【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2022年1月1日~2022年12月31日)の世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した食料、エネルギー等のサプライチェーン分断による価格高騰と、それによる歴史的高インフレを抑制するための各国中央銀行による急ピッチの利上げという金融政策の大転換に直面し、景気悪化に見舞われました。
当社グループ業績に大きく影響する原油価格は、年初のUS$80/bbl台前半から上期は急騰を続け一時US$120/bbl台をつけた後、下期は再びUS$80/bbl台まで下落するなど乱高下しました。また為替レートは、年初の110円/US$台から急速に円安が進行し一時約30年振りとなる150円/US$台まで下落、その後は130円/US$台まで上昇したもののこちらも歴史的な相場展開となりました。
このような環境下、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ、397百万円減少し、33,174百万円となりました。当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ、1,952百万円増加し、27,779百万円となりました。当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ、2,349百万円減少し、5,394百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高38,457百万円(前年同期比37.8%増)、営業損失△2,043百万円(前年同期は営業利益587百万円)、経常損失△2,263百万円(前年同期は経常利益467百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失△2,368百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益444百万円)となりました。
なお、当社グループは、石油精製及び石油製品の製造販売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比較して434百万円増加し2,039百万円となりました。
当連結会計年度末における区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、1,625百万円(前年同期は666百万円の収入)となりました。これは主として税金等調整前当期純損失2,256百万円、減価償却費978百万円、売上債権の減少額406百万円、棚卸資産の減少額945百万円、仕入債務の減少額988百万円、未払消費税等の減少額945百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、339百万円(前年同期比340百万円の支出減)となりました。これは主として有形及び無形固定資産の取得による支出354百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、2,420百万円(前年同期比2,222百万円の収入減)となりました。これは主として短期借入金の純増額3,682百万円、長期借入金の返済による支出1,108百万円等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績については、事業部門ごとに表示することに合理性がないため、主な製品ごとに表示しています。
区分
数量
前年同期比(%)
金額(百万円)
前年同期比(%)
ワックス
(パラフィン・マイクロクリスタリン)
72,140トン
△5.4
21,536
20.1
重油
159,810kl
△7.6
13,979
47.7
合計
-
35,515
29.6
(注)金額は、販売価格をもって算出しています。
b. 受注実績
当社グループの生産においては、そのほとんどを見込生産で行っていますので、受注実績は記載していません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績については、事業部門ごとに表示することに合理性がないため、主な製品ごとに表示しています。
区分
数量
前年同期比(%)
金額(百万円)
前年同期比(%)
ワックス
(パラフィン・マイクロクリスタリン)
80,579トン
3.8
24,048
31.4
重油
162,650kl
△5.6
14,228
50.9
その他仕入商品
180
△4.8
合計
38,457
37.8
(注)1 ワックスには輸入ワックスの仕入販売を含んでいます。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
三菱商事エネルギー株式会社
4,520
16.2
6,407
16.7
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
1) 財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末に比べて397百万円減少の33,174百万円となりました。これは主として現金及び預金の増加額434百万円、商品及び製品の増加額1,428百万円、原材料及び貯蔵品の減少額2,301百万円等によるものです。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比較して1,952百万円増加の27,779百万円となりました。これは主として支払手形及び買掛金の減少額932百万円、短期借入金の増加額3,857百万円、長期借入金の減少額997百万円等によるものです。
(純資産合計)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比較して2,349百万円減少の5,394百万円となりました。これは主として利益剰余金の減少額2,462百万円等によるものです。
2) 経営成績
(ワックス販売数量)
国内は前年比2,031トン増の34,235トン、輸出は同比903トン増の46,343トン、合計は2,934トン増の80,579トンとなりました。
(重油販売数量)
9,684キロリットル減の162,650キロリットルとなりました。
(売上高)
国内ワックスは前年比1,931百万円増の12,384百万円、輸出ワックスは同比3,815百万円増の11,664百万円、重油は同比4,801百万円増の14,228百万円、その他商品を含めた総売上高は同比10,539百万円増の38,457百万円となりました。
(注)その他仕入商品は除きます。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、前連結会計年度に比べ、12,710百万円増の37,065百万円となりました。また、販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ、459百万円増の3,435百万円となりました。
(営業利益)
原油価格の上昇及び円安に伴う原材料価格の高騰に対し、国内市場の販売価格の是正に注力しましたが、重油事業の赤字をカバーするには至らなかったこと、また期末における棚卸資産評価損の計上により、営業損益は前連結会計年度に比べ2,630百万円減の営業損失2,043百万円となりました。
(営業外損益)
営業外損益は、前連結会計年度に比べ100百万円減少し、219百万円の損失となりました。これは、為替差損80百万円(前連結会計年度は為替差益37百万円)等によるものです。
この結果、経常損益は、前連結会計年度に比べ2,730百万円減の経常損失2,263百万円となりました。
(税金等調整前当期純利益)
特別損益は、補助金収入が3百万円減少する一方、投資有価証券売却益が3百万円増加したことにより、前連結会計年度並みの6百万円の利益となりました。この結果、税金等調整前当期純損益は、前連結会計年度に比べ2,730百万円減の税金等調整前当期純損失2,256百万円となりました。
(法人税等)
法人税、住民税及び事業税は、前連結会計年度に比べ10百万円減の30百万円となりました。また、法人税等調整額は、前連結会計年度に比べ92百万円増の80百万円となりました。この結果、当連結会計年度の税金費用負担額は、前連結会計年度に比べ82百万円増の111百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ2,812百万円減の親会社株主に帰属する当期純損失2,368百万円となりました。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当連結会計年度決算は、2,368百万円の純損失を計上するに至りました。この損失の要因につきまして、以下のとおりご説明いたします。
1)原料価格の高騰により収益性が低下したこと
「中期計画21-24」の内容としていた重油生産量の減少を達成すべく、蒸留安定処理を目指した原料組立のモデル構成を確立するために、これまでスポット購入をしていました原料について、軽油価格に連動する価格とする合意のもと、2021年12月に2年間の長期契約を締結しました。しかし、2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機として原油価格が高騰しましたが、それ以上に軽油価格が高騰し、原油価格と軽油価格との差は、契約当時(2021年12月)US$10/bbl台であったものが、年央にはUS$50/bbl以上にまで拡大し、その後一時価格差縮小の兆しが見えたものの、下期は、概ねUS$40/bbl前後の異例の価格差が継続しました。その結果、原油価格に連動する製品の販売価格、とりわけワックス精製において生産される重油の販売価格との関係で、軽油価格に連動する原料購入価格が高止まったままで推移したことにより、重油販売における損失が拡大し、下期の業績が大幅に悪化しました。
2)国内ワックス販売の価格改定が追い付かなかったこと
原料価格の高騰に対応すべく、上期より国内販売製品の価格改定を着実に実施して参りましたが、それ以上に原料価格の高騰が進み、かつ、これが継続したため、第3四半期以降、当社が実施した価格改定により得られる収益よりもさらに原料コストが上回る状態となり、結果として、価格改定効果が収益性の回復のために追い付かず、不十分なものとなりました。
3)下期において輸出ワックス販売の売上が急激に減少したこと
輸出ワックスに関しましては、上期は、海外(特に欧米)需要が堅調であったことに加え、競合他社の一部供給トラブルもあり、原油価格高騰の流れに沿った販売価格の改定を年央までは実施いたしました。ところが、7月以降、原油価格が下落に転じたことで、9月以降は徐々に海外顧客が先安感をもち、いわば買い控え状態となったことに加え、欧米市場の景気悪化による需要減が顕著となり、輸出ワックス販売に急激なブレーキがかかりました。結果的に、下期での販売量が、計画25,300トンに対し実績18,700トンの6,600トン減となり、収益悪化の大きな要因となりました。
4)期末において棚卸資産評価損が拡大したこと
軽油価格に連動する原料購入価格が高止まったことや製品販売数量の減少は、原料、半製品及び製品の在庫単価の上昇や数量を増加させることとなり、これらの在庫に係る棚卸資産評価損を拡大させました。
着実な黒字体質への転換を掲げた「中期計画21-24」が計画2年目にして上記要因にて頓挫した結果を真摯に受け止め、改めて急激な経営環境の変化に対して迅速かつ適切なアクションをとれる体制構築を図るべく、「中期経営計画(23-27)」を策定いたしました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、石油精製及び石油製品の製造販売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループは、運転資金及び設備資金を内部留保及び借入により調達することを基本としています。運転資金及び設備資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金償還時期等を考慮の上、適宜判断して調達していくこととしています。
また、当社グループは金融機関との長期にわたる良好な取引関係の維持により、当社グループの事業活動に必要な運転資金及び設備資金の調達に関しては今後とも問題なく実施可能と考えています。
新型コロナウイルス感染症による資金繰りに与える影響は軽微と見ており、当初の資金計画に基づいた資金調達を行う予定です。なお、今後新型コロナウイルス感染症が拡大し、当社グループの事業に大きな影響を与える場合には、別途資金調達を行う可能性があります。
③重要な会計上の見積り方針及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表を作成するのに当たっては、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載した基準に従っています。これらを含め、当社グループは、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて連結財務諸表を作成しています。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
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