【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による影響の長期化や、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発する需要動向の変化、サプライチェーンの混乱等、国際情勢の影響から、先行き不透明な状況が続きました。また、大幅な為替変動や物価の上昇等も、依然としてリスクと認識しなければならない状況は続いていくと考えられます。
このような経営環境のもと当社グループは、2022年2月公表の「新中期経営計画(2022-2024年)」の着実な実践に取り組んでまいりました。経営理念『食糧増産技術(アグリテクノロジー)と真心で世界の人々に貢献します』のもと、グリーンプロダクツ、バイオスティミュラント、施設園芸分野やグローバル展開の推進といった成長ドライバーへの注力をはじめ、グループ会社及びパートナーとの連携によりグローバルシナジー最大化を図るよう努めてまいりました。円安傾向が当社グループには業績を上向かせる要因となったことも手伝い、当連結会計年度は当社グループにとって、将来へ向けての礎を築く期間となったと捉えております。当社グループの提唱する、食糧増産技術(アグリテクノロジー)の普及という活動そのものが、「持続可能な開発目標(SDGs)」に対する貢献目標「環境保全」、「資源効率の改善」、「飢餓撲滅」に必ず繋がるものと考え、新たな製品や技術、サービスの開発を通じ、人や環境に優しい持続可能な農業に貢献できる事業活動を進めてまいります。
当社グループでは、引き続き市場が求める安心、安全な製品を供給するための販売体制の強化や生産体制の効率化、積極的かつ持続的な研究開発投資などを図り、世界の農業が抱える課題解決に引き続き取り組んでまいります。
以上の事業活動の結果、当連結会計年度の売上高は269億60百万円(前連結会計年度比42億81百万円増加、同18.9%増)、営業利益33億46百万円(前連結会計年度比13億44百万円増加、同67.1%増)、経常利益33億85百万円(前連結会計年度比13億96百万円増加、同70.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益22億61百万円(前連結会計年度比8億5百万円増加、同55.3%増)となりました。
当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントでありますが、各分野の状況は次のとおりであります。
農薬分野においては、国内市場では、当社が注力しているグリーンプロダクツの殺ダニ剤「アカリタッチ」「サフオイル」、殺菌剤「カリグリーン」等が好調に推移し、売上高を伸ばしました。また、殺虫剤「オリオン」、殺ダニ剤「ダニサラバ」、殺菌剤「ショウチノスケ」といった当社主力製品も堅調に推移しました。海外市場においても殺ダニ剤「ダニサラバ」が北米及び南米向けに好調を維持し、殺虫剤「オンコル」も主に南米向けに順調に推移しました。さらに、殺菌剤「ガッテン」も前年の売上高を上回っております。それらの結果、2021年10月に事業譲渡を行った水稲除草剤の売上高の減少をカバーし、農薬分野全体の売上高は113億94百万円(前連結会計年度比18億38百万円増加、同19.2%増)となりました。
肥料・バイオスティミュラント分野においては、農林水産省が提唱する『みどりの食料システム戦略』に合致した施肥灌水技術である、養液土耕栽培及び水耕栽培用肥料の販売に注力し、シェアを拡大しました。リン酸の吸収効率向上に資する亜リン酸肥料、光合成を促進し成長を促す効果のあるバイオスティミュラント製品「ポテトール」等も好調に推移しております。海外市場におきましては、関連会社のオランダのBlue Wave Holding B.V.やスペインのLIDA Plant Research, S.L.において、北米や中南米向けの売上高を大きく伸長させました。また、グループ各社においてバイオスティミュラント剤「アトニック」が好調に推移しました。これらの結果、肥料・バイオスティミュラント分野等全体の売上高は155億65百万円(前連結会計年度比24億43百万円増加、同18.6%増)となりました。
一方、人件費、運賃、倉庫料が昨年比で増加した影響もあり、販売費及び一般管理費は93億14百万円(前連結会計年度比6億8百万円増加、同7.0%増)となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績は以下のとおりであります。なお、当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
アグリテクノ事業
13,736
120.6
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等に基づき収益を認識しております。
②商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
アグリテクノ事業
1,208
125.8
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等に基づき収益を認識しております。
③受注実績
当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載を省略しております。
④販売実績
当連結会計年度の販売実績は以下のとおりであります。なお、当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントのため分野別に記載しております。
分野別の名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
農薬
11,394
119.2
肥料・バイオスティミュラント
15,419
118.5
その他
146
133.3
合計
29,960
118.9
(注)1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等に基づき収益を認識しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額
(百万円)
割合(%)
金額
(百万円)
割合(%)
丸善薬品産業株式会社
4,593
20.3
4,852
18.0
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等に基づき収益を認識しております。
(3)財政状態の分析
① 資産の部
当連結会計年度末の総資産は310億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ26億62百万円増加しました。その内訳は、流動資産が24億6百万円増加、固定資産が2億56百万円増加したことによるものであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は169億20百万円となり、前連結会計年度末に比べ24億6百万円増加しました。その主な要因は、現金及び預金が36百万円減少、受取手形及び売掛金が4億78百万円増加、商品及び製品が7億60百万円増加、原材料及び貯蔵品が6億57百万円増加、仕掛品が4億65百万円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は140億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億56百万円増加しました。その主な要因は、繰延税金資産が1億29百万円増加、投資有価証券が58百万円増加、ソフトウェアが85百万円増加、建物及び構築物が46百万円減少、のれんが1億24百万円減少したことによるものであります。
② 負債の部
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は116億17百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億25百万円増加しました。その主な要因は、短期借入金が11億36百万円増加、未払法人税等が1億80百万円増加、支払手形及び買掛金が1億22百万円減少したことによるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は74億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億16百万円減少しました。その主な要因は、退職給付に係る負債が1億20百万円増加、長期借入金が14億50百万円減少したことによるものであります。
③ 純資産の部
当連結会計年度末における純資産の部は119億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億53百万円増加しました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上22億61百万円、剰余金の配当2億37百万円、為替換算調整勘定8億5百万円増加したことによるものであります。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1億43百万円減少し、当連結会計年度末には33億71百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は14億16百万円(前連結会計年度は36億3百万円の収入)となりました。これは主として収入面では、税金等調整前当期純利益33億78百万円、減価償却費8億64百万円、のれん償却額6億20百万円、退職給付に係る負債の増加額1億20百万円等に対して、支出面では、棚卸資産の増加額16億98百万円、売上債権の増加額3億6百万円、仕入債務の増加額2億16百万円、法人税等の支払額10億48百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、獲得した資金は5億69百万円(前連結会計年度は2億21百万円の収入)となりました。これは主として支出面では、有形固定資産の取得による支出2億88百万円、無形固定資産の取得による支出1億20百万円、定期預金の預入1億6百万円入、投資有価証券の取得による支73百万円出等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、支出した資金は10億29百万円(前連結会計年度は39億36百万円の支出)となりました。これは主として、収入面では、短期借入金の増加額8億11百万円、長期借入れによる収入16億78百万円に対して、支出面では、長期借入金の返済による支出30億45百万円、配当金の支払額2億37百万円等によるものであります。
(5)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び商品の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は122億88百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は33億71百万円となっております。
(6)経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標に照らした分析、検討内容
当社グループの経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度においては、2022年2月に策定・公表いたしました「新中期経営計画(2022-2024年)」に掲げた企業活動を実践してまいりました。主な活動は以下のとおりであります。
①成長ドライバーへの取組み
・グリーンプロダクツの拡販
国内果樹・柑橘市場への製品拡販活動の結果、製品に対する高評価を受け、販売量が拡大いたしました。
・バイオスティミュラントの拡販
バイオスティミュラント製品のメカニズム解明を行い、解明結果を生産者へ伝え製品拡販活動を実施いたしました。
・グローバル製品展開
殺ダニ剤「ダニサラバ」、殺菌剤「ガッテン」及び「カリグリーン」、肥料製品の販売国を拡大し、輸出量が増加いたしました。
②グローバルシナジーの最大化への取組み
・南米、アジアエリアでグループ会社製品の販売展開を行うため、拡販プロジェクトを立ち上げ、販売展開を開始しております。また、研究開発・生産・購買調達の最適化を図るため、グループ会社間連携協力に取り組んでおります。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は33億46百万円(前連結会計年度比13億44百万円増加、同67.1%増)、売上高営業利益率は12.4%(前連結会計年度比3.6%増)、連結ROEは23.4%(前連結会計年度比4.2%増)となり、2021年2月に策定・公表した「新中期経営計画(2022-2024年)」で目標と定めた2024年の経営指標(営業利益、売上高営業利益率、連結ROE)を当連結会計年度で達成いたしました。
当社グループが主に事業を展開する農業業界においては、国内販売におきましては、農業生産額の減少などにともない市場は縮小傾向にあり、事業環境としてはやや厳しい状況が続くものと考えられます。また、海外販売におきましては、食料の安定供給や作物生産技術の高度化や高品質化など、中長期的には拡大傾向で推移するものと予想しております。
このような中、当社グループは、「新中期経営計画(2023-2025年)」に基づいた重要課題に取組み、2025年12月期には売上高307億円(当連結会計年度比13.9%増)、営業利益37億円(当連結会計年度比10.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益25億50百万円(当連結会計年度比12.7%増)、連結ROE16.8%を達成し、持続的成長軌道に乗せるよう目指してまいります。
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(のれんの減損)
当社グループは、のれんについて、主として発生日以降5~15年間で均等償却しております。その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初予想していた収益が見込めなくなった場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(棚卸資産の評価)
当社グループは、販売目的で保有する棚卸資産は収益性の低下等により期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額の算定に当たっては、直近の販売価額、市場環境等を勘案しておりますが、これらの前提条件や仮定に変更が生じ、正味売却価額が減少することになった場合には、評価損計上の処理が追加で必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。