【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間の世界経済は、昨年から続く金融当局のインフレ抑制策による景気の減速懸念がありましたが、一方でコロナ禍からの回復に伴い個人消費は底堅く推移しました。地域別に見ますと、米国では、金融引締め策にも関わらず労働市場が堅調に推移するなど、緩やかな景気の回復が続きました。欧州でも金利上昇に伴う景気の下押し圧力が強まりましたが、輸出に底堅さが見られるなど緩やかに持ち直しました。中国では、ゼロコロナ政策の解除を機に内需の持ち直しが見られました。また、その他の新興国については、インドや東南アジアを中心に景気回復基調が継続しました。わが国では、コロナ禍からの経済活動の正常化を受け、景気は緩やかに回復しました。
このような状況の中、当社関連市場においては、これまでビジネスの制約要因となっていた部品不足や物流逼迫による供給不足が解消に向かったことで、堅調に推移しました。製品別に見ますと、オフィス向け複合機は、供給不足が解消に向かうとともに需要も堅調に推移しました。インクジェットプリンターは在宅需要の一巡、レーザープリンターは企業の投資抑制により需要が伸び悩みました。カメラ市場は、ミラーレスカメラを中心に底堅く推移しました。医療機器は、一部の地域で昨年までのコロナ需要の反動があり、市場が縮小しているものの、近年停滞していた大型機器への投資に回復の兆しが見えてきました。半導体製造装置市場は、メモリ向けの需要は弱含みましたが、パワーデバイス、アナログデバイス、センサー向けなどを中心に投資が堅調に推移しました。FPD製造装置市場は、パネルメーカーの投資延期による影響で縮小しました。
当第1四半期連結累計期間の平均為替レートにつきましては、米ドルが前年同四半期連結累計期間比で約16円円安の132.47円、ユーロが前年同四半期連結累計期間比で約12円円安の142.10円となりました。
経営指標
(億円)
第122期
第1四半期
連結累計期間
第123期
第1四半期
連結累計期間
増減率
(%)
売上高
8,794
9,711
10.4%
売上総利益
3,944
4,540
15.1%
営業費用
3,183
3,695
16.1%
営業利益
761
845
10.9%
営業外収益及び費用
△84
31
–
税引前四半期純利益
677
875
29.3%
当社株主に帰属する四半期純利益
460
564
22.7%
1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益
(円)
基本的
43.97
55.56
26.4%
希薄化後
43.96
55.53
26.3%
当第1四半期連結累計期間は、上述したビジネス環境が改善に向かったことに加え、インフレによるコストアップを製品価格に反映したことや円安による好転影響もあり、売上高は前年同四半期連結累計期間比10.4%増の9,711億円となりました。売上総利益率は、昨年から発売した競争力の高い製品が寄与してプロダクトミックスが改善したことや円安による増益効果により、前年同四半期連結累計期間を1.9ポイント上回る46.8%となり、売上総利益は前年同四半期連結累計期間比15.1%増の4,540億円となりました。営業費用は、効率性を重視した経営体質を維持しながらも、売上増に向けた要員増強及び販売関連費用を増加させたことに加え、円安による外貨建ての営業費用の増加も影響し、前年同四半期連結累計期間比16.1%増の3,695億円となりました。その結果、営業利益は前年同四半期連結累計期間比10.9%増の845億円となりました。営業外収益及び費用は、有価証券評価益や外貨建て債務から生じた為替差損の好転などにより、前年同四半期連結累計期間比で115億円好転し、31億円の収益となりました。これらの結果、税引前四半期純利益は前年同四半期連結累計期間比29.3%増の875億円、当社株主に帰属する四半期純利益は前年同四半期連結累計期間比22.7%増の564億円となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益は、前年同四半期連結累計期間に比べ11円59銭増の55円56銭となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。セグメント情報に関する詳細は「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項 注19 セグメント情報」をご参照ください。
プリンティングビジネスユニット
(億円)
第122期
第1四半期
連結累計期間
第123期
第1四半期
連結累計期間
増減率
(%)
オフィス
1,939
2,328
20.1%
プロシューマ
2,390
2,370
△ 0.8%
プロダクション
732
869
18.7%
外部顧客向け売上高合計
5,061
5,567
10.0%
セグメント間取引
11
14
27.7%
売上高合計
5,072
5,582
10.0%
売上原価及び営業費用
4,546
5,075
11.6%
営業利益
526
506
△ 3.7%
税引前四半期純利益
554
531
△ 4.2%
プリンティングビジネスユニットでは、オフィス向け複合機は、供給不足からの回復が進み、またiR-ADV DX C5800シリーズが好評を博すなど販売が堅調に推移し、販売台数は前年同四半期連結累計期間を大きく上回りました。インクジェットプリンターは、在宅需要の一巡により販売台数は前年同四半期連結累計期間を下回りました。レーザープリンターは、企業の投資抑制により販売台数は前年同四半期連結累計期間を下回りました。プロダクション市場向け機器は、オンデマンドプリンターであるimagePRESS V900/V1000シリーズが好調に推移するなど、販売台数は前年同四半期連結累計期間を上回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前年同四半期連結累計期間比10.0%増の5,582億円となりました。税引前四半期純利益は、消耗品の販売が伸び悩んだ影響等により、前年同四半期連結累計期間比4.2%減の531億円となりました。
イメージングビジネスユニット
(億円)
第122期
第1四半期
連結累計期間
第123期
第1四半期
連結累計期間
増減率
(%)
カメラ
1,013
1,100
8.5%
ネットワークカメラ他
557
824
48.0%
外部顧客向け売上高合計
1,570
1,924
22.5%
セグメント間取引
2
1
△ 71.6%
売上高合計
1,572
1,924
22.4%
売上原価及び営業費用
1,438
1,552
7.9%
営業利益
134
373
178.8%
税引前四半期純利益
137
375
173.1%
イメージングビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラはミラーレスカメラへのシフトに伴い、一眼レフカメラの販売台数は減少しましたが、昨年発売したフルサイズミラーレスカメラのEOS R6 MarkⅡやAPS-Cサイズミラーレスカメラの新製品であるEOS R7とEOS R10が好評を博しました。レンズは、全体の販売台数は前年同四半期連結累計期間を下回りましたが、RFレンズが好調に推移しました。ネットワークカメラは、製品の供給量が回復したことに加え、用途の多様化を背景に販売活動を強化し、大幅な増収となりました。また、業務用ビデオカメラの販売も堅調に推移し、制作の効率化や省人化ニーズに応えるIPリモートカメラ事業も順調に販売を伸ばしました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前年同四半期連結累計期間比22.4%増の1,924億円となりました。税引前四半期純利益は、昨年から発売した競争力の高い製品が堅調に推移したことや、生産拠点の閉鎖に伴う一時的な費用を昨年に計上したこともあり、前年同四半期連結累計期間比173.1%増の375億円となりました。
メディカルビジネスユニット
(億円)
第122期
第1四半期
連結累計期間
第123期
第1四半期
連結累計期間
増減率
(%)
外部顧客向け売上高合計
1,181
1,309
10.8%
セグメント間取引
1
2
108.4%
売上高合計
1,182
1,311
10.9%
売上原価及び営業費用
1,119
1,242
11.0%
営業利益
63
69
8.8%
税引前四半期純利益
64
69
7.9%
メディカルビジネスユニットでは、主に欧州地域での販売が好調に推移しました。米国では、金利上昇や医療スタッフ不足などに起因する医療機関の設備投資の先送りなどがあったものの、その他海外地域及び国内向けと同様、前年同四半期連結累計期間の売上を上回りました。結果として当ユニットの売上高は前年同四半期連結累計期間比10.9%増の1,311億円となりました。税引前四半期純利益は、材料費やエネルギーコスト、人件費の高騰など費用増加の影響があったものの、大型機器やサービスの売上拡大に伴い収益性が改善したことにより、前年同四半期連結累計期間比7.9%増の69億円となりました。
インダストリアルビジネスユニット
(億円)
第122期
第1四半期
連結累計期間
第123期
第1四半期
連結累計期間
増減率
(%)
光学機器
488
400
△ 17.9%
産業機器
178
184
2.7%
外部顧客向け売上高合計
666
584
△ 12.4%
セグメント間取引
18
37
99.9%
売上高合計
685
621
△ 9.4%
売上原価及び営業費用
563
546
△ 2.9%
営業利益
122
74
△ 39.2%
税引前四半期純利益
123
75
△ 38.8%
インダストリアルビジネスユニットでは、半導体露光装置は、引き続き幅広い分野において好調に推移しており、販売台数を大きく伸ばした前年同四半期連結累計期間並みの水準となりました。FPD露光装置は、パネル市況悪化に伴うパネルメーカーの投資延期により、販売台数は前年同四半期連結累計期間を下回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前年同四半期連結累計期間比9.4%減の621億円、税引前四半期純利益は、前年同四半期連結累計期間比38.8%減の75億円となりました。
②財政状態の状況
(億円)
第122期
前連結会計年度
2022年12月31日
第123期
第1四半期
連結会計期間
2023年3月31日
増減
資産合計
50,955
52,587
1,632
負債合計
17,465
18,780
1,315
株主資本合計
31,131
31,426
295
非支配持分
2,359
2,381
22
純資産合計
33,490
33,807
317
負債及び純資産合計
50,955
52,587
1,632
株主資本比率(%)
61.1%
59.8%
△ 1.3%
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、現金及び現金同等物や棚卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末から1,632億円増加して5兆2,587億円となりました。棚卸資産は、第2四半期以降の販売に向けた在庫の増加や円安の影響等により増加しました。負債は、短期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末から1,315億円増加して1兆8,780億円となりました。純資産は、当社株主への配当による減少の一方、当社株主に帰属する四半期純利益の積み増しに加え、円安によるその他の包括利益累計額の増加などにより、前連結会計年度末から317億円増加して3兆3,807億円となりました。
これらの結果、株主資本比率は、前連結会計年度末から1.3ポイント低下し59.8%となりましたが、引き続き財務健全性は高い水準となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
(億円)
第122期
第1四半期
連結累計期間
第123期
第1四半期
連結累計期間
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー
154
736
582
投資活動によるキャッシュ・フロー
△ 351
△ 381
△ 30
フリーキャッシュ・フロー
△ 196
355
551
財務活動によるキャッシュ・フロー
382
757
375
為替変動の現金及び現金同等物への影響額
124
44
△ 80
現金及び現金同等物の増減
310
1,156
846
現金及び現金同等物の期首残高
4,014
3,621
△ 393
現金及び現金同等物の期末残高
4,324
4,777
453
当第1四半期連結累計期間の営業キャッシュ・フローは、大幅な増益と昨年増加した売掛金の回収が進んだことなどにより、前年同四半期連結累計期間比582億円増加し736億円の収入となりました。投資キャッシュ・フローは、海外支店の売却により一時的に収入が増加した昨年に対して、固定資産売却が減少したことなどにより、前年同四半期連結累計期間から30億円増加し381億円の支出となりました。当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当第1四半期連結累計期間のフリーキャッシュ・フローは、前年同四半期連結累計期間比で551億円増加し、355億円の収入となりました。
財務キャッシュ・フローは、期末配当を増配したことで配当金の支払いが増加しましたが、必要な運転資金の増加に伴う短期借入金の増加などにより前年同四半期連結累計期間から375億円増加し、757億円の収入となりました。
これらの結果、当第1四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて前連結会計年度末から1,156億円増加し、4,777億円となりました。
(3)米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)
当社は、米国会計基準に基づき財務情報を報告しております。
これに加えて、当社は米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)であるフリーキャッシュ・フローを開示情報に含めております。
この指標は、当社の営業活動と投資活動を踏まえており、投資家の方々が、当社の現在の流動性や財務活動における資金の使用可能性を理解するうえで重要な指標と考えております。
なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローとの照合調整表は以下のとおりです。
(億円)
第123期第1四半期
連結累計期間
営業活動によるキャッシュ・フロー
736
投資活動によるキャッシュ・フロー
△ 381
フリーキャッシュ・フロー
355
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第1四半期連結累計期間において、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(6)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間における研究開発費は、765億円です。
(7)設備の状況
①主要な設備の状況
当第1四半期連結累計期間において、主要な設備の異動はありません。
②設備の新設、除却等の計画
当第1四半期連結累計期間において、前連結会計年度末に計画中であった重要な設備の新設について完成したものは以下のとおりです。なお、重要な設備の除却等の計画はありません。
会社名
所在地
セグメントの名称
設備の内容
完成年月
キヤノン株式会社
神奈川県平塚市
その他及び全社
工場棟
2023年2月