【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限が段階的に解除され、経済活動が正常化に向かった。個別に見れば、急激な物価上昇によって個人消費に減速がみられたものの、企業の設備投資が持ち直したことで景気は緩やかに回復した。
当社グループを取り巻くエネルギー業界においては、コロナ禍から旅行やインバウンド需要が改善したことにより、航空燃料をはじめとした石油製品の需要に回復がみられた。一方で、カーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速するなか、EVシフトやサステナビリティ経営への対応が迫られるなど、経営環境は大きく変化している。
こうしたなかで、当社グループは、中期経営計画「変貌する未来への挑戦 Challenge 2030」のもと、2021年度から2023年度までを成長実現のための経営基盤の再構築期と位置づけ、低炭素・循環型社会に対応した事業ポートフォリオへの進化に向けた取組みを進めた。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。
① 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,356百万円増加し、201,244百万円となった。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,710百万円減少し、83,819百万円となった。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,066百万円増加し、117,424百万円となった。
② 経営成績
当連結会計年度における当社グループの売上高は前期比8.2%増の647,833百万円となった。営業利益は前期比26.1%増の15,211百万円、経常利益は前期比22.2%増の16,038百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比31.2%増の10,901百万円となった。
セグメント別の財政状態及び経営成績は次のとおりである。
なお、当連結会計年度より、セグメント区分の見直しにより、「航空関連事業他」を「航空関連事業」および「その他事業」に区分しており、前期との比較は変更後の報告セグメントに組み替えて表示している。
イ.石油関連事業
石油関連事業における売上高は、前期比6.2%増の554,745百万円となった。セグメント利益は前期比2.3%増の9,587百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ4,053百万円減少し、84,362百万円となった。
ロ.化学品関連事業
化学品関連事業における売上高は、前期比17.6%増の12,210百万円となった。セグメント利益は前期比6.5%減の1,138百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ176百万円増加し、4,199百万円となった。
ハ.ガス関連事業
ガス関連事業における売上高は、前期比19.0%増の61,015百万円となった。セグメント利益は前期比15.8%減の2,197百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ685百万円増加し、26,641百万円となった。
ニ.航空関連事業
航空関連事業における売上高は、前期比53.3%増の13,491百万円、セグメント利益は3,766百万円(前期は62百万円のセグメント利益)となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ681百万円減少し、20,044百万円となった。
ホ.その他事業
その他事業における売上高は、前期比6.9%増の6,370百万円となった。セグメント利益は前期比12.9%増の1,152百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ958百万円減少し、6,958百万円となった。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ8,750百万円増加し46,747百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は18,921百万円となった。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上によるものである。なお、獲得した資金は前期比8,372百万円増加している。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は3,252百万円となった。これは主に、有形固定資産および無形固定資産の取得によるものである。なお、使用した資金は前期比44百万円減少している。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は6,918百万円となった。これは主に、配当金の支払いおよび自己株式の取得によるものである。なお、使用した資金は前期比1,196百万円増加している。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産実績
該当事項なし。
(2)受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高
(百万円)
前年同期比(%)
ガス関連事業
693
115.7
171
62.6
その他事業
2,522
76.8
857
83.5
合計
3,215
82.8
1,028
79.1
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
石油関連事業(百万円)
554,745
106.2
化学品関連事業(百万円)
12,210
117.6
ガス関連事業(百万円)
61,015
119.0
航空関連事業(百万円)
13,491
153.3
その他事業(百万円)
6,370
106.9
合計(百万円)
647,833
108.2
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去している。
2.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績については連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略している。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更している。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載の通りである。それに伴い「前年同期比(%)」は変更後の報告セグメントの区分に基づき算定している。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1)経営成績等
① 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,356百万円増加し、201,244百万円となった。これは主に、現金及び預金が増加したことによるものである。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,710百万円減少し、83,819百万円となった。これは主に、石油製品の仕入価格の下落により支払手形及び買掛金が減少したことによるものである。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,066百万円増加し、117,424百万円となった。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものである。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の54.2%から55.5%となった。
② 経営成績
当連結会計年度における当社グループの売上高は、石油製品の販売価格の上昇により前期比8.2%増の647,833百万円となった。営業利益は、航空関連事業の業績が新型コロナウイルス感染症の影響から回復基調で推移したことにより前期比26.1%増の15,211百万円、経常利益は前期比22.2%増の16,038百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比31.2%増の10,901百万円となった。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりである。
当社グループは、営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主に運転資金や設備の更新、拡張に活用しており、営業キャッシュ・フローを上回る規模の投資については、金融機関からの借入による資金調達を見込んでいる。また、当社および連結子会社ではCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、グループ会社間で資金を融通することで、手元資金の流動性を確保するとともに有利子負債の削減を進めている。
当社グループは、事業リスクに対応できる財務基盤を確保しながら、資本効率の高い事業への投資を促進することで、持続的なキャッシュ・フローの創出を図っており、それによって配当金の支払いや自己株式取得などの株主還元に必要な資金を獲得する方針である。
(2)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりである。
(3)資本の財源及び資金の流動性
① 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、当社グループの石油関連事業、化学品関連事業およびガス関連事業に関わる仕入等の債務の決済資金等がある。また、設備投資需要の主なものは航空機給油施設の増強、SS設備の取得、天然ガス導管の延伸がある。
② 財務政策
当社グループの経営基盤の拡大・充実に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用や金融機関からの借入により資金調達を実施している。なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は前連結会計年度に比べ826百万円減少し、7,017百万円となった。
(4)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの財政及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
イ.石油関連事業
<石油製品販売業>
石油製品販売業においては、販売数量は前年並みとなったが、販売価格が上昇したことで売上高は前期を上回った。各部門別の状況は以下のとおりである。
石油小売部門では、直営SSでの販売が堅調だったことにより、販売数量、利益ともに前期を上回った。石油卸売部門では、利幅は前期を上回ったものの、原油価格の下落に伴い在庫評価による利益が減少に転じたことから利益は前期を下回った。産業用燃料油販売部門では、販売数量は前年並みとなったが、利幅が改善したことで利益は前期を上回った。産業用潤滑油販売部門では、風力発電の内視鏡検査などサービス領域の拡大により利益は前期を上回った。
また、SS経営戦略として、スマートフォンアプリ「Mantan」を活用した車検・洗車等の予約サービスを促進し、待ち時間の短縮による顧客満足度の向上と業務の効率化を進めた。
以上の結果、石油関連事業における売上高は、販売価格の上昇により前期比6.2%増の554,745百万円となった。セグメント利益は、産業用燃料油販売部門の利幅が拡大したことなどにより前期比2.3%増の9,587百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ4,053百万円減少し、84,362百万円となった。
ロ.化学品関連事業
<化学品製造販売業>
化学品製造販売業においては、国内工場が不安定な稼働状況であったことから、防腐・防かび剤や石油系溶剤の販売数量は前期を下回った。製品別の状況は以下のとおりである。
防腐・防かび剤では、部品供給不足に伴う自動車関連工場の稼働率低下により、金属加工油用途等への販売数量が減少し利益は前期を下回った。石油系溶剤では、原油価格の高騰と円安に伴い仕入価格が上昇したため利益が一時的に減少したが、当期の後半にかけては持ち直した。粘着付与剤では、前期に引き続き接着剤や梱包テープ用途の販売が堅調に推移した。また、機能化学品では、潤滑油・金属加工油の添加剤などに用いる高級アルコールの新規取引先の開拓により利益が増加した。
以上の結果、化学品関連事業における売上高は、石油系溶剤および粘着付与剤等の販売価格の上昇により前期比17.6%増の12,210百万円となった。セグメント利益は、防腐・防かび剤の利益が減少したことから前期比6.5%減の1,138百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ176百万円増加し、4,199百万円となった。
ハ.ガス関連事業
<LPガス販売業>
LPガス販売業においては、小売部門、卸売部門ともに販売数量は減少傾向で推移した。
小売部門では家庭用の販売数量は減少したが、前期に落ち込んでいた利幅が改善したことから、売上総利益に回復がみられた。一方で、小売営業権買収の初期投資やLPWA(※)を利用した通信端末の設置を進めたことから、販売費及び一般管理費が増加したため利益は前期を下回った。卸売部門では販売数量の減少に加えて、在庫評価による利益の減少により業績は低調に推移した。
また、2021年から世界的な電子部品の供給不足により給湯器をはじめとした住宅設備機器の販売が大きく落ち込んでいたが、当期はメーカーの生産が回復に向かったため、ガス外収益は小売部門、卸売部門ともに前期を上回った。
(※)LPWA Low Power Wide Areaの略で、省電力かつ広域なエリアをカバーできる通信方式
<天然ガス販売業>
天然ガス販売業においては、家庭用の需要が減少したものの、工業用の大口取引先が獲得できたことから販売数量は前期を上回った。しかしながら、利幅が減少したことにより、利益は前期を下回った。
以上の結果、ガス関連事業における売上高は、販売価格の上昇により前期比19.0%増の61,015百万円となった。セグメント利益は、売上総利益が増加したものの、小売営業権や設備投資にかかわる償却費が増加したことにより前期比15.8%減の2,197百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ685百万円増加し、26,641百万円となった。
ニ.航空関連事業
<航空燃料取扱業>
航空燃料取扱業においては、新型コロナウイルス感染症に伴う国内における行動制限や海外からの入国者に対する水際対策が段階的に解除されたことにより、航空需要は回復基調で推移した。
こうしたなか羽田空港における航空需要は、国内線では2022年10月以降、コロナ禍前の需要にほぼ回復した。国際線では、国内線に比べて回復が遅れていたが、当期末時点の燃料取扱数量はコロナ禍前の状態に戻っている。これにより、燃料取扱数量は、コロナ禍前の2019年度比で5割強となった前期から当期は8割弱に回復している。
また、羽田空港では施設機器点検管理システムや給油システムの更新準備をおこなうなど、今後の需要拡大に向けた業務効率の改善に取り組んだ。
以上の結果、航空関連事業における売上高は、羽田空港における燃料取扱数量の増加により前期比53.3%増の13,491百万円、セグメント利益は3,766百万円(前期は62百万円のセグメント利益)となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ681百万円減少し、20,044百万円となった。
ホ.その他事業
<その他>
その他事業においては、金属製品等の洗浄・表面処理業では、堅調な半導体関連向けの需要に支えられ精密洗浄処理の受注が好調に推移し、売上高、利益ともに前期を上回った。
また、建設工事業では、大型物件の受注が低調であったことから売上高は前期を下回ったものの、利益は前期を上回った。
以上の結果、その他事業における売上高は、金属製品等の洗浄・表面処理業が好調に推移したことにより前期比6.9%増の6,370百万円となった。セグメント利益は前期比12.9%増の1,152百万円となった。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ958百万円減少し、6,958百万円となった。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。