【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりである。
① 財政状態及び経営成績の状況
積水化学グループの長期ビジョン「VISION 2030」に基づき策定した、中期経営計画「Drive 2022」の最終年度となる2022年度の事業環境として、自動車生産は半導体不足による減産の影響があったものの、前連結会計年度を上回る水準で推移した。スマートフォン出荷台数は第2四半期以降の中国を中心とした在庫調整の影響により、前連結会計年度を大幅に下回って推移した。国内の住宅着工数は前期を下回って推移した。
そのような環境のもと、高付加価値品の販売拡大に加えて売値改善が進捗、為替の効果もあり、売上高は過去最高となった。
また、原燃料・部材価格の高騰の影響を大きく受けたが、売値の改善、高付加価値品の販売拡大、コストダウンなどにより挽回し、営業利益は増益となった。経常利益は為替の効果もあり増益となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に減損損失の計上があった影響で大幅な増益となった。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、過去最高益を更新した。
その結果、売上高は前連結会計年度比7.3%増の1,242,521百万円、営業利益は3.1%増の91,666百万円、経常利益は7.5%増の104,241百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は86.9%増の69,263百万円となった。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更している。詳細は、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表]の[注記事項](セグメント情報等)」に記載のとおりである。以下の前連結会計年度比については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較をしている。
セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
イ)住宅事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比4.3%増の537,371百万円、営業利益は前連結会計年度比7.0%減の32,831百万円となった。当連結会計年度は、売上高は新築住宅、リフォーム、不動産、まちづくりの各事業が増収となり、カンパニーとして過去最高となった。一方、営業利益は特に新築住宅事業において部材価格高騰の影響を受け、増収減益となった。
施策面については、自然災害の深刻化などを背景にエネルギー不安が高まる中、新築住宅、リフォーム、まちづくりの各事業でスマート&レジリエンス訴求を図った。
新築住宅事業では、新型コロナウイルス感染症や物価上昇による購買意欲低下の影響などにより、受注棟数は前期を下回った。2022年10月に新分譲地ブランド「ユナイテッドハイムパーク」を立ち上げた。また、自社サイトを活用したウェブマーケティングの強化に加え、分譲・建売住宅の拡販に注力した。
リフォーム事業は、蓄電池などの拡販により受注が前期を上回った。定期診断の拡充や提案力強化に努めた。
ロ)環境・ライフライン事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比8.5%増の234,296百万円、営業利益は前連結会計年度比39.2%増の21,192百万円となった。当連結会計年度は、国内の非住宅建築市況が低調であったことに加え、第3四半期以降の住宅需要減少の影響を受けたが、売値改善によるスプレッドの確保、国内外の半導体向け設備投資需要が堅調であったことなどにより売上高は増収、営業利益は過去最高益更新となり、増収増益となった。
パイプ・システムズ分野では、国内の住宅向け、非住宅向けとも需要が想定を下回るも、国内外で半導体向け設備投資需要が増加しているプラント用管材、インドを中心とした海外での塩素化塩ビ(CPVC)樹脂の販売が堅調だったことを受け、売上高は前期を上回った。
住・インフラ複合材分野では、住宅向け需要が想定を下回るも、耐火・不燃材料、大型高排水システムなどの重点拡大製品や欧米を中心とした海外でのまくらぎ向け合成木材の販売拡大により、売上高は前期を上回った。
インフラ・リニューアル分野では、管路更生の海外での需要回復、国内外での売値改善、パネルタンクの需要の緩やかな回復などに支えられ、売上高は前期を上回った。
ハ)高機能プラスチックス事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比12.1%増の396,389百万円、営業利益は前連結会計年度比2.7%減の40,091百万円となった。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症に伴う中国でのロックダウンやウクライナ情勢などに起因する自動車減産や、第2四半期以降のスマートフォンの在庫調整などによるエレクトロニクス市況の低迷の影響を受けたものの、高機能品の拡販、売値の改善、為替の効果などにより売上高は増収となった。営業利益は原燃料価格の著しい高騰やエレクトロニクス市況の減退の影響が大きく、売値の改善、高機能品の拡販、コストダウンにより挽回を図ったが、減益となり、増収減益となった。
エレクトロニクス分野は、第2四半期以降、中国におけるスマートフォンの在庫調整などによる想定を超えた著しい市況低迷の影響を受けるとともに、これまで堅調だった非液晶分野も市況が低迷し、売上高は前期を下回った。
モビリティ分野は、新型コロナウイルス感染症の影響や部材供給不足などにより中国を中心に自動車市況は停滞したものの、ヘッドアップディスプレイ用中間膜を中心とした高機能品の販売が伸長、為替の効果もあり、売上高は前期を上回った。
インダストリアル分野は、包装材市況減退の影響を受けたものの、フォーム材や長尺クラフトテープなどの省力化製品や環境対応製品の拡販推進、順調な売値改善、為替の効果もあり、売上高は前期を上回った。
ニ)メディカル事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比1.3%増の89,680百万円、営業利益は前連結会計年度比11.9%増の12,511百万円となった。当連結会計年度は、国内外の生活習慣病の外来検査需要が回復したこと、および米国でのインフルエンザ検査キット拡販、医療事業の新規原薬販売が堅調に推移したことにより、増収、営業利益は過去最高益更新となった。
ホ)その他事業
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度比49.4%増の7,388百万円、営業損失は前連結会計年度比578百万円増の10,894百万円となった。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より48,531百万円減少し、当連結会計年度末には85,207百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果増加した資金は71,543百万円(前連結会計年度は105,023百万円の増加)となった。これは、税金等調整前当期純利益99,494百万円、減価償却費48,995百万円に加えて、預り金の増加額7,512百万円等の増加要因が、法人税等の支払額37,897百万円、棚卸資産の増加額36,718百万円、仕入債務の減少額5,114百万円等の減少要因を上回ったためである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果減少した資金は59,430百万円(前連結会計年度は2,694百万円の増加)となった。これは、主に重点及び成長分野を中心とした有形固定資産の取得による支出44,674百万円、無形固定資産の取得による支出11,733百万円等があったためである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果減少した資金は62,906百万円(前連結会計年度は54,729百万円の減少)となった。これは、自己株式の取得による支出27,410百万円、配当金の支払額25,100百万円(非支配株主への配当金の支払額を含む)、有利子負債の純減8,665百万円等があったためである。
③ 生産、受注及び販売の状況
イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
住宅
561,978
9.9
環境・ライフライン
234,157
7.9
高機能プラスチックス
415,628
14.0
メディカル
89,181
△ 2.0
報告セグメント計
1,300,946
9.9
その他
8,264
47.2
合計
1,309,210
10.1
(注)金額は販売価格による概算値であり、セグメント間の内部振替前の数値によっている。
ロ)受注状況
当連結会計年度における住宅事業の受注状況を示すと、次のとおりである。
なお、住宅事業を除くセグメントで取扱う製品については、主として見込生産を行っている。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
住宅
398,196
△0.3
164,300
△11.2
ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
住宅
537,067
4.3
環境・ライフライン
221,305
8.9
高機能プラスチックス
390,812
12.3
メディカル
89,680
1.3
報告セグメント計
1,238,866
7.3
その他
3,654
14.8
合計
1,242,521
7.3
(注)セグメント間の取引については相殺消去している。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(財政状態)
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末から29,209百万円増加し、1,228,131百万円となった。
イ)資産
流動資産については、前連結会計年度末より12,254百万円増加し、621,650百万円となった。主な要因は、棚卸資産が合計で42,961百万円、営業債権が合計で6,064百万円増加した一方、現金及び預金が43,453百万円減少したためである。
また、固定資産については、16,955百万円増加し、606,481百万円となった。
ロ)負債
未払法人税等が11,861百万円減少したが、前受金が7,446百万円、完成工事補償引当金が1,623百万円増加したことなどにより負債合計で561百万円減少し、495,606百万円となった。
ハ)純資産
当連結会計年度末の純資産は29,771百万円増加し、732,525百万円となった。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上69,263百万円及び為替換算調整勘定の増加13,746百万円の一方、配当金の支払23,816百万円及び自己株式の取得27,454百万円の減少があったためである。
(経営成績)
イ)売上高及び営業利益
当連結会計年度の売上高は1,242,521百万円(前連結会計年度比+7.3%、84,576百万円増)となった。
また、当連結会計年度の営業利益は91,666百万円(前連結会計年度比+3.1%、2,786百万円増)となった。
なお、売上高及び営業利益の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載している。
ロ)営業外損益
営業外収益については、持分法による投資利益が2,145百万円、受取利息が666百万円及び為替差益が378百万円増加したことなどにより、前連結会計年度と比較して2,915百万円増加した。営業外費用については、特定外壁点検保全費用が489百万円減少したことなどにより、前連結会計年度と比較して1,537百万円減少した。
ハ)特別損益
特別利益については、関係会社株式売却益870百万円及び投資有価証券売却益319百万円を計上した。
特別損失については、固定資産除売却損2,174百万円、のれん償却額1,974百万円、関係会社株式評価損1,319百万円及び減損損失468百万円の合計5,937百万円を計上した。
固定資産除売却損の内訳については「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1) [連結財務諸表]の[注記事項](連結損益計算書関係)」に記載のとおりである。
ニ)親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて29,634百万円増加し、99,494百万円となった。税金費用と非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は69,263百万円となった。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載している。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、中期経営計画において、「負債も活用し、積極的に成長を志向する」ことを基本方針としており、資金調達については、内部資金を活用すると共に、必要に応じて借入・社債発行等による外部調達を行うこととしている。なお、外部調達に関しては、運転資金については借入金またはコマーシャル・ペーパーで、生産設備・M&A等の長期資金需要には長期借入金または普通社債の発行で調達している。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1) [連結財務諸表]の[注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。