【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において判断したものであります。
1.経営成績の分析
(単位:百万円)
売上高
営業利益
経常利益
親会社株主に帰属
する四半期純利益
1株当たり
四半期純利益
(円 銭)
当第3四半期
連結累計期間
798,083
64,739
66,377
47,283
336.24
前第3四半期
連結累計期間
769,959
79,010
82,086
56,183
387.81
前年同期比
(%)
103.7
81.9
80.9
84.2
–
当社グループは「2023中期経営計画」の基本コンセプトである「明治ROESG®※経営の実践」に基づき、利益成長とサステナビリティ活動の同時実現に向けて取り組んでいます。
重点課題は以下のとおりです。
1.事業戦略
(食品セグメント) (1)コア事業の成長力の回復
(2)海外展開の強化
(医薬品セグメント) (1)ワクチン事業の強化
(2)受託製造/受託製造開発(CMO/CDMO)事業の強化
(グループ全体) 新領域への挑戦
2.ROICの活用による経営管理体制強化
3.成長投資の継続と強固な財務基盤構築の両立
4.サステナビリティ2026ビジョンの着実な実行
※「ROESG」は一橋大学・伊藤邦雄氏が開発した経営指標で、同氏の商標です。
2023年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大による世界経済や国内消費動向への影響、また、ロシア・ウクライナ情勢や円安などに起因する原材料価格およびエネルギーコスト高騰の影響を大きく受けています。
食品セグメントでは、原材料コストおよびエネルギーコストの上昇を吸収すべく、さまざまな商品で価格改定や容量変更を実施しました。また、各商品の価値訴求強化や積極的なマーケティング活動、新商品の売上拡大にも取り組んでいます。海外では引き続き中国における生産販売能力を強化し、販売エリア拡大と高付加価値商品の育成に取り組んでいます。
医薬品セグメントでは、強みを持つ感染症領域に経営資源を集中し、ワクチンと感染症治療薬のトップ企業としての競争優位性のさらなる強化に取り組んでいます。加えて、コスト低減や海外のCMO/CDMO事業拡大も着実に進めています。また、当社グループが持つ感染症に関する高い技術・設備や豊富な経験を活用した創薬力の強化にも取り組んでいます。
当第3四半期連結累計期間の売上高は 7,980億83百万円(前年同期比 3.7%増)、営業利益は 647億39百万円(同 18.1%減)、経常利益は 663億77百万円(同 19.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は 472億83百万円(同 15.8%減)となりました。
当社グループでは、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発・供給の取り組みを次のとおり進めています。
当社の事業子会社であるKMバイオロジクス株式会社とMeiji Seika ファルマ株式会社では、新型コロナウイルス感染症に対する不活化ワクチンの開発を進めています。承認に向けた最終段階となる第3相臨床試験(国際共同、成人40歳以下)を2022年4月に、また国内小児第3相臨床試験(6か月以上12歳未満)を2023年1月に、それぞれ開始しました。早期の供給を目指し、引き続き取り組んでまいります。
アストラゼネカ株式会社が日本へ導入している新型コロナウイルスワクチンについて、当社の事業子会社であるMeiji Seika ファルマ株式会社は安全性情報収集の業務を行っております。
セグメントの業績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
報告セグメント
合計
食品
医薬品
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減
前第3四半期連結累計期間
当第3四半期連結累計期間
増減
売上高
626,330
649,939
23,608
144,404
148,701
4,296
770,735
798,640
27,905
セグメント
利益
61,713
45,125
△16,588
18,388
21,037
2,649
80,102
66,163
△13,939
(注)売上高、セグメント利益は、セグメント間の取引を消去する前の金額によっております。
セグメント別、事業別の概況は次のとおりです。
(1)食品
当セグメントには、ヨーグルト・チーズ事業 (プロバイオティクス、ヨーグルト、チーズ)、ニュートリション事業(乳幼児ミルク、スポーツ栄養、流動食、美容)、チョコレート・グミ事業、牛乳事業、業務用食品事業、フローズン・調理食品事業 (アイスクリーム、調理食品、バター・マーガリン類)、海外事業(海外子会社、輸出)、その他・国内子会社 (国内独立系子会社、ガム、キャンデー、OTC)による製造・販売、運送等が含まれております。
売上高は前第3四半期連結累計期間を上回りました。海外事業やその他・国内子会社は前第3四半期連結累計期間を大幅に上回り、ニュートリション事業やチョコレート・グミ事業、業務用食品事業は前第3四半期連結累計期間を上回りました。フローズン・調理食品事業は前第3四半期連結累計期間並みとなりました。ヨーグルト・チーズ事業や牛乳事業は前第3四半期連結累計期間を下回りました。
セグメント利益は、主力商品の価格改定を実施しましたが、原材料コストやエネルギーコストの増加に加え、ヨーグルト・チーズ事業の売上数量の減少により、前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。
事業別の概況は次のとおりです。
■ヨーグルト・チーズ事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を下回りました。プロバイオティクスやヨーグルトは、商品ラインアップを拡充し、マーケティングを強化しましたが、健康価値を訴求する様々な競合商品の影響により減収となりました。チーズも品目数削減の影響などにより減収となりました。
営業利益は、減収の影響に加えて、原材料コストやエネルギーコスト、マーケティングコストの増加により前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。
■ニュートリション事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を上回りました。流動食「明治メイバランス」や、インバウンド需要が見られた乳幼児ミルクは好調に推移しました。スポーツプロテイン「ザバス」もドリンクタイプを中心に好調に推移し、前第3四半期連結累計期間を上回りました。
営業利益は、原材料コストやエネルギーコスト、設備増強による減価償却費の増加により前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。
■チョコレート・グミ事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を上回りました。チョコレートでは主力の「チョコレート効果」や「きのこの山・たけのこの里」シリーズが好調に推移しました。市場拡大が続くグミは新商品の投入やマーケティング強化により大幅に伸長しました。
営業利益は、原材料コストやエネルギーコストの増加により前第3四半期連結累計期間を下回りました。
■牛乳事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を下回りました。品目数の削減や、家庭内需要の低下による大容量サイズの数量減が影響しました。
営業利益は、減収の影響に加えて、新工場の稼働による減価償却費の増加により前第3四半期連結累計期間から損失額が拡大しました。
■業務用食品事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を上回りました。緊急事態宣言による行動制限の影響を受けた前第3四半期連結累計期間から外食や土産菓子の需要が回復し、バター、アイスクリーム、チョコレートが大幅な増収となりました。
営業利益は、原材料コストの増加により前第3四半期連結累計期間を下回りました。
■フローズン・調理食品事業
売上高は前第3四半期連結累計期間並みとなりました。主力の「明治エッセルスーパーカップ」や新商品「ブルガリアフローズンヨーグルトデザート」が好調に推移したアイスクリームは増収となりました。一方、調理食品は減収となりました。
営業利益は、原材料コストの上昇を価格改定によりカバーし、製造間接費が減少したことで前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。
■海外事業
売上高は、為替の影響もあり前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。中国の菓子事業やアイスクリーム事業、東南アジアや米国の子会社が好調に推移しました。
営業利益は、主力商品の数量増や価格改定の効果により、前第3四半期連結累計期間から損失額が縮小しました。
■その他・国内子会社
売上高は前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。物流子会社1社が株式譲渡により連結対象子会社から除外された影響がありましたが、糖類を扱う商社や飼糧子会社などの増収により、全体としては増収となりました。
営業利益は、物流子会社譲渡の影響に加え、原材料コストの上昇による飼糧子会社の減益などにより、前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。
(2)医薬品
当セグメントには、国内医薬品事業、海外医薬品事業、ヒト用ワクチン事業、動物薬事業(動物薬、動物用ワクチン)による製造・販売が含まれております。
売上高は前第3四半期連結累計期間を上回りました。国内医薬品事業と海外医薬品事業は前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。ヒト用ワクチン事業と動物薬事業は前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。なお、動物薬事業の減収は、前期まで同一事業区分であった農薬事業を譲渡した影響によるものです。
セグメント利益は、国内医薬品事業と海外医薬品事業の大幅な増収により、前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。
事業別の概況は次のとおりです。
■国内医薬品事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。抗菌薬「スルバシリン」や新型コロナウイルス抗原検査キットが増収となりました。
営業利益は、薬価改定の影響を受けたものの、増収により前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。また、研究開発費の減少も増益に寄与しました。
■海外医薬品事業
売上高は、為替の影響もあり前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。医薬品受託製造事業を行うインドの子会社の増収や、前第3四半期連結累計期間に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたスペインの子会社の回復に加え、ロイヤリティ収入も寄与しました。
営業利益は、増収と為替の影響により前第3四半期連結累計期間を大幅に上回りました。
■ヒト用ワクチン事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。インフルエンザワクチンについて、過去最大の市場供給量となった中で接種率が想定を大きく下回っていることから、売上高から控除される返品見積額を増額しました。また、前第3四半期連結累計期間に計上していたアストラゼネカ株式会社の新型コロナウイルスワクチン製剤化に関する受託収入がなかったことが影響しました。
営業利益は、インフルエンザワクチンの返品見積額を増額したことに加え、新型コロナウイルスワクチンの製剤化に関する受託収入の減少や棚卸資産評価損の影響により、前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。
■動物薬事業
売上高は前第3四半期連結累計期間を大幅に下回りました。前期まで同一事業区分であった農薬事業を譲渡したことが影響しました。
営業利益は前第3四半期連結累計期間を上回りました。2022年4月に明治アニマルヘルス株式会社を設立し、動物薬事業と動物用ワクチン事業を統合したことによるコスト低減効果が寄与しました。
第3四半期までの事業動向を踏まえ、2022年11月8日の「連結業績予想の修正に関するお知らせ」で公表いたしました2023年3月期の連結業績予想を以下のとおり修正いたしました。
売上高は前回予想並みですが、営業利益は前回予想から60億円減少する見込みです。医薬品セグメント全体では計画通りに推移している一方、食品セグメントはエネルギーコストが想定以上に上昇しています。さらには、価格改定による売上数量への影響を最小限にとどめるためにマーケティング活動を強化しましたが、ヨーグルトなど一部商品ではその効果の発現が遅れています。
経常利益は前回予想から95億円減少する見込みです。食品セグメントにおいて営業利益が前回予想を下回る見込みであることに加え、持分法適用関連会社に関するのれんの一時償却などを見込んでいます。
親会社株主に帰属する当期純利益は前回予想から20億円増加する見込みです。食品セグメントにおける減益の影響に加え、医薬品セグメントにおいて事業構造改善費用を特別損失として計上する一方で、旧横浜研究所に関する固定資産売却益約109億円を特別利益として計上する見込みです。
売上高:1兆 580億円
・食 品:8,612億円
・医薬品:1,975億円
営業利益:775億円(営業利益率:7.3%)
・食 品: 600億円(6.9%)
・医薬品: 200億円(10.1%)
ROE:9.0%
2.財政状態の分析
〔資産〕
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は 1兆2,149億70百万円となり、前連結会計年度末に比べて 975億10百万円増加しました。これは受取手形及び売掛金が 438億07百万円、現金及び預金が203億17百万円、原材料及び貯蔵品が105億47百万円、建物及び構築物が73億81百万円、投資有価証券が39億70百万円増加したことによるものです。
〔負債〕
当第3四半期連結会計期間末における負債合計は 4,668億23百万円となり、前連結会計年度末に比べて 623億85百万円増加しました。これは短期借入金が 356億27百万円、コマーシャル・ペーパーが250億円増加したことによるものです。
〔純資産〕
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は 7,481億46百万円となり、前連結会計年度末に比べて 351億25百万円増加しました。これは自己株式が 96億30百万円増加(純資産としては減少)した一方、利益剰余金が 226億33百万円、為替換算調整勘定が 219億98百万円増加したことによるものです。
なお、自己資本比率は 58.2%(前連結会計年度末は 60.3%)となりました。
3.キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
区 分
前第3四半期
連結累計期間
当第3四半期
連結累計期間
増減額
営業活動によるキャッシュ・フロー
75,099
36,694
△38,405
投資活動によるキャッシュ・フロー
△45,379
△41,796
3,583
フリー・キャッシュ・フロー
29,720
△5,101
△34,822
財務活動によるキャッシュ・フロー
△9,811
21,300
31,111
現金及び現金同等物に係る換算差額
1,895
4,837
2,941
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)
21,804
21,035
△768
現金及び現金同等物の期首残高
39,011
64,872
25,861
新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額
16
-
△16
現金及び現金同等物の四半期末残高
60,832
85,908
25,076
営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務が増加した一方、税金等調整前四半期純利益や契約負債の減少、売上債権の増加などにより、前第3四半期連結累計期間より 384億5百万円収入減の 366億94百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、補助金の受取額が減少した一方で、有形固定資産の取得による支出の減少などにより、前第3四半期連結累計期間より 35億83百万円支出減の 417億96百万円の支出となりました。
これにより、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は前第3四半期連結累計期間より 348億22百万円支出増の51億1百万円の支出(前第3四半期連結累計期間は 297億20百万円の収入)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの増加や長期借入金の返済による支出の減少などにより、前第3四半期連結累計期間より 311億11百万円収入増の 213億円の収入(前第3四半期連結累計期間は 98億11百万円の支出)となりました。
これらの結果、当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は 859億8百万円となりました。
4.経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
5.会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
6.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
7.研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は212億99百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
8.従業員数
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの従業員の状況に重要な変動はありません。
9.生産、受注及び販売の実績
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの生産、受注及び販売の実績に著しい変動はありません。
10.主要な設備
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの主要な設備に関し、著しい変動及び変更はありません。