【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるGMO-FHの経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。 なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。このため、前期比較は基準の異なる算出方法に基づいた数値を用いております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 経営成績の状況当連結会計年度における国内株式市場は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰や世界的なインフレの加速、世界の主要中央銀行の利上げなど、地政学リスクや世界経済の先行き不透明感が高まる中で、ボラティリティの高い展開となりました。日経平均株価は、前連結会計年度末の28,791円71銭から9.4%下落し、当連結会計年度末は26,094円50銭で取引を終えました。このような相場展開を受けて、個人投資家の株式等委託売買代金は前連結会計年度と比較して3.5%増加しました。外国為替市場においては、インフレ抑制に向けた米国連邦準備制度理事会(FRB)による利上げや日銀の大規模金融緩和の継続による日米金利差の拡大を背景に、円安進行が加速しました。年初に1ドル=115円台で始まったドル円相場は、2022年10月には約32年ぶりとなる150円台をつけました。このようなボラティリティの高まりを受けて、国内店頭FXの取引金額は前連結会計年度比で倍増しました。暗号資産市場においては、代表的な暗号資産であるビットコインの価格は4月にかけて上昇傾向で推移していましたが、アルゴリズム型ステーブルコインのテラUSDの急落を受けて大きく下落しました。その後も米国大手暗号資産取引所の破綻などの不安要素の影響から低調に推移し、年間の国内暗号資産取引高は前連結会計年度比で72.2%減少し、年間を通して厳しい市場環境が継続しました。このような外部環境の中、当社及び当社の連結子会社(以下、「GMO-FH」という。)は、「強いものをより強くする」の方針のもと、強みにリソースを集中投下して既存事業の収益基盤をさらに強化するとともに、成長性が期待される新規事業領域への積極的投資を推進しました。
(証券・FX事業)強みである店頭FXは、ドル円相場の急速な円安進行を受け、カバー取引コストが増加するなど厳しい事業環境となりましたが、収益性の改善施策とともに、スプレッド縮小やGMOクリック証券の店頭FX取引サービスにおける最小取引単位の引き下げの実施など利便性向上に取り組み、顧客基盤の拡大を図りました。さらなる成長に向けクロスセル施策などを展開し注力するCFDは、原油などコモディティ市場におけるボラティリティの高まりの後押しもあり、売買代金・収益がともに高水準で推移しました。証券・FX事業の営業収益は、好調なCFDや2021年9月に連結子会社化した外貨ex byGMO株式会社が貢献し、前連結会計年度比で増収となりました。一方、タイ王国で証券事業を展開している当社連結子会社のGMO-Z com Securities (Thailand) Public Company Limited において、信用取引の提供に際し顧客から担保として差し入れを受けた代用有価証券(1銘柄)に関してタイ証券市場で不公正と疑われる取引が発生したことにより、当該有価証券の価値が大幅に下落しました。同社で当該有価証券を担保としている信用取引貸付金の回収可能性を検討し、貸倒引当金繰入額を販売費及び一般管理費に計上したことから、当セグメントの営業利益は前連結会計年度比で減少しました。
(暗号資産事業)暗号資産事業においては、複数のアルトコイン銘柄の追加をはじめ、新たな資金調達ツールとして注目を集めるIEO※の提供を開始したほか、API機能やPC専用取引ツールの拡充、貸暗号資産サービスの強化に取り組むことで顧客基盤が順調に拡大しました。一方、暗号資産市場の低調を受けて売買代金が低水準で推移し、暗号資産市場の活況を背景に非常に好調であった前連結会計年度比で営業収益が大幅に減少し、営業損失を計上しました。
(その他)2021年8月にβ版、同年12月に正式版の提供を開始したNFT事業では、NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」の利用者拡大に向けて、コンテンツ拡充に加え、出品者が無料でユーザーにアイテムを配布できるエアドロップ機能や、スマートフォンアプリにAR(拡張現実)機能をリリースするなど機能拡充に取り組みました。2021年12月に開始したバーチャルオフィス事業は、サービス提供エリアの拡大を強力に推進し、順調に顧客数が伸長しました。また、当社が保有するGMOあおぞらネット銀行株式会社(以下、GMOあおぞらネット銀行)の普通株式について、事業KPIは拡大しているものの、成長速度が当初想定を下回る状態が継続し、事業計画との間に乖離が生じたことから、減損処理を行いました。また、当社が将来取得することとなる種類株式について契約損失引当金繰入額を計上し、あわせて4,133百万円の特別損失を計上しました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は46,533百万円(前連結会計年度比1.3%増)、純営業収益は43,884百万円(同0.1%増)、営業利益は9,150百万円(同40.6%減)、経常利益は7,875百万円(同50.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,212百万円(同87.7%減)となりました。
※IEO(Initial Exchange Offering)とは、暗号資産交換業者を介して行われる資金調達の方法のことで、暗号資産交換業者が発行者 の事業内容や調達した資金の用途などに対して審査を実施し、新規発行されたトークンの販売を行います。
当連結会計年度における、主な収益、費用、利益の状況は次のとおりです。 (単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減額
増減率
営業収益
45,924
46,533
609
1.3%
受入手数料
5,276
4,295
△980
△18.6%
トレーディング損益
34,890
35,181
290
0.8%
金融収益
5,132
6,385
1,252
24.4%
その他の営業収益
61
86
24
40.6%
その他の売上高
563
585
21
3.9%
金融費用
1,700
2,261
560
33.0%
売上原価
402
388
△14
△3.6%
純営業収益
43,821
43,884
63
0.1%
販売費及び一般管理費
28,424
34,734
6,309
22.2%
営業利益
15,396
9,150
△6,246
△40.6%
経常利益
16,037
7,875
△8,161
△50.9%
親会社株主に帰属する当期純利益
9,858
1,212
△8,646
△87.7%
当連結会計年度におけるセグメント別の状況は次のとおりです。
[参考]営業収益内訳(セグメント別/商品別) (単位:百万円)
前連結会計年度
当連結会計年度
増減額
増減率
証券・FX事業
33,282
42,253
8,970
27.0%
株式・ETF等 ※
1,821
1,357
△464
△25.5%
先物・オプション
153
134
△18
△11.9%
取引所FX
488
926
437
89.6%
通貨関連店頭デリバティブ
19,929
24,543
4,614
23.2%
CFD・株BO
5,700
8,838
3,137
55.0%
金融収益
5,132
6,384
1,252
24.4%
その他
57
69
11
20.1%
暗号資産事業
12,067
3,677
△8,390
△69.5%
暗号資産
12,067
3,677
△8,390
△69.5%
その他
574
616
42
7.3%
その他
574
616
42
7.3%
調整額
-
△13
△13
-
営業収益合計
45,924
46,533
609
1.3%
※ 株式・ETF等の取引に係る委託手数料及びその他の受入手数料、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等 の取扱手数料、投資信託に係るその他の受入手数料が含まれています。
(証券・FX事業)証券・FX事業においては、店頭FXにおける国内グループ会社間のシナジー追求による収益力強化やCFDの収益・顧客基盤の拡大に向けた取り組みを推進しております。店頭FXは、ドル円相場の急速な円安進行やボラティリティの上昇を受けて、取引高は前期比で増加したものの、カバー取引に係るコストが増加するなど収益性の観点では厳しい事業環境となりました。収益面では、2021年9月に外貨ex byGMO株式会社を連結子会社化したことが寄与し、増収となりました。CFDは、米国株式市場や原油などコモディティ市場におけるボラティリティが高まる中で売買代金が増加し、収益も伸長しました。これらの結果、当連結会計年度における当セグメントの営業収益は42,253百万円(前期比27.0%増)、営業利益はタイ王国での証券事業に関連し貸倒引当金繰入額を販売費及び一般管理費に計上したことから9,494百万円(同16.4%減)となりました。
(暗号資産事業)暗号資産事業においては、国内における売買代金シェアの拡大、収益・顧客基盤の拡大に向けて、サービスの充実と利便性向上に向けた取り組みを推進しております。複数のアルトコイン銘柄の追加をはじめ、API機能やPC専用取引ツールの拡充、貸暗号資産サービスの強化に取り組み、顧客基盤が拡大しました。一方、暗号資産市場の低調を受けて売買代金が低水準で推移し、暗号資産市場の活況を背景に非常に好調であった前期比で、収益が大幅に減少しました。これらの結果、当連結会計年度における当セグメントの営業収益は3,677百万円(前期比69.5%減)、営業損失は34百万円(前期は営業利益4,056百万円)となりました。
② 財政状態の状況 (単位:百万円)
前連結会計年度末
当連結会計年度末
増減額
総資産
996,049
991,482
△4,566
負債
953,218
950,151
△3,066
純資産
42,830
41,330
△1,500
(総資産)当連結会計年度末における資産合計は991,482百万円(前期末比4,566百万円の減少)となりました。これは主に、現金及び預金の増加8,377百万円、預託金の増加7,989百万円、信用取引資産の増加8,332百万円、短期差入保証金の増加6,113百万円、支払差金勘定の増加24,015百万円、自己保有暗号資産の減少9,496百万円、利用者暗号資産の減少54,370百万円によるものです。
(負債)当連結会計年度末における負債合計は950,151百万円(前期末比3,066百万円の減少)となりました。これは主に、受入保証金の増加33,976百万円、1年以内返済予定の長期借入金の増加8,976百万円、契約損失引当金の増加3,170百万円、長期借入金の増加15,723百万円、預り暗号資産の減少54,546百万円、借入暗号資産の減少4,333百万円、短期借入金の減少8,541百万円などによるものです。
(純資産)当連結会計年度末における純資産は41,330百万円(前期末比1,500百万円の減少)となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の減少と配当金の支払いにより利益剰余金が2,407百万円減少、為替換算調整勘定が1,088百万円増加したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動による収入が4,564百万円、投資活動による支出が4,753百万円、財務活動による収入が8,576百万円となった結果、当連結会計年度末には72,237百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュ・フローは、4,564百万円のプラスとなりました。これは主に、自己保有暗号資産(資産)の減少による収入9,496百万円、利用者暗号資産の減少による収入54,370百万円、受入保証金の増加による収入33,680百万円があった一方で、預託金の増加による支出7,786百万円、短期差入保証金の増加による支出6,059百万円、支払差金勘定の増加による支出23,930百万円、預り暗号資産の減少による支出54,546百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュ・フローは、4,753百万円のマイナスとなりました。これは主に、定期預金の払戻による収入1,611百万円があった一方で、定期預金の預入による支出1,424百万円、無形固定資産の取得による支出1,500百万円、投資有価証券の取得による支出1,189百万円、貸付による支出1,193百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、8,576百万円のプラスとなりました。これは主に、短期借入金の純減少による支出12,082百万円、長期借入金の返済による支出6,970百万円、配当金の支払による支出3,619百万円があった一方で、長期借入による収入31,670百万円があったことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の状況GMO-FHは、証券・FX事業、暗号資産事業を主要な事業としており、「生産、受注及び販売の状況」は該当する情報が存在しないことから、記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるGMO-FHの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り 当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。具体的には、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号) 並びに同規則第46条及び第68条の規定に基づき、「金融商品取引業等に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第52号)及び「有価証券関連業経理の統一に関する規則」(昭和49年日本証券業協会自主規制規則)に準拠して作成しております。 連結財務諸表の作成に際しては、貸倒引当金、賞与引当金、繰延税金資産の計上等について重要な判断や見積りを行っておりますが、前提となる条件、仮定等に変化があった場合などにはこれらの見積りが実際の結果と異なる場合があります。なお、当連結会計年度において新型コロナウイルスの感染拡大に伴うこれらの見積りへの重要な影響はありません。 当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容GMO-FHは、「強いものをより強くする」という方針のもと、収益の柱である店頭FXの強化により事業基盤のさらなる拡大を図るとともに、その他国内外の既存事業、新規事業に投資することで持続的成長を図っております。当連結会計年度は、主力の店頭FXが収益性の観点で厳しい事業環境に置かれたことに加え、低調な市場環境の影響を受けて暗号資産事業の売買代金が大幅に減少したことから、前期比で減収減益の着地となりました。また、第3四半期連結会計期間において当社が保有又は取得する予定のGMOあおぞらネット銀行株式会社の株式について特別損失を計上し、第4四半期連結会計期間においてタイ証券事業で貸倒引当金繰入額を計上したことを受けて、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は1,212百万円(前期比87.7%減)となりました。タイ証券事業については、債権回収とリスク管理態勢の強化に全力で取り組むとともに、海外子会社のリスク管理に対するガバナンス体制を強化してまいります。 証券・FX事業においては、店頭FXにおけるスプレッド縮小や最小取引単位の引き下げの実施など、利便性向上と多様な顧客層の獲得に向けた施策に取り組みました。GMOクリック証券における取引量の上限設定により国内シェアは減少した一方、インターバンク市場の流動性に見合った適切なカバー取引が可能となり、収益性は改善傾向に転じました。新たな収益の柱として注力するCFDについては、認知度向上に向けたプロモーション施策の展開とともに取扱銘柄の追加などの利便性向上施策に取り組んだ結果、好調なマーケット環境の後押しもあり、売買代金・収益ともに過去最高となりました。 暗号資産事業においては、取扱銘柄の追加やスマートフォンアプリの改善など、暗号資産市場の復調に備えてサービス拡充と利便性向上に取り組んだほか、IEOやストック型商品の提供による収益の安定化に努めました。 NFT事業・バーチャルオフィス事業においては、収益拡大が課題であるものの、ユーザー獲得に向けた取り組みを着実に遂行した結果、顧客基盤は順調に拡大しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析(資金需要及び資金の流動性)GMO-FHの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付、店頭デリバティブ取引等におけるカウンターパーティーとのカバー取引に係る差入保証金等、顧客からの預り金や信用取引、FX取引等に係る保証金の入出金と顧客分別金信託及び顧客区分管理信託への入出金との差による一時的な立替などが挙げられます。これらの資金需要には、自己資金のほか、金融機関等とのコミットメントライン契約及び当座貸越契約に基づく短期借入金、差入保証金の代替として支払承諾契約に基づく保証状のカウンターパーティーへの差し入れ等にて対応しており、十分な流動性を確保しております。当座貸越契約及びコミットメントライン契約を総額144,656百万円設定しており、当連結会計年度末の借入実行額は108,624百万円であります。
(キャッシュ・フローの状況の分析)「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
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