【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間における世界経済は、インフレや金利上昇によって米国並びにユーロ圏において景気の減速傾向がみられるほか、中国でも雇用環境悪化や不動産不況によって景気の減速が進んでいます。日本経済については、インバウンド需要や設備投資が底堅いものの、海外経済の減速や半導体市場の低迷の影響を反映し、景況感の先行きに対する不透明感が大きくなってきています。
このような事業環境の中で、当社及び連結子会社(以下「当社グループ」という。)は2024年3月期を最終年度とする『中期経営計画(NSR23)』において、「日本精線リニューアル(NSR)継続推進と高機能・独自製品でサステナビリティに貢献」を中期スローガンとして掲げ、高機能・独自製品の販売に注力して企業価値向上に努めております。
結果として当第1四半期連結累計期間の売上高は、108億12百万円(前年同期比11.5%減)となりました。損益については、太陽光発電パネルなどの製造プロセスで使用される極細線に対する需要の強さは継続したものの、流通在庫の調整を受けたステンレス鋼線の販売量減少による操業度損増加や、これまで収益の牽引役だった半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)の受注減少によって、減益を余儀なくされました。この結果、営業利益9億円(同44.8%減)、経常利益9億84百万円(同41.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益6億92百万円(同41.2%減)となりました。
事業部門別の経営成績は次のとおりであります。
①ステンレス鋼線
ステンレス鋼線においては、2022年度上半期の販売量はニッケル価格上昇を見込んだ駆け込み需要が発生し月当たり3,412トンと高水準の推移を維持するも、自動車用途や建材用途の荷動き鈍化が鮮明となり過剰在庫の調整が生じたことから下半期平均2,955トン(上半期比13.3%減)となり、さらに2023年度第1四半期も調整が長期化したため月当たり2,558トン(前第4四半期比11.4%減)となりました。一方、太陽光発電パネルの製造プロセスで使用されるスクリーン印刷向け極細線は、お客さまの細径化ニーズに応える高付加価値製品として好調な受注を確保しました。
なお、LMEニッケル価格については、2020年度第1四半期から右肩上がりの傾向となっていましたが、ウクライナ情勢の影響もあり2022年度の平均価格がポンド当たり11.63ドル(前期比平均に比してポンド当たり2.28ドル上昇)と急激に上昇しました。2023年度第1四半期は2023年4~6月の平均価格でポンド当たり10.15ドル(2023年1~3月平均に比してポンド当たり1.68ドル下落)と落ち着いてきました。
結果として、当第1四半期連結累計期間におけるステンレス鋼線全体の月平均販売数量は大幅に減少(前年同期比28.0%減)したものの、ニッケル価格高騰による販売単価上昇や極細線の販売増によって売上高92億18百万円(同8.6%減)となり、減少幅を低減することになりました。
海外現地法人であるTHAI SEISEN CO., LTD.及び大同不銹鋼(大連)有限公司についても、ステンレス鋼線の販売数量が低迷し、減収となりました。
②金属繊維
金属繊維においては、半導体関連業界向け超精密ガスフィルター(NASclean®)に対する需要が調整局面となりました。その背景には、DRAMやNAND型フラッシュメモリの価格低迷により半導体メーカーが設備投資を先送りしはじめたことが影響しています。2022年度第3四半期までは月当たり売上高が4億32百万円と高水準で推移するも、第4四半期は月当たり3億30百万円となり、さらに2023年度第1四半期も調整が継続したため月当たり3億9百万円(前第4四半期比6.4%減)となりました。
ナスロン®フィルターについては、ポリエステルフィルム用途の販売が減少したことに加え、ゼロコロナ政策転換による感染症急拡大によって経済活動に大きな制約を受けた耐素龍精密濾機(常熟)有限公司が低迷したため、2023年度第1四半期の月当たり売上高は2億22百万円(前第4四半期比26.7%減)となりました。
結果として、当第1四半期連結累計期間における金属繊維部門の売上高は15億94百万円(前年同期比25.1%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高の相殺消去前の金額を記載しています。
①日本
主力のステンレス鋼線は極細線で好調な受注を確保するも自動車用途や建材用途の荷動き鈍化による過剰在庫の調整が継続し販売金額は減少しました。金属繊維は半導体製造装置に組み込まれる超精密ガスフィルター(NASclean®)が調整局面となり、売上高は97億52百万円(前年同期比10.4%減)、セグメント利益は8億95百万円(同38.2%減)となりました。
②タイ
ステンレス鋼線の販売数量は需要低迷・過剰在庫の調整から減少し、売上高は12億1百万円(前年同期比22.6%減)、セグメント利益は6百万円(同95.2%減)となりました。
③中国・韓国
ナスロン®フィルターの需要が低迷し、売上高は2億77百万円(前年同期比34.5%減)、セグメント利益は6百万円(同89.6%減)となりました。
(2)財政状態の状況
当第1四半期連結会計期間末における総資産は537億57百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億97百万円減少しました。流動資産は受取手形及び売掛金の減少などにより、前連結会計年度末に比べ3億58百万円減少しました。固定資産は有形固定資産の増加などにより、61百万円増加しました。
負債は158億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億64百万円減少しました。流動負債は支払手形及び買掛金などの減少などにより、前連結会計年度末に比べ6億13百万円減少しました。固定負債は退職給付に係る負債が増えたことなどにより49百万円増加しました。
純資産は378億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億66百万円増加しました。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、1億35百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。