【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の状況
当連結会計年度における世界経済は、各国で新型コロナウイルス感染症に伴う活動規制が緩和され、需要が拡大しました。一方、ウクライナ情勢の変化を契機としたエネルギー価格の急騰やインフレの加速を受け、米国を始めとする各国が金融引き締めを進めた影響で、景気減速の懸念が高まりました。
自動車関連部品市場は需要が回復傾向にありますが、引き続き半導体に代表される供給の制約や、中国のゼロコロナ政策解除後の経済回復が遅れている影響を受けました。
一方、水処理用分離膜市場における需要は海水淡水化プラント用途に加え、工業用プロセス水製造装置用途、廃水処理用途の増加により堅調に推移しました。
当連結会計年度においては、エネルギー価格の急騰に加え、引き続き原材料価格上昇の影響を受け、一部値上げを実施いたしました。また、物流の混乱緩和により輸送費が減少しました。
その結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高17,309百万円(前年同期比2,286百万円増、15.2%増)、営業利益376百万円(前年同期比106百万円増、39.6%増)、経常利益335百万円(前年同期比59百万円増、21.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益、固定資産に係る減損損失を計上した結果、242百万円(前年同期比40百万円減、14.2%減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産総額は、16,273百万円となり、前連結会計年度末より738百万円増加しておりま
す。主に原材料及び貯蔵品が597百万円、電子記録債権が262百万円、受取手形及び売掛金が225百万円、商品及び製品が113百万円増加し、有形固定資産が511百万円減少いたしました。
負債総額は9,805百万円となり、前連結会計年度末より643百万円増加しております。主に電子記録債務が389百万円、支払手形及び買掛金が173百万円、流動負債のその他に含まれる未払金が162百万円、設備電子記録債務が149百万円増加し、短期借入金が404百万円減少いたしました。
また、純資産につきましては、6,468百万円となり、前連結会計年度末より95百万円増加しております。主に利益剰余金が242百万円、為替換算調整勘定が182百万円増加し、非支配株主持分が317百万円減少いたしました。
以上の結果、自己資本比率は30.1%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は329百万円となり、前連結会計年度末と比較して、32百万円の減少となりました。
各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、762百万円(前年同期比762百万円減、50.0%減)となりました。これは主に棚卸資産の増加額602百万円、投資有価証券売却益400百万円、売上債権の増加額391百万円の減少要因があったものの、減損損失866百万円、減価償却費846百万円、仕入債務の増加額489百万円の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、360百万円(前年同期比44百万円増、14.1%増)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入400百万円がありましたが、有形固定資産の取得による支出673百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、459百万円(前年同期比832百万円減、64.4%減)となりました。これは主に短期借入金の純減額433百万円があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
品目の名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
自動車関連資材(千円)
8,846,440
13.6
水処理関連資材(千円)
7,191,825
21.6
一般産業用資材(千円)
1,367,698
8.5
合計(千円)
17,405,964
16.3
(注)1.当社グループは単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
品目の名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
自動車関連資材(千円)
8,782,273
11.9
水処理関連資材(千円)
7,164,732
21.0
一般産業用資材(千円)
1,362,110
8.4
合計(千円)
17,309,115
15.2
(注)1.当社グループは単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
株式会社サンコー
3,833,611
25.5
4,805,521
27.8
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等について
当社グループの当連結会計年度における経営成績は、売上高、営業利益、経常利益ともに前連結会計年度に比べ増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益があったものの、固定資産に係る減損損失を計上したため減益となりました。
第3次中期経営計画『Awa Breakthrough Plan』の2年目となる当連結会計年度は、基盤事業の拡大と強化を図るため、当社の基盤事業の1つである分離膜支持体用不織布を製造する新工場建設を決定いたしました。これは、SDGsへの取り組みの一環として、増大する世界の水需要に対応するため、生産能力の拡大と生産性向上を図ることを目的としたものであります。また、新事業の創出につきましては、展示会への出展やWebサイトの活用により製品の魅力を伝えることで認知向上に努めるとともに、国内外での案件積み上げに注力し、新たな用途開拓に取り組んでおります。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)による労働生産性向上につきましては、RPAを活用し定型作業の自動化による間接業務の削減に取り組むとともに、クラウドサービスを利用した業務プロセスの見直しを進めております。
今後も、デジタル営業の推進、基幹業務システムの刷新等により更なる業務の効率化と生産性向上を図り、新たな価値の創造と提供を目指してまいります。加えて、持続的な成長に必要な人材確保と人材育成に注力し、持続的な発展と高収益企業の実現を目指してまいります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える大きな要因として、主要市場における経済状況、原燃料の価格上昇、自然災害などがあります。
当社グループが関連する市場としては、主として自動車部品業界や水処理関連市場となりますが、成長市場であることから、今後もグローバル競争の激化や有力な新規参入の増加などが予想されます。こうしたなか、当社グループは、グローバル企業として成長していくため、高性能品の開発や商品ラインナップの拡充、安定供給体制の確立などに努めてまいります。
原燃料価格の変動については、ウクライナ情勢の変化を契機としたエネルギー価格の急騰やインフレの加速を受け、さらに上昇しております。当社グループは、調達方法の見直しや製品価格の是正などで生産効率の向上を図り、収益確保に努めてまいります。
自然災害については、当社グループの国内生産拠点が徳島県内に集中していることから、自然災害の発生により当社グループの生産体制に支障をきたす可能性が想定されますが、BCP対応に努め、災害時においても早期に安定供給体制が復旧出来るよう体制整備に取り組んでまいります。また、新型コロナウイルス感染症等のパンデミックへの対応については、基本的な感染予防対策の徹底に加え、リモートワークによる在宅勤務体制の推進、WEB会議やDXの活用など、グループ全体において必要な感染防止対策に取り組んでおります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
当社グループでは、健全経営維持と企業価値向上のため、事業領域の拡大と収益性の向上を目標としております。また、資産効率と収益性の両面を測る指標として、「総資産経常利益率(ROA)」を経営の重要指標として位置付けております。
この指標を達成するために、当社グループとして「売上高経常利益率」や「総資産回転率」の向上に注力しております。具体的には、アライアンスを含めた新事業の創出、基盤事業の強化と収益改善、総資産の効果的かつ効率的な運用に努めております。
当連結会計年度におけるROAは2.1%(前年同期比0.3%増)となりましたが、引き続き指標の達成に向けて、グループ一丸となって注力しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料や副資材などの購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資や研究開発投資などによるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は4,141百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は329百万円となっております。
当社グループは、厳しい環境下においても将来を見据えた設備投資や研究開発投資を維持してまいります。必要な資金は営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に金融機関からの借入により調達していく方針であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
この連結財務諸表の作成にあたりまして、経営者による会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.退職給付費用及び退職給付債務
当社グループは、簡便法を採用している連結子会社を除き、確定給付型制度の退職給付費用及び退職給付債務について、割引率等、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
b.固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や経営環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
c.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の十分性により判断しており、課税所得の算定にあたっては、事業計画をもとに最新の経営環境に関する情報等を反映し見積っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。