【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和され、海外渡航や海外からの入国が徐々に再開される中、企業活動も本格再開に向かいはじめました。その一方で、2月に勃発したウクライナ侵攻の長期化、為替の急激な円安や原材料価格高騰、なお一部に残る半導体供給不安、更には先行きのインフレ懸念など、不安材料は山積しており、経済の見通しは極めて不透明な状況が続いております。
防災事業の分野では、新型コロナウイルス感染拡大の猛威により多くの人命が奪われ、パンデミックへの備えは人類が取り組むべき永続的なテーマであることが改めて認識されています。3月には、福島県沖を震源とするマグニチュード7クラス、最大震度6強の地震が発生し、東北新幹線での車両脱線事故をはじめ、甚大な被害をもたらしており、首都直下、南海トラフなどの巨大地震の脅威はますます高まっています。加えて、特に近年顕著となっている河川の氾濫や土砂災害が今年も各地で発生しており、毎年のように発生する豪雨や暴風は国民生活や企業活動に大きな混乱を生じさせています。かかる状況下、国は「流域治水プロジェクト」を立ち上げ、対策を加速させていますが、今後は市町村や民間を含む広範な対策が急務となっています。又、特殊災害の分野においても、世界各地で発生するテロにより多くの人命が奪われるなど、災害リスクの領域は広範なものとなっており、激甚化、多発化、多様化する各種災害に対する官民挙げての防災体制の確立がますます重要となっております。
繊維事業の分野では、リネン(麻)につきましては、麻素材の市場定着が進む中、新型コロナウイルス感染拡大の影響から停滞していた市場が環境意識の高まりもあり、漸く反転の兆しを見せています。
一方、耐熱、耐切創、高強力など優れた機能を特徴とする高機能繊維につきましては、防護服分野に加え、EV向けなど資材分野での新たな用途や市場の開拓、新規商材の開発を進めております。
2020年度からスタートした第五次中期経営計画「帝国繊維(テイセン)2022」では、
≪ 先進的防災事業を確立・発展させ 多発化・激甚化する自然災害・気候変動による脅威から 社会や事業の安心・安全を守る! ≫を目標に、
1.大量送排水システムによる新たな市場開拓
基幹産業のBCP対策、国土交通省・自治体による水害対策への貢献
2.セキュリティビジネスの新たなフロンティアを切り拓く
セキュリティビジネスにおける商材開発強化と空港を足掛かりとする市場拡大
3.防災特殊車輌ビジネスの確立
革新的な防災特殊車輌により、消防防災・産業防災の装備刷新・充実に貢献する
4.当社事業の基盤である足元の事業を固め、一層磨き上げる
消防ホース・防災車輌・資機材・防火衣等特殊被服の4事業分野で確固たる業界№1の地位を確保する
5.消防ホース・防災車輌生産体制の刷新
6.収益力の持続的強化を目指す
などのテーマを掲げ、グループ一丸となって取り組んでまいりました。
この間、大量送排水システム(ハイドロサブシステム)分野では、原子力発電所、コンビナートなどの民間基幹産業のほか、国土交通省及び自治体などからの受注獲得に成功し、BCP対策及び水害対策で高い評価を獲得することができました。セキュリティビジネス分野では、コロナ禍による渡航制限などが実施された中にあっても、ロスプリベンション対策やテロ対策の必要性は高まり、爆物検知器やボディスキャナーなどの商材開発を強化し、セキュリティビジネスの強固な営業基盤を構築いたしました。さらに、ポンプ付救助工作車の開発をはじめ、消防ホース・防災車輌・資機材・防火衣等特殊被服の4事業分野でも市場でのプレゼンスはますます高まっております。
生産体制については、ホース工場としての鹿沼工場に次ぐ第二の拠点として、2021年に防災車輌の製造拠点となる下野工場を新設いたしました。更に2022年には、防災特殊車輌の開発・製造拠点機能拡充のための設備新設(第Ⅱ期工事)を行いました。鹿沼工場でもホース生産新ラインの増設ならびに施設整備を進めており、今後の当社事業を支える生産体制の刷新・再構築に鋭意取り組んでおります。
(財政状態)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ21億4千7百万円減少し、721億3千2百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ25億2千7百万円減少し、141億8百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ3億7千9百万円増加し、580億2千4百万円となりました。
(経営成績)
当連結会計年度の売上高は299億4百万円(前期比9.4%減)、営業利益は44億5千9百万円(前期比9.2%減)、経常利益は52億9千6百万円(前期比7.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億5千9百万円(前期比8.0%減)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
防災事業では、原子力発電関連の大型防災資機材や空港用化学消防車の売上が増加した一方で、救助工作車の売上が減少したことから、売上高は前期対比24億3千8百万円減少し、247億3千2百万円となりました。
繊維事業では、官公庁向け繊維資材の売上が減少したことから、売上高は前期対比6億4千8百万円減少し、46億6百万円となりました。
不動産賃貸事業・その他は、順調に推移しており、売上高で5億6千5百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、売上債権や棚卸資産の減少などにより、前期比94億2千7百万円増加し、94億4千6百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の収入は、防災車輌工場及びホース工場への設備投資があった一方で、譲渡性預金が満期を迎えたことから、14億7千1百万円(前連結会計年度は46億1千5百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の支出は、短期借入金の返済や株式給付信託による自己株式の取得などにより、前期比26億5千5百万円増加し、28億5千2百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期比80億6千5百万円増加し、151億6千9百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
防災(千円)
3,477,020
59.5
繊維(千円)
1,392,269
75.8
不動産賃貸(千円)
-
-
その他(千円)
-
-
合計(千円)
4,839,290
63.4
(注)1.生産金額は製造原価にて記載しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額には外注による生産実績を含んでおります。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高
前年同期比(%)
受注残高
前年同期比(%)
防災(千円)
14,783,113
92.5
11,100,556
99.8
繊維(千円)
2,237,031
137.2
1,576,040
127.8
不動産賃貸(千円)
-
-
-
-
その他(千円)
-
-
-
-
合計(千円)
17,020,145
96.6
12,676,597
102.6
(注)金額は販売価額にて記載しております。
c.製品仕入実績
当連結会計年度の製品仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
防災(千円)
11,362,082
74.5
繊維(千円)
2,555,148
109.4
不動産賃貸(千円)
-
-
その他(千円)
-
-
合計(千円)
13,917,231
79.1
(注)金額は仕入価額にて記載しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
防災(千円)
24,732,196
91.0
繊維(千円)
4,606,577
87.7
不動産賃貸(千円)
530,082
99.5
その他(千円)
35,802
103.5
合計(千円)
29,904,658
90.6
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
官公庁
9,538,343
28.9
8,545,302
28.6
合計
9,538,343
28.9
8,545,302
28.6
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度末における資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用の報告数値並びに開示に影響を与える会計上の見積りを行っております。当該見積りに際しましては、過去の実績や状況に応じて、合理的と考えられる要因等に基づき行っております。しかしながら、見積り特有の不確実性により、実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績の分析
<連結経常利益> (百万円)
2020年度
2021年度
2022年度
連結経常利益
4,865
5,693
5,296
当社は過去5次にわたる中期経営計画(第五次中期経営計画を含む)において、収益力の持続的拡大に取り組んでまいりました。その結果、大口案件の有無により単年度での変動はあるものの、連結経常利益水準は増加傾向にあり、「帝国繊維(テイセン)2022」においても、連結経常利益水準50億円以上という数値目標を達成しております。また、2023年には、10年に亘り取組み、防災業界におけるリーディングカンパニーへの進化を目指す「テイセン未来創造計画」を策定いたしました。同計画では、当初3年間を第1フェーズと位置付け、第1フェーズにおける中期経営計画(「テイセン2025/未来への基盤作り」)を策定し、取り組むべき課題を掲げるとともに、数値目標(連結営業利益50億円以上、連結経常利益60億円以上、配当性向40%程度)を設定しております。「テイセン2025」に掲げる課題に取り組むことにより、収益基盤の更なる強化を目指します。
<売上> (百万円)
セグメント
2020年度
2021年度
2022年度
防災
25,297
27,170
24,732
繊維
6,468
5,255
4,606
不動産賃貸他
566
567
565
計
32,332
32,993
29,904
<受注残> (百万円)
セグメント
2020年度
2021年度
2022年度
防災
10,768
11,123
11,100
繊維
1,555
1,233
1,576
計
12,324
12,356
12,676
<防災>
2021年度末の受注残高は2020年度を若干上回る水準にありましたが、2021年度は民間企業向け大型防災資機材の受注・売上があり、同要因の剥落などにより、当連結会計年度の売上は減少いたしました。もっとも、2020年度からスタートした「帝国繊維(テイセン)2022」の期間中においては、大量送排水システム(ハイドロサブシステム)分野では、原子力発電所、コンビナートなどの民間基幹産業のほか、国土交通省及び自治体などからの受注獲得に成功し、BCP対策及び水害対策で高い評価を獲得することができました。セキュリティビジネスにおいては、コロナ禍により訪日外国人旅行客が大きく減少している状況下にあっても、ロスプリベンション対策やテロ対策の必要性は高まっており、当社グループでは爆物検知器やボディスキャナーなどの商材開発を強化し、セキュリティビジネスの強固な営業基盤を構築いたしました。
<繊維>
官公庁向け繊維資材の売上が減少したことから、当連結会計年度における売上高は減少しました。リネン(麻)につきましては、麻素材の市場定着が進む中、新型コロナウイルス感染拡大の影響から停滞していた市場が環境意識の高まりもあり、漸く反転の兆しを見せています。耐熱、耐切創、高強力など優れた機能を特徴とする高機能繊維につきましては、防護服分野に加え、EV向けなど資材分野での新たな用途や市場の開拓、新規商材の開発を進めております。
b.当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の財政状態を概観いたしますと、総資産は、現金及び預金や有形固定資産が増加した一方で、売上債権や有価証券が減少したことから、前連結会計年度末対比21億4千7百万円減少し、721億3千2百万円となりました。
負債は、仕入債務や短期借入金が減少したことから、前連結会計年度末対比25億2千7百万円減少し、141億8百万円となりました。
純資産は、保有上場株式の含み益が減少した一方で、利益剰余金が増加したことから、前連結会計年度末対比3億7千9百万円増加し、580億2千4百万円となりました。この結果、自己資本比率は79.9%となりました。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性の分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第一部
企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
<キャッシュ・フロー> (百万円)
区分
2020年度
2021年度
2022年度
営業活動
6,099
19
9,446
投資活動
△4,208
△4,615
1,471
財務活動
△1,156
△197
△2,852
計
734
△4,793
8,065
当連結会計年度における営業活動による資金収入は、94億4千6百万円となりましたが、これは売上債権や棚卸資産の減少などによるものです。 投資活動による資金の収入は、14億7千1百万円となりましたが、防災車輌工場及びホース工場への設備投資があった一方で、譲渡性預金が満期を迎えたことによるものです。 財務活動による資金の支出は、28億5千2百万円となりましたが、これは短期借入金の返済や株式給付信託による自己株式の取得などによるものです。
当社グループの運転資金及び投資資金は、営業活動によって生み出される自己資金を原資としております。
様々なリスクへの対処及び将来の事業展開への備えとして資金の確保により財務基盤の安定に努め、同時に収益に応じた配当を継続的に実施しつつ、中長期的な視点で時期を見極めた上で必要とされる投資活動を実施してまいります。