【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、穏やかな回復基調で推移しましたが、地政学リスクの高まり等に伴う各種材料や部品の価格上昇やサプライチェーンの混乱、そして世界的な金融引き締めに伴う景気後退懸念の高まり等から、その先行きに対する不透明感が高まりました。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、半導体業界では、スマートフォンやパソコン等の需要減速に伴う短期的な半導体メーカーの設備投資の鈍化が認められるものの、中長期的には、生成AIへの期待等も相俟った半導体需要拡大が見込まれるとともに、地政学リスク対応等の観点からの世界各地での半導体工場新増設計画も進められています。また、エレクトロニクス業界では、グリーンエネルギー政策等に基づくEV導入促進政策の進展等に伴ったパワーデバイス投資、スマート社会化構想等に基づくデジタル化の促進やメタバースの実現等に向けた各種電子デバイスの技術革新や増産のための投資、中国におけるエレクトロニクス国産化政策に基づく投資等が継続的に拡大しています。そして、フラットパネルディスプレイ(FPD)業界においては、タブレットやパソコン用のITパネルが液晶から有機ELへの転換期にあり、大型基板の有機EL投資が今後増加することが期待されています。また、産業用電池業界においても、EVバッテリーの小型大容量化や安全性向上の実現に向けた量産投資が本格化しはじめています。
その結果、当連結会計年度につきましては、受注高は2,472億21百万円(前年同期比228億74百万円(8.5%)減)、売上高は2,275億28百万円(同137億32百万円(5.7%)減)となりました。また、損益面では、営業利益は199億46百万円(同101億15百万円(33.6%)減)、経常利益は228億80百万円(同93億19百万円(28.9%)減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は141億69百万円(同60億42百万円(29.9%)減)となりました。
企業集団の事業セグメント別状況は次のとおりであります。
「真空機器事業」
真空機器事業を品目別に見ますと下記のとおりです。
(FPD製造装置)
前年度にITパネル用液晶投資が活発化しましたが、その反動減の影響により、受注高、売上高ともに前年同期を下回りました。
(半導体及び電子部品製造装置)
半導体製造装置は、ロジック向け投資等により、電子部品製造装置は、パワーデバイスやオプトデバイス等の投資活発化や中国のエレクトロニクス国産化に向けた投資活発化等により、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。
(コンポーネント)
半導体、電子部品及びEV用バッテリー等の製造装置や民生機器関連向けの真空ポンプ・計測機器・電源機器等が好調に推移し、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。
(一般産業用装置)
自動車部品製造用真空熱処理炉や高機能磁石製造装置、漏れ検査装置等の売上が順調に推移し、売上高は前年同期を上回りました。
その結果、真空機器事業の受注高は2,014億93百万円、受注残高は1,250億4百万円、売上高は1,847億60百万円となり、165億50百万円の営業利益となりました。
「真空応用事業」
真空応用事業を品目別に見ますと下記のとおりです。
(材料)
FPD関連製品の工場稼働率低下等により受注高、売上高ともに前年同期を下回りました。
(その他)
表面分析機器関連や高精細・高機能ディスプレイ向けマスクブランクス関連が好調に推移し、受注高、売上高ともに前年同期を上回りました。
その結果、真空応用事業の受注高は457億28百万円、受注残高は160億16百万円、売上高は427億68百万円となり、33億55百万円の営業利益となりました。
また、当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりとなりました。
資産合計は、前連結会計年度末に比べ8億30百万円減少し、3,534億74百万円となりました。これは、部品長納期化対応等により棚卸資産が125億22百万円、設備投資により有形固定資産が45億93百万円それぞれ増加し、これに伴い、現金及び預金が196億41百万円減少したことなどによります
負債合計は、前連結会計年度末に比べ91億99百万円減少し、1,486億20百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が76億94百万円、契約負債が25億60百万円それぞれ減少したことなどによります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ83億69百万円増加し、2,048億53百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上を主な要因として利益剰余金が80億49百万円増加したことなどによります。この結果、自己資本比率は56.1%となりました。今後もキャッシュ・フローマネジメントの強化等により、財務基盤の更なる強化を目指してまいります。
②キャッシュ・フロ-の状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりとなりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、部品長納期化対応等により運転資金が増加する一方で、税金等調整前当期純利益、減価償却費等を計上したこと等により、10億11百万円の収入を確保しました。中期経営計画において2026年6月期までの目標として掲げている営業キャッシュ・フロー630億円(3年間累計)の実現に向けて、引き続きキャッシュ・フローマネジメントの一層の強化に努めてまいります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出などにより、156億73百万円の支出となりました。
その結果、フリー・キャッシュ・フローは146億62百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、業績連動配当性向に基づいた配当金の支払などに充当し、54億38百万円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ197億88百万円減少し、873億17百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高
(百万円)
前年同期比
(%)
真空機器事業
188,953
92.7
真空応用事業
42,817
103.9
合計
231,770
94.6
(注)金額は、販売価格をもって表示しております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高
(百万円)
前年同期比
(%)
受注残高
(百万円)
前年同期比
(%)
真空機器事業
201,493
89.9
125,004
116.4
真空応用事業
45,728
99.5
16,016
125.0
合計
247,221
91.5
141,020
117.4
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高
(百万円)
前年同期比
(%)
真空機器事業
184,760
92.3
真空応用事業
42,768
103.9
合計
227,528
94.3
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な品目別販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
セグメントの名称
品目
当連結会計年度
販売高
(百万円)
割合
(%)
真空機器事業
FPD製造装置
52,759
28.6
半導体及び電子部品製造装置
77,693
42.0
コンポーネント
32,381
17.5
一般産業用装置
21,927
11.9
計
184,760
100.0
真空応用事業
材料
19,701
46.1
その他
23,067
53.9
計
42,768
100.0
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高は2,275億28百万円(前年同期比5.7%減)となりました。半導体及び電子部品製造装置において、ロジック向けの投資の寄与に加えてパワーデバイス・オプトデバイス、中国のエレクトロニクス国産化に向けた投資等が活発化しているものの、半導体製造装置の一部ではスマートフォンやパソコンなどの需要減速や半導体メモリの在庫調整に伴い足元の半導体メーカーの設備投資が鈍化していることや、FPD製造装置において前年度活発化したITパネル用液晶投資の反動減が影響したことが主な要因となります。
営業利益率は8.8%(前年同期比3.7ポイント減)となり前年同期から悪化しました。これはFPD製造装置における売上高の減少に加え、先行投資となる半導体関連等の研究開発費増加が主な要因となります。
なお、研究開発費の総額は137億66百万円となり、前年同期から34億25百万円増加しました。研究開発費の売上高に対する比率は前年同期から1.8ポイント増加し6.1%となりました。研究開発力強化は、中期経営計画における主な取組みのひとつであり、将来の成長に向けた投資を引き続き強化しております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、当社グループは2024年6月期を初年度とする3年間の中期経営計画を策定致しましたが、この中期経営計画において、「真空技術による社会的価値創造」及び「利益・資本効率重視の経営」の2つの基本方針を掲げております。この方針のもと、売上高、売上総利益率、営業利益率、営業キャッシュ・フロー、ROE(自己資本利益率)を中期経営計画上の財務モデルにおける指標としております。
中期経営計画3年目の数値目標については、売上高3,000億円、売上総利益率35%、営業利益率16%、3年間累計の営業キャッシュ・フロー630億円、ROE14%としております。この財務モデルの達成に向けて、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載した具体的取組みにより、中長期の視点で成長を目指してまいります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
・真空機器事業
当連結会計年度における当セグメントの事業環境は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
売上高は、前年同期比7.7%減の1,847億60百万円となりました。半導体及び電子部品製造装置において、ロジック向けの投資の寄与に加えてパワーデバイス・オプトデバイス、中国のエレクトロニクス国産化に向けた投資等が活発化したことにより受注高・売上高が前年同期を上回ったものの、FPD製造装置において前年度活発化したITパネル用液晶投資の反動減の影響により、受注高、売上高が前年同期比で減少したことが主な要因となります。
セグメント利益率については、当連結会計年度は9.0%と、前年同期の13.6%から悪化しました。これはFPD製造装置における売上高の減少及び半導体関連等の研究開発費増加が主な要因となります。
・真空応用事業
当連結会計年度における当セグメントの事業環境は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
売上高は、前年同期比3.9%増の427億68百万円となりました。FPD関連の顧客工場の稼働率低下等により材料における売上高は前年同期を下回ったものの、表面分析機器、高精細・高機能ディスプレイ向けマスクブランクス関連の売上高は好調に推移し前年同期を上回ったことにより、当セグメントの売上高が増加しました。
セグメント利益率については、当連結会計年度は7.8%と、前年同期の7.1%から改善しました。これは、利益率の高い製品の売上高増加が主な要因であります。
財政状態の分析は「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主な資金需要は、新たな成長戦略の足がかりとなる研究開発投資や設備投資、事業により生じる運転資金に基づくもので、とりわけ成長事業として強化を図っていく半導体や電子分野の開発投資を拡大する予定です。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入金などにより対応し、資金調達にあたっては、リファイナンスリスクの低減や返済負担の軽減を図るために、年度別の返済額の平準化に努めております。
また、近年米中関係悪化や、米国・中国等の景気後退等ますます市場環境の先行きが不透明な中、不測の事態に備え十分な手元流動性資金を確保するとともに、コミットメントラインを設定し追加資金を確保できる体制を整えており、当面安定的な経営が可能な状態にあります。事業環境の急激な変化にも対応できるよう、引き続き、適時に必要資金を確保できる体制を維持してまいります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。