【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1)経営成績の分析注:以下、「実質」とは為替変動の影響を除く増減率を表示しています。
売上高(億円)
営業利益(億円)
営業利益率(%)
税引前利益(億円)
当期利益(億円)
親会社の所有者に帰属する当期利益(億円)
基本的1株当たり当期利益(円)
2022年12月期
15,511
1,101
7.1
1,158
877
860
183.28
2021年12月期
14,188
1,435
10.1
1,500
1,114
1,096
230.59
増減率
9.3%実質 3.7%
(23.3)%
-
(22.8)%
(21.2)%
(21.5)%
(20.5)%
当期は、前期に引き続き新型コロナウイルス感染症が世界中の社会や経済、人々の暮らしに大きな影響をもたらした1年でした。ロシア・ウクライナ問題等によるエネルギーコストの上昇や世界的なインフレによる消費行動の変化、成長が続いていた中国市場の減速等もあり厳しい経営環境が続きました。
当社グループの主要市場である日本のトイレタリー(化粧品を除くコンシューマープロダクツ)市場及び化粧品市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると前期を上回りましたが、化粧品市場はコロナ禍前の2019年の水準までには回復していません。このような中、花王グループは人々の生活様式や消費行動、販売チャネル構造の変化、さらには世界的な原材料価格の高騰等への対応に努めました。売上高は、前期に対して9.3%増の1兆5,511億円(実質3.7%増)となりました。営業利益は、原材料価格高騰の影響を大きく受け、1,101億円(対前期334億円減)、営業利益率は7.1%となりました。税引前利益は1,158億円(対前期342億円減)、当期利益は、877億円(対前期237億円減)となりました。基本的1株当たり当期利益は183.28円となり、前期の230.59円より47.31円減少(前期比20.5%減)しました。当社グループが経営指標としているEVA(経済的付加価値)は、NOPAT(税引後営業利益)が減少する中、資本コストが増加し、前期を305億円下回り147億円となりました。なお、2022年5月11日開催の取締役会において、資本効率の向上と株主への一層の利益還元のため、自己株式の取得を決議し、総額500億円の自己株式を取得しました。また、9月28日に910万株を消却しました。
当期の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。
第1四半期(1-3月)
第2四半期(4-6月)
第3四半期(7-9月)
第4四半期(10-12月)
米ドル
116.30
円[
105.96円]
129.69
円[
109.47円]
138.27
円[
110.09円]
141.47
円[
113.72円]
ユーロ
130.45
円[
127.74円]
138.14
円[
131.90円]
139.25
円[
129.78円]
144.22
円[
130.05円]
中国元
18.32
円[
16.35円]
19.63
円[
16.95円]
20.20
円[
17.01円]
19.88
円[
17.79円]
注:[ ]内は前期の換算レート
〔セグメント別の概況〕
セグメントの業績
売上高
営業利益
通期
増減率
通期
増減(億円)
2021年12月期(億円)
2022年12月期(億円)
(%)
実質(%)
2021年12月期
2022年12月期
(億円)
利益率(%)
(億円)
利益率(%)
ハイジーン&リビングケア事業
4,968
5,165
4.0
0.4
518
10.4
307
5.9
(211)
ヘルス&ビューティケア事業
3,545
3,695
4.2
(1.8)
497
14.0
346
9.4
(151)
ライフケア事業
530
557
5.1
1.4
36
6.8
(0)
(0.0)
(36)
化粧品事業
2,393
2,515
5.1
0.8
75
3.1
141
5.6
66
コンシューマープロダクツ事業
11,437
11,933
4.3
(0.2)
1,126
9.8
793
6.6
(332)
ケミカル事業
3,143
4,025
28.1
18.6
296
9.4
295
7.3
(1)
小
計
14,580
15,958
9.5
3.9
1,422
-
1,089
-
(333)
セグメント間消去又は調整
(392)
(447)
-
-
13
-
12
-
(1)
合
計
14,188
15,511
9.3
3.7
1,435
10.1
1,101
7.1
(334)
販売実績
(億円、増減率%)
通期
日本
アジア
米州
欧州
合計
ファブリック&ホームケア製品
2021年
2,886
401
28
-
3,315
2022年
2,929
455
37
-
3,421
増減率
1.5
13.4
32.1
-
3.2
実質
1.5
0.4
19.7
-
1.5
サニタリー製品
2021年
780
873
1
-
1,653
2022年
774
970
1
-
1,745
増減率
(0.7)
11.1
(24.6)
-
5.5
実質
(0.7)
(2.8)
(31.9)
-
(1.8)
ハイジーン&リビングケア事業
2021年
3,666
1,274
29
-
4,968
2022年
3,703
1,425
37
-
5,165
増減率
1.0
11.8
30.1
-
4.0
実質
1.0
(1.8)
17.9
-
0.4
ヘルス&ビューティケア事業
2021年
2,052
294
780
418
3,545
2022年
2,002
339
906
449
3,695
増減率
(2.4)
15.1
16.1
7.3
4.2
実質
(2.4)
1.0
(2.4)
0.5
(1.8)
ライフケア事業
2021年
435
0
94
1
530
2022年
437
0
118
2
557
増減率
0.7
50.1
25.2
19.9
5.1
実質
0.7
33.9
4.8
11.8
1.4
化粧品事業
2021年
1,529
578
59
227
2,393
2022年
1,607
596
68
244
2,515
増減率
5.1
3.0
15.1
7.5
5.1
実質
5.1
(10.1)
(4.1)
0.4
0.8
コンシューマープロダクツ事業
2021年
7,681
2,147
962
646
11,437
2022年
7,750
2,360
1,129
694
11,933
増減率
0.9
9.9
17.4
7.4
4.3
実質
0.9
(3.6)
(1.2)
0.5
(0.2)
ケミカル事業
2021年
1,221
739
490
692
3,143
2022年
1,401
982
705
937
4,025
増減率
14.7
32.8
43.8
35.3
28.1
実質
14.7
15.9
19.9
27.4
18.6
セグメント間売上高の消去
2021年
(340)
(34)
(0)
(18)
(392)
2022年
(385)
(39)
(2)
(21)
(447)
売上高
2021年
8,563
2,852
1,452
1,320
14,188
2022年
8,766
3,302
1,833
1,610
15,511
増減率
2.4
15.8
26.2
21.9
9.3
実質
2.4
1.4
5.9
14.5
3.7
注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業では、コンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。
売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前期の42.0%から45.4%となりました。
コンシューマープロダクツ事業売上高は、前期に対して4.3%増の1兆1,933億円(実質0.2%減)となりました。当期は、中国での都市封鎖や市場の冷え込み、米国での物流混乱や世界的なインフレによる低価格品への移行等市場環境は大変厳しいものでしたが、コアブランドへの集中投資やデジタル化の推進、戦略的値上げ等を積極的に実施しました。以上の結果、日本の売上高は、前期に対して、0.9%増の7,750億円となりました。アジアの売上高は、9.9%増の2,360億円(実質3.6%減)となりました。米州の売上高は、17.4%増の1,129億円(実質1.2%減)となり、欧州の売上高は、7.4%増の694億円(実質0.5%増)となりました。営業利益は、原材料価格の高騰や物流費の上昇等が影響し、前期に対して大きく減少し、793億円(対前期332億円減)となりました。
当社は、〔ハイジーン&リビングケア事業〕、〔ヘルス&ビューティケア事業〕、〔ライフケア事業〕、〔化粧品事業〕を総称して、コンシューマープロダクツ事業としております。
〔ハイジーン&リビングケア事業〕売上高は、前期に対して4.0%増の5,165億円(実質0.4%増)となりました。ファブリックケア製品は、売り上げは前期を上回りました。日本では、原材料価格高騰の影響を最小化するため、衣料用洗剤を中心に戦略的な値上げを実施するとともに、マーケティング活動を強化したことによりシェアが伸長し、順調に推移しましたが、柔軟仕上げ剤は厳しい競争下で苦戦しました。アジアでは売り上げは前期を下回りました。ホームケア製品は、日本では外出機会が増えたことで使用する機会等が減り市場は縮小しましたが、売り上げは前期並みでした。食器用洗剤「キュキュット」は、シェアを大きく伸長させました。サニタリー製品は、売り上げは前期を下回りました。生理用品「ロリエ」は、日本やアジアでは販売促進活動の強化等により好調に推移しました。ベビー用紙おむつ「メリーズ」の売り上げは、前期を下回りました。中国では市場縮小の影響等があり前期を下回りました。インドネシアでは売り上げは好調を維持し、日本では市場が縮小する中、前期並みでした。営業利益は、原材料価格高騰が大きく影響し、307億円(対前期211億円減)となりました。
〔ヘルス&ビューティケア事業〕売上高は、前期に対して4.2%増の3,695億円(実質1.8%減)となりました。スキンケア製品は、売り上げは前期を上回りました。日本では猛暑の影響で、UVケア製品等のシーズン品の売り上げは好調に推移し、シェアも大きく伸長しました。タイでは、革新的な花王独自の技術を搭載した忌避剤ローション「ビオレガード モスブロックセラム」を6月に上市し、大きな反響がありました。米国ではインフレによる消費減退の影響を受け、売り上げは前期を下回りました。ヘアケア製品は、売り上げは前期を下回りました。欧米のヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE(オリベ)」が、コアのサロンチャネルに加え、Eコマースも大きく伸長し好調を維持しました。日本のマス向け製品は、売り上げは前期を下回りました。厳しい競争環境が続いている中、抜本的な事業変革を開始しています。パーソナルヘルス製品の売り上げは、前期を下回りました。「めぐりズム」は順調に売り上げを伸ばしましたが、入浴剤は前期を下回りました。営業利益は、原材料価格高騰等が大きく影響し、346億円(対前期151億円減)となりました。
〔ライフケア事業〕売上高は、前期に対して5.1%増の557億円(実質1.4%増)となりました。業務用衛生製品は、日本では徐々に経済が正常化し、外出機会が増加したことにより市場は回復しました。特に外食産業や宿泊施設等で厨房用洗浄剤や客室消耗品の需要が高まり、売り上げは伸長しました。米国では対象業界の回復、新規顧客の獲得等で、売り上げは前期を上回りました。健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」で、SNSを使った生活者とのつながりを強化し、Eコマースでのロイヤルユーザー拡大が進みましたが、既存量販店での落ち込みをカバーすることはできず、売り上げは前期に比べて減少しました。営業損失は、原材料価格高騰が影響し、0億円(対前期36億円減)となりました。
〔化粧品事業〕売上高は、前期に対して5.1%増の2,515億円(実質0.8%増)となりました。日本では、市場が徐々に回復する中、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」に集中的に投資し、売り上げ・シェアは前期を上回りました。特に、「KATE」は「リップモンスター」が好調を維持し、メイク市場全体でブランドシェアNo.1を継続しています。また固定費削減やメイク事業の構造改革を順調に進めました。中国では、感染症拡大による都市封鎖やその後の市場の冷え込みに加え、ローカルメーカーの台頭や流通チャネルの変化等の影響を大きく受け、売り上げは前期を下回りました。欧州では、インフレによる景気減速が影響し売り上げは前期並みでしたが、「SENSAI」や「モルトンブラウン」のシェアは伸長しました。営業利益は、141億円(対前期66億円増)となりました。
ケミカル事業売上高は、前期に対して28.1%増の4,025億円(実質18.6%増)となりました。油脂製品では、天然油脂価格の上昇に伴う販売価格の改定に努めたことも貢献し、売り上げは伸長しましたが、年末にかけて顧客の在庫調整の影響を受けました。 機能材料製品は、自動車関連分野での需要減の影響を受けましたが、原料価格上昇に伴う販売価格の改定を進めて、売り上げは伸長しました。情報材料製品は、トナー・トナーバインダーは需要の回復を着実に捉えて伸長しました。営業利益は、市況の変動による在庫の評価損の計上もあり、295億円(対前期1億円減)となりました。
(2)財政状態の分析
(連結財政状態)
前連結会計年度2021年12月末
当連結会計年度2022年12月末
増減
資産合計(億円)
17,040
17,264
223
負債合計(億円)
7,201
7,310
108
資本合計(億円)
9,839
9,954
115
親会社所有者帰属持分比率
56.6%
56.3%
–
1株当たり親会社所有者帰属持分(円)
2,036.66
2,091.20
54.54
社債及び借入金(億円)
1,277
1,278
1
資産合計は、前期末に比べ223億円増加し、1兆7,264億円となりました。主な増加は、棚卸資産503億円、営業債権及びその他の債権144億円、有形固定資産107億円であり、主な減少は、現金及び現金同等物678億円です。負債合計は、前期末に比べ108億円増加し、7,310億円となりました。主な増加は、営業債務及びその他の債務147億円であり、主な減少は、未払法人所得税等118億円です。資本合計は、前期末に比べ115億円増加し、9,954億円となりました。主な増加は、当期利益877億円、在外営業活動体の換算差額485億円であり、主な減少は、配当金693億円、2022年5月11日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得500億円です。また、2022年9月28日に自己株式の消却910万株を実施しました。なお、親会社所有者帰属持分比率は、前期末の56.6%から56.3%となりました。親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は8.9%となりました。
(3)キャッシュ・フローの分析(連結キャッシュ・フローの状況)
通期
増減(億円)
2021年12月期(億円)
2022年12月期(億円)
営業活動によるキャッシュ・フロー
1,755
1,309
(446)
投資活動によるキャッシュ・フロー
(672)
(749)
(77)
フリー・キャッシュ・フロー(営業活動+投資活動)
1,083
560
(523)
財務活動によるキャッシュ・フロー
(1,416)
(1,393)
23
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,309億円となりました。主な増加は、税引前利益1,158億円、減価償却費及び償却費897億円であり、主な減少は、法人所得税等の支払額393億円、棚卸資産の増減額369億円です。投資活動によるキャッシュ・フローは、△749億円となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出655億円、無形資産の取得による支出117億円です。営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、560億円となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、△1,393億円となりました。安定的かつ継続的な配当を重視しており、またEVA視点から資本効率の向上を目的として、自己株式の取得及び消却も弾力的に行っています。当期の主な内訳は、非支配持分への支払いを含めた支払配当金694億円、2022年5月11日開催の取締役会決議に基づく自己株式の取得500億円、リース負債の返済による支出217億円です。当期末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前期末に比べ678億円減少し、2,682億円となりました。
(4)重要な会計方針及び見積り当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析使用権資産を含む重要な資本的支出の2023年度の予定額は、約960億円であり、主に当社グループ内の資金を有効活用する予定であります。なお、計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
(6)生産、受注及び販売の実績当社グループの生産・販売品目は、産業界向けのケミカル製品から一般消費者向けのコンシューマー製品まで極めて多種多様であり、それら製品の在庫をほぼ一定の必要水準に保つように、主として見込み生産を行っております。従って、生産実績は販売実績に類似しております。生産及び販売の実績については、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。
(7)経営成績に重要な影響を与える要因経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(8)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、達成状況は、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。