【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当事業年度の末日現在において当社が判断したものであります。なお、当社は、熱絶縁工事を中心に行うエンジニアリング事業を創業期から運営しておりましたが、当該事業については2022年1月4日にArmacell Japan株式会社に譲渡しております。そのため、当事業年度より当社はICT事業のみの単一セグメントとなっております。
(1) 経営成績の状況 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a 経営成績当社は、「私たちは、“働く”にもっと「楽しい」を創造する。」をミッションに、建設業の現場業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)することで、建設業界の課題解決に貢献する施工管理SaaS「SPIDERPLUS」の開発・販売を主力とするICT事業を展開しております。また、2022年8月にリニューアル版「SPIDERPLUS」の販売を開始しており、他社とも連携しながら建設業界の課題を解決する「プロダクト・プラットフォーム」を目指し開発を継続しております。
当事業年度においては、ロシア・ウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症、また対米ドルを中心とする円相場の変動が、サプライチェーンを始め顧客市場の経済活動に混乱を与えておりました。一方で、当社が事業を提供する建設業界においては、資材価格上昇等によるコストの増加、慢性的な人手不足や長時間労働が常態化している構造的な課題に加え、「働き方改革関連法案」の時間外労働に関する上限規制の適用が2024年4月に迫っており、生産性向上への関心とそれに対応するサービスへの需要は引き続き旺盛に推移しました。このような事業環境のもと、建設業界のDXを推進し生産性の向上とコスト削減に貢献するサービスである「SPIDERPLUS」は、建設業界のIT投資需要を取り込み、ID数及び契約社数が順調に増加しました。また、各種検査オプション機能の販売などアップセルにも注力し、ARPU(1契約ID当たりの契約単価)も順調に向上しました。なお、当社は、「働き方改革関連法案」の上限規制が適用される2024年度までを市場シェア獲得のための先行投資期間として、黒字化よりも売上高成長率を重視する方針としており、当事業年度は、2024年度以降の需要拡大も見据えた組織とプロダクトづくり、顧客基盤拡大のための営業力強化の他、オンラインとオフラインのチャネルを組合せたマーケティング投資を重点的に進めてまいりました。その結果、「SPIDERPLUS」の2022年12月末における契約ID数は58,690(前年同期比20.3%増)、契約社数は1,524社(前年同期比26.6%増)、ARPUは3,908円(前年同月比4.9%増)と堅調に推移し、当事業年度の売上高は2,479,404千円(前年同期比12.3%増)、営業損失は1,142,318千円(前年同期は433,020千円の営業損失)、経常損失は1,161,815千円(前年同期は503,929千円の経常損失)、当期純損失は1,036,610千円(前年同期は511,669千円の当期純損失)となりました。なお、2022年1月4日のエンジニアリング事業の譲渡による事業譲渡益131,586千円を特別利益に計上しております。
b 財政状態
(資産)当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ1,166,689千円減少し、3,542,040千円となりました。これは主に、先行投資に伴う営業損失等により現金及び預金が1,151,901千円減少したことによるものです。固定資産は、前事業年度末に比べ534,875千円増加し、1,252,461千円となりました。これは主に、リニューアル版「SPIDERPLUS」の開発費の計上により無形固定資産が358,060千円増加したこと、本社移転に伴う工事や設備投資等により建物が151,099千円増加したことなどによるものです。この結果、総資産は、前事業年度末比で631,813千円減少し、4,794,501千円となりました。
(負債)当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ83,724千円増加し、854,655千円となりました。また、固定負債は、前事業年度末に比べ221,701千円増加し、254,981千円となりました。これらは主に、本社移転に関する借入の実行によるものです。この結果、負債合計は、前事業年度末比で305,426千円増加し、1,109,637千円となりました。
(純資産)当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ937,240千円減少し、3,684,864千円となりました。これは、ストック・オプションの行使により資本金及び資本準備金がそれぞれ49,694千円増加した一方、当期純損失の計上により繰越利益剰余金が1,036,610千円減少したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,146,401千円減少し、3,044,793千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果使用した資金は、1,000,775千円(前事業年度は493,475千円の使用)となりました。これは主に、人的投資を中心とした先行投資等に起因した税引前当期純損失1,030,651千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は、508,676千円(前事業年度は610,355千円の使用)となりました。これは主に、事業譲渡により200,000千円の収入があった一方、本社移転等に伴う有形固定資産の取得による支出257,598千円の他、システムリニューアル等に伴う無形固定資産の取得による支出450,240千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果獲得した資金は、363,049千円(前事業年度は4,830,050千円の獲得)となりました。これは主に、本社移転に関する借入の実行による収入330,000千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入99,388千円が計上された一方、長期借入金の返済による支出が64,643千円計上されたことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績当社は、生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b 受注実績当社は、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
c 販売実績当事業年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
ICT事業
2,479,404
28.0
(注) 1.主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。2.当社は、ICT事業の単一セグメントのためセグメント別の記載はしておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度の末日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末における財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような会計上の見積りを必要とされております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に会計上の見積りを行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。 なお、新型コロナウイルスの影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 当社の当事業年度における経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金は自己資金及び金融機関からの借入金を基本としております。また、持続的な成長を図るため既存事業の拡大と新規開発を行っており、これらに必要な資金については必要に応じて多様な資金調達を実施しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
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