【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績の状況当第3四半期連結累計期間における世界経済は、ウクライナ危機の長期化や中国のゼロコロナ政策に伴う経済活動の抑制を背景にインフレが高進したことに加え、先進国を中心とした金利引き上げなどが逆風となり、新型コロナウイルス感染症の影響からの持ち直しに停滞感をもたらしました。米国では活動制限の緩和に伴う個人のサービス消費の回復を中心に景気に底堅さが見られましたが、欧州では資源価格の高止まりや長引くインフレ、金利上昇などの影響により、景気の減速が生じる形となりました。中国では持ち直しの動きは継続しましたが、2022年12月まで継続されたゼロコロナ政策の下、一部の地域で経済活動が抑制されたことによるサプライチェーンの混乱や不動産市場の不況など、足踏みが見られました。その他の新興諸国ではインフレの波及や各国の金利引き上げも見られましたが、活動制限の緩和が進む東南アジア地域を中心に経済活動の正常化に向けた動きが見られました。国内経済については、個人消費や企業の設備投資を中心に持ち直しの動きが見られましたが、製造業においては資源価格高騰や円安の進行による原材料コスト増や中国の都市封鎖の影響からくるサプライチェーンの混乱などから景況感が下押しされる結果となりました。このような環境において、当第3四半期連結累計期間では、経済活動が引き続き回復傾向にあるなかで資源高を背景に鋼材や非鉄金属、原油などの商品価格が前年同期比で高水準で推移したことに加え、海外販売子会社の業績拡大が寄与し、売上高は前年同期比31.3%増の2兆234億76百万円となりました。利益面では、営業利益はプライマリーメタル事業やエネルギー・生活資材事業の増益などにより、前年同期比13.9%増の560億68百万円となりました。また、戦略的投資先等からの配当収入が増加したことやプライマリーメタル事業などの持分法による投資利益が増加したこと、前期に差損であった為替差損益が差益に転じたことなどから、経常利益は前年同期比28.7%増の636億83百万円に、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期比35.4%増の449億24百万円となりました。
セグメント別の業績(売上高にはセグメント間の内部売上高又は振替高を含む。)は、次のとおりであります。鉄鋼事業国内建設分野を中心に取扱数量が堅調に推移するなか、鋼材価格は製造コストの価格転嫁が浸透し、前年同期に比べ高い水準で推移しました。利益面では、仕入れ価格の上昇に伴い前年同期に比べて利幅が縮小したことに加え、在外投資先からの持分法による投資利益が減少したことなどが利益を押し下げました。これらの結果、当事業の売上高は前年同期比30.3%増の9,414億58百万円、セグメント利益は前年同期比10%減の255億97百万円となりました。プライマリーメタル事業クロム系合金鉄を中心に取扱数量を減らしたものの、ステンレス母材やニッケルなどの商材価格が比較的高水準で推移しました。また、戦略的投資先からの配当収入やSAMANCOR CHROME HOLDINGS PROPRIETARY LTD.からの持分法による投資利益が利益を押し上げました。これらの結果、当事業の売上高は前年同期比41.2%増の2,019億88百万円、セグメント利益は前年同期比175.4%増の161億46百万円となりました。リサイクルメタル事業各種商材の取扱いが堅調に推移するなかで、円安環境下で増加した仕入コストの価格転嫁が進んだことに加え、非鉄金属相場の急落を背景とするヘッジ目的の商品先渡取引の評価益により収益を拡大しました。これらの結果、当事業の売上高は前年同期比16.7%増の1,131億56百万円、セグメント利益は前年同期比22.9%増の50億63百万円となりました。
食品事業世界的に水産物需要が高まるなか、各種商品価格が高い水準にあった一方で、円安の影響などによる仕入コストの上昇分の価格転嫁が十分に進まず、収益を下押ししました。また、米国を中心にロシア産のカニの輸入禁止措置がとられたことや欧米を中心とする巣ごもり需要の縮小に伴いカニ相場が下落したことで、連結子会社も含めて商品評価損を計上し、利益を押し下げました。これらの結果、当事業の売上高は前年同期比11.6%増の1,010億38百万円、セグメント損益は8億83百万円の損失(前年同期は、30億34百万円の利益)となりました。エネルギー・生活資材事業ウクライナ危機により原油・石油製品価格が高値圏で推移した結果、バンカーオイルを中心に収益を拡大したほか、PKS(パーム椰子殻)やウッドペレットについても、国際的な需要の高まりから取扱数量、単価ともに上昇し、利益を押し上げました。これらの結果、当事業の売上高は前年同期比34.6%増の2,745億86百万円、セグメント利益は前年同期比118.6%増の104億36百万円となりました。海外販売子会社東南アジア各国を中心に経済活動の回復傾向が進むなか、インドネシア、シンガポールにおいて徳信鋼鉄有限公司の鋼材を中心に鉄鋼製品の取扱いを伸ばし、収益を拡大しました。この結果、売上高は前年同期比46.3%増の3,529億16百万円、セグメント利益は前年同期比52.5%増の73億69百万円となりました。その他の事業木材事業では、ウッドショックの影響から木材価格が高い水準にあったことで売上を伸ばしました。一方、機械事業では、産業機械分野・レジャー施設分野とも前年同期に比べ大型完工物件が少なかったことから減収・減益となりました。これらの結果、売上高は前年同期比26.7%増の1,139億95百万円、セグメント利益は15.1%増の26億25百万円となりました。
② 財政状態の状況当社グループにおきましては、商品を対象物とするヘッジ取引のうち、契約に基づき取引先等に評価損益が帰属するヘッジ取引を行っておりますが、先渡取引の契約残高の減少や取引先からの資金の回収並びにロンドン金属取引所における商品先物価格の下落などに伴い、長期差入保証金や未収入金が減少したほか、金融機関からの短期借入金を一部返済しております。その結果、当第3四半期連結会計期間末の総資産は、長期差入保証金や未収入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末比22.7%減の1兆3,261億5百万円となりました。負債は、上述の事象に関連し、短期借入金や商品先渡負債が減少したことなどにより、前連結会計年度末比30.5%減の1兆247億25百万円となりました。そのうち有利子負債は、前連結会計年度末比24.7%減の5,444億27百万円となり、当第3四半期連結会計期間末のネット負債倍率は、1.5倍(1.3倍※)となりました。純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益からの利益剰余金の積み上がりや為替換算調整勘定などの変動により、前連結会計年度末比25.3%増の3,013億79百万円となりました。この結果、当第3四半期連結会計期間末の自己資本比率は、前連結会計年度末の13.8%(15.3%※)から22.2%(24.1%※)に上昇しました。
※ネット負債倍率及び自己資本比率の( )内の値は、2019年3月に実施した劣後特約付ローン(ハイブリッド
ローン)500億円について、格付上の資本性(50%)を考慮して算出しております。
(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題について、重要な変更又は新たに生じた課題はありません。
(3) 研究開発活動
特記すべき事項はありません。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
米国や欧州においては、サービス消費を中心に新型コロナウイルス感染症からの回復需要が一巡することに加え、インフレ高進および対応策としての金利引き上げなどが個人消費の重石となることが懸念されるほか、ウクライナ危機の長期化による悪影響にも注意が必要です。中国では活動制限の緩和が進み、経済活動が正常化していくことで、回復に向けた動きが続くことが期待されますが、政府が見直したコロナ政策の影響は注視が必要です。その他の新興諸国では活動制限の緩和が進み、東南アジア地域を中心に一層の持ち直しが期待されるものの、世界的なインフレ高進などによる影響には注意が必要です。国内経済は、堅調な個人消費や水際対策の緩和に伴うインバウンド需要の回復を背景とする内需の持ち直しが期待されますが、他方で原材料コスト増などが製造業などに及ぼす影響に加え、インフレや金融政策が個人消費などに及ぼす影響が懸念されます。当社グループとしましては、このような先行き不透明感が強まっている事業環境の中においても、各事業分野における需要動向を的確に把握し、取引先のニーズを反映した適切な販売・在庫政策を進めるとともに、国内外で新規取引先を積極的に開拓することにより、業績の維持・向上に注力していく所存です。
(5) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは持続可能な企業成長のために必要なレベルの流動性の確保と財務的な健全性・安定性維持を方針としており、資金調達にあたっては、多様化を図るべく、資本市場における社債並びにコマーシャル・ペーパー発行による調達を随時行いつつも、主に長期借入金を中心に調達を行ってまいりました。そうしたなか、今般のウクライナへのロシアによる軍事侵攻に端を発した、ロンドン金属取引所における先物商品価格の急騰を受けて、当該取引等に係る長期差入保証金が発生し、その対応策として前連結会計年度にコミットメントライン契約の実行及び短期借入金による資金調達を行ったことにより、有利子負債金額及びそれに占める短期調達の比率が増加しましたが、それらについては、先渡契約の契約残高の減少や取引先からの資金の回収などに伴い減少してきており、今後も引き続き減少していく見込みです。なお、当第3四半期連結会計期間末現在において、前連結会計年度に実行したコミットメントライン契約からの借入は全額返済しております。今後も引き続き当社グループとしましては、先渡契約の契約残高の減少や取引先からの資金回収に加え、資産の見直しや、資金効率の向上及び、調達期間の長期化を進め、有利子負債の削減及び財務的な安定性の維持を図っていく所存です。また、流動性維持のために、金融機関との間で総額1,500億円のコミットメントライン契約を締結しております。社債につきましては、市場環境や財政状態の変化に対応した機動的な社債発行を可能にするため、発行登録制度を利用しており、当第3四半期連結会計期間末現在の国内公募普通社債発行登録枠の未使用枠は、300億円であります。長期借入金のうち、500億円は劣後特約付ローン(ハイブリッドローン)であり、持続可能な企業成長のための資金確保と財務的な健全性の両立を目的として2019年3月に調達を行っております。本ハイブリッドローンは、資本と負債の中間的な性質を持ち、格付機関は残高の50%である250億円を資本と同等に扱っております。有利子負債の5割程度は円建てでの調達によるものですが、資産側の通貨属性を考慮し、適宜外貨建て借入や、通貨金利スワップ、為替予約を締結することで、資産の内容に見合った調達を図っております。また、連結ベースの資金管理体制については、国内子会社においては原則キャッシュ・マネジメント・サービスを導入しており、海外子会社に対しては第9次中期経営計画で掲げておりますように現地借入から親子ローンへの切替え促進を行っており、これらの取組によりグローバル財務マネジメントの強化を図っております。