【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進み、緩やかな持ち直しが続いている一方で、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、わが国経済を取り巻く環境は厳しさが増しています。
そのような状況下においても公共投資は底堅く推移しており、当社グループの主力である道路橋・鉄道橋などの橋梁事業におきましても、当連結会計年度も新設関連および大規模更新・保全関連それぞれで3,000億円近い工事が発注され、前連結会計年度並みの発注量となりました。
このような環境下、受注高につきましては、技術的難易度の高い大型の新設関連、大規模更新・保全関連、鉄道関連、沿岸構造物などの受注により666億50百万円(前年同期比4.2%増)となりました。
その具体的な内容は次のとおりであります。
新設関連:令和2年7月豪雨球磨川水害により流失した橋梁の復旧工事である国道219号災害復旧 鎌瀬橋上部工工事(国土交通省)をはじめとした受注により、242億35百万円を受注しました。
大規模更新・保全関連:令和2年度 佐世保道路 佐世保高架橋(拡幅)工事(西日本高速道路株式会社)をはじめとした受注により、144億89百万円を受注しました。
鉄道関連:北海道新幹線 尻別川橋りょう(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)をはじめとした受注により、164億75百万円を受注しました。
沿岸構造物:令和3年度 横浜港新本牧地区護岸(防波)本体工事(国土交通省)や民間からの高難度案件の受注により、87億52百万円を受注しました。
売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗したものの、年度内の売上を想定していた新規案件の受注時期が遅れ、工場の操業が想定より低くなったことと、大型案件の年度末の出来高が翌年度に繰り越したことなどが影響して、期首計画の650億円を大幅に下回る602億79百万円(同3.9%増)となりました。
その具体的な内容は次のとおりであります。
新設関連:首都圏中央連絡自動車道 五霞高架橋(鋼上部工)工事(東日本高速道路株式会社)や海老江工区鋼桁及び鋼製橋脚工事(阪神高速道路株式会社)などの進捗により、203億22百万円を売り上げました。
大規模更新・保全関連:中国自動車道(特定更新)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事(西日本高速道路株式会社)や高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事(首都高速道路株式会社)などの進捗により、218億37百万円を売り上げました。
鉄道関連:横浜環状南線架設(株式会社大林組他JV)や京阪淀川東BO架設(鹿島建設株式会社)などの進捗により、128億76百万円を売り上げました。
大空間・特殊建築物:北海道ポールパーク鉄骨(株式会社大林組他JV)などの進捗により、17億44百万円を売り上げました。
沿岸構造物:令和3年度 横浜港新本牧地区護岸(防波)本体工事(国土交通省)や国際拠点港湾広島港 宇品地区 岸壁改良工事(広島県)などの進捗により、24億16百万円を売り上げました。
損益につきましては、エネルギー価格の高騰などによる悪化影響はあるものの、工場構内ヤードの有効活用促進などの生産効率化、工事採算性向上の取り組み、働き方改革による業務効率化などにより計画を維持する見込みでしたが、繰り越しなどによる売上減の影響を受け、営業利益は51億27百万円(同11.8%減)、経常利益は53億73百万円(同10.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は30億77百万円(同9.7%減)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(宮地エンジニアリング)
受注高につきましては、前年度並みの387億21百万円(同0.7%減)となりました。
売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗したものの出来高繰り越しなどの影響により、計画を下回る344億55百万円(同3.5%増)となりました。
損益につきましても、生産の効率化、工事採算性の向上などに取り組んだものの同じく売上減の影響を受け、営業利益は業績予想を下回る30億97百万円(同5.1%減)となりました。
(エム・エム ブリッジ)
受注高につきましては、大型工事の受注があったことにより、279億25百万円(同11.8%増)となりました。
売上高につきましては、手持ち工事が概ね順調に進捗したものの出来高繰り越しなどの影響により、計画を下回る259億27百万円(同4.5%増)となりました。
損益につきましても、生産の効率化、工事採算性の向上などに取り組んだものの同じく売上減の影響を受け、営業利益は業績予想を下回る20億18百万円(同20.6%減)となりました。
なお新型コロナウイルス感染症については、感染リスクを極力抑えるための方策を実行し、当連結会計年度の当社グループの生産高(工場生産、現場施工)への影響はありません。また、当連結会計年度末以降、有価証券報告書提出日までの間においても、特段の影響はありません。
② 財政状態の状況
資産合計は、前連結会計年度末と比較して12億36百万円増加し、630億51百万円となりました。主な要因は、現金預金が23億63百万円減少したものの、受取手形・完成工事未収入金等が27億47百万円、建設仮勘定が7億89百万円それぞれ増加したためであります。
負債合計は、前連結会計年度末と比較して12億40百万円減少し、214億83百万円となりました。主な要因は、未成工事受入金が12億91百万円増加した一方で、支払手形・工事未払金等が23億2百万円減少したためであります。
純資産合計は、前連結会計年度末と比較して24億77百万円増加し、415億68百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が17億16百万円、その他有価証券評価差額金が3億3百万円、非支配株主持分が3億48百万円、それぞれ増加したためであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して23億63百万円減少し、136億15百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況と増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、4億95百万円の資金増加(前連結会計年度は119億15百万円の資金増加)となりました。主な要因は、売上債権の増加27億47百万円、仕入債務の減少21億95百万円、法人税等の支払額18億83百万円があった一方で、税金等調整前当期純利益53億20百万円の計上、減価償却費10億25百万円の計上、未成工事受入金の増加12億91百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、7億11百万円の資金減少(前連結会計年度は11億85百万円の資金減少)となりました。主な要因は、投資有価証券の売却及び償還による収入6億3百万円があったものの、有形固定資産の取得による支出11億円、無形固定資産の取得による支出1億36百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、21億47百万円の資金減少(前連結会計年度は32億67百万円の資金減少)となりました。主な要因は、配当金の支払額13億55百万円、非支配株主への配当金の支払額4億14百万円、長期借入金の返済による支出3億円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
宮地エンジニアリング(百万円)
34,471
3.9
エム・エム ブリッジ(百万円)
26,146
7.5
その他(百万円)
3
19.2
調整額(百万円)
△107
-
合計(百万円)
60,514
5.4
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高
受注残高
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
当連結会計年度末
(2023年3月31日)
前年同期比(%)
宮地エンジニアリング(百万円)
38,721
△0.7
57,262
8.0
エム・エム ブリッジ(百万円)
27,925
11.8
43,369
4.8
その他(百万円)
3
19.2
-
-
調整額(百万円)
-
-
25
-
合計(百万円)
66,650
4.2
100,658
6.8
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
宮地エンジニアリング(百万円)
34,455
3.5
エム・エム ブリッジ(百万円)
25,927
4.5
その他(百万円)
3
19.2
調整額(百万円)
△107
-
合計(百万円)
60,279
3.9
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
西日本高速道路株式会社
21,359
36.8
19,046
31.6
国土交通省
7,029
12.1
9,462
15.7
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2022年度)は、2022年度を初年度とする5か年にわたる中期経営計画(2022年5月13日公表)の初年度にあたっており、本計画の数値目標(最終年度)、当連結会計年度の計画および実績は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
項目
2026年度目標
2022年度計画
2022年度実績
売上高
75,000
65,000
60,279
営業利益
7,500
5,500
5,127
経常利益
7,500
5,500
5,373
親会社株主に帰属する当期純利益
4,000
3,000
3,077
自己資本比率(注)1
55%以上
56.3%
ROE(注)2
10%以上
8.9%
ROA(注)3
10%以上
8.6%
(注)1.自己資本/総資産
※自己資本は純資産から非支配株主持分を除いております。
2.親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
3.経常利益/総資産
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、受注高につきましては、技術的難易度の高い大型の新設橋梁、高速道路の大規模更新、鉄道関連、沿岸構造物の受注があったことから前年同期比増加となりました。売上高は手持ち工事が概ね順調に進捗したものの、新規案件の受注時期の遅れにより、工場の操業度が低下したことと、大型案件の年度末の出来高が翌年度に繰り越したことなどにより、前年同期比増収となりましたが事業計画には及びませんでした。損益については千葉工場構内ヤードの有効活用促進などの生産効率化、工事採算性向上の取り組み、働き方改革による業務効率化などを引き続き推進しましたが、売上減の影響を受け、営業利益、経常利益ともに前年同期比減収となり事業計画未達となりました。
しかしながら、次年度は当年度からの繰り越し工事が売上、利益向上に寄与することもあり、当初の目標値を超える増収増益を見込んでおります。次年度以降数値目標の達成に向けて全社を挙げて邁進してまいります。
なお、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因として、国・地方公共団体の発注量、主要原材料である鋼材の価格動向、地震や台風などの自然災害および重大な事故の発生による生産設備や架設現場の損壊・損傷、建設業法や独占禁止法等の法的規制、施工物件に関わる瑕疵担保責任等が挙げられます。当社グループといたしましては、これらの要因に対し適切に対応(受注量の確保、生産性の向上、経費節減、安全対策の徹底、法令遵守、製品・施工品質の向上)し、安定的な業績の確保を図ってまいります。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症については、有価証券報告書提出日現在において当社グループの業績に特段の影響は予想しておりませんが、今後の予期せぬ事象によって見積りによる不確実性が顕在化した場合には、受注活動の停滞、購入品の調達遅れ、現場施工や工場生産の停滞など、実際の結果が見積りよりも悪化する可能性があります。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
ⅱ)契約債務
2023年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
年度別要支払額(百万円)
契約債務
合計
1年以内
1年超3年以内
3年超5年以内
5年超
リース債務(短期)
74
74
-
-
-
リース債務(長期)
81
-
71
10
0
当社グループの第三者に対する保証は、従業員の金融機関からの借入に対する債務保証であります。保証した借入の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2023年3月31日現在の債務保証額は、3百万円であります。
ⅲ)財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、短期運転資金については短期借入金で、長期運転資金および設備資金については長期借入金で調達しております。
また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計5,000百万円のシンジケーション方式のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高はありません)。
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