【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響からの持ち直しの動きが続いたものの、中国でのロックダウンや半導体不足などの自動車生産への影響、ウクライナ情勢も影響した原燃料価格の上昇や世界的なインフレの進行、物流の混乱、為替の変動など、先行き不透明な状況のうちに推移しました。このような環境の中、当社グループでも自動車生産や、電子デバイスの需要低下の影響を受け、一部製品の販売数量が減少したものの、需要が伸長する製品については販売機会を着実に捉え販売数量を伸ばすとともに、高騰する原燃料価格や物流費の販売価格への転嫁、徹底したコストダウンを実施してまいりました。当連結会計年度の売上高は5,380億26百万円(前年度比15.0%増)、営業利益は475億8百万円(同6.3%減)、経常利益は520億35百万円(同9.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は406億82百万円(同30.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、各事業が負担すべき費用を負担し、グループ全体の利益への貢献に責任を持って事業運営する体制に移行するため、全社共通費用を全て各事業に配賦する方法に変更しています。前年度比較については、前年度の数値を変更後の配賦方法に基づき組み替えた数値で比較しております。
[メディカル・ヘルスケア事業部門]コスメ・健康食品事業は、中国のロックダウンの影響などにより化粧品原料の販売数量が減少したものの、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正や、健康食品素材の販売数量が増加したことなどにより、増収となりました。ライフサイエンス事業は、キラル関連製品の販売やインドでの分析サービスなどが好調に推移したことや、為替の影響により、増収となりました。当部門の売上高は、225億18百万円(前年度比15.5%増)、営業利益は、減価償却費の増加等により、6億99百万円(同71.3%減)となりました。
[スマート事業部門]液晶表示向けフィルム用の酢酸セルロースや高機能フィルムなどのディスプレイ事業は、高機能フィルムの販売数量が新規採用により増加したものの、液晶パネルの在庫調整の影響により、酢酸セルロースの販売数量が減少し、減収となりました。電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、液晶パネル材料向けの販売数量が減少したものの、半導体材料向けの販売数量の増加や、原燃料価格上昇に伴う販売価格の上昇などにより、増収となりました。当部門の売上高は、295億99百万円(前年度比8.9%減)、利益面では、販売数量の減少や原燃料価格の上昇などにより、営業損失6億42百万円(前年同期は営業利益40億35百万円)となりました。
[セイフティ事業部門]自動車エアバッグ用インフレータ(ガス発生装置)などのモビリティ事業は、半導体不足や中国のロックダウンなどによる自動車減産の影響を受けたものの、自動車生産が前年度より回復し販売数量が増加したことや、為替の影響などにより、増収となりました。当部門の売上高は、839億81百万円(前年度比20.9%増)、営業利益は、利益面では、米国での人件費の増加や、物流費の上昇などにより、営業損失1億43百万円(前年度は営業利益25億83百万円)となりました。
[マテリアル事業部門]酢酸は、定期修繕に伴う販売調整や、前年度高騰した酢酸市況の軟化により、減収となりました。酢酸誘導体は、電子材料やディスプレイ向けの需要低下により販売数量が減少したものの、販売価格の是正などにより、増収となりました。アセテート・トウは、加熱式たばこ用の需要増加などによる販売数量の増加、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正、為替の影響などにより、増収となりました。カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは、自動車向け塗料保護フィルム用途などの需要拡大によりカプロラクトン誘導体の販売数量が増加したことや、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正などにより、増収となりました。当部門の売上高は、1,548億13百万円(前年度比26.0%増)、営業利益は、販売数量の増加や販売価格の是正、為替の影響などにより、219億36百万円(同19.6%増)となりました。
[エンジニアリングプラスチック事業部門]ポリアセタール樹脂、PBT樹脂、液晶ポリマーなどポリプラスチックス株式会社の事業は、日系自動車の下期生産台数減少による自動車部品メーカーの在庫圧縮や、スマートフォンなどの需要低下の影響を受け、新型コロナウイルスの影響からの需要回復で販売数量が急増していた前年度と比較して販売数量が減少したものの、継続的な販売価格の是正や、為替の影響により、増収となりました。ABS樹脂、エンプラアロイ樹脂、フィルム、水溶性高分子などダイセルミライズ株式会社の事業は、販売数量の増加や、原燃料価格上昇に伴う販売価格の是正などにより、増収となりました。当部門の売上高は、2,380億62百万円(前年度比12.2%増)、営業利益は、販売価格の是正や、為替の影響などにより、253億10百万円(同14.5%増)となりました。
[その他事業部門]その他部門は、防衛関連事業での販売数量が減少したことなどにより、減収となりました。当部門の売上高は、90億51百万円(前年度比20.7%減)、営業利益は、3億47百万円(同70.9%減)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。総資産は、棚卸資産や有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末に比し667億70百万円増加し、7,656億6百万円となりました。負債は、短期社債や1年内償還予定の社債等の増加により、前連結会計年度末に比し358億78百万円増加し、4,551億70百万円となりました。また純資産は、3,104億35百万円となりました。純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は、2,952億9百万円となり自己資本比率は38.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比し55億6百万円増加し、934億93百万円(前連結会計年度末比6.3%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、268億47百万円(前年同期は、429億93百万円の増加)となりました。資金増加の主な内容は、税金等調整前当期純利益549億67百万円および減価償却費315億16百万円であり、資金減少の主な内容は、棚卸資産の増減額318億75百万円および法人税等の支払額144億25百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、440億93百万円(前年同期は、465億28百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、投資有価証券の売却及び償還による収入86億77百万円であり、資金減少の主な内容は、有形固定資産の取得による支出473億86百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フロー当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、199億56百万円(前年同期は、54億52百万円の減少)となりました。資金増加の主な内容は、短期借入金の純増減額134億13百万円や短期社債の純増減額299億98百万円および長期借入れによる収入150億74百万円であり、資金減少の主な内容は、長期借入金の返済による支出131億7百万円や社債の償還による支出100億3百万円および配当金の支払額106億51百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
生産高(百万円)
前年同期比(%)
メディカル・ヘルスケア事業
15,408
17.68
スマート事業
34,639
19.03
セイフティ事業
86,667
26.24
マテリアル事業
131,835
29.85
エンジニアリングプラスチック事業
224,896
13.90
報告セグメント計
493,446
20.40
その他
7,162
△20.23
合計
500,609
19.53
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績受注生産を行っているのは「その他」のうちの特機関連部門であり、主として発射薬等で受注状況は次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
その他
161
△91.64
84
△97.73
c.販売実績
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
販売高(百万円)
前年同期比(%)
メディカル・ヘルスケア事業
22,518
15.51
スマート事業
29,599
△8.90
セイフティ事業
83,981
20.91
マテリアル事業
154,813
26.05
エンジニアリングプラスチック事業
238,062
12.15
報告セグメント計
528,975
15.87
その他
9,051
△20.67
合計
538,026
14.98
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月26日)現在において判断したものであります。
① 経営成績等中期戦略『Accelerate 2025』では2025年度に以下の全社業績および経営指標をターゲットとしております。全社業績:売上高 6,600億円、営業利益 820億円、親会社株主に帰属する当期純利益 580億円、EBITDA 1,360億円経営指標:営業利益率 12.4%、ROE 17.1%、ROIC 9.3%、ROA 7.7%株主還元:中期戦略発表時の1株当たり配当金額(年間32円)を下限、総還元性向 40%以上
本中期戦略の3年目である当連結会計年度は、需要の回復による販売機会を着実に捉えるとともに、販売価格の是正、徹底したコストダウンを実施してまいりました。その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は5,380億26百万円(前年度比15.0%増)、営業利益は475億8百万円(同6.3%減)、経常利益は520億35百万円(同9.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は406億82百万円(同30.2%増)となりました。
経営成績売上高および営業利益売上高、営業利益の概況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
営業外損益営業外損益は45億円の収益(純額)となり、前連結会計年度に比し21億円悪化いたしました。主に為替損益の影響などによるものであります。
特別損益特別利益は55億円を計上いたしました。投資有価証券売却益42億円などによるものであります。特別損失は26億円を計上いたしました。固定資産除却損15億円などによるものであります。
法人税等税効果会計適用後法人税の負担率(実効税率)は24.2%と、前連結会計年度に比し6.5ポイント減少いたしました。
非支配株主に帰属する当期純利益非支配株主に帰属する当期純利益は10億円と、前連結会計年度に比し2億円(19.9%)増加いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益親会社株主に帰属する当期純利益は407億円と、前連結会計年度に比し94億円(30.2%)の増益となりました。 また、ROEは14.3%となり、前連結会計年度に比し2.1ポイント改善しました。ROICは5.3%、EBITDAは791億円となりました。
財政状態資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。なお、有利子負債比率は42.1%となりました。また、2022年11月2日取締役会決議に基づく自己株式の取得を100億円実施しております。
② 経営成績に重要な影響を与える要因当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性キャッシュ・フローキャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要当社グループにおける主な運転資金需要は、製品製造のための原材料の購入、労務費など製造費用と、製品の仕入、販売費及び一般管理費等の支払いであります。当社グループでは、製造設備の増強および更新などのほか、安全向上対策ならびに現業各設備の合理化・省力化を継続的に行っております。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度に比し155億円増加し、563億円(前連結会計年度比37.9%増)、減価償却費は前連結会計年度に比し46億円増加し、315億円(前連結会計年度比16.9%増)となりました。当社グループでは、既存事業の強化拡大および新事業創出のための研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は前連結会計年度に比し11億円増加し、219億円(前連結会計年度比5.5%増)となりました。
財務政策当社グループは、設備投資計画に照らして、必要な資金を銀行借入や社債発行により調達しております。短期的な運転資金は、キャッシュマネジメントサービスを通じてグループ内で余剰資金を活用しておりますが、地域、通貨、金利動向等を考慮した結果、銀行借入等による調達を行う場合があります。当連結会計年度末における借入金およびリース債務を含む有利子負債の残高は3,220億円であります。利益配分に関しては、中期戦略『Accelerate 2025』におきましては、収益力強化に加え適正在庫化などキャッシュコンバージョンサイクル削減効果で資金創出力向上を図ります。また、政策投資株式売却などにより資金創出力をさらに高め、余裕資金を成長投資や株主還元に活用します。株主還元は総還元性向40%以上とし、自己株式取得も視野に柔軟に対応してまいります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。