【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当社は、前連結会計年度末に、防振ゴム事業、化成品ソリューション事業の資産及び負債を売却目的で保有する資産及び直接関連する負債に分類し、当該事業を非継続事業に分類しております。
これにより、当連結会計年度においても、防振ゴム事業、化成品ソリューション事業を非継続事業に分類しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に記載のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において、判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.業績全般
当連結会計年度
前連結会計年度
増減
金額
比率
億円
億円
億円
%
売上収益
41,101
32,461
+8,640
+27
調整後営業利益
4,826
3,943
+883
+22
営業利益
4,413
3,768
+645
+17
税引前当期利益
4,235
3,776
+459
+12
親会社の所有者に帰属する当期利益
3,004
3,940
△937
△24
当社グループは、企業理念の「使命」として掲げる「最高の品質で社会に貢献」の下、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンの実現に向け、2021年2月に発表した「中期事業計画(2021-2023)」をベースに活動しております。また、使命、ビジョンの下に、「Bridgestone E8 Commitment」を企業活動の軸およびベクトルとし、当社創立100周年となる2031年へ向けて実現したい姿を描いた「2030年 長期アスピレーション」を道筋として、歩みを進めております。
当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境は、COVID-19を起因とする経済活動制限が多くの国で緩和される一方、長期化するウクライナ情勢や中国でのロックダウンなどを背景とした原材料価格高騰やサプライチェーンの混乱が進行し、インフレが加速したことで、世界経済の先行き不透明感が強まりました。市販用タイヤに関しては、米欧を中心とした景気減速が徐々に顕在化し、第4四半期にタイヤ需要も大きく減速する一方、乗用車及び小型トラック用タイヤは高インチタイヤ(18インチ以上)、トラック・バス用タイヤは北米のプレミアムブランドなどの領域での需要が相対的に堅調に推移しました。また、新車用タイヤに関しては、当年前半は半導体不足に伴う車両減産影響による需要減少が続きましたが、後半に入り車両生産が回復に転じたことにより、低迷していた需要に回復の傾向が見られました。また、コスト面では、地政学リスクを反映した原油価格の急騰に加え、海上運賃単価やエネルギーコスト、労務費などについても高騰が続き、当社グループの収益性を圧迫する要因となりました。
そのような環境下、当社グループは、未曾有の原材料価格高騰とインフレ進行に迅速に対応すべく、各地域における「戦略的価格マネジメント」、「プレミアムビジネス戦略」をより一層強化すると共に、当社グループの強みであるグローバル生産体制を基盤としたフレキシブルな供給マネジメントによりタイヤ需要の変動に機動的に対応し、収益性確保と販売拡大の両立に取り組みました。
それらの結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は41,101億円(前連結会計年度比27%増)、調整後営業利益は4,826億円(前連結会計年度比22%増)、営業利益は4,413億円(前連結会計年度比17%増)、税引前当期利益は4,235億円(前連結会計年度比12%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,004億円(前連結会計年度比24%減)となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する当期利益が前連結会計年度比減少しておりますのは、前連結会計年度において、米国建築資材事業の譲渡に伴う売却益が計上されたことによるものであります。
b.セグメント別業績
当連結会計年度
前連結会計年度
増減
金額
比率
日本
億円
億円
億円
%
売上収益
10,363
8,730
+1,633
+19
調整後営業利益
1,403
1,170
+233
+20
米州
売上収益
19,880
14,546
+5,334
+37
調整後営業利益
2,512
1,906
+605
+32
欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ
売上収益
8,700
6,939
+1,761
+25
調整後営業利益
664
421
+242
+58
中国・アジア・大洋州
売上収益
4,570
3,869
+702
+18
調整後営業利益
399
420
△21
△5
その他
売上収益
805
664
+140
+21
調整後営業利益
73
51
+22
+44
連結 合計
売上収益
41,101
32,461
+8,640
+27
調整後営業利益
4,826
3,943
+883
+22
当連結会計年度の各セグメントにおける業績は、市販用タイヤに関しては、米欧を中心とした景気減速が徐々に顕在化し、第4四半期にタイヤ需要も大きく減速する一方、乗用車及び小型トラック用タイヤは高インチタイヤ(18インチ以上)、トラック・バス用タイヤは北米のプレミアムブランドなどの領域での需要が相対的に堅調に推移しました。また、新車用タイヤに関しては、当年前半は半導体不足に伴う車両減産影響による需要減少が続きましたが、後半に入り車両生産が回復に転じたことにより、低迷していた需要に回復の傾向が見られた結果、以下のとおりとなりました。
[日本]
乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は前年を上回り堅調に推移しました。さらに、鉱山・建設タイヤビジネスの堅調さにも支えられた結果、売上収益は10,363億円(前連結会計年度比19%増)となり、調整後営業利益は1,403億円(前連結会計年度比20%増)となりました。
[米州]
北米タイヤ事業において、乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は前年を上回り堅調に推移しました。この結果、売上収益は19,880億円(前連結会計年度比37%増)となり、調整後営業利益は2,512億円(前連結会計年度比32%増)となりました。
[欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ]
欧州では、乗用車及び小型トラック用タイヤの販売本数は前年を上回り順調に推移し、トラック・バス用タイヤの販売本数は前年を上回り好調に推移しました。この結果、売上収益は8,700億円(前連結会計年度比25%増)となり、調整後営業利益は664億円(前連結会計年度比58%増)となりました。
[中国・アジア・大洋州]
乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は前年を下回りました。一方で、各国での値上げによる売値上昇や円安の進行により売上収益が押し上げられた結果、売上収益は4,570億円(前連結会計年度比18%増)となり、調整後営業利益は399億円(前連結会計年度比5%減)となりました。
(注) セグメント別の金額はセグメント間の取引を含んでおり、連結合計の金額はそれらを消去した後の数値であります。
c.財政状態
(流動資産)
流動資産は、現金及び現金同等物が2,686億円減少したものの、営業債権及びその他の債権が2,050億円、棚卸資産が2,552億円増加したことなどから、前連結会計年度末比2,198億円増加(同10%増)し、25,127億円となりました。
(非流動資産)
非流動資産は、その他の金融資産が359億円減少したものの、有形固定資産が1,288億円、無形資産が235億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,671億円増加(同7%増)し、24,492億円となりました。
(流動負債)
流動負債は、社債及び借入金が421億円、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が329億円減少したものの、営業債務及びその他の債務が905億円、その他の流動負債が219億円増加したことなどから、前連結会計年度末比624億円増加(同6%増)し、10,858億円となりました。
(非流動負債)
非流動負債は、引当金が118億円増加したものの、社債及び借入金が111億円、退職給付に係る負債が169億円減少したことなどから、前連結会計年度末比126億円減少(同1%減)し、8,636億円となりました。
なお、流動負債及び非流動負債に計上された有利子負債(注)の合計は、前連結会計年度末比440億円減少(同5%減)し、7,672億円となりました。
(注) 有利子負債には社債及び借入金、リース負債を含んでおります。
(資本)
資本合計は、配当金(親会社の所有者)により1,190億円減少したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により3,004億円増加したことなどから、前連結会計年度末比3,371億円増加(同13%増)し、30,125億円となりました。
これらの結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて3,869億円増加(同8%増)し、49,618億円となりました。また、当連結会計年度の親会社所有者帰属持分比率は59.8%となり、前連結会計年度末比2.3ポイントの上昇となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度
前連結会計年度
増減
金額
億円
億円
億円
営業活動によるキャッシュ・フロー
2,685
2,815
△131
投資活動によるキャッシュ・フロー
△3,380
1,317
△4,697
財務活動によるキャッシュ・フロー
△3,641
△3,793
+152
現金及び現金同等物に係る換算差額
652
484
+168
現金及び現金同等物の増減額
△3,685
823
△4,507
現金及び現金同等物の期首残高
7,875
8,105
△230
売却目的で保有する資産に含まれる現金及び現金同等物の増減額
998
△1,053
+2,051
現金及び現金同等物の期末残高
5,189
7,875
△2,686
当連結会計年度における当社グループの現金及び現金同等物(以下「資金」)は、全体で2,686億円減少(前連結会計年度は230億円の減少)し、当連結会計年度末には5,189億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金収支は、2,685億円の収入(前連結会計年度比131億円の収入減)となりました。これは、営業債権及びその他の債権の増加額1,396億円(前連結会計年度は699億円)や、棚卸資産の増加額1,954億円(前連結会計年度は1,402億円)、法人所得税の支払額862億円(前連結会計年度は1,477億円)などがあったものの、税引前当期利益4,235億円(前連結会計年度は3,776億円)や、減価償却費及び償却費2,821億円(前連結会計年度は2,504億円)などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金収支は、3,380億円の支出(前連結会計年度は1,317億円の収入)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出2,213億円(前連結会計年度は1,610億円)などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金収支は3,641億円の支出(前連結会計年度比152億円の支出減)となりました。これは、短期借入れによる収入2,041億円(前連結会計年度は947億円)などがあったものの、短期借入金の返済による支出1,825億円(前連結会計年度は2,203億円)や、長期借入金の返済による支出541億円(前連結会計年度は1,091億円)、社債の償還による支出400億円(前連結会計年度は支出なし)、自己株式の取得による支出1,000億円(前連結会計年度は10百万円)、配当金の支払額(親会社の所有者)1,190億円(前連結会計年度は1,021億円)などによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前連結会計年度比(%)
日本
768,040
+16.5
米州
1,641,896
+38.6
欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ
777,383
+27.3
中国・アジア・大洋州
350,181
+12.3
合計
3,537,500
+27.9
(注) 金額は、販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループは、少数の特殊製品(特殊ホース等)について受注生産を行うほかは、すべて見込生産であります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前連結会計年度比(%)
日本
889,692
+16.0
米州
1,970,276
+36.5
欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ
856,443
+24.8
中国・アジア・大洋州
376,713
+14.6
その他
16,907
△16.2
全社又は消去
40
+39.9
合計
4,110,070
+26.6
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年3月28日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因や当該事項への対応については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(売上収益、調整後営業利益及び営業利益)
売上収益は、戦略的価格マネジメントや為替円安による影響などで前連結会計年度比8,640億円増加(同27%増)し、41,101億円となりました。
調整後営業利益は、戦略的価格マネジメントや為替円安による影響などで前連結会計年度比883億円増加(同22%増)し、4,826億円となりました。また、営業利益は、上記による影響などで前連結会計年度比645億円増加(同17%増)し、4,413億円となりました。
この結果、調整後営業利益率は11.7%となり、前連結会計年度比0.4ポイントの低下となりました。
なお、セグメント別の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比937億円減少(同24%減)し、3,004億円となりました。これは、営業利益が645億円増益したものの、非継続事業からの当期利益又は損失の計上が913億円減益、税金費用が492億円、金融費用が257億円、それぞれ増加したことなどによるものです。
③ 資本の財源及び資金の流動性
現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比2,686億円減少し、5,189億円となりました。なお、活動区分ごとのキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
資金調達にあたっては、金融機関からの借入れに加え、引き続き、国内普通社債やコマーシャル・ペーパーなどの直接金融手段や、売上債権の証券化、リースの活用など、リスク分散や金利コストの抑制に向けその多様化を図ってまいります。
資金使途につきましては、サステナビリティを経営の中核に据え、経営体制強化と、プレミアムタイヤ事業、ソリューション事業、化工品・多角化及び探索事業における戦略的成長投資などに活用しつつ、適正な財務体質の維持と株主還元に活用してまいります。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の起点となる2023年は、変化に対応できる強いブリヂストンを目標とした中期事業計画(2021-2023: 売上収益3兆3,000億円レベル、調整後営業利益4,500億円レベル、調整後営業利益率13%レベル、ROIC10%レベル、ROE12%レベル)の最終年として、実現したい姿に向けた成長の基盤を構築する重要な年としております。
当連結会計年度においては、売上収益41,101億円(前連結会計年度比8,640億円増加)、調整後営業利益4,826億円(前連結会計年度比883億円増加)、調整後営業利益率11.7%(前連結会計年度比0.4ポイント低下)、ROIC9.4%(前連結会計年度比0.4ポイント上昇)、ROE10.9%(前連結会計年度比2.0ポイント低下)となりました。
(注) ROEにつきましては、親会社の所有者に帰属する当期利益のうち継続事業に係る金額に基づいて算出しております。