【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
①事業全体の状況
(単位:百万円)
売上高
営業利益
経常利益
親会社株主に帰属する当期純利益
1株当たり
当期純利益
(円 銭)
当連結会計年度
1,191,765
106,061
110,176
65,655
452.52
前連結会計年度
1,252,706
102,710
103,326
67,318
464.08
前年同期比(%)
95.1
103.3
106.6
97.5
–
当社グループは「2020中期経営計画」の基本コンセプトである「継続的戦略課題への取り組み」と「成長に向けた新たな挑戦」に基づき、「コア事業での高シェア・高収益の実現」「海外市場での成長基盤の確立に向けた積極的な事業拡大」「健康を軸とした新たな価値領域での仕掛け」「構造改革の継続的な実行と個別事業課題の克服」「経営基盤の進化とサステナビリティの推進」の5つの重点方針のもとに取り組みを進めました。
2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、食品セグメントでは個人消費動向が不安視され、医薬品セグメントでは医療機関受診患者数が大幅に減少していることに加えて薬価改定の影響を受けるなど、厳しい環境下での事業展開となりました。その中で、両セグメントともに生活に必要な食品・医薬品の安定供給に万全を期すとともに、費用の効率的な支出に取り組みました。また「2020中期経営計画」に沿って、コア領域・成長領域に経営資源を重点的に投下し、生産性向上の取り組みも進めました。
この結果、当連結会計年度の売上高は 1兆1,917億65百万円(前期比 4.9%減)、営業利益は 1,060億61百万円(同 3.3%増)、経常利益は 1,101億76百万円(同 6.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は656億55百万円(同 2.5%減)となりました。また、ROEは 11.1%、1株当たり当期純利益は 452.52円となりました。
当社グループでは、世界的な脅威となっている新型コロナウイルス感染症の予防に貢献すべく、ワクチンの開発・供給の取り組みを次のとおり進めています。
当社の事業子会社であるKMバイオロジクス株式会社(以下「KMバイオロジクス」)では、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と協業し、新型コロナウイルス感染症に対する不活化ワクチンの開発を進めています。2020年5月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する創薬支援推進事業の公募研究開発課題「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発(企業主導型)」1次公募に採択され、8月には同2次公募にも採択されました。9月には非臨床試験を開始し、2021年3月22日より国内第1/2相臨床試験を開始しました。加えて、この不活化ワクチンを国内に早期供給すべく、2020年7月に厚生労働省「ワクチン生産体制等緊急整備事業(第1次公募)」の事業者に採択され、生産に必要な設備の整備も進めています。
2020年6月に、当社の事業子会社である Meiji Seika ファルマ株式会社(以下「Meiji Seika ファルマ」)とKMバイオロジクスは、アストラゼネカ株式会社(以下「アストラゼネカ」)が日本へ導入する新型コロナウイルスワクチンについて、国内安定供給に向けた協議を進めることに合意しました。2021年2月には、Meiji Seika ファルマとKMバイオロジクスはそれぞれアストラゼネカと業務委受託契約を締結しました。契約に基づき、KMバイオロジクスは「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」で整備した設備を活用し、3月19日よりアストラゼネカから供給された原液の製剤化(バイアル充填・包装)を開始しました。Meiji Seika ファルマは自らが保有するワクチン流通・供給体制を活用してアストラゼネカのワクチンの保管・配送を担当し、KMバイオロジクスが製剤化する分を含め国内に供給する予定です。また、必要に応じて情報提供や安全性情報の収集を実施します。
②セグメントの状況
(単位:百万円)
報告セグメント
合計
食品
医薬品
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減
前連結
会計年度
当連結
会計年度
増減
売上高
1,049,559
999,673
△49,885
204,354
193,664
△10,689
1,253,914
1,193,338
△60,575
セグメント
利益
87,340
87,463
122
15,984
19,105
3,121
103,324
106,568
3,244
(注)売上高、セグメント利益は、セグメント間の取引を消去する前の金額によっております。
セグメントの業績の詳細は、次のとおりであります。
Ⅰ.食品
当セグメントには発酵デイリー(ヨーグルト、牛乳類、飲料等)、加工食品(チーズ、バター・マーガリン、クリーム、アイスクリーム、冷凍食品等)、菓子(チョコレート、グミ、ガム等)、栄養(スポーツ栄養、乳幼児ミルク、流動食、美容、OTC等)、海外、飼料、砂糖及び糖化穀粉等の製造・販売、運送等が含まれております。
売上高は前連結会計年度を下回りました。栄養事業や海外事業は前連結会計年度を上回り、加工食品事業は前連結会計年度並みとなりました。発酵デイリー事業や菓子事業は前連結会計年度を下回りました。また、その他国内子会社は、株式譲渡により3社が連結対象子会社から除外されたことなどにより、前連結会計年度を大幅に下回りました。
セグメント利益は、前連結会計年度並みとなりました。減収の影響を販促費などのコストコントロールによりカバーしました。
事業別の概況は、次のとおりです。
■発酵デイリー事業(ヨーグルト、牛乳類、飲料等)
売上高は、一部商品の販売終了や販売エリア縮小の影響により前連結会計年度を下回りました。体調管理意識の高まりや巣ごもり消費の拡大を背景に「明治おいしい牛乳」は増収となりました。「ザバスミルクプロテイン」は運動不足解消ニーズの高まりにより、大幅な増収となりました。プロバイオティクスは当第3四半期までは好調に推移しましたが、前第4四半期に急激な需要の増加があった反動を受け、前連結会計年度並みとなりました。
営業利益は、販促費や減価償却費などの減少により前連結会計年度を大幅に上回りました。
■加工食品事業(チーズ、バター・マーガリン、クリーム、アイスクリーム、冷凍食品等)
売上高は前連結会計年度並みとなりました。家庭内需要の拡大により市販アイスクリームや市販チーズは好調に推移しました。外出自粛要請などの影響を受けた業務用食品は前連結会計年度を下回りました。
営業利益は、物流費や減価償却費などの増加により前連結会計年度を大幅に下回りました。
■菓子事業(チョコレート、グミ、ガム等)
売上高は前連結会計年度を下回りました。「きのこの山・たけのこの里」や健康志向チョコレートは好調に推移しましたが、コンビニエンスストア向け商品が減収となり、チョコレート全体では減収となりました。また、グミやガムは通勤・通学時やオフィスでの需要減少により大幅な減収となりました。
営業利益は、販促費などの経費削減に努めましたが、減収の影響により前連結会計年度を大幅に下回りました。
■栄養事業(スポーツ栄養、乳幼児ミルク、流動食、美容、OTC等)
売上高は前連結会計年度を上回りました。スポーツプロテイン「ザバス」は、運動不足解消ニーズの高まりや顧客層の拡大により大幅な増収となり、流動食「明治メイバランス」も好調に推移しました。一方、インバウンド需要の減少により乳幼児ミルクは減収となり、スポーツアミノ酸「ヴァーム」はスポーツイベントの減少により大幅な減収となりました。
営業利益は、2019年11月に稼働した粉末プロテイン工場の減価償却費が増加しましたが、増収による効果と経費削減に努めたことにより、前連結会計年度を上回りました。
■海外事業(海外子会社、輸出)
売上高は前連結会計年度を上回りました。中国子会社の牛乳・ヨーグルト事業は前連結会計年度並みとなりましたが、菓子事業やアイスクリーム事業は巣ごもり消費の拡大により増収となりました。米国子会社は減収となりました。
営業利益は、販促費の増加などにより前連結会計年度を大幅に下回りました。
■その他国内子会社(飼料、砂糖及び糖化穀粉、運送等)
売上高は、畜産品などの子会社3社が株式譲渡により連結対象子会社から除外されたことに加え、物流子会社や砂糖商社などの減収により、前連結会計年度を大幅に下回りました。
営業利益は、減収の影響により前連結会計年度を下回りました。
Ⅱ.医薬品
当セグメントには、医療用医薬品及び農薬・動物薬等の製造・販売が含まれております。
売上高は前連結会計年度を下回りました。国内事業は、薬価改定に加えて新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減収となりました。海外事業も同感染症拡大の影響により、前連結会計年度を大幅に下回りました。KMバイオロジクスは主力品の増収により、前連結会計年度を上回りました。
セグメント利益は、国内事業は大幅な減益となりましたが、海外事業とKMバイオロジクスは大幅な増益となり、全体では前連結会計年度を大幅に上回りました。
事業別の概況は、次のとおりです。
■国内事業
売上高は前連結会計年度を下回りました。接種意向の高まりを背景にインフルエンザワクチンは大幅な増収となりました。新型コロナウイルスワクチンの取り組みに関する一時金収入も寄与しました。一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて医療機関受診患者数が減少したことにより、抗菌薬「メイアクト」やジェネリック医薬品は大幅な減収となりました。抗うつ薬「リフレックス」も薬価改定の影響により大幅な減収となりました。
営業利益は、前連結会計年度を大幅に下回りました。経費削減に努めましたが、主力品の減収と薬価改定の影響を大きく受けました。
■海外事業
売上高は前連結会計年度を大幅に下回りました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた中国の子会社は、大幅な減収となりました。
営業利益は、前連結会計年度を大幅に上回りました。インドやタイなどの子会社における経費削減が寄与したことに加え、ロイヤリティー収入が増加しました。
■KMバイオロジクス
売上高は、主力のインフルエンザワクチンが大幅に伸長したことに加え、日本脳炎ワクチン「エンセバック」及びB型肝炎ワクチン「ビームゲン」が好調に推移し、前連結会計年度を上回りました。
営業利益は前連結会計年度を大幅に上回りました。増収の影響に加え、インフルエンザワクチンの生産効率が向上したことや棚卸評価減の金額が減少したことなどが寄与しました。
③2020中期経営計画の振り返り(2019年3月期~2021年3月期)
当連結会計年度は「2020中期経営計画」の最終年度であり、売上高、営業利益(率)、海外売上高、ROEの目標指標の達成を目指してまいりました。中期経営計画の3か年で上昇・改善した指標もありましたが、目標達成には至りませんでした。売上高は、1兆3,500億円の目標値に対し、1兆1,917億円で未達となりました。営業利益も1,250億円の目標値に対し、1,060億円で未達となったものの、9期連続の増益、かつ過去最高益となりました。利益目標が未達になったことにより、ROEは目標の13%台に対し、11.1%に留まりました。セグメント別には、食品セグメントはヨーグルトやチョコレートなどのコア事業が伸び悩んだことなどにより、売上高は1兆1,600億円の目標値に対し9,996億円、営業利益は1,100億円の目標値に対し874億円となり、いずれも目標値を下回りました。一方、医薬品セグメントはKMバイオロジクスへ資本参加しワクチン事業に進出したことなどにより、売上高は1,900億円の目標値に対し1,936億円、営業利益は150億円の目標値に対し191億円となり、いずれも目標値を上回る結果となりました。海外売上高については、1,420億円(食品セグメント 900億円、医薬品セグメント 520億円)を目指し、中国における投資促進や「ザバス」の展開、ダノンとの事業連携による欧州への進出といった取り組みを進めてまいりましたが、868億円(食品セグメント 491億円、医薬品セグメント 376億円)となりました。引き続き、海外市場での成長基盤の確立を重点方針として取り組んでまいります。
「2020中期経営計画」の総括は次のとおりであります。
重点方針
結果
1
コア事業での高シェア・高収益の実現
・食品セグメントは栄養が成長、ヨーグルト(プロバイオティクス含
む)とチョコレートが停滞
・医薬品セグメントは新規事業としてワクチン事業に進出、既存事業は
新型コロナウイルス感染症により大きな環境変化に直面
2
海外市場での成長基盤の確立に向けた積極的な事業拡大
・中国事業における工場新設投資を決定し、「ザバス」の展開を開始
・ダノンと事業提携し、欧州に進出
3
健康を軸とした新たな価値領域での仕掛け
・価値共創センターの設立
4
構造改革の継続的な実行と個別事業課題の克服
・工場閉鎖など生産体制の見直しやノンコア事業の譲渡を推進
・牛乳事業の構造改革の進展
5
経営基盤の進化とサステナビリティの推進
・チーフオフィサー制導入
・サステナビリティ推進組織設置、長期環境ビジョン策定
④来期の見通しについて
2022年3月期は、引き続き新型コロナウイルス感染症拡大による世界経済や国内消費動向への影響が懸念されますが、当社グループは「2023中期経営計画」の各戦略を速やかに実行してまいります。
食品セグメントでは、国内において消費者の健康や栄養に対する意識が変化する中で生まれる新たな需要を確実に捉えていきます。プロバイオティクスやヨーグルトは健康機能の訴求を強化します。またチョコレートや業務用食品は“ウィズコロナ”という新しい社会に適合した商品提案を行い、需要を喚起してまいります。加えて、大きな成長を期待する「明治タンパクト」シリーズや「ザバス」などの栄養分野の商品は、積極的なマーケティング活動でさらなる販売拡大を目指します。海外では、引き続き中国における生産・販売能力の強化に取り組んでまいります。中国市場において新たにスタートしたプロバイオティクスや「ザバス」の販売など、次の成長の柱となる事業の育成にも取り組みます。
医薬品セグメントでは、海外事業や農薬・動物薬事業の伸長と新型コロナウイルスワクチンの取り組みにより、国内における薬価改定の影響をカバーして計画の達成を目指します。また、当社グループが持つ感染症に関する高い技術・設備や豊富な経験を活用し、研究機関と協力の上、新型コロナウイルス感染症に対する不活化ワクチンの開発を進めてまいります。
③及び④における各指標の推移は、次のとおりであります。
セグメント別の売上高及び営業利益の推移は、次のとおりであります。
(注)2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用するため、上記の「2021年度計画値」及び「2023年度中計目標値」は当該会計基準等を適用した後の金額となっております。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業のセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
食品
785,147
97.7
医薬品
119,860
102.0
報告セグメント計
905,008
98.3
合計
905,008
98.3
(注)1 上記金額は、消費税等抜きの販売価額により表示しております。
2 セグメント間の取引は含まれておりません。
②受注実績
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立てて生産しております。
一部受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業のセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年同期比(%)
食品
998,988
95.2
医薬品
192,776
94.6
報告セグメント計
1,191,765
95.1
合計
1,191,765
95.1
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
2 総販売実績に対する売上の割合が10%以上の相手先はありません。
3 セグメント間の取引は含まれておりません。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて 680億80百万円増の1兆670億円となりました。これは投資有価証券が 408億96百万円、建設仮勘定が 113億80百万円、退職給付に係る資産が77億57百万円増加したことなどによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末に比べて 62億95百万円増の4,076億42百万円となりました。これは短期借入金が136億24百万円、支払手形及び買掛金が 73億43百万円減少の一方、未払法人税等が 102億57百万円、社債が 100億円、繰延税金負債が 19億44百万円増加したことなどによるものです。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて 617億85百万円増の6,593億58百万円となりました。これは利益剰余金が 430億37百万円、退職給付に係る調整累計額が 88億49百万円、その他有価証券評価差額金が 69億93百万円増加したことなどによるものです。
この結果、流動比率は前連結会計年度末に比べて 5.9ポイント増の168.4%、デット・エクイティ・レシオは 0.03ポイント減の0.16倍、自己資本比率は 1.9ポイント増の58.2%となり、資金の流動性及び財務の安定性を維持しております。なお、1株当たり純資産は前連結会計年度末に比べて 403円62銭増加し、4,282円80銭になりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性
①資本政策の方針
事業活動により得た資金は、持続的な成長に向けて、将来への成長投資や研究開発へ積極的に充当してまいります。また、グループ全体の資本効率の観点から、成長投資については財務規律との調和を図るとともに、政策保有株式などの非事業用資産については圧縮してまいります。
株主還元についても経営における重要課題と認識しており、連結配当性向について2024年3月期までに40%水準に引き上げるとともに、最適資本構成や資金余力等を勘案し、必要に応じて自己株式の取得も検討してまいります。
②資金調達の方針
資金調達については、資金需要や金利環境等を踏まえつつ、多様化した調達手段の中から資本コストの低減を第一義として、負債により調達することを基本方針とします。一方で、負債の増加に伴う信用リスクの観点から、原則としてデット・エクイティ・レシオは0.3倍までを上限とし、金融情勢に左右されないような高い信用格付の維持にも努めます。なお、本報告書提出時点において、当社は日本格付研究所より「ダブルAマイナス(安定的)」の信用格付を取得しております。
主要な金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務体質を有していることから、当社グループの事業拡大、運営に必要な投資資金及び運転資金の金融機関からの調達に関しては問題なく実施できると認識しております。なお、国内の金融機関との間で合計200億円のコミットメントラインを設定しており、期中の現預金残高とコミットメントライン設定額を合わせた手元流動性の水準を、連結売上高の1か月程度に設定することで、緊急時の流動性を確保いたします。
また、当社グループは、グループ会社を対象に、資金調達の安定化と調達コストの低減を図るため、グループファイナンス制度を導入しております。
当社は、「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」の実現に向けた活動に必要な資金調達手段として、2021年1月にICMA(国際資本市場協会:International Capital Market Association)の定めるグリーンボンド原則及びソーシャルボンド原則に基づいた、「サステナビリティファイナンス・フレームワーク」を策定しました。今後は、本フレームワークに基づき、サステナビリティファイナンスを積極的に活用し、社会課題解決への貢献を一層進めてまいります。
「サステナビリティファイナンス・フレームワーク」の概要は次のとおりであります。
テーマ
適格プロジェクト(資金使途)
プロジェクト分類
持続可能な調達活動
①サステナブルカカオ調達
②カカオ農家支援活動(メイジ・カカオ・サポート)
③責任あるサプライチェーン構築
グリーン
サステナビリティ
ソーシャル
環境との調和
④国内および海外における工場の省エネ化・創エネ化
⑤国内および海外における水資源の確保・保護
⑥環境に配慮した商品パッケージ(プラスチック・紙)
への転換
⑦地域生態系の保護活動
グリーン
こころとからだの健康に貢献
⑧乳幼児栄養への取り組みに係る設備投資・研究開発等
(一般粉ミルクおよび特殊ミルク)
⑨感染症対策に係る研究開発および設備投資
⑩健康寿命の延伸に係る研究開発
⑪次世代育成に貢献する活動
ソーシャル
なお、当社は上記フレームワークより資金使途を選定し、2021年4月23日に第10回無担保社債(サステナビリティボンド)を発行し、100億円の資金調達を実施しております。
③キャッシュ・フローの状況
区分
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減額
(百万円)
営業活動によるキャッシュ・フロー
114,103
123,683
9,580
投資活動によるキャッシュ・フロー
△70,811
△93,110
△22,298
フリー・キャッシュ・フロー
43,291
30,573
△12,718
財務活動によるキャッシュ・フロー
△30,287
△28,293
1,994
現金及び現金同等物に係る換算差額
△375
△378
△3
現金及び現金同等物の増減額(△減少)
12,628
1,901
△10,727
現金及び現金同等物の期首残高
24,481
37,110
12,628
現金及び現金同等物の期末残高
37,110
39,011
1,901
キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。
区分
第8期
第9期
第10期
第11期
第12期
自己資本比率(%)
50.8
52.7
52.5
56.3
58.2
時価ベースの自己資本比率(%)
153.6
126.9
129.8
111.5
96.8
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
1.6
1.1
1.0
0.9
0.8
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
105.1
140.3
143.2
157.0
197.2
(注)各指標の算出方法
自己資本比率:(純資産の部-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額(期末株価終値×発行済株式総数)/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(社債、借入金、コマーシャル・ペーパー)/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い(利息の支払額)
※ 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式総数をベースに計算しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 95億80百万円収入増の 1,236億83百万円の収入となりました。これは売上債権の回収が減少した一方、法人税等の支払額や仕入債務の支払額が減少したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 222億98百万円支出増の 931億10百万円の支出となりました。これはオーストアジア社の株式取得などの投資有価証券の取得による支出が増加したことなどによるものです。
これにより、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、前連結会計年度より 127億18百万円収入減の 305億73百万円の収入となりました。
創出したフリー・キャッシュ・フローについては、配当金の支払いにより株主還元を行うとともに、有利子負債の返済に充当しております。配当については増配を実施し、株主還元の充実に努めました。今後も安定的継続的な利益還元を実施します。なお、配当金の支払額は前連結会計年度末より 14億59百万円支出増の 224億46百万円、配当性向は 35.4%であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ 19億94百万円支出減の 282億93百万円の支出となりました。これは短期借入金の減少や長期借入金の返済による支出が増加した一方、社債の発行による収入や長期借入れによる収入が増加したことなどによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は 390億11百万円となりました。
当連結会計年度においては、事業活動に伴う運転資金は金融機関からの借入れやコマーシャル・ペーパー及び社債の発行により調達いたしました。なお、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による資金繰りへの影響は特段ありませんでしたが、期中の現預金残高とコミットメントライン設定額を合わせた手元流動性の水準を、800~900億円程度に維持することにより、緊急時に備えました。
当連結会計年度における資金調達と資金配分の関係は、次のとおりであります。
配当金及びEPS(1株当たり当期純利益)の推移は、次のとおりであります。
(注)2015年10月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施しており、2014年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり配当金及び1株当たり当期純利益を算定しております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
なお、「(1)経営成績の状況」に記載のとおり、新型コロナウイルス感染症拡大による当社グループ業績におけるマイナスの影響としては、食品セグメントでは外出自粛要請などの影響を受けた業務用食品の減収、通勤・通学時やオフィスでの需要減少によるチョコレート・グミ・ガムの減収、インバウンド需要の減少による乳幼児ミルクの減収、スポーツイベントの減少による「ヴァーム」の減収などがありました。また、医薬品セグメントでは国内事業での医療機関受診患者数の減少による抗菌薬「メイアクト」やジェネリック医薬品の減収、海外事業での中国子会社の減収がありました。
一方で、食品セグメントでの体調管理意識の高まりや巣ごもり消費の拡大による「明治おいしい牛乳」や市販アイスクリーム・市販チーズの増収、運動不足解消ニーズの高まりによる「ザバスミルクプロテイン」や「ザバス」の増収、医薬品セグメントでの接種意向の高まりを背景としたインフルエンザワクチンの増収など、プラスの影響もありました。加えて、食品・医薬品ともに減収の影響を費用の効率的な支出などによりカバーすることで、結果としていずれのセグメントも前連結会計年度に比べて増益となりました。
新型コロナウイルス感染症の収束時期などを想定することは困難であるものの、食品セグメントでは“ウィズコロナ”という新しい社会に適合した商品提案を行い、医薬品セグメントでは新型コロナウイルスワクチンの取り組みを進めるとともに、引き続き費用の効率的な支出に努めてまいります。従って、新型コロナウイルス感染症による当社グループの翌連結会計年度以後の業績に与える影響は限定的であり、会計上の見積りへの影響も軽微と想定し、当連結会計年度の見積もりを行っております。