【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社、子会社および関連会社)が判断したものであります。
(1) 経営成績当第1四半期連結累計期間(2023年4月1日~2023年6月30日)におけるわが国経済は、物価上昇が続く中、新型コロナウイルス感染症の5類移行や雇用・所得環境の改善を受けて個人消費が回復するなど、緩やかに回復しました。各種政策の効果もあり、今後も緩やかな回復が続くことが期待されるものの、世界的な金融引締め等による海外景気の下振れの影響が懸念されます。特殊鋼業界におきましては、半導体不足の緩和により自動車生産は回復しているものの、その度合いが緩やかであることに加えて、建設・産業機械向けにおいて在庫調整局面が継続していることなどにより、特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量は、前年同期を下回りました。このような中、当社グループの売上高は、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、需要家の在庫調整の継続を受けた売上数量の減少などにより、前年同期比41億89百万円減の998億63百万円となりました。利益面では、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、売上数量の減少や原燃料価格の上昇、諸資材等へのインフレ影響に加えて、スウェーデンの連結子会社Ovakoの売上数量の減少や2023年3月期に発生した一過性増益影響の縮小などにより、経常利益は、前年同期比32億11百万円減の60億70百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期比25億72百万円減の43億8百万円となりました。
セグメント別の売上高および営業損益の状況は、次のとおりであります。なお、各セグメントの売上高につきましては、セグメント間の内部売上高又は振替高が含まれております。
(鋼材事業)当第1四半期連結累計期間の売上高は、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、需要家の在庫調整の継続を受けた売上数量の減少などにより前年同期比44億80百万円減の960億99百万円となりました。営業利益は、エネルギーサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、売上数量の減少や原燃料価格の上昇、諸資材等へのインフレ影響に加えて、Ovakoの売上数量の減少や一過性増益影響の縮小などにより、前年同期比30億85百万円減の54億89百万円となりました。
(粉末事業) 当第1四半期連結累計期間の売上高は、一部の電子材分野向けの需要減の影響はありましたが、自動車生産の回復、合金サーチャージの適用等に伴う販売価格の上昇などにより、前年同期比1億28百万円増の13億98百万円となりました。営業利益は、売上数量の増加や合金サーチャージの適用等に伴う販売価格の上昇はありましたが、販売構成の悪化などにより、前年同期比31百万円減の2億53百万円となりました。
(素形材事業)当第1四半期連結累計期間の売上高は、鉄スクラップサーチャージ等の適用に伴う販売価格の上昇はありましたが、中国の連結子会社における売上数量の減少や販売構成の悪化などにより、前年同期比1億75百万円減の44億56百万円となりました。営業損益は、売上数量の減少や販売構成の悪化、原燃料価格の上昇などにより、2億
57百万円の赤字(前年同期は94百万円の赤字)となりました。
(その他) 子会社を通じて情報処理サービスを行っており、当第1四半期連結累計期間の売上高は前年同期比26百万円増の2億51百万円、営業損益は4百万円の赤字(前年同期は2百万円の黒字)となりました。
(2) 財政状態当第1四半期連結会計期間末の総資産残高は、円安による海外連結子会社資産等の円換算額の増加などにより、前連結会計年度末比67億90百万円増の4,080億8百万円となりました。負債残高は、コマーシャル・ペーパーの増加などにより、前連結会計年度末比37億19百万円増の1,889億13百万円となりました。純資産残高は、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上や円安等に伴うその他の包括利益累計額の増加などにより、前連結会計年度末比30億71百万円増の2,190億95百万円となりました。この結果、当第1四半期連結会計期間末におけるD/Eレシオ(純資産残高に対する有利子負債残高(現預金および関係会社預け金残高控除後)の割合)は0.32(前連結会計年度末は0.31)となりました。
(3) 研究開発活動当第1四半期連結会計期間における当社グループの研究開発費の総額は5億46百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4) 経営者の問題認識と今後の方針について当社は、グローバルな特殊鋼マーケットでの企業価値の更なる向上を目指し、2021年度~2025年度を実行期間とする、2025年中期経営計画を策定し実行してまいりましたが、当初の2025年中期経営計画策定後、資源価格のインフレ(鉄鋼需給とのデカップリング)、人的資源の制約拡大、EV化・カーボンニュートラルの加速化など、大きな環境変化が起こっていること、足下の業績が当初の計画を過達していることを踏まえ、2023年7月28日の取締役会で2025年中期経営計画の見直しを決議いたしました。その内容は以下のとおりであります。
①基本方針(ⅰ)グローバルな特殊鋼市場での企業価値・プレゼンスの更なる向上 ・人的資本の確保や設備投資等により企業基盤を強化する。 ・需要動向の不透明さや原燃料等のコストプッシュが持続することが想定される中、マージン・販売構成改善を 継続的に実施する。 ・グローバルに、事業基盤を強化するとともに、企業価値・プレゼンスの更なる向上に資する機会を探索する。 ・資本コストや株価を意識した経営を実施し、PBR1倍を目指す。 (ⅱ)国内・海外事業の収益力強化 ・単独鋼材事業は、市場及び顧客が異なる軸受・機械構造用鋼分野(軸受営業部、自動車・産機営業部、海外営業 部)と、高合金鋼分野(特品営業部)各々の営業基盤強化により、適正マージンを確保する。 ・Ovakoは、カーボンニュートラルにおける優位性の更なる活用や固定費の持続的なコントロール等により、安定 的な収益構造の維持・強化を目指す。 ・Sanyo Special Steel Manufacturing India Private Limited(以下、「SSMI」)は、コスト競争力や営業力の 強化を通じ、インド市場でのプレゼンスを更に高める。 ・素形材事業は、グローバルなサプライチェーン一貫での競争力を活かし、収益基盤を一層強化する。 ・粉末事業は、今後需要増が見込まれる高収益アイテム(3Dプリンタ、半導体、DX(デジタルトランスフォー メーション)・カーボンニュートラル対応)の販売拡大、新規アイテムの発掘などを通じ、更なる利益成長を目 指す。 (ⅲ)ESGの取組み強化 ・ガバナンス体制やESGの取組みを強化し、適切な開示を積極的に行う。 ・ダイバーシティや健康経営に加え、グローバルも含めた人材の確保・育成および社員のエンゲージメント向上
に資する取組みに注力する。 ・従来の数値指標に加え、5つのESG指標(CDP気候変動スコア、健康経営度評価、安全指標、女性管理職比 率、社外取締役による取締役会実効性評価)を役員報酬へ反映する。 (ⅳ)2050年カーボンニュートラルの実現 ・グループ全体で、「エコプロセス(省エネ・高効率)」「グリーンエネルギー活用」「エコプロダクト(長寿命軸 受鋼:自動車・風力発電・鉄道、3D粉末)」「エコソリューション(Ovako・SSMI:省エネ技術・生産性向上の展 開)」を推進する。 ・エネルギーインフラに恵まれ、顧客からの認知度も高いOvakoは、グリーン水素の製造・活用開始を含め、カー ボンニュートラル分野でのリーダーシップを加速させる。 ・グローバルな成長が見込まれる「EⅤ(駆動系新機構等)」「風力発電(大型向け高品質材等)」「鉄道(グローバ ル高速鉄道軸受等)」「水素社会(水素関連設備等)」等の分野での更なる高信頼性ニーズに応える新商品 (ECOMAX®シリーズ、TOUGHFIT™等)を拡大し、技術を深化させる。 ・代表取締役社長を委員長とした「カーボンニュートラル推進委員会」を中心に多岐にわたる重点課題に対し て、グループ横断的な取組みを強化する。 (ⅴ)DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進 ・代表取締役社長をリーダーとするDX推進プロジェクトチームを設置し、「業務改革」と「工場改革」の取組 みの2本柱として業務・操業効率化とプロセス改革を図る。 ・業務・操業の棚卸しを実施し、社員のお困り事を解決するためにDXを活用する。 ・統合データベースを構築し、業務システム間で必要なデータの共有化を図る。 ・最新のデジタル技術を活用し、情報の見える化・リアルタイム化、業務の自動化、省力等を図る。 ・業務変革につながるDXを実施することで、事業構造を高度化し、企業価値を向上させていく。
②財務目標・経営資源投入(連結) (ⅰ)2025年度財務目標 ・売上高
: 4,200億円程度(当初計画:2,800億円程度) ・経常利益
: 220億円程度(当初計画:140億円程度) ・ROE
: 7%程度(当初計画:5%程度) ・ROE(のれん償却除き)
: 8%程度(当初計画:6%程度) (ⅱ)経営資源投入 ・設備投資(2023~2025年度): 160億円程度/年(当初計画:120億円程度/年) カーボンニュートラル(省エネ)・DX中心に積極的な設備投資を実施する。 ・従業員数(2025年度末) : 6,500人程度(当初計画:6,400人程度)
グローバルも含めた人材を確保する。
③PBR1倍に向けた取組み (ⅰ)現状分析 ・Ovakoの収益改善、サーチャージの適用拡大等により、業績は拡大・安定化するも、2022年度の一過性影響を
除くROEは約6%(のれん償却除き約8%)と、のれん償却の負担約30億円/年が大きく、資本コスト(8%程 度と推定)を下回る。 ・業績の改善に伴い株価は回復、PERも業界内では比較的高いが、PBRは0.7倍程度にとどまる。
(ⅱ)改善計画
・中期計画の諸施策の実施により、収益・ROEを改善。
・政策保有株式の相互売却を通じた流通株式比率の向上により、資本コストを低減。
・投資家との継続的な対話を通じ、カーボンニュートラル・ESG取組みへの適正な評価を獲得。(株価への反
映)
・配当方針を改定。(配当性向、1株当たり配当額水準および成長投資等の所要資金などを総合的に勘案。通常の 連結配当性向35%程度、のれん償却除き30%程度)
(参考)株主・投資家との対話の実施状況等
(ⅰ)対話方針等 ・持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、株主・投資家との建設的な対話を促進するための 諸施策に取り組む。 ・株主・投資家との対話全般については、役員および財務部・総務部をはじめとする社内各部門が連携して施策 の充実に努める。
(ⅱ)2022年度の対話実績 ・対話実績 四半期または期末決算発表当日の説明会(※1) 4回 個別面談(※2) 64回 機関投資家向けの工場見学会等
2回 (※1)第2四半期および期末決算時は代表取締役社長が参加。説明用資料は日本語、英語版を同時開示。
説明会議事録を当社ウェブサイトに掲載。 (※2)個別面談による対話を行った株主・投資家は延べ108名、うち海外の株主・投資家が延べ25名。 ・対話の主なテーマ 当社および連結子会社の業績 主要需要業界の動向 原燃料価格上昇への対応 半導体不足やロシアによるウクライナ侵攻の影響 EV化進展影響、監査等委員会設置会社への移行 カーボンニュートラルへの取組み など