【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間の世界経済は、経済活動の制限の緩和が個人消費を下支えしましたが、世界的なインフレや金利の上昇が進む中、景気持ち直しのペースが鈍化しました。地域別に見ますと、米国では、インフレや金融引き締めの影響を受け景気減速の傾向が見られるものの、堅調な個人消費を背景に回復基調を維持しました。欧州では、長期化するウクライナ情勢に伴うエネルギー価格の高騰や継続的な利上げが影響し、景気は減速しました。中国では、ゼロコロナ政策に伴う再度の活動制限により個人消費の回復が鈍化しました。また、その他の新興国については、インドや東南アジアを中心に、景気は緩やかに回復しました。わが国では円安進行による物価上昇圧力が強まる中でコロナウイルス感染が再拡大しましたが、活動制限が緩和されたことを背景に、個人消費を中心とした緩やかな回復が続きました。
このような状況の中、当社関連市場においては、オフィス向け複合機の需要は堅調に推移しましたが、レーザープリンターとインクジェットプリンターは在宅需要に落ち着きが見られ需要が減少しました。カメラ市場は、ミラーレスカメラ、レンズを中心に堅調な需要を維持しました。医療機器は、国内は昨年の補正予算を背景とした需要の反動があるものの、海外では画像診断機器を中心に需要が回復しました。半導体露光装置はメモリーなど一部では弱含みましたが、全体としては旺盛な需要が継続しました。FPD露光装置はコロナ禍による在宅関連需要の減少や景気減速の影響を受け、縮小傾向となりました。
平均為替レートにつきましては、米ドルは当第3四半期連結会計期間は、前年同四半期連結会計期間比で約28円円安の138.40円、当第3四半期連結累計期間では、前年同四半期連結累計期間比で約20円円安の128.26円、ユーロは当第3四半期連結会計期間は、前年同四半期連結会計期間比で約10円円安の139.40円、当第3四半期連結累計期間では前年同四半期連結累計期間比で約6円円安の136.07円となりました。
[第3四半期連結会計期間]
経営指標
(億円)
第121期
第3四半期
連結会計期間
第122期
第3四半期
連結会計期間
増減率
(%)
売上高
8,333
9,961
19.5%
売上総利益
3,880
4,510
16.3%
営業費用
3,293
3,696
12.3%
営業利益
587
814
38.7%
営業外収益及び費用
206
△ 23
–
税引前四半期純利益
793
791
△0.3%
当社株主に帰属する四半期純利益
493
541
9.7%
1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益
(円)
基本的
47.16
52.90
12.2%
希薄化後
47.15
52.88
12.2%
当第3四半期連結会計期間は、インフレや金利の上昇の影響が懸念されたものの、引き続きミラーレスカメラやネットワークカメラが好調に推移し、また、オフィス向け複合機が堅調に回復しました。さらに、製品価格改定や円安による好転影響もあり、売上高は、前年同四半期連結会計期間比19.5%増の9,961億円となりました。売上総利益率は、部品価格や物流コストの上昇に加え、プリンティング機器の製品供給の安定化に伴い本体比率が上がり、前年同四半期連結会計期間を1.3ポイント下回る45.3%となりましたが、円安の追い風もあり、売上総利益は前年同四半期連結会計期間比16.3%増の4,510億円となりました。営業費用は、円安による外貨建の営業費用の増加などもあり、前年同四半期連結会計期間比12.3%増の3,696億円となりましたが、販売活動が活発化する中でも業務の効率化を推し進め、売上高経費率は前年同四半期連結会計期間を2.5ポイント下回る37.1%となりました。その結果、事業活動の成果を示す営業利益は前年同四半期連結会計期間比38.7%増の814億円となりました。営業外収益及び費用は、有価証券評価損益の悪化や円安進行によるグループファイナンスの外貨建債務から生じた為替差損などにより、前年同四半期連結会計期間比で229億円悪化し、23億円の損失となりました。これらの結果、税引前四半期純利益は前年同四半期連結会計期間比0.3%減の791億円、当社株主に帰属する四半期純利益は前年同四半期連結会計期間比9.7%増の541億円となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益は、前年同四半期連結会計期間に比べ5円74銭増加し52円90銭となりました。
[第3四半期連結累計期間]
経営指標
(億円)
第121期
第3四半期
連結累計期間
第122期
第3四半期
連結累計期間
増減率
(%)
売上高
25,579
28,742
12.4%
売上総利益
11,899
13,095
10.0%
営業費用
9,833
10,534
7.1%
営業利益
2,066
2,561
24.0%
営業外収益及び費用
245
△ 241
–
税引前四半期純利益
2,311
2,320
0.4%
当社株主に帰属する四半期純利益
1,549
1,591
2.7%
1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益
(円)
基本的
148.16
153.70
3.7%
希薄化後
148.12
153.65
3.7%
当第3四半期連結累計期間は、半導体部品不足や中国ロックダウンによるサプライチェーンの混乱の影響を受けましたが、代替部品への切り替えや新規調達先の開拓などにより、生産の最大化に努め製品供給を優先した結果、オフィス向け複合機が堅調に回復し、また、ミラーレスカメラやネットワークカメラも好調に推移しました。さらに、製品価格改定や円安による好転影響もあり、売上高は、前年同四半期連結累計期間比12.4%増の2兆8,742億円となりました。売上総利益率は、部品価格や物流コストの上昇に加え、プリンティング機器の製品供給の安定化に伴い本体比率が上がり、前年同四半期連結累計期間を0.9ポイント下回る45.6%となりましたが、円安の追い風もあり、売上総利益は前年同四半期連結累計期間比10.0%増の1兆3,095億円となりました。営業費用は、海外販売会社において機能見直しによる支店の売却益を計上しましたが、円安による外貨建の営業費用の増加や生産拠点の閉鎖に伴う一時的な費用により、前年同四半期連結累計期間比7.1%増の1兆534億円となりました。一方で、販売活動が活発化する中でも業務の効率化を推し進め、売上高経費率は前年同四半期連結累計期間を1.7ポイント下回る36.7%となりました。その結果、事業活動の成果を示す営業利益は前年同四半期連結累計期間比24.0%増の2,561億円となりました。営業外収益及び費用は有価証券評価損益の悪化や円安進行によるグループファイナンスの外貨建債務から生じた為替差損などにより、前年同四半期連結累計期間比で486億円悪化し、241億円の損失となりました。これらの結果、税引前四半期純利益は前年同四半期連結累計期間比0.4%増の2,320億円、当社株主に帰属する四半期純利益は前年同四半期連結累計期間比2.7%増の1,591億円となりました。
基本的1株当たり当社株主に帰属する四半期純利益は、前年同四半期連結累計期間に比べ5円54銭増加し153円70銭となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
プリンティングビジネスユニット
(億円)
第121期
第3四半期
連結累計期間
第122期
第3四半期
連結累計期間
増減率
(%)
オフィス
5,527
6,393
15.7%
プロシューマー
6,583
7,261
10.3%
プロダクション
2,038
2,541
24.7%
外部顧客向け売上高合計
14,148
16,195
14.5%
セグメント間取引
34
43
27.4%
売上高合計
14,182
16,238
14.5%
売上原価及び営業費用
12,409
14,644
18.0%
営業利益
1,773
1,594
△10.1%
税引前四半期純利益
1,827
1,691
△7.4%
プリンティングビジネスユニットでは、オフィス向け複合機の需要は回復しましたが、半導体部品不足の影響を受け、販売台数は前年同四半期連結累計期間をわずかに下回りました。サービスと消耗品については、オフィス出社の回復に伴い前年同四半期連結累計期間から緩やかに回復しました。レーザープリンターとインクジェットプリンターは、前年同四半期連結累計期間の生産活動の停滞から回復し、販売台数は前年同四半期連結累計期間を大きく上回りましたが、消耗品は在宅需要が落ち着き前年同四半期連結累計期間を下回りました。プロダクション市場向け機器は、高速カットシートインクジェットプリンターのvarioPRINT iXシリーズが好調に推移し、サービス収入も増加しました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前年同四半期連結累計期間比14.5%増の1兆6,238億円となりました。税引前四半期純利益は、部品価格や物流コストの上昇の影響を受けたことに加え、製品供給の安定化に伴い本体比率が上がり、前年同四半期連結累計期間比7.4%減の1,691億円となりました。
イメージングビジネスユニット
(億円)
第121期
第3四半期
連結累計期間
第122期
第3四半期
連結累計期間
増減率
(%)
カメラ
3,081
3,603
17.0%
ネットワークカメラ他
1,628
2,004
23.1%
外部顧客向け売上高合計
4,709
5,607
19.1%
セグメント間取引
13
3
△75.2%
売上高合計
4,722
5,610
18.8%
売上原価及び営業費用
4,154
4,787
15.2%
営業利益
568
823
45.0%
税引前四半期純利益
566
834
47.3%
イメージングビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラは、EOS R5とEOS R6をはじめとしたフルサイズミラーレスカメラの販売が引き続き好調に推移したことに加え、APS-Cサイズミラーレスカメラ新製品のEOS R7とEOS R10も好評を博し、ミラーレスカメラの販売台数は前年同四半期連結累計期間を上回りました。製品ラインアップを強化したRFレンズも販売が好調に推移し、販売台数は前年同四半期連結累計期間を上回りました。ネットワークカメラは、製品の供給量が回復したことに加え、用途の多様化を背景に販売活動を強化し、大幅な増収となりました。また、業務用映像制作機器は、新製品のEOS R5 CをはじめとするシネマEOS、業務用ビデオカメラ、放送局用レンズの販売が好調に推移しました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前年同四半期連結累計期間比18.8%増の5,610億円となりました。税引前四半期純利益は、生産拠点の閉鎖に伴う一時的な費用計上の影響がありましたが、プロダクトミックスの好転により収益性が改善し、前年同四半期連結累計期間比47.3%増の834億円となりました。
メディカルビジネスユニット
(億円)
第121期
第3四半期
連結累計期間
第122期
第3四半期
連結累計期間
増減率
(%)
外部顧客向け売上高合計
3,517
3,622
3.0%
セグメント間取引
2
3
25.2%
売上高合計
3,519
3,625
3.0%
売上原価及び営業費用
3,307
3,414
3.2%
営業利益
212
211
△0.6%
税引前四半期純利益
257
216
△15.9%
メディカルビジネスユニットでは、国内は昨年の補正予算を背景とした反動が大きいものの、海外ではコロナ禍で控えられてきた大型装置への投資が回復してきており、画像診断機器を中心に堅調に推移しております。これらの結果、当ユニットの売上高は前年同四半期連結累計期間比3.0%増の3,625億円となりました。税引前四半期純利益は、部品価格や物流コストの上昇の影響を受け、前年同四半期連結累計期間比15.9%減の216億円となりました。
インダストリアルその他ビジネスユニット
(億円)
第121期
第3四半期
連結累計期間
第122期
第3四半期
連結累計期間
増減率
(%)
露光装置
1,478
1,633
10.4%
産業機器
843
630
△25.2%
その他
905
1,097
21.2%
外部顧客向け売上高合計
3,227
3,360
4.1%
セグメント間取引
703
881
25.2%
売上高合計
3,930
4,241
7.9%
売上原価及び営業費用
3,669
3,807
3.8%
営業利益
261
433
65.9%
税引前四半期純利益
263
449
70.9%
インダストリアルその他ビジネスユニットでは、半導体露光装置は、パワーデバイスやロジック向け等の幅広い分野において引き続き好調に推移する中、生産能力を最大限に活用し、販売台数は前年同四半期連結累計期間を上回りました。FPD露光装置は、販売台数は設置遅れを挽回した前年同四半期連結累計期間を下回りました。有機ELディスプレイ製造装置は、パネルメーカーが用途の多様化に向けて投資を検討する端境期となっており、減収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前年同四半期連結累計期間比7.9%増の4,241億円となりました。税引前四半期純利益は、FPD露光装置や有機ELディスプレイ製造装置の台数減少による影響を受けたものの、半導体露光装置の増産によるコストダウンやプロダクトミックスの好転により、前年同四半期連結累計期間比70.9%増の449億円となりました。
②財政状態の状況
(億円)
第121期
前連結会計年度
2021年12月31日
第122期
第3四半期
連結会計期間
2022年9月30日
増減
資産合計
47,509
53,011
5,502
負債合計
16,525
19,469
2,944
株主資本合計
28,738
31,226
2,489
非支配持分
2,247
2,316
69
純資産合計
30,984
33,542
2,558
負債及び純資産合計
47,509
53,011
5,502
株主資本比率(%)
60.5%
58.9%
△1.6%
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、現金及び現金同等物や棚卸資産が増加したことに加え、円安の影響により前連結会計年度末から5,502億円増加して5兆3,011億円となりました。棚卸資産は、第4四半期連結会計期間の商戦期に向けて主要製品の在庫水準を高めにしたことにより増加しました。負債は、短期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末から2,944億円増加して1兆9,469億円となりました。純資産は、当社株主への配当や自己株式の取得による減少の一方、当社株主に帰属する四半期純利益の増加による利益剰余金の増加及び円安によるその他の包括利益(損失)累計額が増加したことなどにより、前連結会計年度末から2,558億円増加して3兆3,542億円となりました。
これらの結果、株主資本比率は、前連結会計年度末から1.6ポイント低下しましたが58.9%となり、引き続き高い水準となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
(億円)
第121期
第3四半期
連結累計期間
第122期
第3四半期
連結累計期間
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー
3,500
1,885
△1,615
投資活動によるキャッシュ・フロー
△1,484
△1,324
160
フリーキャッシュ・フロー
2,016
561
△1,455
財務活動によるキャッシュ・フロー
△1,400
△296
1,104
為替変動の現金及び現金同等物への影響額
129
374
244
現金及び現金同等物の増減
746
639
△107
現金及び現金同等物の期首残高
4,077
4,014
△63
現金及び現金同等物の四半期末残高
4,822
4,653
△169
当第3四半期連結累計期間の営業キャッシュ・フローは、(1)②財政状態の状況において前述のとおり、在庫水準を高めにしたことや、課税所得増加による法人税の支払いが増加したことなどにより、前年同四半期連結累計期間比1,615億円減少し、1,885億円の収入となりました。投資キャッシュ・フローは、生産能力、効率性の向上を目的とした設備投資を継続し、また、有価証券購入額が増加しました。一方で、当期は大型のM&Aがなかったことや、海外販売会社において機能見直しによる支店の整理があり固定資産の売却が増加したことなどにより、前年同四半期連結累計期間から160億円減少し、1,324億円の支出となりました。当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当第3四半期連結累計期間のフリーキャッシュ・フローは、前年同四半期連結累計期間比で1,455億円減少し、561億円の収入となりました。
財務キャッシュ・フローは、短期借入金の増加などがありましたが、増配したことで配当金の支払いが前年同四半期連結累計期間から304億円増加したことや自己株式の取得などにより、296億円の支出となりました。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から639億円増加し、4,653億円となりました。
(3)米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)
当社は、米国会計基準に基づき財務情報を報告しております。
これに加えて、当社は米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)であるフリーキャッシュ・フローを開示情報に含めております。
この指標は、当社の営業活動と投資活動を踏まえており、投資家の方々が、当社の現在の流動性や財務活動における資金の使用可能性を理解する上で重要な指標と考えております。
なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローとの照合調整表は以下のとおりです。
(億円)
第122期第3四半期
連結累計期間
営業活動によるキャッシュ・フロー
1,885
投資活動によるキャッシュ・フロー
△1,324
フリーキャッシュ・フロー
561
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第3四半期連結累計期間において、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(6)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間における研究開発費は、2,211億円です。
(7)設備の状況
①主要な設備の状況
当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の異動はありません。
②設備の新設、除却等の計画
当第3四半期連結累計期間において、前連結会計年度末に計画中であった重要な設備の新設について、重要な計画変更並びに重要な設備計画の完了はありません。なお、重要な設備の除却等の計画はありません。
また、当第3四半期連結累計期間において、新たに確定した重要な設備の新設、除却等は以下のとおりです。
会社名
所在地
セグメントの名称
設備の内容
キヤノン株式会社
栃木県宇都宮市
インダストリアル
その他ビジネスユニット
工場棟新設