【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において帝人グループが判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
1)経営成績
帝人グループの当第1四半期連結累計期間の経営成績は、売上高が前年同期対比で0.4%増の2,448億円となり、営業利益は同60.8%減の42億円となりました。経常利益は前年同期対比65.0%減の50億円、税効果が認識できない海外子会社の赤字幅拡大等に伴う税負担率の上昇により、親会社株主に帰属する四半期純利益は同74.5%減の19億円となりました。営業利益に関して、マテリアル事業領域では、全般的に需要好調も、アラミド事業が昨年度の工場火災影響からの回復途上であったことや、米欧での労務費を中心とした工場固定費等の増加等により減益となりました。繊維・製品事業は、販売が好調に推移し増益となりました。ヘルスケア事業領域においては、痛風・高尿酸血症治療剤「フェブリク」の後発品参入による販売数量の減少や、薬価改定影響等により減益となりました。またIT事業は、販売が好調に推移し増益となりました。
当第1四半期連結累計期間におけるセグメントごとの経営成績は次のとおりです。
なお、当第1四半期連結会計期間より、マテリアル事業統轄、ヘルスケア事業統轄で推進していた新事業組織につき、それぞれ「マテリアル」セグメント、「ヘルスケア」セグメントから「その他」セグメントへ変更しています。これは、2023年2月に公表した「帝人グループ収益性改善に向けた改革」に基づき、経営体制の見直しを行う中、将来に向けた協創によるイノベーション創出をコーポレートが管轄し横断的に実施することを目的に、新事業組織をコーポレート新事業本部に再編・集約したことに伴うものです。これにより前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
また、当第1四半期連結会計期間より、セグメントの記載順序を変更しています。
◆マテリアル事業領域:全般的に需要好調も、前年度に発生したアラミド工場の火災から回復途上にあったため販売可能量が不足。前年度の原燃料価格高騰に対応して進めてきた販売価格改定の効果発現や足元の原燃料価格の低下が収益に貢献するも、労務費を中心とした工場固定費等の増加が足かせとなった。
売上高は1,058億円と前年同期対比19億円の増収(1.8%増)、営業損失は20億円と前年同期対比13億円の損失の増加となりました。
アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、旺盛な需要が継続しました。一方、前年度第3四半期に発生した火災から前倒しで復旧させたものの、生産は回復途上であったことから前年同期に比べ販売可能量が不足しました。また、前年度の原燃料価格高騰に対応して進めてきた販売価格改定の効果発現や足元の天然ガス価格の低下が収益に貢献しましたが、労務費単価の高騰を含む工場固定費等の増加や前年度のコスト増加に伴う期首在庫高等の影響を受けた結果、前年同期対比減収・減益となりました。
樹脂事業分野では、主力のポリカーボネート樹脂において、中国での景気回復遅延や欧米での経済減速等により需要が低迷し、販売量はCOVID-19の影響を受けて低迷した前年同期並みとなりました。一方、原燃料価格の下落を受け販売価格は低下しましたが、スプレッドは概ね前年同期並みを維持しました。結果、前年同期対比減収・前年同期並みの営業利益となりました。
炭素繊維事業分野では、産業向け用途において在庫調整等により販売量が減少した一方、航空機向け用途では旅客需要の回復が継続し、販売量が堅調に推移したことで、販売構成が改善しました。また、原燃料価格が低下する中、販売価格は前年同期並みを維持することで利益率が改善し、結果、前年同期対比増収・増益となりました。
複合成形材料事業分野では、米国の自動車販売台数は堅調に推移したものの、Teijin Automotive Technologies*(米)において展開する一部のプログラムで生産調整の動きがあり、販売量は前年同期並みとなりました。また、前年度の原材料価格高騰に対応して進めてきた販売価格改定の効果が発現しました。一方、労務費単価の高騰や補修費増等により工場固定費が増加したものの、収益性改善の施策の効果が徐々に発現しました。結果、前年同期対比増収・前年同期並みの営業利益となりました。
* 自動車向け複合成形材料事業のグローバル事業ブランド
◆繊維・製品事業
売上高は756億円と前年同期対比19億円の増収(2.6%増)、営業利益は31億円と前年同期対比14億円の増益(77.0%増)となりました。
衣料繊維は、北米や中国向けのテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移し、国内向けも衣料品の販売好調が継続しました。産業資材では、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維、インフラ補強材の販売が好調に推移しました。
◆ヘルスケア事業領域:医薬品「ソマチュリン*1」や「ゼオマイン*2」は順調に販売量を拡大したほか、在宅医療機器のレンタルも堅調に推移。一方で、医薬品「フェブリク」は、後発品参入により販売量が減少し収益に影響
売上高は358億円と前年同期対比74億円の減収(17.0%減)、営業利益は48億円と前年同期対比64億円の減益(57.2%減)となりました。
医薬品分野では、「フェブリク」の後発品が2022年6月より参入したことにより、販売量が減少しました。さらに、長期収載品を中心に2023年4月の薬価改定が収益に影響しました。一方で、「ソマチュリン*1」や「ゼオマイン*2」が順調に販売量を拡大しました。また2023年1月に上市した骨粗鬆症治療剤「オスタバロ1.5mg」の採用活動を進めました。
*1 先端巨大症・下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療剤 ソマチュリン®/Somatuline®
は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。
*2 上肢・下肢痙縮治療剤 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH &Co, KGaA(独)の登録商標です。
在宅医療分野では、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場において、検査数は回復基調となり、レンタル台数の増加が継続しました。また、在宅酸素療法(HOT)市場では、レンタル台数は前年同期並みの高い水準を維持しました。
◆IT事業
売上高は162億円と前年同期対比33億円の増収(25.4%増)、営業利益は18億円と前年同期対比3億円の増益(21.2%増)となりました。
ネットビジネス分野では、電子コミックサービスにおいて広告宣伝活動の強化を継続し販売が好調に推移しました。ITサービス分野では、企業向けを中心に堅調に推移しました。
◆その他(電池部材・メンブレン事業、再生医療・埋込医療機器事業等)
売上高は115億円と前年同期対比13億円の増収(12.8%増)、営業損失は11億円と前年同期対比1億円の損失の減少となりました。
電池部材事業分野では、リチウムイオンバッテリー用セパレータ「リエルソート」が前年同期に引き続き、好調な販売を維持しました。また、高機能メンブレン「ミライム」は、半導体用途向けの販売が伸長しました。
人工関節・吸収性骨接合材等の埋込医療機器事業は、COVID-19の5類感染症移行後、手術件数が回復傾向であり、販売量は堅調に推移しました。
再生医療事業の(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリングにおいては、再生医療製品事業、再生医療受託事業、研究開発支援事業のいずれも概ね堅調に推移しました。
2)財政状態
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、主要通貨に対する円安の進行に加え、現預金の増加や棚卸資産の増加等により、前期末対比604億円増加の13,028億円となりました。
負債は、主要通貨に対する円安の進行に加え、借入金の増加等により、前期末対比402億円増加の8,315億円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や、主要通貨に対する円安の進行による為替換算調整勘定の増加等により、前期末対比202億円増加の4,713億円となりました。
なお、当第1四半期末のBS換算レートは、145円/米ドル、158円/ユーロ、1.09米ドル/ユーロ(前期末134円/米ドル、146円/ユーロ、1.09米ドル/ユーロ)となっています。
(2) 経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等
当第1四半期連結累計期間において、帝人グループの経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等について重要な変更はありません。
(3) 会社の支配に関する基本方針
当第1四半期連結累計期間において、帝人グループの財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第1四半期連結累計期間において、帝人グループの会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第1四半期連結累計期間における当社及び連結子会社の研究開発活動の金額は74億円です。
また、当第1四半期連結累計期間における当社及び連結子会社の研究開発活動の状況の変更の内容は、以下のとおりです。
(医薬品分野)
当社は、アクセリード(株)と2023年6月30日付で創薬研究に関する両社出資の合弁会社の設立に関する契約を締結しました。創薬のターゲットの選別から新薬候補化合物の取得並びにそれらに関連した創薬研究活動の支援を事業内容とする合弁会社を2024年4月1日に設立し、両社の保有する創薬に関するノウハウや知見、技術や資産に基づく強固な基盤を強みとして、創薬の総合支援サービス企業としての成長を図ります。
この合弁会社設立により、当社及び医薬品事業を展開している当社連結子会社である帝人ファーマ(株)は医薬研究における実験科学的研究(ウエット研究) 機能を外部化することで新薬開発の効率化や迅速化を図り、革新的な医薬品の創出を目指します。また、これまで欧米の大手製薬企業等に研究成果を早期導出してきた能力や知見を活かし、研究開発機能が独自に収益を生み出しつつ、創薬研究の水平分業化という業界の需要にも応えることが可能な、製薬企業としての新たなビジネスモデル確立を図ります。