【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う活動制限が徐々に緩和され、経済活動の正常化に向けた動きが加速し、景気に持ち直しの動きがみられました。一方、ロシア・ウクライナ情勢の長期化等に伴う資源価格や原材料価格の高騰等によりインフレが進み、さらには大幅な為替変動もあり依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループでは、度重なる原材料価格の値上がりやエネルギーコストの上昇等による厳しい事業環境の中、生産効率の向上に注力するとともに、高付加価値製品の開発や新規事業の開拓等に積極的に取り組んでまいりました。また、中期経営計画に基づく樹脂加工には必ずしも拘らない新規領域へのチャレンジとして「環境関連ビジネス」の取り組みを強化し、地中熱ビジネス推進を目的として、2022年4月に(株)エイゼンコーポレーションの全株式を取得いたしました。
この結果、当社グループ全体の売上高は225億84百万円(前年同期比7.5%増)、営業利益は3億46百万円(前年同期比46.7%減)、経常利益は7億18百万円(前年同期比20.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、クレアネイト(株)(旧(株)ウェーブロックインテリア)株式売却益等の計上により23億21百万円(前年同期比254.4%増)となりました。
当連結会計年度における各セグメントの経営成績は以下のとおりであります。
なお、各セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高を含めて記載しております。
(マテリアルソリューション事業)
マテリアルソリューション事業については、ビルディングソリューションおよびインダストリアルソリューション分野において、メッシュシートのOEM生産への切り替えが一部遅れたことにより販売が減少したものの、建設向け防音シートや、大型物件受注による防煙垂壁用高透明不燃シートが好調に推移しました。パッケージングソリューション分野においては、昨年開発した植物由来のバイオマスプラスチック配合のミルクポーション容器が、業務用だけではなく家庭用にも採用される等、一部製品の販売数量が増加いたしました。アグリソリューション分野においては、エネルギーコストの上昇等により国内農業生産者の資材等への投資意欲が減退し、防虫ネットの販売が減少したものの、林業向けで国や地方自治体からの補助事業案件の受注が増加したこと等により好調に推移しました。一方、リビングソリューション分野においては、販売先となるホームセンター業界において、一昨年の巣ごもり需要からの反動減による影響が続き、販売が落ち込みました。この結果、事業全体の売上高は180億69百万円(前年同期比10.4%増)となりました。また、原材料価格上昇分の販売価格への転嫁を進め、生産効率の向上による原価低減や継続的なコスト削減に努めたものの、度重なる原材料価格の上昇やエネルギーコストの上昇等によりセグメント利益は6億18百万円(前年同期比34.9%減)となりました。
(アドバンストテクノロジー事業)
アドバンストテクノロジー事業については、デコレーション&ディスプレー分野において、北米でのEV車向けをはじめとする車両向けの販売が堅調に推移し売上を牽引いたしました。また、インドや東南アジアの二輪市場でエンブレムへの採用件数が増加したことや、将来的に先進運転支援システムとの連携ツールとして展開が期待されているVRヘッドセット用部材へ採用され、センターインフォメーションディスプレーおよびヘッドアップディスプレー用途で新規車種が量産開始されたこと等により需要が増加し、同分野における販売は好調に推移しました。一方、ディスプレー用拡散板の販売が大幅に減少したことにより事業全体の売上高は45億45百万円(前年同期比2.7%減)となりました。また、デコレーション&ディスプレー分野における設備投資に伴う減価償却負担の増加等があったものの、品質の安定化と生産効率の向上やコスト削減に努め、セグメント利益は3億63百万円(前年同期比5.1%増)となりました。
②財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ20億12百万円増加し、262億68百万円となりました。
流動資産は15億24百万円増加し、165億46百万円となりました。これは主に売掛金が1億87百万円減少したものの、現金及び預金が4億91百万円、商品が2億13百万円、製品が4億74百万円、原材料が4億4百万円、仕掛品が2億21百万円増加したことによるものであります。
固定資産は4億88百万円増加し、97億21百万円となりました。これは主にクレアネイト(株)(旧(株)ウェーブロックインテリア)株式を売却したこと等により投資有価証券が3億63百万円減少したものの、有形固定資産が5億82百万円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ59百万円減少し、104億34百万円となりました。
流動負債は4億34百万円増加し、75億90百万円となりました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が5億71百万円減少したものの、短期借入金が6億円、未払法人税等が3億39百万円増加したことによるものであります。
固定負債は4億94百万円減少し、28億44百万円となりました。これは主に長期借入金が6億97百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ20億71百万円増加し、158億33百万円となりました。これは主に利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により20億67百万円増加したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末と比較して4億91百万円増加し24億53百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は1億29百万円(前年同期は78百万円の収入)となりました。これは、税金等調整前当期純利益30億74百万円、減価償却費6億53百万円、売上債権の減少額3億8百万円の資金の増加要因があったものの、投資有価証券売却益25億28百万円、棚卸資産の増加額11億85百万円、仕入債務の減少3億45百万円、法人税等の支払額5億38百万円等の資金の減少要因があったことによるものであります。
投資活動の結果得られた資金は13億97百万円(前年同期は8億50百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出11億86百万円等の資金の減少要因があったものの、投資有価証券の売却による収入27億63百万円、保険の解約による収入3億54百万円等の資金増加要因があったことによるものであります。
財務活動の結果使用した資金は10億12百万円(前年同期は21億84百万円の支出)となりました。これは、短期借入れによる収入13億35百万円等の資金の増加要因があったものの、短期借入金の返済による支出12億77百万円、長期借入金の返済による支出15億21百万円等の資金の減少要因があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
マテリアルソリューション
10,946,685
119.6
アドバンストテクノロジー
2,530,559
126.0
合計
13,477,244
120.7
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.金額は、実際原価によっております。
b.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
マテリアルソリューション
3,880,553
93.7
アドバンストテクノロジー
781,139
50.2
合計
4,661,693
81.8
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.金額は、仕入価格によっております。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
受注高
(千円)
前年同期比
(%)
受注残高
(千円)
前年同期比
(%)
マテリアルソリューション
7,570,270
134.2
963,184
106.6
アドバンストテクノロジー
3,499,793
92.7
49,724
68.8
合計
11,070,064
117.5
1,012,909
103.8
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.金額は標準原価によっております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
マテリアルソリューション
18,041,492
110.4
アドバンストテクノロジー
4,543,425
97.4
合計
22,584,917
107.5
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度にありました「その他」の区分については、当連結会計年度の販売実績はありません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合について、当該割合が100分の10以上の主要な販売先はありませんので、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、マテリアルソリューション事業においては、生産性の向上、資材調達の見直し、生産設備の改造、生産工程計画の見直し等を通じてコスト削減を進め、競争力を強化しつつ、市場ニーズに合った新製品を上市することで、市場でのプレゼンスの向上や収益改善に努めてまいりました。また、アドバンストテクノロジー事業においては、自動車、弱電等の注力する業界の世界的なニーズに臨機応変に対応し、販売面においては自ら積極的に市場開拓するとともに、製造面においては製品品質の安定化を図り、収益の拡大を目指してまいりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は225億84百万円(前年同期比7.5%増)、営業利益は3億46百万円(前年同期比46.7%減)、経常利益は7億18百万円(前年同期比20.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は23億21百万円(前年同期比254.4%増)となりました。
売上高については、原材料価格、エネルギーコスト、副資材費等の大幅な上昇を受け、一部製品の販売価格へ転嫁を進めたことや、(株)エイゼンコーポレーションを連結子会社としたこと等により売上高は増加しました。営業利益については、アドバンストテクノロジー事業の車両向け販売は好調であったものの、マテリアルソリューション事業において、価格転嫁がコスト増加に追い付かなかったこと等もあり、苦戦しました。
なお、セグメントごとの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
(マテリアルソリューション事業)
マテリアルソリューション事業については、一昨年、新型コロナウイルス感染拡大による影響により、巣ごもり需要の恩恵を受けたホームセンター向けの商材等が、前連結会計年度に引き続き当連結会計年度においても反動減の影響は改善されず需要が減少しました。また、農業資材分野では、エネルギーコストの上昇に加え度重なる物価の高騰等により投資意欲が減衰し需要が減少しました。厳しい事業環境の中、生産効率向上やコスト削減等による原価低減に努めてまいりましたが、原材料価格およびエネルギーコスト上昇の影響は大きく、価格転嫁を進めたものの、コストの増加に追い付くことができず増収減益となりました。なお、新たな成長分野として地中熱ビジネスを推進しておりますが、2022年4月1日に土木・官工事等22種に及ぶ多彩な許可を「特定建設業」として保有している(株)エイゼンコーポレーションの株式を取得し、今後は地中熱関連設備工事の元請となることが可能となりました。当連結会計年度においては、大口施工案件受注獲得に向けた準備期間とし、体制の強化および営業活動に注力しましたので次年度以降、さらなる成長が期待できます。
(アドバンストテクノロジー事業)
アドバンストテクノロジー事業については、前連結会計年度から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響、世界的な半導体不足やウクライナ紛争等の要因でサプライチェーンが混乱する中、ディスプレー用拡散板の販売が大幅に減少した影響で減収となりました。一方、デコレーション&ディスプレー分野において、北米、インド、東南アジアを中心に自動車、二輪車分野の採用が増加し販売を牽引しました。また、より付加価値の高い製品の販売を拡大出来たことで利益率が改善し生産工程の歩留り率も改善した結果、利益面では前連結会計年度と比べ改善しました。このため、事業全体では減収増益となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料および商品の購入費用、製品製造のための費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、運転資金および設備投資資金につきましては、自己資金または金融機関からの借入によって調達することとしております。
このうち、金融機関からの借入による資金調達に関しましては、基本的に固定金利によって調達しております。長期借入金以外の資金調達については、金融機関の借入枠の実行によるものがあります。
当連結会計年度末における資金は、前連結会計年度末に比べ4億91百万円増加し、24億53百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが1億29百万円の収入(前年同期は78百万円の収入)、投資活動によるキャッシュ・フローが13億97百万円の収入(前年同期は8億50百万円の支出)、財務活動によるキャッシュ・フローが10億12百万円の支出(前年同期は21億84百万円の支出)であります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
54.6
56.6
60.1
時価ベースの自己資本比率(%)
27.8
23.6
19.6
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
2.4
53.1
32.2
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
37.2
2.4
5.2
自己資本比率 :自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ :キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これら連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定設定を行わねばなりません。経営者は、債権、棚卸資産、投資、繰延税金資産、退職給付等に関する見積りおよび判断について、継続して評価を行っており、過去の実績や状況に応じて合理的と思われる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っております。また、その結果は資産・負債の簿価および収益・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これら見積りと異なる場合があります。
特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
a.貸倒引当金
当社グループは、一般債権については貸倒実績率等による計算の結果、合理的に引当金額を算定しております。また、貸倒懸念債権等特定の債権に関しては個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を算定しております。
b.棚卸資産
当社グループの保有する棚卸資産について、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号)に基づき、処理を実施しております。回収可能価額の評価を行うに当たっては、製品、商品について正味売却価額に基づき収益性の低下を検討しております。将来における実際の需要または市況が見積りより悪化した場合は、追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
c.固定資産の減損
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会))および「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)を適用しております。将来、企業収益が大幅に低下する場合、経済環境の著しい悪化および市場価格の著しい下落等により、固定資産の減損処理が必要となる可能性があります。
d.投資有価証券、関係会社株式の減損
当社グループは、長期的かつ戦略的な取引関係維持を目的に特定の取引先の株式を所有しております。これら株式には上場株式と非上場株式が存在します。当社グループは投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、減損処理を行っております。上場株式については、時価が取得原価の50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。非上場株式および関係会社株式については、実質価額が取得原価の50%以上下落した場合に、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について将来の課税所得および税務計画につき検討し、繰延税金資産の全部または一部について、回収可能性がないものと判断した場合は、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取り崩しを行います。
f.退職給付費用
当社グループは、従業員退職給付費用および退職給付に係る債務を数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これら前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。割引率は日本の国債の市場利回りを参考に決定しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。当社グループの当連結会計年度末における退職給付に係る負債は19億45百万円であり、当連結会計年度の退職給付費用は1億48百万円です。当連結会計年度末に発生した数理計算上の差異は△44百万円であり、翌連結会計年度に一括収益処理いたします。現在、当社グループの割引率は0.01%を適用しております。
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