【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、『Oil&New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンに、4つの基本方針に基づき施策を実行してまいりました。“稼ぐ力“と“財務体質“を強化することで、市場環境変化に耐え得る自己資本の厚みとネットD/Eレシオ1倍台前半を実現し、全ての経営目標を達成しました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は2兆7,919億円(前期比14.4%の増加)、営業利益は1,638億円(前期比30.4%の減少)、経常利益は1,645億円(前期比29.4%の減少)となりました。
これは、特に石油事業においてエネルギーコストが増加したこと等によるものです。
上記の減益要因により、親会社株主に帰属する当期純利益は679億円となりました。
セグメント情報につきましては、以下のとおりであります。
前連結会計年度において「その他」の区分に含まれていた一部の連結子会社について、事業内容の変更に伴い、当連結会計年度において「石油事業」に変更しております。なお、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。
(石油事業)
石油事業につきましては、前期比で原油価格が上昇したこと等により、売上高は2兆4,515億円(前期比+3,138億円)となりました。一方、原油価格上昇に伴うエネルギーコストの増加等により、セグメント利益は657億円(前期比△1,003億円)となりました。なお、在庫評価の影響を除くセグメント利益は441億円(前期比△496億円)となっております。
(石油化学事業)
石油化学事業につきましては、前期比で製品販売価格が上昇したこと等により、売上高は4,402億円(前期比+808億円)となりました。一方、前年同期比で販売数量が減少したこと等により、セグメント利益は38億円(前期比△98億円)となりました。
(石油開発事業)
石油開発事業につきましては、原油販売価格が上昇したこと等により、売上高は1,380億円(前期比+470億円)、セグメント利益は845億円(前期比+397億円)となりました。
(再生可能エネルギー事業)
再生可能エネルギー事業につきましては、前期比で風況に恵まれず売電売上が減少したこと及び洋上風力への進出に伴うコストが増加したこと等により、売上高122億円(前期比△9億円)となり、セグメント利益は26億円(前期比△9億円)となりました。
当期の連結財政状態は、総資産は2兆1,208億円(前連結会計年度末比+1,824億円)、負債合計は1兆4,574億円(前連結会計年度末比+1,030億円)、純資産合計は6,634億円(前連結会計年度末比+794億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は618億円となり、前連結会計年度末に比べ137億円増加しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金の増加は81億円(前年同期は1,084億円の資金の増加)となり、これは主に、税金等調整前当期純利益を計上したものの、法人税等の支払いがあったこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金の減少は812億円(前年同期は675億円の資金の減少)となり、これは主に、有形固定資産の取得による支出等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金の増加は811億円(前年同期は420億円の資金の減少)となり、これは主に、短期借入金の増加等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
石油事業
1,880,629
164.2
石油化学事業
521,545
125.6
石油開発事業
19,625
127.2
合計
2,421,799
153.7
(注)1 自家燃料は除いております。
2 委託処理分を含み、受託処理分は除いております。
3 上記の金額にセグメント間の生産高は含まれておりません。
b受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
その他
12,563
84.6
7,912
75.9
c販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
石油事業
2,328,298
113.3
石油化学事業
370,738
118.7
石油開発事業
52,593
141.3
再生可能エネルギー事業
12,119
92.6
その他
28,122
120.0
合計
2,791,872
114.4
(注)1 上記の金額にセグメント間の販売高は含まれておりません。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自
2021年4月1日
至
2022年3月31日)
当連結会計年度
(自
2022年4月1日
至
2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
キグナス石油㈱
333,993
13.7
353,336
12.7
※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりです。
なお、連結財務諸表の作成に関して、認識している重要な見積りを伴う項目については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」を参照ください。
②経営成績の分析
a売上高
売上高は、前連結会計年度に比べ3,514億円増加し、2兆7,919億円となりました。これは主に、原油価格の上昇等によるものです。
b売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度に比べ4,095億円増加し、2兆4,711億円となりました。これは主に、原油価格の上昇に伴うエネルギーコストが増加したこと等によるものです。売上高に対する売上原価の比率は、4.0ポイント増加して、88.5%となりました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ134億円増加し、1,569億円となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は、0.3ポイント減少して、5.6%となりました。
c営業利益
上記の結果を受け、営業利益は、前連結会計年度に比べ715億円減少し、1,638億円となりました。これは主に、石油セグメントにおいて原油価格の上昇に伴いエネルギーコストが増加したこと等によるものです。
d営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ29億円改善し、7億円の利益となりました。これは主に、為替差損益が27億円増加したこと等によるものです。
e特別損益
特別損益は、前連結会計年度に比べ103億円改善し、112億円の損失となりました。これは主に、特別利益として固定資産売却益を43億円計上したことに加えて、前連結会計年度に比べ固定資産処分損や減損損失が減少したこと等によるものです。
f親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ710億円減少し、679億円となりました。これは主に、法人税等が前連結会計年度に比べ49億円増加し714億円となったこと及び非支配株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度に比べ78億円増加し140億円となったこと等によるものです。なお、1株当たりの当期純利益は、811.15円となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(石油事業)
原油価格の上昇に伴いエネルギーコストが増加したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ1,003億円減少し、657億円となりました。
2023年度は当連結会計年度の原油価格下落局面における市況悪化影響の解消等により販売マージンの改善を見込むものの、売上原価を押し下げる要因となっていた棚卸資産の在庫評価の影響が次期においては解消する見込みであるため、当連結会計年度比で減益となる見通しとなっております。
(石油化学事業)
製品販売価格が上昇したものの、市況の低迷に伴い販売数量が減少したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ98億円減少し、38億円となりました。
2023年度は販売数量の改善する一方で市況の悪化が見込まれておりますが、石油事業とのシナジーを追求しながら、継続して協業の深化を進めてまいります。
(石油開発事業)
原油販売価格が上昇したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ397億円増加し、845億円となりました。
2023年度は、原油価格の下落により減益となる見込みですが、中東地域に既存権益鉱区での安全・安定操業を引き続き進めてまいります。
(再生可能エネルギー事業)
風況に恵まれず売電売上が減少したこと及び洋上風力への本格進出に伴うコストが増加したこと等により、セグメント利益は前連結会計年度に比べ9億円減少し、26億円となりました。
2023年度は、引き続き業容拡大に伴うコストが増加することが見込まれておりますが、陸上風力発電事業のさらなる拡大を図るとともに、法整備がなされる洋上風力事業への進出を積極的に進めてまいります。
③資本の財源及び資金の流動性に関する分析
a資金需要
当社グループの資金需要は主に運転資金と設備投資に関するものです。
運転資金需要は製品製造のための原材料仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであり、設備投資需要は競争力強化を目的とした石油・石油化学製品の製造設備、サービスステーションや販売促進のためのアプリ開発、原油の生産設備、風力発電設備等の取得や維持更新等によるものです。
b財務政策
2022年度が最終年度となる第6次連結中期経営計画では、「財務体質の健全化」を基本方針の一つとして掲げ、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化し、原油価格変動等の市場環境変化に耐えうる自己資本の厚みとネットD/Eレシオ1倍台前半の早期実現を掲げました。稼ぐ力の強化により、自己資本並びにネットD/Eレシオの目標値は達成いたしました。2023年4月より開始された第7次連結中期経営計画では、株主還元、財務健全性、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指しております。財務健全性においては、資産に内在するリスク、求められる資本効率、柔軟な資金調達といった観点を総合的に精査し、自己資本並びにネットD/Eレシオの目標値を設定しております。
当社は、財務の安全性と効率性を両立させる財務運営を目指しており、コマーシャル・ペーパーによる直接金融と金融機関からの借入等の間接金融を機動的に行うことで効率的な調達を行っております。また、原油備蓄資金の制度融資も活用しており、市中の金融機関のみならず政府系金融機関とも関係を維持し、調達先の多様化を図り十分な流動性を確保しております。また、持株会社である当社が一括して資金を調達し、グループ会社に融通するグループ金融体制を構築しており、調達の効率化を行っております。
当社は、円滑な資金調達を行うために日本格付研究所(JCR)並びに格付け投資情報センター(R&I)から格付を取得しております。当連結会計年度末において当社の格付は、JCR、R&IともにA-(安定的)となります。
(特定融資枠契約)
平時における十分な流動性の確保と災害発生等の緊急時に円滑な資金調達を行うために取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。なお、当連結会計年度末における当該契約の極度額は1,201億円です。
c株主還元
当社グループは、株主の皆様への利益還元を重要な課題の一つとして認識しております。当事業年度は在庫影響除き純利益に対して50%の株主還元を目標として掲げ、前事業年度から50円増配の一株当たり150円といたしました。また、取得総額200億円の自己株式の取得を実施いたしました。
2023年3月に発表した第7次連結中期経営計画では株主還元、財務健全性、資本効率のいずれも欠けることなく、三位一体で実行していくことを資本政策として掲げました。第6次連結中期経営計画の施策を着実に実行し、石油事業を中心に稼ぐ力が強化されたことから、第7次連結中期経営計画期間中の総還元性向は在庫影響を除く純利益に対して60%以上(3ヵ年累計)、配当は1株あたり200円を下限とした安定的な配当を実施してまいります。また、財務健全性が目標値に到達した場合は原則として追加の還元を実施いたします。資本政策を三位一体で実現していくことで、企業価値の最大化を目指してまいります。
d財政状態
当社グループは、自己資本やネットD/Eレシオといった財務健全性の向上を重要な課題の一つとして認識しております。財務健全性に加え、株主還元、資本効率を三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指してまいります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1兆360億円となり、前連結会計年度末に比べ1,680億円増加しております。これは主に、売掛金が397億円増加したこと等によるものです。固定資産は1兆847億円となり、前連結会計年度末に比べ143億円増加しております。これは主に、投資有価証券が92億円増加したこと等によるものです。
この結果、総資産は2兆1,208億円となり、前連結会計年度末に比べ1,824億円増加しております。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は1兆126億円となり、前連結会計年度末に比べ579億円増加しております。これは主に、短期借入金が787億円増加したこと等によるものです。固定負債は4,448億円となり、前連結会計年度末に比べ450億円増加しております。これは主に、特別修繕引当金が148億円増加したこと等によるものです。
この結果、負債合計は1兆4,574億円となり、前連結会計年度末に比べ1,030億円増加しております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は6,634億円となり、前連結会計年度末に比べ794億円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益679億円を計上したこと等によるものです。
この結果、自己資本比率は24.9%(前連結会計年度末は23.5%)となりました。
eキャッシュ・フロー
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。営業活動は税金等調整前当期純利益を計上したものの、法人税等の支払いがあったこと等により81億円のプラスとなりました。投資活動は有形固定資産の取得による支出等により812億円のマイナスとなりました。財務活動は短期借入金の増加による収入等により811億円のプラスとなりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ137億円増加の618億円となりました。
当連結会計年度は原油価格上昇に伴うエネルギーコストの増加等により、特に石油事業において在庫評価の影響等を主要因とし、税金等調整前当期純利益は前期比で減少しております。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率
16.5%
14.6%
19.0%
23.5%
24.9%
時価ベースの自己資本比率
11.0%
7.8%
12.9%
11.4%
17.7%
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
7.7年
6.1年
3.6年
5.4年
84.5年
インタレスト・カバレッジ・レシオ
8.2倍
11.8倍
23.1倍
16.7倍
1.3倍
(注)1 各指標は、以下の計算式によっております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により計算しております。
4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている借入金、コマーシャル・ペーパー、社債、転換社債型新株予約権付社債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期的な経営の方向性を2022年度が最終年度となる第6次連結中期経営計画にて目標値として定めておりました。当該連結中期経営計画最終年度の評価として、当連結会計年度における客観的指標の実績を示すとともにその達成状況を分析すると以下のとおりとなります。
親会社株主に帰属する当期純利益は679億円、自己資本は5,279億円(自己資本比率24.9%)、ネットD/Eレシオは1.10倍、ROEは13.8%と連結中期経営計画の財務目標を達成しております。
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