【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営成績当社グループは、収益認識に関する会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しています。そのため、会計基準変更による業績への影響を除いた前年同期比較情報を参考値として次のとおり表示します。(単位:百万円)
売上高
営業利益
経常利益
親会社株主に帰属する当期純利益
2022年12月期通期
516,085
15,435
20,397
19,740
2021年12月期通期組替後(※)
483,853
20,557
24,715
24,173
増減
32,232
△5,122
△4,318
△4,433
増減率(%)
6.7
△24.9
△17.5
△18.3
(※)2021年12月期通期組替後は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日)を2021年12月期の期首から適用したと仮定して簡易的な方法により組み替えた2021年12月期通期の推定値です。
当連結会計年度の当社グループの売上高は、マイクロデバイス事業、ブレーキ事業および精密機器事業が増収となったこと等により516,085百万円(組替後前年同期比32,232百万円増、6.7%増)となりました。営業利益は、マイクロデバイス事業は大幅な増益となりましたが、無線・通信事業やブレーキ事業等が減益となったこと等により15,435百万円(組替後前年同期比5,122百万円減、24.9%減)となりました。経常利益は、営業利益減等により20,397百万円(組替後前年同期比4,318百万円減、17.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益も19,740百万円(組替後前年同期比4,433百万円減、18.3%減)となりました。事業セグメントの業績は下記のとおりです。セグメント利益またはセグメント損失は営業利益または営業損失ベースの数値です。
(無線・通信事業)ソリューション・特機事業は、飛行場の管制シミュレータや無線電話装置等の航空・気象システムは増加したものの、道路情報システムや水・河川情報システムの大型案件が電子部品需給ひっ迫の影響を受け減少したことにより減収・減益となりました。マリンシステム事業は、好調な海運市況に支えられた新造船用機器や欧州ワークボート等の中小型船用機器が好調に推移したことに加え、漁業用陸上無線設備等のシステムが増加したことにより増収・増益となりました。ICT・メカトロニクス事業は、決済端末等のICT製品の需要は減少したものの、海外向け事務機器の需要が増加したことにより売上・利益ともに前年同期並みとなりました。モビリティ事業は、海外業務用無線は堅調に推移したものの、顧客の生産調整の影響を受け自動車用ITS(高度道路交通システム)が減少したことにより減収・減益となりました。その結果、無線・通信事業全体では、売上高150,392百万円(組替後前年同期比1.8%減)、セグメント利益4,821百万円(組替後前年同期比34.1%減)となりました。
(マイクロデバイス事業)主力の電子デバイス事業は、スマートフォンやPC用の民生製品(コンシューマ製品)は減速したものの、EV用の電源関連やセンサ、半導体製造装置用等の車載・産業機器製品が伸長したことに加え、円安による為替影響により増収・大幅増益となりました。マイクロ波事業は、船舶用電子管が好調だったことに加え、衛星通信関連製品も韓国・北米向けが堅調に推移したことにより増収・増益となりました。その結果、マイクロデバイス事業全体では、売上高85,329百万円(組替後前年同期比11.2%増)、セグメント利益8,947百万円(組替後前年同期比113.4%増)となりました。
(ブレーキ事業)2022年の自動車販売台数は日本、米国、欧州といった主要な市場で前年を下回りましたが、OE事業を中心とする各拠点は銅レス・銅フリー摩擦材によりシェアを拡大しています。国内および米国拠点は、シェア拡大により増収となるも原材料やエネルギー価格高騰により減益となりました。日系顧客向け中国拠点は、銅レス・銅フリー摩擦材が順調に立ち上がり増収となるも費用増により減益となりました。同じ中国でも韓国・北米系顧客向け拠点は、顧客の生産回復により増収・黒字化となりました。韓国拠点は、顧客の生産回復により前年同期並みの売上となるも費用増により減益となりました。タイ拠点は、ASEAN市場の自動車生産回復により増収・前年同期並みの利益となりました。TMD社は、欧州における急激な原材料費の高騰を受けて、アフターマーケット事業、OE事業ともに積極的な価格転嫁を進めることで増収となりましたが、ウクライナ情勢に起因するエネルギー需給ひっ迫に伴う急激なインフレにより大幅な損失拡大となりました。その結果、ブレーキ事業全体では、売上高153,643百万円(組替後前年同期比11.8%増)、セグメント損失4,664百万円(組替後前年同期比7,637百万円悪化)となりました。
(精密機器事業)精密部品事業は、自動車用EBS部品の受注が好調で増収となりましたが、減価償却費増等により前年同期並みの利益となりました。成形品事業は、国内・タイ・インド拠点において家電関連製品の受注が増加したことや南部化成㈱の不採算事業の整理が進んだこと等により増収・増益となりました。その結果、精密機器事業全体では、売上高53,655百万円(組替後前年同期比13.3%増)、セグメント利益776百万円(組替後前年同期比16.4%増)となりました。
(化学品事業)エネルギー価格の上昇や原材料の高騰・調達難の影響を受けましたが、断熱製品は冷蔵冷凍設備・住宅用原液および硬質ブロック等の受注増により増収・増益となり、ガラス状カーボン製品も半導体製造装置用の受注増により増収・増益となりました。燃料電池用カーボンセパレータは海外定置用の受注増により増収となりましたが、研究開発費増等により減益となりました。機能化学品は水性架橋剤および電子材料用製品の受注増により増収となりましたが、製品構成の変化により減益となりました。その結果、化学品事業全体では、売上高12,673百万円(組替後前年同期比13.7%増)、セグメント利益2,181百万円(組替後前年同期比4.9%増)となりました。
(繊維事業)シャツ事業は、人流の回復に伴いアポロコット等の形態安定商品の販売が好調に推移したことで増収・黒字化となりました。東京シャツ㈱は、前年同期並みの売上に止まりましたが経費削減等により損失縮小となりました。ユニフォーム事業は、生地の受注増により増収ながらも原材料費増等により減益となりました。その結果、繊維事業全体では、売上高38,333百万円(組替後前年同期比16.2%増)、セグメント利益99百万円(組替後前年同期比1,145百万円改善)となりました。
(不動産事業)分譲事業は、静岡県浜松市や愛知県岡崎市の宅地販売を実施しましたが、東京都三鷹市のマンション販売および徳島県北島町や滋賀県東近江市の宅地販売を実施した前年同期との比較では減収・減益となりました。その結果、不動産事業全体では、売上高11,178百万円(組替後前年同期比28.2%減)、セグメント利益8,719百万円(組替後前年同期比7.1%減)となりました。
(その他)ニッシントーア・岩尾㈱(食品、産業資材等の商社機能)等の事業を、その他として区分しています。その他の売上高は10,879百万円(組替後前年同期比15.6%増)、セグメント利益は283百万円(組替後前年同期比116.4%増)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
①生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
無線・通信
142,097
△1.4%
マイクロデバイス
89,409
+27.3%
ブレーキ
128,583
+18.6%
精密機器
51,360
△3.7%
化学品
8,122
+16.2%
繊維
33,985
+34.2%
その他
472
△9.2%
合計
454,029
+11.1%
(注) 1 金額は製造原価により算出しています。2 不動産事業は生産活動を行っていないため、上記金額には含まれていません。
②受注状況無線・通信事業、マイクロデバイス事業及び精密機器事業のうち、一部の製品において受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。なお、精密機器事業については金額的重要性が乏しいため記載していません。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
無線・通信
152,969
―
106,103
―
マイクロデバイス
104,120
―
56,421
―
合計
257,090
―
162,524
―
(注)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。当連結会計年度の数値については当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前年同期比増減率は記載していません。
③販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
無線・通信
150,392
―
マイクロデバイス
85,329
―
ブレーキ
153,643
―
精密機器
53,655
―
化学品
12,673
―
繊維
38,333
―
不動産
11,178
―
その他
10,879
―
合計
516,085
―
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が総販売実績の10%未満のため記載を省略しています。2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。当連結会計年度の数値については当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前年同期比増減率は記載していません。
(2)財政状態当連結会計年度末における総資産は616,273百万円となり、前連結会計年度末と比較し11,474百万円増加しました。棚卸資産の増加26,560百万円、有形固定資産の増加5,354百万円、投資有価証券の減少13,964百万円、退職給付に係る資産の減少4,979百万円等が主な要因です。当連結会計年度末における負債総額は337,775百万円となり、前連結会計年度末と比較し5,608百万円増加しました。短期借入金の増加18,290百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の減少3,294百万円、退職給付に係る負債の減少9,589百万円等が主な要因です。当連結会計年度末における純資産は278,498百万円となり、前連結会計年度末と比較し5,866百万円増加しました。利益剰余金の増加2,833百万円、自己株式の減少による増加2,712百万円、その他有価証券評価差額金の減少9,111百万円、為替換算調整勘定の増加7,515百万円、退職給付に係る調整累計額の増加1,770百万円等が主な要因です。以上の結果、当連結会計年度末における自己資本比率は前連結会計年度末と比較して変動がなく42.8%となりました。
(3)キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は19,585百万円となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益25,758百万円、減価償却費25,087百万円、退職給付に係る負債の増減額△4,608百万円、投資有価証券売却損益△7,277百万円、売上債権及び契約資産の増減額6,565百万円、棚卸資産の増減額△23,024百万円、仕入債務の増減額2,506百万円、法人税等の支払額△5,601百万円によるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は11,692百万円となりました。これは主として、定期預金の払戻による収入2,462百万円、有形固定資産の取得による支出△22,399百万円、投資有価証券の売却による収入9,241百万円によるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は8,888百万円となりました。これは主として、短期借入金の純増減額16,602百万円、長期借入金の返済による支出△7,019百万円、自己株式の取得による支出△10,002百万円、配当金の支払額△5,290百万円、その他△2,685百万円によるものです。以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は45,092百万円と前連結会計年度末に比べ2,496百万円増加しました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
2018年3月期
2018年12月期
2019年12月期
2020年12月期
2021年12月期
2022年12月期
自己資本比率
41.2%
40.1%
38.6%
39.4%
42.8%
42.8%
時価ベースの自己資本比率
35.6%
22.9%
28.2%
21.5%
24.1%
24.8%
債務償還年数
4.6年
10.5年
6.3年
3.5年
3.3年
7.5年
インタレスト・カバレッジ・レシオ
38.2倍
18.6倍
23.1倍
37.6倍
34.5倍
12.1倍
(注)1 自己資本比率:(純資産-新株予約権-非支配株主持分)/総資産 時価ベ-スの自己資本比率:株式時価総額/総資産 債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い ①各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。 ②株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。 ③営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロ-計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象にしています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。 2 2018年12月期は、決算期変更に伴い変則的な決算となっています。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析①財務戦略当社グループは、持続的な企業価値の向上を目指し、重点事業領域での成長投資を積極的に実行しつつ、連結配当性向30%程度を目安に、安定的かつ継続的な株主還元を行うことを財務戦略の基本方針としています。当社グループでは、中長期的な投資とリスクに備え、財務健全性を維持しながら、資本生産性を重視した経営を推進し、ROICを重要な社内管理指標として導入し、投資の効率化(運転資本の圧縮)と固定資産(土地や有価証券)の流動化を進め、自律的な企業成長を目指します。また、株主資本比率については、40%程度に保ち、強固な財務体質の維持に努めます。
②資金調達の方針と流動性の分析当社グループの運転資金や成長投資等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローを財源としていますが、必要に応じて有利子負債を効果的に活用し資本効率の向上を図っています。主に短期的な資金についてはコミットメントライン等の短期銀行借入やコマーシャル・ペーパーによる調達を、設備投資、M&A投資等の長期的な資金については、金融市場動向や長短バランスなどを総合的に勘案し、適宜長期銀行借入を組成しています。また、当社グループは、ガバナンス強化と資金効率向上を目的として、グループ一体となった資金調達と資金管理を実施しており、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)やグループローンによる資金融通を行ない、グループ内の流動性確保と資本コストの低減に努めています。なお、 当社グループは、気候変動による事業機会の取り込みおよびリスクへの適切な対応を重要な経営課題の一つと認識しています。当社グループが取り組む環境貢献に資する投資についてわかりやすく整理、訴求し、グリーンボンド等のサステナブル・ファイナンスにも取り組みたいと考えています。重要な資本的支出の予定及び資金の調達方法については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。資金の流動性については、当連結会計年度においても当社は主要銀行とのコミットメントライン契約を同額で維持し、30,000百万円で更改しました。その他、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパーも引き続き十分な調達枠を維持しており、必要とされる流動性を確保しています。また、政策保有株式については、コーポレートガバナンス・ポリシーに基づき計画的に縮減していきますが、柔軟且つ機動的な売却の意思決定により、資金の流動性を補完することも可能です。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。海外子会社については、IFRS(国際財務報告基準)及び米国会計基準に準拠して作成され、現地監査法人の監査を受けた上で必要な調整を反映させています。 この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
(6)経営者の問題認識と今後の方針について 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
(7)次期の業績見通し2023年12月期も、主力の無線・通信事業、マイクロデバイス事業を中心に経営資源を重点的に配分し、成長戦略を遂行します。無線・通信事業では、主軸の公共事業向けソリューション・特機事業は、新基幹システム導入に伴う費用増はあるものの需要は引き続き堅調に推移すると見込んでいます。マリンシステム事業は、強みとする商船分野での収益性向上を図ると同時に、船舶の自動航行支援等のデータビジネスへと領域を拡げていきます。マイクロデバイス事業では、信号処理ICや電源IC等のアナログ半導体を展開しており、今後は単体ICメーカーからアナログソリューションプロバイダへとさらなる成長・発展を図ります。アナログ半導体は電装化が進む車載用を中心に旺盛な需要が続き、次期も業績は堅調に推移する見込みです。ブレーキ事業では、環境規制に対応した銅レス・銅フリー摩擦材の受注が引き続き好調です。当連結会計年度に原材料価格やエネルギー価格高騰の影響の強く受けたTMD社も、価格転嫁の効果が明確になってきており、次期は業績回復を見込んでいます。不動産事業では大型分譲案件の終了等、一定の減収・減益要因を想定していますが、その他の各事業セグメントにおいてもコロナ禍からの業績回復を見込んでいます。これらのことから、次期の連結業績見通しは、売上高557,000百万円、営業利益24,000百万円、経常利益27,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益18,000百万円となる見込みです。なお、為替レートは通期平均で1米ドル=130円、1ユーロ=135円を前提としています。