【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況当第2四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行を契機としたインバウンド需要の回復が進む一方、長期化するウクライナ情勢やエネルギー・原材料価格の高止まりによる物価上昇など、先行きは引き続き不透明であり、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続きました。このような状況のなか、当社グループは世の中の変化を柔軟にとらえ、サステナブル社会に対応した経営環境、経営課題に積極的に取り組むため、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「ISHIZUE 2023 ~SHINKA・変革~」における重点テーマ「イノベーション創出」「グローバル展開・拡大」「事業推進体制の見直しと収益改革」「AI・IoT積極活用」「持続的成長を担う人財育成」を実行し、「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」実現に向けて取り組んでまいりました。
①中長期成長エンジンの確立、イノベーション創出・BtoC開発マーケティング・BtoB現場提案による新製品上市実現、新領域・新製品カテゴリーでの成果の創出・コア技術の深化・進化の成果創出と共有、オープンイノベーション・協業によるターゲット領域での新規事業の創出②グローバル市場へのスピーディな展開・拡大・販売3拠点体制による事業拡大と支援強化、生産・物流を含めた体制拡充の推進・海外事業拡大に向けた戦略的パートナーの探索と協業の実現(業務提携・M&A活用)③事業推進体制の見直しと収益改革・顧客を機軸とした事業推進体制での戦略遂行、業務プロセス・業務活動における選択と集中の徹底と効率化の推進・適切な需要予測管理と原価管理によるサプライチェーンマネジメントの最適化、業務プロセス改善と品質管理強化・サステナブル経営視点の事業戦略・開発の推進、CO2排出削減等の取り組み強化④事業戦略推進に向けたAI・IoTの積極活用・事業戦略を実現するためのIT基幹システム活用の実践・社内外データの活用とシステム化によるマーケティング施策と業務プロセス改善・効率化施策の推進⑤将来の持続的成長を担う人財育成・多様な人財の活用による組織運営の活性化と行動指針を実践する人財育成、社員の健康とエンゲージメント向上策の強化・リーダーシップ・組織マネジメント力及び専門スキルの強化(スキルマップの活用)・次世代経営層の育成
以上の取り組みを実施いたしました結果、売上高は、インバウンド需要回復によるヘルスケアフィールドの需要拡大等により、前年同期比4.3%増の224億5千8百万円となりました。営業利益は、人員増に伴う人件費の増加、新基幹システム稼働に伴う減価償却費の増加やソフトウェア利用料の増加等による販売費及び一般管理費の増加等があったものの、売上高及び売上原価の増加等により、前年同期比4.9%増の5億2千9百万円となりました。経常利益は、主に営業利益の増加により、前年同期比10.2%増の6億3千7百万円となりました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、これらの影響により、前年同期比16.4%増の4億3千2百万円となりました。
当社グループのセグメントの概要は次のとおりです。当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち分離された財務諸表が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。当社は、顧客機軸をベースとした事業活動を強化するために、営業担当管掌を「国内事業本部」、「海外事業本部」とし、国内事業本部の傘下に、販路別に以下の営業統括部を設置しております。・顧客を機軸とした新たな営業推進体制の強化とブランド戦略の再構築のために、「コンシューマー営業本部」を設置し、傘下に「ヘルスケア営業統括部」、「オフィスホーム営業統括部」を置くとともに、越境EC含め積極的にEC営業の拡大を図るため、「EC営業統括部」を置いております。・より顧客に密着した営業活動を推進し、新規開発案件探索、顧客拡大のために、「工業品営業統括部」、「医療材営業統括部」を置いております。
また、当社グループは、以上の営業担当管掌に、各子会社を加えた事業フィールドとして、「ヘルスケアフィールド」、「ECフィールド」、「オフィスホームフィールド」、「医療材フィールド」、「工業品フィールド」及び「海外フィールド」を設定しております。経営資源の配分の決定及び業績の評価については、取り扱う製品、商品の性質や、市場、製造方法の類似性に基づき、「メディカル事業」、「テープ事業」の単位で行っていることから、当社グループの事業セグメントとしては、「メディカル事業」、「テープ事業」と認識し、これを報告セグメントとしております。
「メディカル事業」、「テープ事業」セグメントと各事業フィールドとの関係は以下のとおりです。
事業フィールド
メディカル事業
テープ事業
国内
コンシューマー営業本部
ヘルスケアフィールド
〇
ECフィールド
〇
〇
オフィスホームフィールド
〇
医療材フィールド
〇
工業品フィールド
〇
海外
海外フィールド
〇
〇
事業の種類別セグメントの業績は次のとおりであります。メディカル事業(ヘルスケアフィールド)ドラッグストアを中心とした大衆薬市場におきましては、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和と訪日外国人の増加に伴うインバウンド需要の回復がみられ、市況に改善の傾向が見られました。このような状況のなか、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズについては、国内需要拡大に向けて、認知度向上のためにテレビCM等のPR活動を実施するとともに、試供品配布を継続して行い、売上高は前年同期を上回りました。あわせて、鎮痛消炎剤“ロイヒ”シリーズについては、訪日外国人の増加に伴うインバウンド需要拡大に向けての売り場作りや、国内需要拡大に向けてキャンペーン等のPR活動を行い、売上高は前年同期を大きく上回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は68億5千2百万円(前年同期比24.8%増)となりました。
(医療材フィールド)医療機関向け医療材料市場におきましては、医療体制や外来受診数の回復が見られましたが、医療現場の一時的な逼迫もあり、依然として先行き不透明な販売環境が続きました。このような状況のなか、止血製品シリーズ“セサブリックTM”は、新型コロナウイルスワクチン需要減少の影響を一部で受けましたが、院内需要の回復で圧迫止血用パッド付絆創膏「ステプティTM」の販売数が増加したことにより、売上高が前年同期を上回りました。その一方、ドレッシング類につきましては、一部医療施設における他社廉価品への移行で配荷数量が減少した影響により、売上高は前年同期を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は29億6千6百万円(前年同期比1.6%減)となりました。
((メディカル事業にかかる)ECフィールド)EC市場におきましては、オンライン購買に対するWEBマーケティングの取り組みを強化してきたことにより、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズの売上高は、前年同期を上回りました。あわせて、越境ECの売上高においても、“ケアリーヴTM”シリーズ育成に注力し、前年同期を上回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は3億7千5百万円(前年同期比30.5%増)となりました。
((メディカル事業にかかる)海外フィールド)海外市場におきましては、Withコロナへの移行が進み、積極的に学会や出張が実施されたものの、物価上昇など経済成長への負荷が高まるなど、依然として先行き不透明な状況が続きました。このような状況のなか、重点地域であるアジア及び欧州にて、高機能救急絆創膏“ケアリーヴTM”シリーズや止血製品シリーズ“セサブリックTM”を中心に、販売代理店とともに現地に密着した営業活動を展開してまいりましたが、“ケアリーヴTM”シリーズについては、販売代理店の在庫過多が影響し、売上高は前年同期を大きく下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は6億4千8百万円(前年同期比20.1%減)となりました。
以上の結果、メディカル事業全体の売上高は、108億4千3百万円(前年同期比12.9%増)となりました。また、原材料単価の上昇があったものの、生産の大幅な増加及びヘルスケアフィールドを中心とした売上高の増加により、セグメント利益は29億7千5百万円(前年同期比51.2%増)となりました。
テープ事業(オフィスホームフィールド)文具事務用品市場におきましては、物価上昇を起因とした消費者心理の冷え込み等により、文具事務用品需要の低迷が続き、厳しい販売環境となりました。このような状況のなか、主要製品である「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」については、価格改定やキャンペーン活動を進めたものの、需要低迷の影響は大きく、ともに売上高は前年同期を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は23億5千6百万円(前年同期比3.2%減)となりました。
(工業品フィールド)産業用テープ市場におきましては、半導体不足の影響が緩和に向かっている自動車メーカーでは市況の改善が見られましたが、原材料高騰による消費の冷え込みなどもあり、依然として先行き不透明な販売環境が続きました。このような状況のなか、主要製品の「セロテープ®」については、多くの企業や自治体に向けて天然素材を使用した環境配慮製品であることを新聞広告や特設ホームページ等を通じて啓蒙し、SDGsへの取り組みとしてご賛同をいただき、売上高は前年同期を上回りました。その一方、クラフトテープの売上高については、廃番に伴う他社製品への切り替えがあり、前年同期を下回りました。その結果、フィールド全体としての売上高は64億2千1百万円(前年同期比1.2%減)となりました。
((テープ事業にかかる)ECフィールド)EC市場におきましては、コロナ明けの市場回復のなか、価格改定を進めるとともに、オンライン購買に対するWEBマーケティングを強化してきたことにより、「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」などの需要が好調に推移いたしました。その結果、フィールド全体としての売上高は17億9千7百万円(前年同期比10.3%増)となりました。
((テープ事業にかかる)海外フィールド)海外市場におきましては、世界的な物価高や中国経済の減速など、先行き不透明な状況が続きました。このような状況のなか、重点地域であるアジア及び欧州にて、「PanfixTMセルローステープ」は香港やインドネシア市場へ向けて、塗装用和紙マスキングテープは欧州や中国市場へ向けて、販売チャネルの構築と製品育成に注力いたしましたが、販売代理店の価格改定による駆け込み需要の反動等の影響もあり、ともに売上高は前年同期を大きく下回り、フィールド全体としての売上高は10億4千万円(前年同期比23.7%減)となりました。
以上の結果、テープ事業全体の売上高は116億1千5百万円(前年同期比2.6%減)となりました。また、ナフサ価格の上昇等による原材料単価の上昇等による原価の上昇により、セグメント損失は2億3百万円(前年同期は6億3千7百万円のセグメント利益)となりました。
調整額報告セグメントに帰属しない一般管理費の計上等により、営業利益と報告セグメントの利益又は損失の合計額との調整額が22億4千2百万円(前年同期比6.8%増)となりました。
当第2四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末と比べ17億1千2百万円減少し、674億1千万円となりました。流動資産は15億6千1百万円の減少、固定資産は1億5千万円の減少となりました。流動資産の減少は、前連結会計年度の第4四半期会計期間の生産高と比較して、当第2四半期連結会計期間の生産高が増加したことにより、棚卸資産が5億4千万円増加したものの、設備投資にかかる支払い等により現金及び預金が18億2千4百万円減少したこと等によるものです。固定資産の減少は、当第2四半期連結累計期間における有形固定資産の設備投資が、当社の埼玉工場における粘着液製造設備及び建屋等の設備投資を前連結会計年度に引き続き実施したものの、前連結会計年度と比較して減少傾向にあり、また無形固定資産において減価償却費が投資額を上回り、無形固定資産が1億7千3百万円減少したこと等によるものです。なお、当社の埼玉工場における粘着液製造設備及び建屋については下期より稼働予定のため、当第2四半期連結会計期間では建設仮勘定として有形固定資産のその他に含まれております。負債は、前連結会計年度末と比べ15億2千3百万円減少し、269億9千5百万円となりました。流動負債は15億4千6百万円の減少、固定負債は2千3百万円の増加となりました。流動負債の減少は、法人税等の支払いにより未払法人税等が3億7千7百万円減少したこと及び設備投資代金の支払いにより営業外電子記録債務が8億8千1百万円減少したこと等によるものです。固定負債の増加は、預り保証金の支払により4千4百万円減少したものの、退職給付に係る負債が7千5百万円増加したこと等によるものです。純資産は前連結会計年度末と比べ1億8千9百万円減少し、404億1千4百万円となりました。これは配当金の支払いにより利益剰余金が2億9千3百万円減少していること等によるものです。
(2) キャッシュ・フローの状況当第2四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ18億2千4百万円(12.4%)減少し、129億2千7百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当第2四半期連結累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、12億4百万円の収入(前第2四半期連結累計期間18億1千4百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純利益6億3千7百万円の計上及び減価償却費13億9千2百万円の計上、棚卸資産の増加額5億4千万円及び法人税等の支払額5億2百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当第2四半期連結累計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、23億3千万円の支出(前第2四半期連結累計期間11億6千6百万円の支出)となりました。これは主に当社の埼玉工場における粘着液製造設備及び建屋等の有形固定資産の取得による支出22億4千4百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当第2四半期連結累計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、7億5千万円の支出(前第2四半期連結累計期間6億5千万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額7億2千5百万円等の支出があったことによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報の記載について重要な変更はありません。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、以下の事項について、重要な変更を行っております。
(固定資産の減損)当第2四半期連結累計期間において、テープ事業は原材料価格の高騰等により収益性が低下したため、減損の兆候があると判断しておりますが、減損損失の認識の判定において、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がその帳簿価額を上回っていたことから、減損損失を認識しておりません。当社グループは、原則として各事業(メディカル事業とテープ事業)を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位としてグルーピングしております。また、資産グループの収益性の低下や市場価格の著しい下落等により、減損の兆候があると認められる場合には、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって、減損損失の認識を判定します。判定の結果、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回り、減損損失の認識が必要であると判断した場合、帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額又は使用価値のいずれか高い価額)まで減額し、当該帳簿価額の減少額を減損損失として認識する方針であります。当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの見積りは、主要な資産の経済的残存使用年数について、当連結会計年度の着地見込みを基礎としております。その前提としての販売数量、売上成長率及び原材料価格は、過去からの需要動向の推移や市場予測、市場価格等を勘案した仮定に基づいております。今後の経済情勢等の変化による影響によって、テープ事業の固定資産の減損の見積りに影響を与える可能性があります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第2四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、新たに以下の課題を認識しております。テープ事業にかかる収益性が、原材料価格の高騰等により悪化しております。当該状況を改善するために、不採算品目についての価格改定、テープ事業の生産体制のさらなる効率化、新製品および既存製品の販売拡大施策等、様々な施策に取り組んでまいります。
(6) 研究開発活動当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は6億4百万円であります。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7) 生産、受注及び販売の実績当第2四半期連結累計期間において、前年同期比で、メディカル事業セグメントにおける生産及び販売の実績に著しい増加がありました。生産の著しい増加の内容は、主に鎮痛消炎剤“ロイヒ”シリーズの大幅な増加等によるものです。販売の実績の内容については、「(1)財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。