【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が着実に普及し、厳しい行動制限が徐々に緩和された結果、社会経済活動の正常化が進み、景気に持ち直しの動きが見られました。しかしながら、中国のゼロコロナ政策に起因したサプライチェーンの混乱、資源価格や原材料価格の高騰、さらには主要各国の金利政策に伴う為替相場の大幅な変動懸念などにより、景気の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループの主力市場であるパチンコ・パチスロ機市場は、スマートスロット等の次世代遊技機の市場投入もあり底堅く推移したものの、旧規則機の市場撤去に伴う新規則機への入れ替え特需のあった前期に対しては、若干の市場規模縮小となったものと分析しております。当社の市場規模の目安となるパチンコ・パチスロ機の年間新台販売台数は、前期174万台に対して158万台程度だったものと推計しております。
かかる環境の中で当社グループは、従業員及び取引先を含めた関係者の皆さまの安全に配慮した新型コロナウイルス感染症対策を継続したうえで、パチンコ・パチスロ機市場での安定収益確保に向けた取り組み、組み込み機器市場に向けたグラフィックスLSIの販売拡大、さらには新規事業と位置づけるミドルウェア、機械学習/AI、ブロックチェーン、セキュリティの4領域における早期事業化に向けた活動に注力いたしました。また、新規事業の展開を加速させる観点から、組織再編やアライアンス、出資の検討等を積極的に実施いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は前期比3,807百万円増(同35.7%増)となる14,474百万円、売上総利益は同1,029百万円増(同29.3%増)となる4,546百万円となりました。売上総利益率は製品ミックスの変動による影響に加え、一部製品の仕入単価の上昇等により前期に比して1.6ポイント低下となる31.4%となっております。
販売費及び一般管理費は前期比253百万円増(同9.5%増)となる2,931百万円、販売費及び一般管理費のうち研究開発費は同32百万円増(同2.1%増)となる1,552百万円となっております。
以上により、営業利益は前期比775百万円増(同92.4%増)となる1,614百万円となりました。また、営業外収益にNEDO助成金収入等を計上した結果、経常利益は前期比811百万円増(同81.0%増)となる1,813百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同488百万円増(同56.4%増)となる1,353百万円となりました。
セグメント別の経営成績は次の通りであります。また、下記セグメントのほか、各セグメントに配分していない全社費用が765百万円となっております。
⑴ LSI開発販売関連
LSI開発販売関連は既存事業であるパチンコ・パチスロ機向け製品で構成されており、売上高は前期比3,707百万円増(同36.5%増)となる13,852百万円、セグメント利益は同777百万円増(同38.7%増)となる2,785百万円となりました。製品別では主力製品であるパチンコ・パチスロ機向けグラフィックスLSIが前期に対し約6.6万個増加となる約51万個の販売になったほか、メモリモジュール製品等が新規販売ベースで前期を上回る販売数となりました。
また、当期末の同セグメントの受注残高は24,184百万円となっております。サプライチェーンの混乱の影響もあり、多くのメーカーにおいて部材を積極的に確保する動きを見せており、本受注残高には2025年3月期の販売予定分も含まれております。
⑵ 新規事業関連
新規事業関連は組み込み機器向けグラフィックスLSIに加え、ミドルウェア、機械学習/AI、ブロックチェーン、セキュリティ領域に向けたスタートアップ事業であり、機械学習/AI領域での売上高を中心に、売上高は前期比99百万円増(同19.1%増)となる622百万円、セグメント損失は同139百万円減(前期は545百万円の損失)となる405百万円となりました。なお、当連結会計年度におきましては、機械学習/AI領域における開発支援ビジネスが伸長いたしました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末との比較で1,608百万円増加となる13,883百万円(同13.1%増)となりました。主な要因は、現金及び預金の増加(412百万円)、売掛金及び契約資産の増加(203百万円)、有価証券の増加(1,200百万円)に対し、投資有価証券の減少(71百万円)等であります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末との比較で542百万円増加となる2,187百万円(同33.0%増)となりました。主な要因は、買掛金の増加(278百万円)、未払法人税等の増加(139百万円)等であります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末との比較で1,066百万円増加の11,695百万円(同10.0%増)となりました。主な要因は、利益剰余金の増加(920百万円)等であります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は10,709百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下の通りとなっております。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は1,885百万円(前期は1,622百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益(1,741百万円)、仕入債務の増加(278百万円)、その他の流動負債の増加(140百万円)に対し、売上債権の増加(203百万円)、法人税等の支払額(194百万円)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動により獲得した資金は135百万円(前期は157百万円の支出)となりました。これは主に投資事業組合からの分配による収入(217百万円)、子会社の清算による収入(35百万円)に対し、有形固定資産の取得による支出(86百万円)、投資有価証券の取得による支出(32百万円)等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動により支出した資金は408百万円(前期は308百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払額(432百万円)等によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績は次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年増減率(%)
(百万円)
LSI開発販売関連
13,695
41.5
新規事業関連
316
61.3
合計
14,012
41.9
(注)1.金額は販売価額によっております。
2.上記の金額は、LSI製品及びLSI関連製品に対する金額を記載しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績は次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
受注高
(百万円)
前年増減率
(%)
受注残高
(百万円)
前年増減率
(%)
LSI開発販売関連
25,084
40.1
24,184
86.7
新規事業関連
865
89.4
488
360.7
合計
25,949
41.3
24,673
88.9
(注)1.金額は販売価額によっております。
2.LSI開発販売関連セグメントでは、一部製品において需要予測に基づく見込み生産を行っております。上記数値は見込み生産も含めたLSI製品及びLSI関連製品に対する受注実績を記載しております。また、新規事業関連セグメントは、組み込み機器向けLSI製品及びLSI関連製品に対する受注実績及び個別受託開発に対する数値を記載しており、IP製品等のロイヤリティは含めておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年増減率(%)
(百万円)
LSI開発販売関連
13,852
36.5
新規事業関連
622
19.1
合計
14,474
35.7
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
緑屋電気株式会社
6,511
61.0
7,903
54.6
加賀FEI株式会社
加賀電子株式会社
2,306
977
21.6
9.2
3,446
2,046
23.8
14.1
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを行なっております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループが連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成に際して用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
上記の通り、現在の主力市場は「LSI開発販売関連」セグメントに含まれるパチンコ・パチスロ機市場であり、売上高の95%程度を同市場向けの製品で占めております。現在、同市場は遊技人口の減少傾向に加え、法改正の影響もあり先行き不透明な状況が続いております。今後安定的な収益を確保し持続的な成長を実現していくためには、同市場の規模が縮小した中でも安定的な収益を確保するためのビジネスモデルの再構築に加え、同市場以外の新規事業を早急に開拓していくことが重要であると考えております。
③財政状態、キャッシュ・フローの分析
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
(資金需要)
当社グループは主にファブレスメーカーとして事業を展開しており、工場等の多額の設備投資を必要としないビジネスモデルを採用しております。現在の事業活動における資金需要の主なものは、販売費及び一般管理費に計上されるものであり、次世代製品の開発等にかかる研究開発費に加え、事業活動を支えるその他一般管理費等があります。当連結会計年度における販売費及び一般管理費の実績は2,931百万円となっております。また、新規事業の展開を加速させる観点からM&A等も積極的に検討しており、今後はそれに伴う資金需要の発生も見込まれます。
(財務政策)
現在の当社グループの収益構造はLSI開発販売関連セグメントに含まれるパチンコ・パチスロ機向け製品による収益が大半を占めており、当社グループの業績は当該市場環境の影響を強く受けるものと考えております。当社グループでは、事業ポートフォリオの多様化に取り組むなど、特定環境の影響を過度に受けないための施策に注力しておりますが、各期の業績のボラティリティが高くなる可能性も考慮し、全般として財務の健全性を保つことに比重を置いております。
当連結会計年度末における資金は、10,709百万円となっており、この資金は当連結会計年度末における連結貸借対照表上の現金及び預金残高9,509百万円と償還期限3ヶ月以内の合同運用による金銭信託1,200百万円で構成されております。当連結会計年度末における現金及び預金と有価証券の合計額に係る総資産構成比率は77%となっており、当連結会計年度末における資金残高は、財政状態の健全性を確保したうえで、機動的な経営活動及び積極的な研究開発活動を行うために当面必要と考えられる資金額として問題のない水準にあると分析しております。
⑤経営上の目標の達成状況について
当社グループは、「ROE10%の達成」を事業活動の指標として採用しております。当連結会計年度における連結ROEは12.2%となっております。引き続き資本効率を意識した経営を推進することで、ROE10%を達成することを目標にさまざまな経営戦略を実行してまいります。
なお、中長期的な会社の経営戦略は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載の通りであります。