売台数の伸びとともにスペアパーツ需要も増加しています。
また,継続して影響が生じている資機材価格高騰に対しては,価格転嫁やコスト構造強化の取り組みが一定程度進捗しており,事業によってその進捗に濃淡はありますが,年度末までのさらなる成果の獲得に向けて取り組みを推進しています。
一方,当社グループは,当第2四半期連結会計期間において多額の損失を計上しました。
損失を計上した理由については以下のとおりです。
(出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる売上収益の減少)
現在進行している出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムにおいて,今後数年間で整備台数が増加し,2024年から2026年までの期間に平均350機の地上駐機が見込まれることになりました。同エンジンプログラムに約15%のシェアで参画している当社においても補償費用や追加整備費用等の発生が見込まれることとなったため,当第2四半期連結会計期間において,その影響額1,541億円の売上収益減額を一括で計上しました。
整備台数増加の原因は,PW1100G-JMプログラムのパートナー会社である米国Pratt&Whitney社(以下,「P&W社」という。)において過去に製造された粉末冶金部品(※)の製造工程にて,まれに品質上の問題があることが判明し,P&W社の技術検討の結果,2023年9月に疑義対象品に対する繰り返し検査・対象部品寿命短縮等の方針が出されたことによるものです。対象となるエンジンは約3,000台であり,一定サイクル間隔での繰り返し検査と部品交換を要することとなったため,整備回数が増加する結果となりました。なお,製造工程に対する有効な対策は既にとられており,現在判明している対象部品以外で同様の問題は発生していません。
(※)粉末冶金:溶融金属を噴霧して金属粉末を生成し,その粉末を固化・鍛造して部品を製造する技術
(海外連結子会社における訴訟の和解合意に伴う売上収益の減少)
当社の連結子会社であるIHI E&C International Corporation(以下,「IHI E&C」という。)が過去に受注した北米のプロセスプラント案件において,工事の遅延に伴い生じた追加費用の負担を巡って提起していた訴訟についてIHI E&Cが和解金を受け取ることで合意に至りました。IHI E&Cは,前期までに合理的な見積りによって収益を認識していましたが,上記和解金額が過去の認識した収益金額を下回ることとなりましたので,当第2四半期連結会計期間において146億円の売上収益を減額しました。
このような事業環境下において,当社グループの当第2四半期連結累計期間は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意に伴う売上収益の減少の影響により,受注高については前年同期比1,625億円減の4,802億円となり,売上収益については,20.9%減の4,703億円となりました。
損益面では,営業損益は,上記の売上収益の大幅な減収に加えて,民間航空エンジンでのアフターマーケット関連費用の増加のほか,研究開発費や人件費等の増加などもあり,1,905億円減益の1,570億円の損失となりました。親会社の所有者に帰属する四半期損益は,1,586億円減益の1,375億円の損失です。
当第2四半期連結累計期間の報告セグメント別の状況は以下のとおりです。
(単位:億円)
報告セグメント
受注高
前第2四半期
当第2四半期
前年同期比
増減率
前第2
四半期
連結
累計期間
当第2
四半期
連結
累計期間
前年
同期比
増減率
(%)
連結累計期間
連結累計期間
(2022.4~2022.9)
(2023.4~2023.9)
(%)
売上収益
営業損益
売上収益
営業損益
売上収益
営業損益
資源・
エネルギー・
環境
2,109
1,617
△23.3
1,645
100
1,732
△81
5.3
-
社会基盤
555
591
6.5
754
31
715
△13
△5.2
-
産業システム・
汎用機械
2,236
2,292
2.5
2,002
53
2,136
30
6.7
△42.6
航空・宇宙・防衛
1,492
246
△83.5
1,509
188
93
△1,477
△93.8
-
報告セグメント 計
6,393
4,747
△25.7
5,911
374
4,676
△1,540
△20.9
-
その他
255
291
14.4
220
1
231
13
5.0
691.4
調整額
△220
△236
-
△188
△40
△205
△43
-
-
合計
6,428
4,802
△25.3
5,944
335
4,703
△1,570
△20.9
-
(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。
<資源・エネルギー・環境>
IHI E&Cでの訴訟の和解合意に伴い,売上収益を146億円減額したことで,受注高は146億円減少,営業損益も146億円減益となっています。以下の記述はこの影響を除いたものです。
受注高は,カーボンソリューションで増加したものの,東南アジアでの大型発電所プロジェクトや原子力で減少しました。
売上収益は,原子力の工事量減少により減収となったものの,東南アジアの大型発電所プロジェクトやカーボンソリューションのライフサイクルビジネス事業で増収となりました。
営業損益は,東南アジアの大型発電所プロジェクトやカーボンソリューションで増益となったものの,原子力の減収などで減益となりました。
<社会基盤>
受注高は,橋梁・水門やコンクリート建材で増加しました。
売上収益は,橋梁・水門の海外大型工事や,シールドシステムなどで減収となりました。
営業利益は,橋梁・水門での原価先行算入の影響により減益となりました。
<産業システム・汎用機械>
受注高は,運搬機械や熱・表面処理で減少したものの,車両過給機で増加しました。
売上収益は,車両過給機などで増収となりました。
営業利益は,車両過給機で増収の影響があったものの,資材価格高騰の影響によりパーキングで減益となったほか,販管費の増加等により減益となりました。
<航空・宇宙・防衛>
出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムにより売上収益を1,541億円減額したことで,受注高は1,541億円減少,営業損益は1,583億円減益となっています。以下の記述はこの影響を除いたものです。
受注高は,民間向け航空エンジンや,防衛事業で増加しました。
売上収益は,民間向け航空エンジンの本体販売増加により増収となりました。
営業利益は,為替による増益はあるものの,民間向け航空エンジンでの量産初期段階のPW1100G-JMエンジン本体の販売が増加したほか,アフターマーケット費用や販管費の増加により減益となりました。
(2)財政状態の分析
当第2四半期連結会計期間末における総資産は2兆533億円となり,前連結会計年度末と比較して1,113億円増加しました。主な増加項目は,棚卸資産で598億円,繰延税金資産で176億円,営業債権及びその他の債権で121億円,主な減少項目は,現金及び現金同等物で85億円です。
負債は1兆7,275億円となり,前連結会計年度末と比較して2,418億円増加しました。主な増加項目は,返金負債で1,598億円,コマーシャル・ペーパーを含む社債及び借入金で1,280億円,主な減少項目は,営業債務及びその他の債務で255億円,契約負債で114億円です。返金負債は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる売上収益の大幅な減少に伴い増加したものです。
資本は3,257億円となり,前連結会計年度末と比較して1,305億円減少しました。これには,親会社の所有者に帰属する四半期損失1,375億円が含まれています。
以上の結果,親会社所有者帰属持分比率は,前連結会計年度末の22.2%から14.5%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は,前連結会計年度末と比較して85億円減少し,1,161億円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは814億円の支出超過(前年同期は99億円の支出超過)となりました。これは,棚卸資産及び前払金が増加したためです。民間向け航空エンジンでは,サプライチェーンの不安定な状態が続く中で,今後の増産に向けて運転資本を積み増しています。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは313億円の支出超過(前年同期は216億円の支出超過)となりました。これは,有形固定資産の取得による支出があったためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,014億円の収入超過(前年同期は193億円の支出超過)となりました。これは,資金確保のためコマーシャル・ペーパーの発行による収入があったためです。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金・設備資金については,借入金や社債,コマーシャル・ペーパー及び自己資金により充当しています。当第2四半期連結会計期間末の有利子負債残高はリース負債を含めて6,447億円となり,前連結会計年度末と比較して1,252億円増加しました。これは,主として事業活動による運転資金の増加を外部借入で調達したことやコマーシャル・ペーパーを発行したことによるものです。
当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物については,前連結会計年度末と比較して85億円減少し,1,161億円となりました。これは,主として事業活動による運転資金の支出に充てたこと等によるものです。
資金の流動性については,主要銀行との間の当座貸越枠に加え,コミットメントライン契約やコマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有しています。コミットメントラインについては,今後の事業展開における資金需要への対応と運転資金の確保及び財務基盤の安定性向上のために,機動的な資金調達手段を確保することを目的として増枠設定を行なっています。上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。
また,資金調達の多様性では, 2023年9月にサステナブル・ファイナンス・フレームワークを策定し,サステナブルファイナンスを活用した資金調達を推進しています。ESG経営を進める中で,ファイナンスを事業活動と一体ととらえ,自然と技術が調和する持続可能な社会の実現のために適切な資金調達と事業展開を行なっていきます。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は152億円です。なお,当第2四半期連結累計期間において,当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6)生産,受注及び販売の実績
a.生産実績
当第2四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
資源・エネルギー・環境
200,947
25.3
社会基盤
80,893
5.7
産業システム・汎用機械
216,891
23.9
航空・宇宙・防衛
236,765
57.5
報告セグメント 計
735,496
30.8
その他
12,668
97.6
合計
748,164
31.5
(注)1 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。
2 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
b.受注状況
当第2四半期連結累計期間における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
セグメントの名称
受注高
(百万円)
前年同期比(%)
期末受注残高
(百万円)
前期末比(%)
資源・エネルギー・環境
161,714
△23.3
565,390
△0.1
社会基盤
59,145
6.5
204,979
△6.1
産業システム・汎用機械
229,275
2.5
216,001
7.4
航空・宇宙・防衛
24,612
△83.5
309,549
5.5
報告セグメント 計
474,746
△25.7
1,295,919
1.4
その他
29,180
14.4
25,254
21.0
調整額
△23,641
-
-
-
合計
480,285
△25.3
1,321,173
1.7
(注)1 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
2 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。
3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
4 航空・宇宙・防衛事業では,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムにより売上収益を
減額した影響により,受注高が大きく減少しています。
c.販売実績
当第2四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
資源・エネルギー・環境
173,246
5.3
社会基盤
71,508
△5.2
産業システム・汎用機械
213,611
6.7
航空・宇宙・防衛
9,330
△93.8
報告セグメント 計
467,695
△20.9
その他
23,195
5.0
調整額
△20,580
-
合計
470,310
△20.9
(注)1 販売実績は売上高をもって示します。
2 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。
3 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。
(7)経営方針,経営戦略,対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において,経営方針,経営戦略,対処すべき課題について重要な変更はありません。
世界的なインフレや金融引き締めにより,欧米をはじめとする世界的な景気後退の懸念が高まっています。資源・材料価格や輸送費の高騰は概ね落ち着いてきたものの,インフレの鈍化ペースは遅く,高金利の継続による景気の下振れ,緊迫化する中東情勢による原油価格への影響には引き続き注意する必要があります。中国経済についても,不動産部門の低迷長期化により景気減速感が強まりつつあります。わが国経済は,雇用・所得環境が改善する中で,緩やかに回復していくことが期待されます。
当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めています。劇的な環境変化へ対応し,持続的な高成長を実現する事業へ変革するため,当社の成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と,将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業へ,経営資源を大胆にシフトし,投資を実行していきます。
世界の航空機需要は今後確実な伸びが予想される中で,当社グループは小型~大型・超大型クラスのベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しています。ボリュームゾーンである中型エンジンの第二世代となるPW1100G-JMの累計販売台数は2022年度に3,000台を達成しており,当社グループは将来増加が見込まれるスペアパーツ需要に応えていきます。
なお,当期に発生した出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムに関しては,プログラムパートナーとともに全体で整備能力増強を図り,お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。
中核事業である資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械の各分野では,引き続き事業ポートフォリオの変革を通して継続的な成長シナリオを描き,投資に必要なキャッシュを創出していきます。
また,それらを実現するために必要な変革人財の育成・獲得や,デジタル基盤の高度化を進め,企業文化,企業体質の変革を進めていきます。
(注)数値表記について,億円表示は切捨て,その他は四捨五入表示しています。
