【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況第1四半期会計期間の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。このため、当第3四半期累計期間における経営成績に関する説明におきまして、売上高につきましては、前年同期比増減率は記載しておりません。なお、営業利益以下の各利益につきましては、影響が軽微であるため、当該会計基準等を適用する前の数値を用いて前年同期比増減率を記載しております。詳細につきましては、「第4 経理の状況 1 四半期財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
当第3四半期累計期間(2022年1月1日~2022年9月30日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の第6波及び第7波は、オミクロン変異株によって大きな感染拡大となりましたが、行動制限が段階的に緩和され、社会経済活動は正常化に向かいました。一方、世界経済がコロナ禍から回復に向かうなか、半導体不足、労働力不足、物流停滞などによる供給制約を背景に資源価格が高騰を続けました。さらに、ウクライナ問題の長期化の影響が加わり、各国は急激なインフレを抑えるため金融引き締め政策を進めており、金利上昇による世界経済の景気後退が懸念される状況となっております。わが国経済におきましても、金融緩和政策の維持を背景として、日米の金利差拡大による急速な円安進行がインフレに拍車をかけ、急激な物価上昇に伴う景気の下振れが懸念されるなど、先行きの不透明感は一層強まっております。体外診断用医薬品業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、新型コロナウイルスの遺伝子検査や抗原検査等の検査需要は急激に高まりましたが、一方では、インフルエンザウイルスをはじめとした既存の感染症は、新型コロナウイルス感染症に対する感染防御の効果の波及や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を受けております。当第3四半期累計期間におきましても、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染症の第7波は、それまで過去最大であった第6波を大きく上回る感染再拡大となるなど、依然としてその影響は続いております。オミクロン変異株は、それまでの変異株より感染力は高いものの重症化リスクは低下しているといわれており、このような変異株による感染再拡大に対応するため、正常な社会経済活動の維持を優先しながら感染拡大防止との両立を目指す試行錯誤が続いております。今後の感染症全般の検査需要の見通しにつきましては、そのような試行錯誤を重ねたなかから、新型コロナウイルス感染症と共生するための最適解を見出すことができるのか、さらに、その共生する状況下において、過去2年程の間に免疫獲得の機会を十分に持てなかった既存の感染症全般(インフルエンザ等)はどのような影響を受けるのかなど、状況の推移を注視していく必要があります。
このようななか、当社は、新型コロナウイルス感染症の第6波及び第7波の感染急拡大に伴い需要が急増した遺伝子検査キット及び抗原キットの増産に取り組み、安定供給に尽力いたしました。他方では、「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」を用いる新たな検査項目として、2022年1月、インフルエンザウイルス核酸キット「スマートジーン Flu A,B」、同年2月、クロストリジウム・ディフィシル核酸キット「スマートジーン CD トキシンB」の発売を開始しており、また、既に製造販売承認を取得していた「スマートジーン H.pylori G」につきましては、同年11月の発売を目指し保険収載の手続きを進めるなど、スマートジーンシリーズの検査項目の拡充にも注力いたしました。
このような環境下におきまして、当第3四半期累計期間の売上高は、132億81百万円(前期同期は105億76百万円)となりました。当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントでありますが、市場分野別の売上高は、以下のとおりであります。
病院・開業医分野におきましては、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染症の冬場の第6波に続き、夏場の第7波は過去最大の規模となり、検査薬の高い需要が継続しました。この影響により、遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」は、約169万テスト(第1四半期 55万テスト、第2四半期 45万テスト、第3四半期 69万テスト)を出荷しました。また、新型コロナウイルス抗原キット、新型コロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原同時検出キット及び新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法)の出荷も急増し(抗原キット合計 約335万テスト)、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高は、117億97百万円(前年同期は79億79百万円)となりました。一方、インフルエンザ検査薬につきましては、2021/2022シーズンのインフルエンザの流行は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響により極めて低い水準となり、インフルエンザ検査薬全体の売上高は、2億17百万円(前年同期は1億32百万円(返品分除く))となりました。その他感染症項目の検査薬につきましては、新型コロナウイルス感染症は感染再拡大を繰り返し長期化している状況のなか、感染症項目によって増減はあるものの、全体としては前年同期と同水準となりました。「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」につきましては、世界的な半導体不足の影響により出荷は断続的となり、当第3四半期累計期間は約400台(前年同期は約2,800台)を出荷し、累計販売台数は約4,600台となりました。これらの結果、その他感染症項目の検査薬を含むその他の検査薬及び機器全体の売上高は、主に「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」の減収の影響により、10億20百万円(前年同期は21億53百万円)となりました。以上により、病院・開業医分野全体の売上高は、130億35百万円(前年同期は102億64百万円)となりました。
OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬及び排卵日検査薬は、新型コロナウイルス感染症の第6波及び第7波の影響もあり、OTC・その他分野全体の売上高は、2億45百万円(前年同期は3億11百万円)となりました。
利益面につきましては、新型コロナウイルス感染症の第6波及び第7波の感染急拡大を背景として、遺伝子検査キット及び抗原キットの需要拡大に伴い大幅な増収となり、営業利益は86億96百万円(前年同期比53.4%増)となりました。なお、外国為替相場の急激な変動に伴い、為替差益70百万円を営業外収益に計上しております。これは主に当社が保有する外貨建資産を期末為替レートで評価替えしたことにより発生したものであります。これらの結果、経常利益は87億73百万円(前年同期比54.7%増)、四半期純利益は61億32百万円(前年同期比50.3%増)となりました。
インフルエンザ検査薬は、過去7年(2013年~2019年)ほどにわたり、当社の売上高の約50%を占める主力製品でありましたが、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、インフルエンザの流行は世界的に著しく低い水準に抑えられ、2020年第1四半期よりインフルエンザ検査薬の売上高は大幅に減少しております。一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、遺伝子検査の需要が急激に高まるなか、2020年第3四半期より発売を開始した遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の売上高が急激に増加しております。また、これに続き発売を開始した抗原キットの売上高も加わり、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高が急増しております。結果として、2020年以降はインフルエンザ検査薬への依存度が低下し、新型コロナウイルス検査薬への依存度が高まる状況となっております。新型コロナウイルス検査薬は、今後の感染拡大の動向やそれに伴う医療・検査体制の変化などの外的要因によって、本検査薬の需要や売上高は大きく左右される可能性があります。当事業年度(第46期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益は、以下のとおりであります。
第46期(2022年12月期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益
(単位:百万円)
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
第46期 合計
売上高
4,188
3,125
5,967
―
13,281
内 新型コロナウイルス検査薬
3,684
2,730
5,383
―
11,797
内 インフルエンザ検査薬
107
30
78
―
217
営業利益
2,743
1,832
4,120
―
8,696
(ご参考) 直近2事業年度の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益又は営業損失
第45期(2021年12月期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益
(単位:百万円)
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
第45期 合計
売上高
2,443
3,910
4,222
2,561
13,137
内 新型コロナウイルス検査薬
1,557
3,118
3,303
1,815
9,794
内 インフルエンザ検査薬(注)3
38
37
56
106
239
営業利益
877
2,246
2,544
1,029
6,698
第44期(2020年12月期)
(単位:百万円)
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
第44期 合計
売上高
1,052
610
828
1,714
4,205
内 新型コロナウイルス検査薬
-
-
249
1,020
1,270
内 インフルエンザ検査薬
420
165
30
134
750
営業利益又は営業損失(△)
△1
△127
△109
655
416
(注)1.新型コロナウイルス検査薬には、「スマートジーン SARS-CoV-2」、「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬、「クイックチェイサー SARS-CoV-2/Flu(Flu A,B)」及び「クイックチェイサー SARS-CoV-2」が含まれております。2.インフルエンザ検査薬には、「クイックチェイサー Flu A,B」、「クイックチェイサー Auto Flu A,B」、富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬及び「スマートジーン Flu A,B」が含まれております。3.返品分を除いた金額を記載しております。
当第3四半期会計期間末の財政状態につきましては、以下のとおりであります。当第3四半期会計期間末における資産の残高は、前事業年度末に比べ42億93百万円増加し、164億86百万円となりました。これは主に、棚卸資産の減少1億1百万円があったものの、売掛金の増加24億13百万円、現金及び預金の増加16億52百万円、電子記録債権の増加3億32百万円があったことによるものであります。当第3四半期会計期間末における負債の残高は、前事業年度末に比べ2億54百万円減少し、39億9百万円となりました。これは主に、流動負債のその他に含まれている未払消費税等の増加1億16百万円、買掛金の増加75百万円及び賞与引当金の増加74百万円があったものの、未払法人税等の減少6億48百万円があったことによるものであります。当第3四半期会計期間末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ45億48百万円増加し、125億77百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加45億48百万円によるものであります。
(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期累計期間において、当社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(3) 研究開発活動当第3四半期累計期間における研究開発活動の総額は4億20百万円であります。なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(4) 生産、受注及び販売の実績当第3四半期累計期間において、生産実績及び販売実績が著しく増加しております。これにつきましては、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。