【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第2四半期におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化で、雇用情勢や企業収益が改善するなか、個人消費や設備投資の持ち直しの動きが見られ、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方で、欧米各国で金融引き締めの動きが続く中、世界的な景気減退が懸念されており、エネルギーや原材料価格の高止まりに加え、急激な金融資本市場の変動なども相俟って、依然として、先行きは不透明な状況が続いております。
当社と関連性が高いわが国海運・造船業界は、海運業界では、新型コロナ禍に高騰したコンテナ船市況において、物流網の正常化や中国、欧州などの景気減退懸念に呼応した市況の軟化傾向が散見されるものの、一方、新造船供給圧力が限定的であり、タイトな船腹需給・好況を持続している自動車運搬船やエネルギー輸送船などが、収益の下支えをすることで、おおむね、堅調に推移しております。また、造船業界においては、将来的な世界経済の成長や人口増加による海上荷動き量の伸長に備えた新造船建造需要が引き続き旺盛であり、手持ち工事量を急回復させたあとも、環境規制に適合した最新鋭省エネ船を中心に先行き案件の商談対応を続けております。
このような状況下、当社は、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、主機の受注拡大を具体化し、更にはグローバルライセンサーとして、ライセンス事業を強化することで、世界シェアの向上を目指しております。また、脱炭素の取り組みを進める顧客や業界、社会の要請に応えるべく、当社独自の技術力に磨きをかけ、次世代脱炭素燃料エンジンの開発にも並行して取り組み、気候変動課題の解決に資する革新製品の開発・製品化を進めることで、ESG経営の深化と持続的な企業価値の向上を目指しております。
当第2四半期における経営成績は、売上高は7,941百万円となり、前年同四半期比1.5%の減収、損益は、営業利益は570百万円となり、159.6%の増益、経常利益は673百万円となり、139.5%の増益、四半期純利益は618百万円となり、117.6%の増益となりました。主機関は、次世代脱炭素燃料エンジン対応のための設備工事の影響もあり、前年同期比で売上高が減少したものの、修理・部品等で、アフターサービス、ライセンス、部品供給の各事業が堅調に推移したことで、全体では減収・増益となりました。
①売上高および受注状況
当第2四半期における主機関の売上高は2,197百万円となり、前年同四半期比では、2,161百万円(△49.6%)の減収となりました。また、受注高は11,061百万円となり、6,013百万円(119.1%)の増加、受注残高は21,284百万円となり、13,082百万円(159.5%)の増加となりました。
上半期は、アンモニア・水素燃料エンジン製造に向けた設備工事を進捗させており、主機関の生産に一定の影響がありました。一方で、工事期間中においても積極的な営業活動を継続しており、当社UEエンジンの優れた環境・燃費性能を訴求することで、最新鋭省エネ主機関であるLSH型を中心として受注を大きく積み上げました。また、販売単価の面でも、窒素酸化物3次規制(NOxTierⅢ)に適合する環境対応設備(EGR/SCR)を主機関に搭載する比率が向上したこと、最先端となる層状噴射装置を搭載したLSJ型機関を販売したことなどで、上昇傾向が続きました。これらの結果、受注残高は上半期に大きく伸長しております。これを梃子に、下半期では、これまで以上の速度で受注残高を売上高に転換していきます。具体的には、当社工場においては、自社設備を最大限に稼働させ、集中的に生産することで、増産体制に移行いたします。また、国内ライセンシーへの主機関の製造委託も進捗させており、売上高の増加に寄与していきます。こうした取り組みで、通期の売上高は、前年度比で大幅な増収に転じる見通しです。
修理・部品等では、当第2四半期の売上高は5,744百万円となり、前年同四半期比2,036百万円(54.9%)の増収となりました。また、受注高は4,724百万円となり、575百万円(13.9%)の増加、受注残高は3,643百万円となり、694百万円(23.5%)の増加となりました。
アフターサービスでは、コロナ禍からの正常化、行動制限の緩和もあり、全般として堅調に推移しました。当社は、エンジンユーザー様への丁寧な対応を継続することで、船舶の稼働率改善に伴うメンテナンス需要などを取り込んでおり、売上高および受注残高は前年同四半期を上回って推移しております。また、ライセンスでは、UEエンジンのグローバル展開を推進してきたことで、リプレース需要の見込まれる中国内航船マーケット向けを中心に、ライセンシーは豊富な受注残高を抱えており、新たにライセンスを供与した中国/GDF社(広州柴油機廠股份有限公司/Guangzhou Diesel Engine Factory Co., Ltd.)も順調に立ち上がっております。また、これに伴い、ライセンシーからのロイヤリティー収入やライセンシー向けのキーコンポーネントの販売も伸長しました。
②損益
主機関では、設備工事を見据えた生産時期の調整で工場操業を平準化するとともに、生産計画最適化による同型エンジンの連続生産などで生産性を高めており、今後、下半期には集中的に生産を進めることで、生産効率の更なる改善を見込んでおります。また、修理・部品等では、アフターサービス、ライセンス、部品供給のいずれもが、堅調に推移することで増収となり、増益に繋がりました。研究開発については、グリーンイノベーション基金事業のご支援も仰ぎつつ、アンモニア・水素燃料エンジンの開発を予定通り進捗中です。この結果、開発進捗に応じた研究開発費を計上しておりますが、業績は好調に推移していることから、損益への影響を吸収しております。また、開発進捗見合いで、基金事業からの交付金を受け取ることで、営業外収益に計上しております。なお、この先、下半期に、水素燃料エンジン実機製造に向けた燃料供給装置・運転装置などが完成する予定であり、その際に、交付金の受け取り額が大きく増加し、営業外収益が大きく伸びる見通しです。
③主なトピックス
当第2四半期における取り組みの成果として、主なトピックスは以下の通りです。主機関では環境対応を軸とした製品競争力の強化を事業成長のドライバーとしており、足元では重油燃料エンジンを対象とし、その先には脱炭素燃料エンジンの開発を進捗させております。また、修理・部品等では、ライセンス事業のグローバル展開が成長ドライバーであり、海外でのライセンスおよびアフターサービスを更に強化する取り組みを進めております。
1)水素燃料船の実証運航に向けて基本設計承認を取得
水素を燃料とする多目的船のリスク評価を行い、一般財団法人日本海事協会から区画配置コンセプトに関する基本設計承認(Approval in Principle:以下、「AiP」)を、関係各社と共に取得しました。大型低速2ストローク水素燃料エンジンを主機関として搭載する船舶に関するAiP取得は世界初となります。本船舶は、NEDO/グリーンイノベーション基金事業の一環として2027年度頃から2年間、実証運航を行う予定であり、当社は水素燃料エンジンを2026年度までに本船舶に搭載する予定です。本船舶の実船実証運航を通し、海運業界におけるGHG(温室効果ガス)削減と2050年カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。
2)カスタマーサポートセンター開設(中国/上海)
海外ライセンシーに対する各種サポートおよび海外におけるUEエンジン搭載船のアフターサービスを強化するため、2023年8月にカスタマーサポートセンターを中国/上海に開設しております。特に中国においては、ライセンシーがUEエンジンの連続生産体制に移行しており、ライセンシー製UEエンジン搭載船が、今後も順次就航予定です。当社は海外ライセンシーとの連携強化を図りつつ、お客様の安全運航に貢献できるよう、きめ細かいサービスを提供してまいります。
④財政状態
流動資産は、前事業年度末に比べ26.7%増加し、19,262百万円となりました。これは主として現金及び預金が426百万円増加、受取手形及び売掛金が731百万円増加、製品が2,929百万円増加したことなどによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べ8.7%増加し、5,666百万円となりました。これは主として有形固定資産が176百万円増加、無形固定資産が36百万円増加、投資その他の資産が242百万円増加したことなどによるものであります。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ22.1%増加し、24,929百万円となりました。
流動負債は、前事業年度末に比べ30.5%増加し、13,628百万円となりました。これは主として電子記録債務が938百万円増加、受注損失引当金が990百万円増加、前受金が1,638百万円増加、その他流動負債が324百万円減少したことなどによるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べ27.8%増加し、3,354百万円となりました。これは主として長期借入金が760百万円増加したことなどによるものであります。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ29.9%増加し、16,982百万円となりました。
純資産合計は、前事業年度末に比べ8.2%増加し、7,946百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期累計期間における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ426百万円増加し、4,688百万円となりました。
当第2四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
棚卸資産の増加3,093百万円、前受金の増加1,638百万円、受注損失引当金の増加990百万円、仕入債務の増加813百万円などがあり、営業活動によるキャッシュ・フローは398百万円の収入(前年同四半期は257百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出621百万円などがあり、投資活動によるキャッシュ・フローは678百万円の支出(前年同四半期は122百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期借入れによる収入1,000百万円などがあり、財務活動によるキャッシュ・フローは706百万円の収入(前年同四半期は230百万円の支出)となりました。
(3)経営方針・経営戦略等
当第2四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期累計期間における当社の研究開発費の総額は、397百万円であります。
なお、当第2四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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